機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
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「射出角度微調整、コンマ3」
「オーサー、ドマニシ、カタンダ各隊、射出準備完了」
「半径600に敵影なし。カウントダウン続行」
「マイナス5、4、3、2…降下開始!」
―― ザフトのために!
新兵たちはベテラン兵の鼓舞に合わせて叫びながら地球に降下していく。
プラントを守るという英雄的思想が、彼らを再び勇猛果敢な戦士へと変えた。
「オペレーション・スピア・オブ・トワイライト」が始まったのだ。
「オーサー、ドマニシ、カタンダ各隊、射出準備完了」
「半径600に敵影なし。カウントダウン続行」
「マイナス5、4、3、2…降下開始!」
―― ザフトのために!
新兵たちはベテラン兵の鼓舞に合わせて叫びながら地球に降下していく。
プラントを守るという英雄的思想が、彼らを再び勇猛果敢な戦士へと変えた。
「オペレーション・スピア・オブ・トワイライト」が始まったのだ。
「間もなく、オーブ領海を抜けます」
操縦士のマリクがモニターの海域図を見ながら艦長に報告した。
連合軍がカーペンタリア基地を包囲しているため、後ろをつく事にはなるが、できれば降下作戦が成功し、基地の解放が終わっていることが望ましい。
タリアは再びメイリンにカーペンタリアを呼び出すよう言った。
「呼び出しはずっと続けているんですが…」
「そう」
はかばかしくない結果を伝える彼に、タリアはため息で答えた。
「どちらにせよ、嬉し恐ろし一人旅、というわけね」
「本艦前方20に、多数の熱紋反応!」
しかし次の瞬間、バートが上ずった声をあげた。
「これは…地球軍艦隊です。スペングラー級4、ダニロフ級8…他にも10隻ほどの中小艦艇を確認。本艦前方…左右に展開しています!」
「ええ!?」
艦長と副長が思わず声をあげる。
「かなりの高速艦ということよ。領海を出るのもすぐでしょう」
ユウナは軍本部に入り、司令室のモニターを見つめていた。
「あちらへの連絡は?」
「は、既に」
それを聞いて彼女は満足そうに頷いた。
追い詰めたカガリがあまりに必死に逃げるので、呆れて置いてきた。
「バカな事を言うな!俺はおまえと結婚なんか絶対にしないぞ!」
本気で嫌がる表情を思い出し、ユウナも再びムカムカと怒りがこみ上げる。
(あんなガキと結婚しなきゃいけない私の方が、よっぽど可哀想よ!)
そう考えたものの、すぐに「でも…」と思い直した彼女の表情が緩む。
―― あの子が持っている宝はとても魅力的。オーブという名の、この世に二つとない至高の宝珠はね。
「こちらの配備は終わっているわね?」
ユウナはミネルバの全データを、オーブ海軍にも流してあるか確認した。
修理補給によるデータはもちろん、別の筋から受け取ったものも…
「配信、完了しております」
「そう。ご苦労さま」
ユウナは密かにほくそえんだ。
(オーブからの贈り物を、気に入ってもらえるといいのだけれど)
かなりの数の敵艦に囲まれていると知ったミネルバでは、緊張が走った。
「どういうことですか!?オーブの領海を出た途端に」
「本艦を待ち受けていたということか?」
「地球軍は皆カーペンタリアじゃなかったのかよ」
マリクは左右に展開されて逃げようがない航路を見て焦り、CIC担当のチェンもまた、これだけの敵艦をたった1艦でどう突破するのかと、砲撃の糸口を探ろうとしていた。
しかもさらに最悪の情報がもたらされる。
「後方、オーブ領海線にオーブ艦隊」
バートの声に、メイリンもつい見えるはずのない後ろを振り向いてしまう。
オーブ艦隊は続々と展開し、砲塔も旋回させてこちらに向けている。
「領海内に戻ることは許さないと…つまりはそういうことよ」
タリアが言うと、メイリンとアーサーも不安そうに顔を見合わせた。
「どうやら土産か何かにされたようね。正式な条約締結はまだでしょうに…」
タリアはシートにもたれると親指をぎりぎりと噛み締めた。
「やってくれるわね、オーブも!」
ちらりと、わざわざ足を運んで頭を下げていった代表の姿がよぎった。
(彼が私たちを騙したとは思いたくないけれど)
「これが政治ってものなのかしらね」
タリアはぼそりと呟いた。
ふと見れば、アーサーはじめ、皆不安そうに自分を見ている。
「ああ、もう!ああだこうだ言ってもしょうがない!」
タリアは両手を勢いよく下ろし、気風よく言った。
「コンディションレッド発令。ブリッジ遮蔽。対艦、対モビルスーツ戦闘用意」
途端にブリッジの時間が動き出す。
タリアがきびきびと指示を下し、動揺していた兵たちは任務に集中し始める。
泣き言を言っている暇はない。ここを突破して、同胞の元へ生きて帰ろうと、皆考えていた。
「大気圏内戦闘よ、アーサー。わかってるわね」
「は、はい!」
その言葉にアーサーはびしっと背筋を伸ばす。
いつもはなんとも頼りないが、アーサーの戦闘センスは抜群だ。
タリアは信頼をおいているのだが、アーサーはそれには気づかない。
そんな細かい事を気にせず、後言しないのもアーサーのいいところだ。
「レッドって、何で!?」
バタバタと走りながらルナマリアがシンに聞いた。
ついさっきブリーフィングが終わって解散と言われたばかりなのに、部屋に戻る道すがら、艦内にはコンディションレッドが言い渡されたのだ。
「まだオーブを出たばっかりじゃない」
「さぁな。オーブは信用できないからな!」
シンは困惑したようなカガリ・ユラ・アスハの顔を思い出した。
(まただ…またあいつらは…オーブは俺を裏切った…!)
