忍者ブログ
機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
[6]  [7]  [8]  [9]  [10]  [11]  [12]  [13]  [14]  [15]  [16]  

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「突入角度調整。排熱システムオールグリーン」
シンは大気圏突入シークエンスを的確に終了させ、最終フェイズに到達した。
「自動姿勢制御システムオン。ECSニュートラルへ」
コックピット内の気温も安定し、自身のバイタルにも問題はない。
摩擦熱が機体を包むが、その向こうに見える地球は青く煙って美しい。

(あの人は…?)

シンは傷ついたザクに乗っているはずの彼女を探した。

拍手


「間もなく、フェイズスリー」
ミネルバは大きな揺れに見舞われることもなく、順調に高度を下げていく。
「砲を撃つにも限界です、艦長」
アーサーが振り返った。砲首を出したままでは降下はできない。
すぐそばに見えるユニウスセブンを破砕するには、今がチャンスだ。
「でも、インパルスとザクの位置が!」
メイリンが焦ったように声をあげる。
「特定出来ねば、巻き込み兼ねません」
操舵手のマリクも、ミネルバの巨体で小さな彼らを誤って潰してしまわぬよう、先ほどから必死に彼らを探している。

「アスラン…」
不穏な空気の中、カガリはただ彼女の無事を祈るしかない。
着艦したレイの報告では、帰投命令に従おうとしていたシンが彼女を見つけ、帰還を促すために残ったということだった。
そのままシンも戻らず、2人とも単機での大気圏突入となったのだ。
スペック上は問題ないが、アスランのザクは損傷を受けたというデータも入ってきていた。カガリは痛いほど拳を握り締め、唇を噛み締めた。
(あのバカ…また無茶しやがって!)
その時、タリアの言葉がブリッジに響き渡った。
「タンホイザー、起動」
メイリンとカガリは心の中で同時に驚きの声をあげた。
「ユニウスセブン落下阻止は、何があってもやり遂げねばならない任務だわ」
タリアの声は落ち着いており、それゆえに誰の抗議も許さない。
「照準、右舷前方構造体」
カガリだけが歯を食いしばり、タリアを睨みつけた。
けれど、ここでやめろなどとは言えない。
これは、これから地球に落ちる「大いなる災厄」を砕く最後のチャンスなのだ。
カガリはさらに拳を握り締めた。爪が掌に食い込んでヒリヒリと痛んだ。
(無事でいろ…頼む…)
「タンホイザー照準。右舷前方構造体」
「撃ぇッ!!」
前方に大きくせり出した陽電子破砕砲が、最後の一手を打った。

撃てる限りの砲が放たれると、ユニウスセブンがほんのわずか砕かれた。
その衝撃で最後に打ち込まれたひしゃげたメテオブレーカーがプレートの奥に沈みこみ、摩擦熱を受けて爆薬が爆発すると、大地が割れて構造部分がむき出しになった。やがてパーツ部分は粉々に砕け、多くが燃え尽きた。
アスランが最後まで粘って打ち込んだ甲斐があったのだ。
「フェイズスリー、突入しました」
ここまでか…タリアは砲身をしまうようチェンに命じた。
これ以上の砲撃は加熱によって艦体そのものが危うくなる。
アーサーはダメージを与えたとはいえ、やはり巨大なそれが真っ赤に燃え、今にも地球に襲い掛からんとする姿に戦慄した。
(きっとたくさんの人が死ぬ…)
メイリンは眼を逸らしそうになり、いけない、と心を奮い立たせた。
(僕たちコーディネイターがした事なんだ…見届けなきゃいけない…)
残酷な死が、地球を包み込もうとしていた。

ユニウスセブンの落下状況は逐一放映されていた。
ザフトの尽力により破砕に成功したものの、巨大な破片はそのまま落下する。
バラけた分、落下地点は特定できず、世界中がその脅威の下にあった。
赤道付近が危ないという情報、太平洋、いや、大西洋こそが危ないという者…どちらにせよ、大津波が予測される海辺からは離れるよう繰り返し避難勧告が流される。
パニックに陥り、強奪や無秩序状態になる国があるかと思えば、政府の指示に従って弱い者から整然と避難する国もあった。
大陸にある国では皆内陸へと逃げ、島国は前大戦で地底深く掘られたシェルターに潜った。
もう少し早い段階では宇宙に逃げた者もいる。
プラントは彼らを手厚く保護すると約束し、無償でシャトルを出した。
しかし動けない病人や高齢者は逃げる気力を失い、諦めを口にした。
住み慣れた家で死を迎えると言う者も多かった。
どこに逃げれば助かるのか、誰もわからず、世界は混乱した。
シェルターはどこも一杯で、あぶれた人々はあてどなく彷徨っていた。
絶望の中に、やがて残酷で緩慢な終わりが訪れた…

「トリィ!」
子供たちとマルキオ導師を連れ、キラたちはカグヤ島内陸部のシェルターに避難していた。子供たちは何が起きるのかわからず、それでも大人たちの不安が伝染するのか神妙な面持ちで降りかかってくる災厄を待っていた。
「ねぇ、何が来るの?」
1人の小さな男の子がキラにそっと囁いた。キラは彼に囁き返す。
「大丈夫だよ、少しの間だから。すぐに行ってしまうから…」

―― たくさんの人を飲み込んで、その命を舐めとって…

キラはその直後、ズズンと響く不気味な音に天井を見上げた。
やがてそれは大きな振動となってシェルターを揺らし始めた。
核にも耐えるシェルターが、それでも大地震のように揺れる。
誰もが息を潜め、恐怖と戦っていた。
今は頼りないこの建物だけが、自分たちの命を守っているのだ。
子供たちがキラや導師にしがみつく。母カリダは幼い子供を抱き締めている。
キラも、抱きついてきた子供に「大丈夫、大丈夫だよ」と優しく囁いた。