裏切られたと思う事自体、相手を信じていた事の裏返しなのだと、今のシンは気づいていなかった。
「艦長タリア・グラディスより、ミネルバ全クルーへ」
シンが慌ててパイロットスーツに着替えてハンガーに向かうと、エイブスの怒号をBGMにヨウランやヴィーノたちが走り回っていた。
レイは既にザクファントムに乗り込んでいたが、シンに気づくと素早く「遅い」と合図し、シンは「あいつ」とルナマリアに罪をなすりつけた。
少し遅れてやって来たルナマリアはそんな事を疑いもせず、シンとレイに「頑張ろうね!」と合図を送った。彼らが笑うのを不思議そうに見ながら。
艦内には引き続き、艦長の声が響き渡っている。
「現在、本艦の前面には空母4隻を含む地球軍艦隊が、そして後方には自国の領海警護と思われるオーブ軍艦隊が展開中である」
「空母4隻!?」
ルナマリアがうそでしょと小さく叫ぶ。
連合に網を張られ、オーブには後方の門を閉じられた。
「ミネルバクルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない、各員の奮闘を期待する」
「えぇ?そんな…」
「死して美しく散れ」とでも言いたげな艦長の言葉に、ヴィーノが情けない声をあげたが、シンはヘルメットをかぶりながら言った。
「大丈夫だ。俺がミネルバを無事に突破させる。安心しろ」
シンは不安げな友に親指を立てて笑ってみせ、キャノピーを下げる。
(オーブは俺を拒絶した。なら、俺もオーブを拒絶する)
シンの赤い瞳が鮮やかに燃え上がった。
「ランチャー2、ランチャー7、全門パルシファル装填。CIWS、トリスタン、イゾルデ起動!」
艦内部では砲術班が大わらわで準備を進め、アーサーが選択した砲術がチェンの手で忙しなくインプットされていく。
「シンには発進後、あまり艦から離れるなと言って。レイとルナマリアは甲板から上空のモビルスーツを狙撃」
大気圏内では飛行ができないザクは、砲座にせざるを得ない。
実質、戦力として頼れるのはシンのインパルスのみだった。
「イゾルデとトリスタンは左舷の巡洋艦に火力を集中。左を突破する!」
シンを見送ったレイとルナマリアは、そのまま徒歩でデッキを出た。
ミネルバが下がりさえしなければ、後方のオーブの攻撃はないはずだ。
レイは突破する左舷を、ルナマリアは右舷を担当することにした。
「海に落ちるなよ、ルナマリア。落ちても拾ってはやれない」
「意地悪ね!」
マウントしたオルトロスを伸ばしながらルナマリアは口を尖らせた。
「イゾルデ、ランチャーワン1番から4番。パルシファル、撃ぇ!」
大気圏内用ミサイル、パルシファルが放たれて戦いが始まった。
「3時方向よりモビルスーツ接近。数3」
バートが敵影を見つけ、メイリンがデータをモビルスーツ隊に送る。
「回避!取り舵10!」
迎撃ポジションについた途端、艦が大きく左に旋回したのでザクの足元が揺らいだ。
「やだ、ホントに落ちるってば!」
ルナマリアは慌ててスタビライザーのデータを修正した。
斥候なのか、3機のウィンダムがミネルバに近づいてくる。
長距離に強いオルトロスが放たれる中を、インパルスが駆け抜けた。
(俺たちの艦に近寄るな!)