―― こんなこと…あってはならない…あってはならないのに…

キラは子供たちをなだめながら、そっとため息をついた。

「メイリン、シン…わっ…!!」
ルナマリアはシンが戻っていないと聞き、その行方を弟に尋ねようとして衝撃に揺さぶられた。第一波が地球に衝突し、衝撃波がミネルバを襲ったのだ。
マリクが艦体を必死に立て直そうとする。
カガリも急激なGと振動で思わずモニターテーブルにつかまった。
落下の衝撃で不安定だが、ミネルバはこのまま大気圏内航行に移行する。
やがてミネルバの眼前に鈍い色をした海と大地が現れた。
たった今行われた地球への攻撃に、海は荒れて激しく波立っている。
「艦長!空力制御が可能になりました」
「主翼展開。操艦、慌てるな」
マリクは慎重に大気圏内推力に切り替える。
「通信、センサーの状況は?」
タリアはすぐにザクとインパルスを探させようとしたが、メイリンは「ダメです!強力な磁場で、全て機能しません!」と振り返った。
「レーザーでも熱センサーでもいいわ、インパルスとザクを探して」
「…彼らも、無事に降下している、と?」
アーサーが恐る恐る尋ねる。
「平気でタンホイザーを撃っておいて、何を今さらと思うかもしれないけれど…」
タリアはチラリとカガリを見た。
彼は肘をつき、口の前で手を組みながら食い入るようにモニターの中に広がる無慈悲な砂嵐を見つめている。
「…信じたいわ」
彼女のその言葉が自分に向けられたものだと、カガリは気づいていた。

(損傷のせいか…右足の温度上昇が早い)
アスランは初めてながら降下シークエンスを確実にこなしていった。
幸い左腕が残っているのでシールドをかざす事ができる。
だが損傷した右足や右腕部分の冷却がうまく利かず、どうしても温度が上昇しがちになるので、冷却ジェルをマニュアル操作で多めに散布した。
「…これで、いけるか?」
しかし問題は肩をやられた時に、スラスターもわずかにダメージを受けた事だ。
このままでは推進力が足りず、大気圏を突破しても地上に落下しかねない。
たとえ下が海でも、逆噴射すらできなければコンクリートと変わらない。
アスランは推力の再計算を行い、必要なパワーを捻出しようとしていた。
「やはりブースターがなければ大気圏は…」
かつての愛機、ジャスティスなら何の問題もなかった大気圏突入だが、どんなに綿密に計算しても傷ついたザクでは圧倒的にパワーが足りない。
けれどアスランは自分でも感心するほど落ち着いていた。
むしろここでジタバタしても始まらないと思い、思案を続けている。
(これでは、条件がよくてギリギリというところね)
その時、ひどいノイズまみれのチャンネルから聞き覚えのある声がした。
「…ラン…ん…アス…ン…!」
アスランは一瞬混線かと思ったが、声はもう一度彼女の名を呼んだ。

「アスランさん!!」
「シン!?あなた…」

それは思ってもみない声だった。
最新鋭のインパルスなら大気圏突入も問題ないだろうと思い、アスランは今の今まで、むしろいい意味でシンのことは心配していなかったからだ。
やがてインパルスの信号がノイズまみれのレーダーに映った。
「待っててください、今…」
シンは慎重に位置を合わせ、ザクの後背部に接地しようとしていた。
どうやらザクの損傷状況を見て単機突入が不可能と判断し、インパルスでザクを抱え込んで降下するつもりのようだ。アスランは慌てて通信を開いた。
「だめよ!やめなさい!」 
いくらインパルスのスラスターでも、2機分の落下エネルギーはない。
アスランはシンを止めた。インパルス1機なら問題なく降下できるのだ。
ザフトのエースと、最新鋭機のインパルスをこんなところで失うことはプラントにとって有益ではない。ただの民間人の自分のために、彼が命の危険に晒される必要などない。アスランは珍しく声を荒げた。
「私は大丈夫だから!あなたは行きなさい!」 
しかしそう言っている間にインパルスはザクに取り付いた。
思ったより激しい衝撃があり、インパルスのスラスターがうなる。
やがて、落下と言った方がよかったくらいのザクの降下スピードが落ちた。
インパルスはがっちりとザクを抱えている。
シンは慎重かつ正確なスラスター操作でこの難題をやり遂げ、アスランは彼の技術の高さと大胆さを見て、大したものだと心から感心した。

「どうしてあなたは、いつもそんなことばかり言うんですか?」
やがて、一息ついたシンが聞いた。
「さっきだってそうです。軍人でもないのに、最後まで残ったりして…」
アスランはそう言われて少し考え込み、それから尋ねた。
「…じゃあ、何て言えばいいの?」
「えっ!?」
シンは彼女の思いもかけない問いかけに驚き、少し間を置いて答えた。
「何てって…そりゃ…『あたしを助けなさいよ、このバカ!』…とか?」
それを聞いてアスランが思わずふふっと笑った。
「そう言えばいい?」
その意外なほど楽しそうな声に、シンはバカにされたような気になって子供のように「ちぇ」と口を尖らした。
「…いえ、ただの例え…です」
ひとしきり笑うと、アスランは再び黙り込んだ。
この未曾有の事態が父に端を発しているという衝撃は大きかったが、今はほんの少しだけ救われたような気がして、心が温かかった。
シンが、何の関係もない自分を危険を冒して助けに来てくれた事と、今、自分は1人ではないのだと思えることで、少しだけ安心できた。
2人の目前には、ミネルバがその姿を見せ始めていた。