シンはサーベルを抜くと、制動をかける間もない2機のウィンダムのコックピットを切り裂いた。抜けたものをレイが突撃銃で狙い撃つ。
しかしすさまじい量の艦砲はシンたちには防ぎきれない。
8隻ものダニロフ級が一斉に放つミサイルやガトリング砲が矢のごとく襲い掛かり、速射砲がインパルスを狙った。ミサイルが艦体近くに着弾し、水しぶきを上げて艦が大きく揺れると、レイたちもバランスを保つのに必死だ。
「くっ…こんなことで…やられてたまるか!」
上空からダメージを見て、シンは艦の近くにいるようにという命令を無視し、急速にスピードを上げて地球軍艦隊の前に出た。
オーブのメディアはこの戦闘を一切報道していなかった。
報道統制が行われているためなのだが、如何せん領海に近すぎるため、視力のいい者には肉眼で捉える事ができたし、爆裂音も響き始めている。
岬や展望台にいる人々がそれに気づくと、少しずつ騒ぎが広まってきた。
「ユウナ・ロマはどこにいる?」
ユウナの手から逃げ出したカガリは、オーブ領海の動きを見て宰相のウナトに連絡をつけたのだが、彼は連邦への使者として既に行政府を後にしていた。
「…軍本部?なんでそんなところに…ああ、いい。わかった、ありがとう」
カガリは急いで司令本部に車を回させた。
「4時の方向よりミサイル接近!多数!」
「回避!面舵20、迎撃!」
CIWSが迎え撃ち、イゾルデが敵艦を狙う。
ルナマリアがミサイルを叩き落し、シンもまた頭部のCIWSとライフルでミサイルを迎撃する。これだけの艦砲を防ぐならブラストシルエットに換装する事も考えたが、4隻もの空母に搭載されている、恐ろしい数のモビルスーツが出てくる事を思えば、それも早計と思えた。
どちらにせよ、手駒がない中では今やれる事をやるしかない。
「なるほど。確かになかなかやる艦だな」
地球軍司令官は、ロアノーク大佐の報告の真偽は十分確かめられたと納得して頷いた。しかしこれだけの砲撃に見舞われながら、ミネルバからはまだ2機のザクと白い新型以外、連中お得意のモビルスーツが出てこない。
「どうやらあの艦には、たった3機しかいないらしい」
司令官は空母のハッチから続々とウィンダムを発射させた。
その数たるや、シンが危惧したように尋常ではない。
メイリンはレーダーを覆い尽くす機影に息を呑み、オルトロスを構えて果敢にも迎撃態勢に入った赤いザクウォーリアを見た。
「あの数…冗談じゃないわよ!」
ルナマリアが空を覆い尽くすウィンダム部隊を見て悲鳴に近い声を挙げた。
「余計な口をきいてる暇があるのか!」
レイはルナマリアを叱責し、ミサイルポッドを開いた。
地球軍の量産モビルスーツに、腕で劣るつもりなどさらさらない。
(それにしてもあれだけの数だ…)
レイは隣でウィンダムを蹴散らしているルナマリアをちらりと見た。
しかしそこに、フォースインパルスが守護神のごとく立ちはだかった。
「ルナ!とにかく落とせるだけ落とせ!できるな?」
シンの言葉に、ルナマリアは「当たり前でしょ!」と息巻いた。
「レイ、俺が斬り込む!こぼれた連中と援護を頼む!」
「了解した」
インパルスはライフルを撃ちながら大胆にも正面から向かっていく。
驚いたウィンダムに、ザクの誘導ミサイルとビーム砲が襲い掛かった。
仲間の援護を信じて防御を捨てたシンは、持ち替えたサーベルを一閃してウィンダムを切り裂いた。この鉄砲玉にたちまち戦場は混乱に包まれる。
機動性のある敵はたった1機と侮り、密集陣形を取っていた部隊は、愚かにも深く潜り込まれ、同士討ちを避けるためライフルが撃てない。
ウィンダムが陣形を崩すと、今度はルナマリアの射撃が彼らを蹴散らした。
「こんのぉ!近づくんじゃないわよ!」
艦に近づけさせないのはレイの役目だった。
接近した敵にはファイアビーを食らわせ、さらにそれをかいくぐった者を突撃銃で捉える。3人の防御と攻撃バランスが見事にはまり始めると、あれだけの数を誇ったウィンダムも徐々に数を削られていった。
とりわけ敵軍に飛び込んでバッサバッサと相手を切り裂くインパルスは、敵から見れば悪鬼羅刹そのものだった。頭から真っ二つになって墜落・爆散する仲間の機体を見て、戦意を失う者までいる。
司令官はそれを見て指揮官を振り返った。
「ザムザザーはどうした?」
「はっ。準備でき次第、発進させます」
オペレーターが忙しく指示を送り、モニターにはまるで甲虫のような姿の「それ」が現れた。YMAF-X6BDザムザザー。巨大なモビルアーマーだ。
「身贔屓かもしれんがね。私はこれからの主力は、ああいった新型のモビルアーマーだと思っている。ザフトの真似をして作った蚊トンボのようなモビルスーツよりもな」
長く宇宙戦の主力だったメビウスが、ジンの登場で歴史的かつ壊滅的な敗北を喫した時、机を叩いて悔しがった元モビルアーマー乗りは呟いた。
時代がどちらを選ぶのかは、再び開かれた砲火が教えてくれるだろう。
ザムザザーは昆虫の複眼にも見えるカメラを光らせ、発進した。
「アンノウン接近。これは…?」
バートがライブラリに照会したが、データがない。
「光学映像、出ます」
それを見て艦長はじめブリッジクルーが驚いて声をあげた。
「なんだあれは!? モビルアーマー?」
それにしては大き過ぎた。
小さな駆逐艦ほどもあるそれは、ホバーエンジンで浮き上がっている。
「あんなのに取りつかれたら終わりだわ。アーサー、タンホイザー起動。あれと共に、左前方の艦隊を薙ぎ払う!」
「ええ!?」
アーサーが律儀にいちいち驚いてみせるので、タリアはピシリと叱咤した。
「沈みたいの!?」
「あ、はいっ!いや…いいえっ!」
もはや自分でも何を言っているのかわからないが、指示は的確だった。
「タンホイザー起動!射線軸コントロール移行!照準、敵モビルアーマー!」
完璧に整備の済んだ、ミネルバ自慢の陽電子破砕砲が艦中央から競りあがった。
「敵艦、陽電子砲発射態勢確認」
ザムザザーの3人の搭乗員が忙しなく準備を始めた。
敵艦の陽電子砲の威力についてはオーブからも極秘裏に受け取っている。
推測できる威力を計算し、データをインプットして準備が整った。
「陽電子リフレクター、展開準備」
パイロットが逆噴射を行って機体後部を持ち上げる。
「敵艦に向け、リフレクション姿勢」
まるで逆立ちでもするような極端な前傾姿勢になったザムザザーは、大胆にもタンホイザーの射線に陣取り、リフレクターを展開した。
「撃ぇ!」
強力な砲がザムザザーを襲い、コックピットが激しい衝撃に包まれた。
もしもリフレクターが破られれば、彼らは一瞬で蒸発し、消滅する。
この任務は、ザムザザーの防御力を信じ、鉄の意志を持つ者でなければ到底受けられない危険を孕んでいたが、選ばれた3人は声もあげずに耐えた。
逆算時計が減っていく。
やがて、その数字が「0」を指すと、陽電子砲の威力が完全に消えた。
ミネルバの眼前には、全く無傷のザムザザーがあった。
これにはさしものレイでさえ驚きの表情を隠せなかった。
「まさか…このモビルアーマーは…」
「タンホイザーを、そんな…跳ね返した?」
シンがレイに続いて驚きを表した。
ルナマリアなど、声も出せずに呆然と見ているだけだ。
しかし再びウィンダムの攻撃が始まり、それどころではなくなった。
「取り舵20、機関最大!トリスタン照準、左舷敵戦艦」
驚きが消えないブリッジでは、冷静さを取り戻したタリアの声が響いた。
「でも艦長!どうするんです?あれ!?」
アーサーも動揺を隠せない。
タンホイザーは地球軍の陽電子砲より強化されているはずなのだ。
「あれで破壊できないって…あんなの、聞いてませんよ!」
「あなたも考えなさい!」
(言うとおりにしろとか自分で考えろとか、副長も大変だよな)
「マリク!回避任せる!」
「は、はいっ!」
密かにアーサーに同情していたマリクは、突然の命令に慌てて返事をした。
タリアは苛立ち、親指を噛みながら考えた。
あんなものに取りつかれたらひとたまりもないだろう。
「メイリン、シンは?戻れる?」
陽電子砲を跳ね返した事で自らの兵装に絶対の自信を持ったザムザザーは、今度は攻撃に転じた。4つの主砲のうち1番と2番を開き、ミネルバに照準を合わせた。主砲ガムザートフは、かつてGシリーズのイージスや後発機カラミティに搭載された位相砲スキュラと同様の強力な砲である。
そこに多くのウィンダムを海に沈めたインパルスが襲い掛かってきた。
「くそっ…何なんだよ、こいつは!」
しかしその装甲はビームライフルを寄せつけない。
飛び回るインパルスを狙い、ザムザザーはよりフレキシブルな弾道を取れる単装砲にシフトすると、前部から上部に砲口を向けてインパルスを追った。
シンはさらに上昇したが、実弾を防ぐたび、VPSがエネルギーを削った。
長引く戦闘により、インパルスのエネルギーゲージはかなり減っていた。
「クロー展開!」
ザムザザーはガムザートフを格納し、左右1対の巨大なヒートクロー、ヴァシリエフを展開させた。
「うわ!」
「そのひ弱なボディー、引き裂いてくれるわ!」
機体をかすめる重機並みのパワーに、シンは一旦退かざるを得ない。
(あんなのに掴まれたらヤバいぞ)
シンは距離を保つため空中を旋回した。
「でも凄いですね、あの兵器」
「陽電子砲を跳ね返しちゃうとはなぁ」
この激しい戦闘を前にしても、対岸の火事でしかないオーブの司令本部は穏やかだった。兵たちはどこかのんびりモニターを覗き、談笑している。
カガリは扉から中を覗き、ユウナが司令官と話している姿を認めた。
そのまま勢いよく扉を開けると、人々は驚いて立ち上がり、彼に敬礼した。
「何をしている!?」
「…カガリ」
ユウナは慌てて微笑んだが、カガリは語気を荒げた。
「これは一体どういうことだ!?」
肉眼では見えにくかった戦闘がくっきりと映し出されたモニターを見て、カガリは眉を顰めた。ミネルバの艦体は既に大分痛めつけられている。
「ミネルバが戦っているのか?地球軍と…」
「そうよ。オーブの領海の外でね」
「あんな大群相手に」
エンジンをやられたのか、少し煙を吐くミネルバの周りを飛び交うのはウィンダム。そして地球軍艦隊との前には見慣れないモビルアーマー。
「心配いらないわ、カガリ。既に領海線に護衛艦は出してあるもの」
ユウナは自らモニターのスイッチを切り替え、オーブ艦隊の姿を示した。
「領海の外といっても、だいぶ近いから。困ったものだわ」
それを聞いたカガリは思わずユウナに詰め寄った。
「…領海に入れさせない気か!?」
「あら、それがオーブのルールでしょう?」
ユウナの「当然」といわんばかりの言葉に、カガリは二の句が継げなかった。
「オーブは他国を侵略しない。他国の侵略を許さない。他国の争いに介入しない…そして、許可なく領海に近づく武装艦に対しては警告の上、これを排除する」
ユウナは冷静な声で、しかし鼻につく態度でオーブの理念を示した。
「…ですわよね?」
「それは…確かにそうだが…」
「それに、正式に調印はまだとはいえ、我々は既に大西洋連邦との同盟条約締結を決めたのよ」
カガリは「バカな」と聞こえないほどの声で呟いた。
ミネルバはもともと「許可なく」入港した艦などではない。
けれど一度領海を出て戦闘行為を行っているミネルバを、再入国させるなど無理だという事はカガリにもわかっている。
(だけど、まだ同盟も結ばれていないのに、オーブ領海外で連邦が彼らを待ち伏せしていた事自体、仕組まれている事だろうが!)