「センサーに反応。7時の方向、距離400。これは…」
バートがようやくそれらしき熱源を感知して叫んだ。
「光学映像出せる?」
メイリンが震える手で映像をスキャンする。
(シン…シン…アスランさん…)
2人とも、無事でいてくださいと唱えながら、彼は操作を続けた。
やがて唐突に、ザラザラした光学映像がモニターに現れた。
それを見て、ミネルバブリッジ一同は思わず歓声を上げた。
足と腕を損傷し、傷ついたザクをインパルスが支えている。
「ザクも無事だ!」
アーサーが信じられないというように首を振った。
「アーサー、発光信号で合図を。マリク、艦を寄せて」
タリアは順序だてて浮き足立つクルーに命じた。
「早く捕まえないと、あれじゃいずれ2機とも海面に激突よ」
カガリはシートベルトを外すと、よろけながらハンガーに向かった。
体の強いコーディネイターたちと違って、ナチュラルの彼は強行された降下に体が慣れきらない。
軽い起立性低血圧を起こして立ち上がるのも走るのも苦痛だったが、今はそんなものに構ってなどいられない。
メイリンはそんな彼を横目に見つつも、胸を撫で下ろした。

やがてインパルスとザクが寄せてきたミネルバに着艦した。
整備兵が消火剤や冷却材の散布など、緊急着艦による処置を手際よく行い、ようやくザクのコックピットが開いてアスランが無事な姿を現すと、キャットウォークで作業を見守っていたカガリは手すりに掴まりながら、もつれる足で階段を駆け下りた。
正直、こんな時はナチュラルの弱い体がもどかしい。
一方、ラダーで降りてきたアスランは、整備兵やレイ、ルナマリアに大きな歓声で迎えられているシンを見ていた。損傷の激しいザクを連れ、しかも高度域での着艦だったのに、シンは全く危なげなくこなしてみせた。
(今はもう、新しい世代がザフトを支えている)
アスランはそれをまざまざと実感していた。
「アスラン!」
「カガリ…」
よろけながら駆け寄ってきたカガリをアスランは腕で支えた。
「ケガは!?大丈夫か?」
その顔色の悪い心配そうな顔を見て、アスランは罪悪感に苛まれた。
何も言わずに部屋を出てきたのだ。自分がいなくてきっと驚いた事だろう。
しかも成り行きとはいえ、テロリストとの戦闘に巻き込まれていたなんて…
「あなたこそ大丈夫?めまいは?吐き気はない?」
「俺は大丈夫だ」
カガリは無理に笑った。
それから2人はそろってシンのもとに歩み寄った。

「ありがとう」
シンが振り返ると、そこには握手を求めるアスランがいた。
それを聞いて「別に…」と言いかけたが思い直し、彼女の手を取る。
あれだけの戦闘をこなしたにしては自分より一回りも小さい、細い手だ。
それから改めて彼女を見ると、綺麗な碧色の眼が優しそうに微笑んでいる。
シンは少し照れくさくて、ムスッとした顔のまま眼をそらした。
カガリも同じく「ありがとう、シン。こいつを助けてくれて」と感謝を示した
が、シンはこちらにはあからさまな敵対心を剥き出して毒づいた。
「ミネルバの3人目の戦死者が民間人で、しかも女じゃ後味悪いからな」
この憎まれ口にはさすがにルナマリアもレイも呆れたようにシンを見たが、カガリは少し楽しそうに笑った。

その時、ズズン…とミネルバの艦体を不気味な衝撃が襲った。
「なに?まだ何か!?」
いの一番にシンに駆け寄ったヴィーノが不安そうにあたりを見回し、ルナマリアもどさくさに紛れてシンの腕にしがみついた。シンは一瞬体を固くしたが、揺れが続いたので我慢し、それが収まるまでルナマリアの支えになってやった。
「地球を一周してきた最初の落下の衝撃波だ。おそらくな」
レイがその衝撃の正体を暴いた。
(そうか…これはユニウスセブンが地球に落ちた証拠でもあるんだ)
シンはそれを再認識し、あたりは重苦しい気分に包まれた。
一体どれほどの被害が出たのか、今はまだ見当もつかなかった。

「迎え角良好。フラットダウン。推定海面風速入力。着水チェックリスト1番から24番までグリーン。グランドエフェクトが、シミュレーション値を超えています」
「カバーして。警報。総員、着水の衝撃に備えよ」
大気圏突入以降、ゆっくり降下を続けていたミネルバは、結果的に最も被害と影響が少なかった太平洋に着水した。
アーサーが着水完了を宣言する。
浸水は認められないが、大気圏突入によるダメージもまだ調査されず、地球での運用も当然初めてのことだから、引き続き警戒を続けるよう各員に通達がなされた。とはいえ、ブリッジにはようやく安堵が走る。
十数時間というもの、休憩すらできずにぶっ通しの任務だったメイリンやバートもようやく息をつき、アーサーも思い切り腕を伸ばして伸びをした。

「地球かぁ…」
甲板に出たヴィーノが、足元でちゃぷちゃぷと音を立てる波を見て呟く。
「太平洋って海に降りたんだろ?俺たち。うっはは、でけー!」
ヨウランがおどけて喚き、わーっと沖に向かって声をあげた。
「そんな呑気なこと言ってられる場合かよ」
相変わらずお調子者のヨウランにヴィーノが呆れた。
ルナマリアやレイ、シンも甲板に出て風に当たっている。
プラント育ちの仲間たちにとっては地球の広大な海や自然は不思議で興味深いものだろうが、地球育ちのシンにとってはさほど珍しいものではない。
ルナマリアが「この海に魚や鯨がどれくらいいるのかしら」と言っても上の空で、シンの視線はもっぱらある人物とその連れに注がれていた。