「今ここで我々がどんな姿勢を取るべきか、そのくらいのこと、あなたにだってわかりますね?」
「だがあれは、ユニウスセブンの破砕に努めた恩義ある艦だぞ!」
「でも、ザフトの艦よ」
ユウナは感情的なカガリの訴えなどにべもなく流した。
「間もなく盟友となる大西洋連邦が敵対している、ね」
カガリは孤軍奮闘しているインパルスを見つめた。
オーブの卑劣な罠だと、シンは怒りに身を焦がしたことだろう。
(おまえには、もうどうしたって許してもらえないんだろうな)
「トリスタン、撃ぇ!」
ザムザザーにインパルスが手を取られた途端、息を吹き返した地球軍艦隊が徐々にラインを上げ、ミネルバは逆に下がり気味になった。
「なんて火力とパワーだよ…こいつは…」
シンは単装砲を避けながら横に回り、そこを側面の砲に狙い撃たれてバランスを崩した。なるべくシールドで避けるようにはしているのだが、ポディに実弾を食らうたび、ますますエネルギーゲージが減っていく。
「インパルスのパワー、危険域です」
メイリンがシンと艦長の双方に伝える。
しかし敵の攻撃はまだやまない。
「7時の方向にモビルスーツ、4!」
大きなダメージはないが、ルナマリアとレイにも疲労が蓄積しつつあった。
「キリがないわ!レイ!」
「くそっ…」
レイは後ろを振り返った。オーブの領海が近づいていた。
「ミネルバ、領海線へ更に接近。このままいけば数分で侵犯します」
さっきまでのんびりしていた司令本部にアラートが響き始めた。
「警告後、威嚇射撃を。領海に入れてはいけません」
きびきびと動き始めたオペレーターにユウナが指示する。
「それでも止まらないようなら、攻撃も許可すると伝えて」
「ちょっと待て!」
その言葉にカガリがユウナの腕を掴んで止めた。
しかしユウナは彼の腕を振りほどくと叫んだ。
「国はあなたのオモチャではないのよ!」
カガリは一瞬驚いて言葉を失った。
そして「…なんだと?」と拳を握り締める。
「あの艦は敵性国家のもので、しかも戦闘中なの!いい加減、感情でものを言うのはやめなさい!」
ユウナの一声は、カガリのみならず司令部にも沈黙をもたらした。
ただ1人オペレーターだけが、警告を行うよう護衛艦群に伝えていた。
一方護衛旗艦では、通信士が司令本部からの打電内容を伝えにきた。
「以前国を焼いた軍に味方し、懸命に地球を救おうとしてくれた艦を討て、か」
現在は第ニ護衛艦群を率いるトダカ一佐が頬を掻きながら言った。
「こういうの、恩知らずって言うんじゃないかと思うんだがね、俺は」
そう言ってから「でもまぁ、恩だの義理だのなんて言葉は、もともと政治の世界にはない言葉なのかもしれんな」と副官にぼやいてみせる。
「はぁ」
「まぁいい。砲をミネルバの艦首前方に向けろ。絶対に当てるなよ」
「一佐、それでは命令に…」
副官が慌てて止めたが、トダカはふんと鼻を鳴らした。
「知るか!俺は政治家じゃないんだ」
トダカはあれだけの数を相手に一歩も退かず戦うインパルスを見て言った。
まさかそれが、あの日彼が救った小さな命だなどとは思いもせずに。
「ザフト軍艦ミネルバに告ぐ。貴艦はオーブ首長国連邦の領域に接近中である。我が国は貴艦の領域への侵入を認めない。速やかに転進されたし」
オープンチャンネルによる警告はブリッジを震撼させた。
「今転進したら確実に沈むわ。針路そのまま。ギリギリまで逃げなさい」
タリアは命じたが、既にミネルバはギリギリまで下がってきている。
警告に従わないミネルバに対し、やがて砲撃が開始される。
砲首はミネルバを狙ってはいないのだが、撃たれる彼らにとっては、至近距離に着弾する砲もダメージを受けた時と変わらない衝撃がある。
「オーブが…本気で…!」
シンは攻撃を始めたオーブ艦隊を見て怒りを覚え、歯を食いしばった。
その途端、近づいてきたザムザザーがインパルスの右足を捉えた。
「しまった!」
赤く熱を帯びたヒートクローに掴まれ、インパルスが振り回される。
「うわぁぁっ!」
コックピットの中で激しく揺さぶられ、シンは気が遠くなりそうだった。
その途端、インパルスがPSダウンして急速にディアクティブモードになる。
―― ダメだ…こんなところで意識をトバすな…
シンの脳裏にかつての日々が蘇った。
あどけない笑顔を見せている妹が、父が、母が続けて現れた。
そして戦友たち。レイ、ルナ、メイリン、ヴィーノ、ヨウラン…大切な仲間たちが、必死に戦っている。シンは瞳を見開いた。
「こんなことで…こんなことで、俺はっ!」
体が急激に熱くなり、電流のような痺れが脳天を突き抜けた。
頭の中で何かが弾けたような感覚があり、視界が急激に晴れた。
曇っていたフィルターが取り除かれ、クリアな世界が広がっていく。
拾うべき音だけが耳に入ってくる。今自分が何をすべきかを悟り、信じられないスピードで脳が回転を始めた。
「まだ落ちないか!」
脚部を切断されて海に墜落したと思ったのに、インパルスはすんでのところでスラスターを噴射し、再び飛び去った。
「ミネルバ!メイリン!デュートリオンビームを!」
「シン!?」
「それからレッグフライヤー、ソードシルエットを射出準備!」
「で、でも…」
「いいわ。シンの言う通りにして」
メイリンは一瞬戸惑ったが、タリアに促され、慌てて準備を始める。
シンの声は非常に強かったが、冷静さを欠いているものではなかった。
「デュートリオン・チェンバー、スタンバイ。捉的追尾システム、インパルスを捕捉しました」
シンは手早くOSプログラムを立ち上げ、受電システムを起動した。
Generation Unrestricted Network Drive Assault Module…モニターには起動時にお馴染みの文字が並び、ミネルバの送電装置に向かう。
「レイ!ルナ!頼んだぞ!」
片足のないインパルスが近づいてくると、ルナマリアが広域を警戒し、そしてレイがインパルスを護衛する。送電中は無防備になるからだ。
「デュートリオンビーム、照射!」
インパルスの額の受信機に真っ直ぐビームが照射され、パワーゲージが見る見るうちに復活していった。
チャージを終えたシンは、損傷したレッグフライヤーを空中換装した。
ザムザザーではパイロットたちがこの様子に驚いたが、再び向かってきたインパルスを見て迎撃態勢を整えた。単装砲とイーゲルシュテルンが追うが、インパルスは驚くほどのスピードでかわすとそのまま腹部に回り込んだ。
下方からライフルが撃ち込まれる。ザムザザーは腹部が弱点だった。
「海面に押し潰せ!」
パイロットはホバーを落としてインパルスをプレスしようとしたが、シンは一瞬早く機体下から抜け出した。そして攻撃が止んだ相手の上部に周ると、ライフルを連射して単装砲の砲口を潰していく。
「くそっ、上だ!もう一度クローで捕まえろ!」
しかし機体に取り付いたインパルスに、クローが届く事はなかった。
シンはサーベルを抜き、コックピットに狙いを定める。
(機体は硬くたって、乗っている人間は柔らかいんだ)
まるで知っているかのように、シンには機体の脆い部分がわかった。
ビームサーベルは天井を突き抜け、機長を貫いて機関に届いた。
「シルエット射出!」
「はい!」
爆散するそれを足がかりに飛び退ると、シンは再びメイリンに命じた。
ブリッジにはもう、シンの言葉に異議を唱えたり戸惑う者などいなかった。
シンはフォースを捨ててソードシルエットに換装すると、エクスカリバーを2本繋げ、アンビデクストラスフォームと呼ばれるツインモードにする。
巨大な対艦刀を手にしたインパルスが向かったのは、地球軍艦隊だった。
「シン、何する気!?ムチャよ!」
そのムチャクチャな特攻にルナマリアが驚いて叫んだ。
しかしシンは左舷の駆逐艦に降り立つと、いきなり艦塔を薙ぎ払った。
駆逐艦を切り裂いたシンは、後ろに控えるイージス艦、空母と飛び移り、ブリッジはもちろんミサイルバンク、そして艦体そのものを切り裂いた。
あちこちで破壊による煙が上がり、人々が海に落ちていく。
頼りない救命ボートの中で怪我人が仰ぎ見れば、巨大な対艦刀を振り回すインパルスがところ狭しと暴れている。恐ろしげな姿は兵を震え上がらせた。
(化け物だ!)