「本当に大丈夫か?アスラン」
シンたちとは別の扉から、カガリはアスランと共にデッキに出てきた。
雲の彼方は既に塵とイリジウム、電磁波が激しい嵐を起こしており、空はどんよりと重苦しい色で垂れ下がっている。
(次に太陽を見られる日は、いつなんだろう)
カガリはまだくらくらする頭で空を見上げた。
今、自分がいるこの太平洋はオーブへと続いている。
国土の損害は?国民は皆、無事だったのだろうか?
「私は…あなたこそ、薬は飲んだの?」
アスランはやや強い風になびく長い髪をかきあげて答えた。
カガリが今、オーブに想いを馳せていることはわかっている。
(なぜ残ったの…ヴォルテールに移乗した議長と共に行くべきだったのに)
カガリがどうして残ったのかなど、誰よりも一番理解しているのに、それでもアスランは思ってしまう。自分を置いていけばよかったのに、と。
カガリは浮かない表情の彼女を見つめていたが、やがて海原に視線を移した。
「でも、本当に驚いた。心配したぞ?」
戦闘中に大気圏に落ちるなどという激戦を潜り抜けて戻ってきた彼女の変化には気づいている。多分、自分には言えない事があったのだろう…もやもやした気持ちを振り払うように、カガリは少し明るい声で言った。
「モビルスーツで出るなんて、聞いてなかったからな」
「…ごめん、勝手に」
「そんな事はいいさ。おまえの腕は知ってるし」
むしろ鈍ったかと思ったよと、カガリは自分の頭の包帯を差して笑った。
アスランも笑おうとしたが、うまく笑えなかった。
「おまえが出たのは驚いたけど、それはそれで…よかったかもしれない」
「え?」
カガリのその言葉に、すぐ近くで海を見ていたシンがピクリと反応した。
「大変な事にはなったが…ミネルバやイザークたちのおかげで、被害の規模は格段に小さくなったんだ」
ローマ、上海、ゴビ砂漠、ケベック、フィラデルフィア。
大西洋北部にも大きな被害が出たとプラントは早くも発表していた。
地球側の報道はそこまで至らないほど混乱しており、死者の数は途方もない。
二次、三次災害を含めると一体どれほどの被害になるのか見当もつかなかった。
しかし、カガリは純粋に彼らをねぎらうつもりで言ったのだ。
今後の事を思えば、それは下手をすれば見過ごされてしまいかねない。
ブリッジで危惧したように、彼らの不断の努力より「ザフトがいた」、その事実だけがナチュラルの心に残り得る可能性の方が大きかった。
気休めとはわかっていても、自分のように、アスランたちが必死で食い止めようとした事を認める者もいる事を伝えたい一心だった。
「そのことは、地球の人たちも…」
「やめろよ、このバカッ!」
デッキに突然怒鳴り声が響き、カガリは声の主を見た。
兵たちも皆シンに注目し、ヴィーノが「またぁ?」と情けない声で呟く。
シンは、カガリの方に向き直って怒りに燃えた眼を向けている。
アスランは(ああ、この眼だ…)と思いながらシンを見つめた。
ルナマリアやレイたちも固唾を呑んで見守っている。

「バカだと?」
カガリは頭痛に顔をしかめながら言い返し、アスランは本調子ではない彼の胸を抑えた。
シンはそんな2人を見て少し冷静になり、ふっとため息をついた。
「あんただって、ブリッジにいたんだ。なら、これがどういうことかわかってるはずだよな?」
「…何が言いたい?」
「ユニウスセブンの落下は、自然現象じゃなかった」
シンの言葉に、カガリはぐっと息を飲み込んだ。
(そうだ、あれは人為的なテロだったのだ。それも…)
「落としたのはコーディネイターだ」
シンは冷静な口調で続けた。
「あそこで家族を殺されて…そのことをまだ恨んでる連中が、ナチュラルなんか滅びてもいいと思って落としたんだぞ!?」 
自爆までして想いを遂げようとした彼らの怒りと憎しみ。
家族や大切な人をいきなり殺されて、その苦しみを誰にもわかってもらえない。
悔しさや悲しみや怒りや憎しみが澱のように心の底に沈んでいくあの感覚は、シンにも覚えがある。いや、思い出したくなくとも逃れられない感覚だ。
オーブで育った彼にとっては、血のバレンタインは傷ましいながらも遠い出来事に過ぎなかったが、今のシンには彼らの想いが少しはわかる。
(わかるさ。わかるけど、でもそんな報復、絶対にやっちゃいけない)

「わかってるさ」
カガリはシンの言葉には動じず答えた。
「でも、おまえたちはそれを防ごうとしてくれた。必死に止めようとしてくれただろ?だから俺は…」
「当たり前だ!!」
シンは苛立ちを感じ、まるで子供のように彼の言葉を遮った。
レイが一歩踏み出したが、同時にアスランも重い口を開いた。
「…それでも、破片は落ちたわ」
カガリは少し驚いたようにアスランを見た。
その表情はまるで、思ってもみない方向からの銃撃に驚く新兵のようだ。
「私たちは、止めきれなかった」
戦場から戻って以来、アスランが初めてカガリを真っ直ぐ見た。
碧色の眼が、何かを訴えかけるように琥珀色の眼を見つめている。
けれど彼女はすぐに視線を逸らしてしまった。
まるで、「あなたに言ってもわからない」と言わんばかりに。
それはシンの言葉よりもずっと深く、カガリの心を刺し貫いた。
「一部の者たちがやった事だと言っても、私たちコーディネイターのした事に変わりはないわ」
カガリは何も言えなかった。
血のバレンタインで母を失い、その哀しみと怒りでザフトに入隊した彼女が、今は逆に地球への攻撃で多くを失ったナチュラルを案じている。
恐らく同じなのだ、彼らもまた…あの時のコーディネイターたちと同じく、ナチュラルもまた相手を恨み、憎み、何かをしなければ気が済まないだろう。
その「何か」が何なのかは、もはや火を見るより明らかだ。
「…許してくれるのかしらね…それでも…」
黙り込んだカガリを置いて、アスランは艦内へと戻って行った。