頭部のCIWSで甲板を撃ち、マニピュレーターでバンクを殴って破壊すると、対艦刀で後部エンジンを突き刺し、甲板を斬り裂いて大爆発を誘った。
被害は広がるばかりで、艦隊はパニックに陥り、もはや攻撃どころではない。
「ウソでしょ…たった一人でここまで戦局を変えちゃうなんて…」
ルナマリアは脅えたように、レイは冷静な表情でインパルスを見つめていた。
(おまえたちが攻撃をしてくるなら、俺は守る。全てを守る)
シンは未だ攻撃を続ける艦のブリッジを睨んだ。
司令官がその禍々しい姿にすくみ、総員に退避を叫んでいる。
「守り抜いてやる!」
シンは再び対艦刀を振るい、人々が逃げ惑うブリッジを斬り裂いた。
「な…なんなの、あれは…」
そのあまりにも激しい戦いぶりには、ユウナも言葉がなかった。
カガリは今、眼の前の戦場で凄まじい力を振るっている彼を思った。
「これで彼らは、オーブの最強の敵になった」
カガリは淡々と呟いて振り返ると、通信士に「状況は?」と尋ねた。
「地球軍艦隊、撤退します」
「ミネルバが去ったことを確認後、ただちに救援を行え。人道的措置だ」
そう命じると、カガリは破壊の限りを尽くしてミネルバに合流したシンを…インパルスを眼で追った。煙に包まれ、満身創痍のミネルバは南へ向かっている。
恐るべき軍神を従え、戦女神は荒ぶる戦いの海へと漕ぎ出したのだ。
デュランダル議長との面会を終え、アスランは久々に赤服に袖を通した。
「わぁ…!」
ミーアがそれを見て歓声を上げた。
「ザフトの制服は男性が着るとすごく格好いいけど、きみもすごく似合うね!」
「これを」
眼を細めて彼女を見つめていた議長は、小さな小箱を渡した。
アスランが箱を開くと、FAITHの証であるバッジが入っていた。
「きみを通常の指揮系統の中に組み込みたくはないし、きみとて困るだろう?そのための便宜上の措置だよ」
FAITHはもともと、軍に忠誠を誓い、国と軍に全てを捧げるべき部隊だ。
かつて父から拝受したその力を思い出し、アスランは表情を曇らせたが、議長はそれを見越したように、ゆっくりと首を振った。
「きみは、己の信念や信義に忠誠を誓ってくれればいい。忘れないでくれ」
戸惑っているアスランの手から、ミーアがバッジを受け取った。
「きみの力は、私たちを正すべきものでもあると」
「そのまま動かないで…はい、いいよ」
アスランの首元に、ミーアの手で羽根のモチーフのバッジがつけられた。
「きみは自分の信ずるところに従い、今に堕することなく、また必要な時には戦っていくことのできる人間だろう?」
アスランは議長に「そうでありたいと思ってはいますが」と答えた。
(私は…それほどまでに崇高な人間じゃない)
迷い、悩み、それでも答えを見つけられずに、今はここにいる。
議長は「きみにならできるさ」とアスランの細い肩に手を置いた。
「だからその力を、どうか必要な時には使ってくれたまえ。大仰な言い方だが、ザフト、プラントの為だけではなく、皆が平和に暮らせる世界のためにね」
「はい」
アスランは顔を上げて返事をした。
今はそう信じて進むしかない。自分の選んだ道を信じて。
セイバーの発進準備を整えながら、アスランは降下手順と座標を確認した。
議長はオーブにいるミネルバに合流し、彼らを援けて欲しいと言う。
(カガリに…そしてキラになんと伝えよう?)
アスランはそっと胸元に手を置いた。
まるでそこにある2つの大切なものに勇気をもらうように。
(迷う必要はない。堂々と告げればいい)
「アスラン・ザラ、セイバー、発進します!」
自分は道を選んだのだと。ザフトに戻る道を選んだのだと。
「そうか、ご苦労だったね」
議長はセイバーが発進した報せを受け取り、受話器を置いた。
「…あれ?だけど議長…」
ミーアが用意された原稿を暗記しながら、ふと顔を上げた。
「オーブって、確か連合と条約を結ぶんでしょう?」
議長は眼を閉じ、聞こえないふりをした。
アークエンジェル、ラクス・クライン、アスラン・ザラ。
これで彼のシナリオに必要な、対になるものたちは全て揃った。
あとはシン・アスカがふさわしい役をこなし、絶対的な力となりうるかだ。
(キラ・ヤマトのようにね)
「議長?」
ミーアが見ると、議長はいかにも満足げに微笑んでいた。
操縦士のマリクがモニターの海域図を見ながら艦長に報告した。
連合軍がカーペンタリア基地を包囲しているため、後ろをつく事にはなるが、できれば降下作戦が成功し、基地の解放が終わっていることが望ましい。
タリアは再びメイリンにカーペンタリアを呼び出すよう言った。
「呼び出しはずっと続けているんですが…」
「そう」
はかばかしくない結果を伝える彼に、タリアはため息で答えた。
「どちらにせよ、嬉し恐ろし一人旅、というわけね」
「本艦前方20に、多数の熱紋反応!」
しかし次の瞬間、バートが上ずった声をあげた。
「これは…地球軍艦隊です。スペングラー級4、ダニロフ級8…他にも10隻ほどの中小艦艇を確認。本艦前方…左右に展開しています!」
「ええ!?」
艦長と副長が思わず声をあげる。
「かなりの高速艦ということよ。領海を出るのもすぐでしょう」
ユウナは軍本部に入り、司令室のモニターを見つめていた。
「あちらへの連絡は?」
「は、既に」
それを聞いて彼女は満足そうに頷いた。
追い詰めたカガリがあまりに必死に逃げるので、呆れて置いてきた。
「バカな事を言うな!俺はおまえと結婚なんか絶対にしないぞ!」
本気で嫌がる表情を思い出し、ユウナも再びムカムカと怒りがこみ上げる。
(あんなガキと結婚しなきゃいけない私の方が、よっぽど可哀想よ!)