シンもまたアスランを見送ると、ぽつりと呟いた。
「自爆した奴らのリーダーが言ったんだ。俺たちコーディネイターにとって、パトリック・ザラの取った道こそが、正しい道だったって」
カガリはそれを聞いて、思わずアスランが消えた扉を振り返った。
(あいつ…!くそ、俺は…!)
父の死を見取ったあの日以来、滅多に口には出さないが、アスランが父を止められなかった事をどれだけ悔やみ、あの戦争を悲惨な最終局面まで導いてしまった父の所業に心を痛めているかを、カガリほど知る者はいない。
なのに、アスランがそんな自分に何も言えずにいる事実がいたたまれなかった。
(俺もあいつも、何も変わっていない…なのに、どうして…)
カガリは項垂れて手すりを握り締めた。彼女がひどく遠くに行ってしまったように感じられた。
「あんたってホント、何もわかってないよな」
冷ややかなシンの皮肉にも、カガリは黙ったままだ。
シンはそんなカガリを見て、少しだけ優越感を感じた。
やっぱりアスハなんかには何もわかってない。
オーブの奴なんかに、あの人のことがわかるはずないんだ…
「あの人が可哀想だよ」
シンがそう言い捨てて踵を返しても、カガリは最後まで何も言えなかった。

「やれやれ、やはり大分やられたな」
パルテノンが吹き飛び、ローマの街も壊滅状態だ。
欠片は海ではなく多くが大陸に落ち、直接都市を破壊した。
ロゴスたちは思った以上の被害に渋い顔だが、破壊の後には建設がある。
彼らはこの後またたんまりと儲ける事ができるのだ。
彼らの上にある大きなモニターでは、見目麗しいデュランダル議長が地球の被災者たちに優しい言葉をかけ、援助の手を伸ばしている。
プラントの無償の援助は被災地で苦しむ人々に希望の光を与える。
それは彼らにとっては厄介な「プラントとの絆」になってしまう。
「皆さんのお手元にももう届くと思いますが、ファントムペインがたいそう面白いものを送ってきてくれました」
ジブリールがもったいぶってデータをチラつかせた。
デュランダルの姿が消え、モニターにはユニウスセブンとそれを動かすフレアモーター、ジン・ハイマニューバ2型、そしてザクやゲイツRがカオスやアビスと戦っている姿が映し出された。
それはまるで、あたかもザフトがユニウスセブンを動かしたジンを庇って戦っているかのように編集された映像だった。
「思いもかけぬ最高のカードです。これを許せる人間などこの世のどこにもいはしない。そしてそれは、この上なく強き我らの絆となるでしょう。今度こそ、奴らの全てに死を」
ジブリールはヒソヒソと言葉を交わすロゴスたちに言った。
「青き清浄なる世界のためにね…」

「やはりダメです。粉塵濃度が高すぎて今はレーザー通信も…」
「そうか…すまない」
カガリはオーブへの通信を何度もトライしてくれたバートに礼を述べた。
「艦のチェックと各部の応急処置が済み次第、オーブへ向かわせて頂きますわ」
「ああ、わかっている」
まだいくらか顔色の悪いカガリが頷いた。頭痛が続き、シンとの一件もあって気分は冴えない。
「今更こんなところから話をしたって、もうあまり意味はないこともわかってはいるんだがな…」
タリアは頷き、彼を慰めるように言う。
「島国ですものね、オーブは。御心配も当然ですわ」
「到着したら、その勇気と功績に感謝して、ミネルバには出来るだけの便宜を図るつもりでいたが、これでは軽く約束もできないな…許してくれ、艦長」
カガリは少し寂しそうに笑った。
(今頃、行政府も大わらわだろう)
だけど俺がいなくてもウナトがしっかりとまとめているはずだ。
ユニウスセブンが動き出したと知って騒ぎになったプラントが、躍起になってデュランダル議長を探し出し、その指示を仰いでようやく落ち着いた様子を見ていたカガリは、ふっと笑った。オーブではそんな混乱はあるまい。
(どうせいてもいなくてもいい存在だ…お飾りの代表の俺は…)
ひどく疲れた様子の若者を見て、タリアもアーサーも顔を見合わせた。

「あー、もうっ!」
ひと時の穏やかな時間に退屈したルナマリアが「甲板に射撃訓練場を作ろうよ」と提案し、ヴィーノやヨウランが駆り出されて簡易射撃場ができていた。
しかし思ったようにいかない成績にうんざりし、ルナマリアは早くも訓練に厭きた様子だ。隣ではレイとメイリンも訓練を行っていたが、射撃の腕は緑服のメイリンの方が上だ。それも何だか面白くない。
「ちっとも当たらなくて、いやになっちゃう」
「もう少し真面目にやりなよ、姉さん」
メイリンは呆れて、さっきからぼやいてばかりの姉を叱った。
ルナマリアは真面目な弟にいーっと舌を出し、今度はレイに訴えた。
「こんな風の強いところじゃ、弾が全部逸れちゃうと思わない?」
「思わない」
「思わないの?どうして?」
「こんな距離、風くらいで逸れるわけないだろう」
あっさり言われ、ルナマリアはぶーっと膨れた。
「わかった!重力が…」
「おまえは努力が足りない。メイリンの言うように真面目にやれ」
「やってるわよぉ」
「やってない」
(あーあ、せっかく一緒にやろうと思ったのに、シンったら…)
訓練に身が入らない理由は、成績の悪さだけではなかった。
「デッキで射撃訓練?いいよ、俺は。やらない」
シンはルナマリアの誘いなど歯牙にもかけず、コアスプレンダーの整備をするからとさっさとハンガーに行ってしまったのだ。
「ん?あら!」
しかしその時、ルナマリアはこちらを見ているアスランを見つけた。
ルナマリアが手を振ると、アスランが3人の元へやってきた。
(わゎ…!)
メイリンはといえば、途端にガチガチに緊張して銃を構えたまま動けなくなる。
「訓練規定?」
「ええ、どうせなら外の方が気持ちいいかなって。でも調子悪いわ」
ルナマリアは自分の成績の悪さを示して両肩をすくめる。
アスランは少し懐かしそうに、見慣れた的や銃を見た。
「あ、一緒にやります?」
「え…ううん、私は…」
苦笑する彼女に、ルナマリアは腰に手を当てて言った。
「ほんとは、私たちみんな、あなたのこと、よく知ってるわ」
「え?」
「元ザフトレッド、クルーゼ隊。戦争中盤では、最強と言われたストライクを討ち、その後、国防委員会直属特務隊FAITH所属。ZGMF-X09A、ジャスティスのパイロットの、アスラン・ザラ…でしょ?」
レイは射撃訓練を続けており、合間にしか彼らの会話を聞いていないが、スラスラと出てくる経歴はどうせメイリンに調べさせたんだろうと呆れた。
しかし、彼は彼女たちが知る由もないその先の情報も知っている。
アスラン・ザラは、彼が追っている人物に最も近い人間なのだ… 
「お父さんのことは知りませんけど、その人は私たちの間じゃ英雄だわ。ヤキン・ドゥーエ戦でのことも含めてね」
婚約者ラクス・クラインと共に、狂気に走ったザラ議長を止め、戦争をやめさせるべく戦ったという、いつの間にか勝手に一人歩きしている「伝説」は、耳に入るたびアスランを辟易させ、キラやラクスを笑わせた。
けれど屈託のないルナマリアはアスランの表情など気にしない。
「射撃の腕もかなりものと聞いてますけど?」
ルナマリアが銃を差し出すと、アスランはそれを手に取った。
ザフトに入れば誰もが最初に支給される、基本のセミオートだ。
「お手本。実は私、あんまり上手くないんです」
あんまり?と振り返ったレイを無視し、ルナマリアは微笑んだ。
「同じ女性として、ぜひご教示願いたいわ」
アスランは気分転換にいいかもね…と思い直し、ルナマリアからイヤーマフとフェイスガードを受け取って手際よく弾丸を詰めた。

そのまま軽く銃を構えると、難なく全ての弾丸を的の中央に撃ち込む。
さらに次の段階の動く的にも優れた動体視力と反射神経で全弾命中させた。
レイの射撃もかなり正確だが、明らかにそれを上回っている。
ルナマリアはポカンと口を開けて、思った以上の腕に驚いていた。
レイはチラリと見ただけだが、メイリンは別の意味でぼーっと彼女を見つめ、いつの間にかやってきていたシンも、彼女の一挙一動を後ろで見つめていた。
「うわぁ、同じ銃撃ってるのに、なんで!?」
ルナマリアが全弾撃ち終わったアスランの白く細い手を取り、無邪気に言った。
「銃のせいじゃないわ。あなたはトリガーを引く瞬間に手首を捻る癖があるのね」
アスランはくるりと手を返してルナマリアの手首を掴み、癖を再現してみせた。
「だから着弾が散ってしまうのよ。それにリコイルにも負けてるから、もう少し腕の筋肉を鍛えること。トレーニング、さぼってるでしょ?」
「だってぇ…マッチョになったらノースリーブが着られないじゃないですかぁ」
アカデミー時代に教官から何度も指摘された欠点を、たった一度見ただけで全て言い当てられて、ルナマリアはますますため息をついた。
「やんなっちゃう…これじゃ同じ赤服を名乗れないですね、私」
ルナマリアはすっかり打ち解けた様子でにっこり笑った。
そんな風に素直に負けを認めるあたりが、彼女の何よりいいところだ。
「こんなことばかり得意でも、どうしようもないわ」
手際よく排莢し、空薬莢を箱に戻して銃を返すと、アスランはボソッと呟いた。
「そんなことありませんよ。敵から自分や仲間を守るためには必要です」
「敵って…」
アスランはルナマリアの言葉に苦笑し、聞こえないほどの声で呟いた。
「誰のことなの…?」
また教えてくださいねと送り出され、アスランはその場を後にした。

久々に撃った銃と、明朗なルナマリアとの会話が心地よくて、少し気が晴れた気がする。そんな彼女に、今度はシンが話しかけた。
「ミネルバはオーブに向かうそうですね」
あなたもまた戻るんですか?と聞かれ、アスランは眼を逸らした。
「…ええ」
私的な外出は自分でもカガリの護衛をする事ができるが、公式行事ではもちろんそんな事はできない。ただ彼が幼い頃からキサカ一佐が護衛の任にあったため、アスランも許される範囲内では随伴させてもらえていた。
しかし最近、カガリの与り知らぬところでキサカが突然遠征任務に着かされ、それ以来、当然ながらアスランは公式の場にはほとんど随伴できなくなった。
それと共に、自分自身に問いかける回数も多くなっている。

―― 自分は、一体何のためにオーブにいるのか…と。

「なんでです?」
まるでそれを見透かしたかのように、シンの赤い瞳がアスランを射る。
改めてそう問われると答えに窮する自分がいた。
カガリを愛しているから…とだけ答えられるなら、どれほど楽だろう。
「そこで何をしてるんです?あなたは」

海辺にあったマルキオ導師と子供たちの家は、高波で粉々になってしまった。
子供たちは残骸の中から自分のおもちゃや食器を拾い出している。
壊れてしまった家を見て泣く子もいたので、キラはトリィを空に放ち、飛びまわらせて子供たちを喜ばせた。トリィを追って砂浜を駆けていく子供たちを見送っていると、突然後ろから「ハロ、ハロ、ラクス!アスラ~ン!テヤンデェ!」という懐かしい声が聞こえてきたので、キラは振り返った。
「ラクス!」 
そこにはにこやかに笑うラクスが立っていた。
キラが駆け寄ると、ラクスはいつものように彼女を軽く抱き締め、「ただいま」と優しく言った。
「おかえり…」
薬の香りが懐かしくて、キラは彼の温かい胸の中で深呼吸をした。
そして2人は、未だ荒れている海と不穏な色の空を見上げた。
「嵐が…来るね…」
ラクスは呟いた。
「うん、わかってる」

嵐が来る…また、戦いが始まるのだ…
PR
この記事にコメントする
Name
Title
Font-Color
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret
制作裏話-PHASE7-
ついにユニウスセブンの破片が落ち、地球に未曾有の被害がもたらされます。

本編ではラクスと共にいたキラですが、逆デスではキラだけ(もちろんマルキオやカリダはいますが)なので、逆にラストシーンのラクスの再登場がドラマティックに演出できたかなと自負しています。

シンとアスランがガンダム名物ともいえる大気圏突入を試み、ミネルバはタンホイザーで破片を砕きながら降下します。
前回、アスランの戦う姿を見て彼女の人となりを知ったシンですが、今回はそのシンが危険を顧みず自分を助けようとしてくれた事で、逆にアスランもシンの人となりを知ることになります。

ここの会話は本編でもシンとアスランが「人間関係」を形作るシーンとしてとても好きだったんですが、本編ではこの後、何の伏線にもなりませんでした。
そこで私は「このセリフを使って最終回に二人の和解を描く」と決意しました。

オリジナルのセリフはもちろん、「俺を助けろ、この野郎」ですが、逆デスでは女性なので少し変えています。このまま色々ぶつかり合いながら師弟関係になったらいいなぁ」と思ったものです、当時は。

反面、心配してくれているカガリとの間にわずかなすれ違いが生まれ、今後大きな溝となっていく呼び水になります。本編では「2人の関係」としてはさほど描かれていなかったので、私は混迷の世界と並行するように書く事にしました。

本来なら父とのいきさつを全て知っているカガリに話すべきことを、アスランはもう話せなくなっています。カガリ自身もそれを痛感し、ショックを受けます。
カガリが国家元首という立場にあり、アスランが自分の立場を疑念に思い始めている…そのギャップを不穏な雰囲気で描き出しました。

けれど、2人が「恋人同士である」という表現は忘れていません。互いを思いやっているのはもちろん、アスランは自身の立ち位置に疑念を抱きながらも、彼のそばにいるのは「カガリを愛している」からだと自覚しています。カガリもまたその気持ちにぶれはなく、だからこそ「(自分たちは)何も変わっていないのに」とため息をつくのです。

だからこそ、この後に来る別離が効いてくるのです。
私は2人の関係を修復させるつもりでしたが、物語が進み、キャラクターが一人歩きを始めたなら、結果的に「発展的に関係を解消する」となってもいいと思っていました。その遊びの部分を残して書いていました。

私は2人の間に現れた「ジャンクション」のさらなる演出として、カガリが「(今ミネルバにいる)たった一人のナチュラルである」事や、シンに救われた事でアスランの堅い心の扉が開き、逆デスでは「真ヒロイン」として活躍するルナマリアとの絡みによって、コーディネイターのコミュニティに傾いていく様子を描いてみました。これによって「ナチュラルの中で所在のない」アスランの孤独を浮き彫りにし、カガリ自身に、かつてキラが感じたようなそこはかとない孤独感を感じさせています。
それがシンVSカガリの第3ラウンドを、シン有利で終わらせる事になります。

カガリが急激な大気圏降下で起立性低血圧を起こしたのは低重力障害の一つです。身体の強いコーディネイターはこうした事が起きないよう、遺伝子操作をしているわけです。
ちなみにこうした事が起きたのはミネルバが軍艦だったからで、客船や商船で一般の人が大気圏を行き来する場合は恐らくこういった事が起きないような航行をするだろうと想像します。(「プラネテス」を見てしまうとつくづく「あの過酷な宇宙で人間同士が戦争とか無理」と思いますよね)
でも種はせっかく「ナチュラルVSコーディネイター」という面白い題材を扱ったのだから、もう少しコーディネイターとナチュラル、両者の「体力差」や「能力差」を描いてもよかったと思うんですけどね。

そしてルナマリアの屈託のない明るさをより強調してみました。「シンの事が好き」ゆえに、アスランに対して警戒するという乙女らしさと、元気で明るい人気者ゆえに、アスランのすごさを素直に認めて打ち解けてしまう彼女の「人間的よさ」が表現できていれば嬉しいです。彼女にかかるとレイも年齢相応の「仲のいい友達」です。

アスランが指摘するルナマリアの手首のひねりの癖は本編にありますが、女性同士ならではという身体的な触れ合いや、リコイルについての会話など、2人の距離を近づける会話を加えてみました。これもルナマリアを真ヒロインとするための演出の一つです。

本編ではわかりにくかったアスランの立ち位置が変化しつつある様子を、シンたちのキャラクターを浮き彫りにしながら描く事が目的だったので、まぁまぁ思ったように書けたのではないかと思っています。
になにな(筆者) 2011/06/25(Sat)19:19:36 編集
Natural or Cordinater?
サブタイトル

お知らせ
PHASE0 はじめに
PHASE1-1 怒れる瞳①
PHASE1-2 怒れる瞳②
PHASE1-3 怒れる瞳③
PHASE2 戦いを呼ぶもの
PHASE3 予兆の砲火
PHASE4 星屑の戦場
PHASE5 癒えぬ傷痕
PHASE6 世界の終わる時
PHASE7 混迷の大地
PHASE8 ジャンクション
PHASE9 驕れる牙
PHASE10 父の呪縛
PHASE11 選びし道
PHASE12 血に染まる海
PHASE13 よみがえる翼
PHASE14 明日への出航
PHASE15 戦場への帰還
PHASE16 インド洋の死闘
PHASE17 戦士の条件
PHASE18 ローエングリンを討て!
PHASE19 見えない真実
PHASE20 PAST
PHASE21 さまよう眸
PHASE22 蒼天の剣
PHASE23 戦火の蔭
PHASE24 すれちがう視線
PHASE25 罪の在処
PHASE26 約束
PHASE27 届かぬ想い
PHASE28 残る命散る命
PHASE29 FATES
PHASE30 刹那の夢
PHASE31 明けない夜
PHASE32 ステラ
PHASE33 示される世界
PHASE34 悪夢
PHASE35 混沌の先に
PHASE36-1 アスラン脱走①
PHASE36-2 アスラン脱走②
PHASE37-1 雷鳴の闇①
PHASE37-2 雷鳴の闇②
PHASE38 新しき旗
PHASE39-1 天空のキラ①
PHASE39-2 天空のキラ②
PHASE40 リフレイン
(原題:黄金の意志)
PHASE41-1 黄金の意志①
(原題:リフレイン)
PHASE41-2 黄金の意志②
(原題:リフレイン)
PHASE42-1 自由と正義と①
PHASE42-2 自由と正義と②
PHASE43-1 反撃の声①
PHASE43-2 反撃の声②
PHASE44-1 二人のラクス①
PHASE44-2 二人のラクス②
PHASE45-1 変革の序曲①
PHASE45-2 変革の序曲②
PHASE46-1 真実の歌①
PHASE46-2 真実の歌②
PHASE47 ミーア
PHASE48-1 新世界へ①
PHASE48-2 新世界へ②
PHASE49-1 レイ①
PHASE49-2 レイ②
PHASE50-1 最後の力①
PHASE50-2 最後の力②
PHASE50-3 最後の力③
PHASE50-4 最後の力④
PHASE50-5 最後の力⑤
PHASE50-6 最後の力⑥
PHASE50-7 最後の力⑦
PHASE50-8 最後の力⑧
FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開

制作裏話-はじめに-
制作裏話-PHASE1①-
制作裏話-PHASE1②-
制作裏話-PHASE1③-
制作裏話-PHASE2-
制作裏話-PHASE3-
制作裏話-PHASE4-
制作裏話-PHASE5-
制作裏話-PHASE6-
制作裏話-PHASE7-
制作裏話-PHASE8-
制作裏話-PHASE9-
制作裏話-PHASE10-
制作裏話-PHASE11-
制作裏話-PHASE12-
制作裏話-PHASE13-
制作裏話-PHASE14-
制作裏話-PHASE15-
制作裏話-PHASE16-
制作裏話-PHASE17-
制作裏話-PHASE18-
制作裏話-PHASE19-
制作裏話-PHASE20-
制作裏話-PHASE21-
制作裏話-PHASE22-
制作裏話-PHASE23-
制作裏話-PHASE24-
制作裏話-PHASE25-
制作裏話-PHASE26-
制作裏話-PHASE27-
制作裏話-PHASE28-
制作裏話-PHASE29-
制作裏話-PHASE30-
制作裏話-PHASE31-
制作裏話-PHASE32-
制作裏話-PHASE33-
制作裏話-PHASE34-
制作裏話-PHASE35-
制作裏話-PHASE36①-
制作裏話-PHASE36②-
制作裏話-PHASE37①-
制作裏話-PHASE37②-
制作裏話-PHASE38-
制作裏話-PHASE39①-
制作裏話-PHASE39②-
制作裏話-PHASE40-
制作裏話-PHASE41①-
制作裏話-PHASE41②-
制作裏話-PHASE42①-
制作裏話-PHASE42②-
制作裏話-PHASE43①-
制作裏話-PHASE43②-
制作裏話-PHASE44①-
制作裏話-PHASE44②-
制作裏話-PHASE45①-
制作裏話-PHASE45②-
制作裏話-PHASE46①-
制作裏話-PHASE46②-
制作裏話-PHASE47-
制作裏話-PHASE48①-
制作裏話-PHASE48②-
制作裏話-PHASE49①-
制作裏話-PHASE49②-
制作裏話-PHASE50①-
制作裏話-PHASE50②-
制作裏話-PHASE50③-
制作裏話-PHASE50④-
制作裏話-PHASE50⑤-
制作裏話-PHASE50⑥-
制作裏話-PHASE50⑦-
制作裏話-PHASE50⑧-
2011/5/22~2012/9/12
ブログ内検索



Copyright (C) 逆転DESTINY All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog | Template by 紫翠

忍者ブログ | [PR]