そう考えたものの、すぐに「でも…」と思い直した彼女の表情が緩む。
―― あの子が持っている宝はとても魅力的。オーブという名の、この世に二つとない至高の宝珠はね。
「こちらの配備は終わっているわね?」
ユウナはミネルバの全データを、オーブ海軍にも流してあるか確認した。
修理補給によるデータはもちろん、別の筋から受け取ったものも…
「配信、完了しております」
「そう。ご苦労さま」
ユウナは密かにほくそえんだ。
(オーブからの贈り物を、気に入ってもらえるといいのだけれど)
かなりの数の敵艦に囲まれていると知ったミネルバでは、緊張が走った。
「どういうことですか!?オーブの領海を出た途端に」
「本艦を待ち受けていたということか?」
「地球軍は皆カーペンタリアじゃなかったのかよ」
マリクは左右に展開されて逃げようがない航路を見て焦り、CIC担当のチェンもまた、これだけの敵艦をたった1艦でどう突破するのかと、砲撃の糸口を探ろうとしていた。
しかもさらに最悪の情報がもたらされる。
「後方、オーブ領海線にオーブ艦隊」
バートの声に、メイリンもつい見えるはずのない後ろを振り向いてしまう。
オーブ艦隊は続々と展開し、砲塔も旋回させてこちらに向けている。
「領海内に戻ることは許さないと…つまりはそういうことよ」
タリアが言うと、メイリンとアーサーも不安そうに顔を見合わせた。
「どうやら土産か何かにされたようね。正式な条約締結はまだでしょうに…」
タリアはシートにもたれると親指をぎりぎりと噛み締めた。
「やってくれるわね、オーブも!」
ちらりと、わざわざ足を運んで頭を下げていった代表の姿がよぎった。
(彼が私たちを騙したとは思いたくないけれど)
「これが政治ってものなのかしらね」
タリアはぼそりと呟いた。
ふと見れば、アーサーはじめ、皆不安そうに自分を見ている。
「ああ、もう!ああだこうだ言ってもしょうがない!」
タリアは両手を勢いよく下ろし、気風よく言った。
「コンディションレッド発令。ブリッジ遮蔽。対艦、対モビルスーツ戦闘用意」
途端にブリッジの時間が動き出す。
タリアがきびきびと指示を下し、動揺していた兵たちは任務に集中し始める。
泣き言を言っている暇はない。ここを突破して、同胞の元へ生きて帰ろうと、皆考えていた。
「大気圏内戦闘よ、アーサー。わかってるわね」
「は、はい!」
その言葉にアーサーはびしっと背筋を伸ばす。
いつもはなんとも頼りないが、アーサーの戦闘センスは抜群だ。
タリアは信頼をおいているのだが、アーサーはそれには気づかない。
そんな細かい事を気にせず、後言しないのもアーサーのいいところだ。
「レッドって、何で!?」
バタバタと走りながらルナマリアがシンに聞いた。
ついさっきブリーフィングが終わって解散と言われたばかりなのに、部屋に戻る道すがら、艦内にはコンディションレッドが言い渡されたのだ。
「まだオーブを出たばっかりじゃない」
「さぁな。オーブは信用できないからな!」
シンは困惑したようなカガリ・ユラ・アスハの顔を思い出した。
(まただ…またあいつらは…オーブは俺を裏切った…!)
裏切られたと思う事自体、相手を信じていた事の裏返しなのだと、今のシンは気づいていなかった。
「艦長タリア・グラディスより、ミネルバ全クルーへ」
シンが慌ててパイロットスーツに着替えてハンガーに向かうと、エイブスの怒号をBGMにヨウランやヴィーノたちが走り回っていた。
レイは既にザクファントムに乗り込んでいたが、シンに気づくと素早く「遅い」と合図し、シンは「あいつ」とルナマリアに罪をなすりつけた。
少し遅れてやって来たルナマリアはそんな事を疑いもせず、シンとレイに「頑張ろうね!」と合図を送った。彼らが笑うのを不思議そうに見ながら。
艦内には引き続き、艦長の声が響き渡っている。
「現在、本艦の前面には空母4隻を含む地球軍艦隊が、そして後方には自国の領海警護と思われるオーブ軍艦隊が展開中である」
「空母4隻!?」
ルナマリアがうそでしょと小さく叫ぶ。
連合に網を張られ、オーブには後方の門を閉じられた。
「ミネルバクルーとしての誇りを持ち、最後まで諦めない、各員の奮闘を期待する」
「えぇ?そんな…」
「死して美しく散れ」とでも言いたげな艦長の言葉に、ヴィーノが情けない声をあげたが、シンはヘルメットをかぶりながら言った。
「大丈夫だ。俺がミネルバを無事に突破させる。安心しろ」
シンは不安げな友に親指を立てて笑ってみせ、キャノピーを下げる。
(オーブは俺を拒絶した。なら、俺もオーブを拒絶する)
シンの赤い瞳が鮮やかに燃え上がった。
「ランチャー2、ランチャー7、全門パルシファル装填。CIWS、トリスタン、イゾルデ起動!」
艦内部では砲術班が大わらわで準備を進め、アーサーが選択した砲術がチェンの手で忙しなくインプットされていく。
「シンには発進後、あまり艦から離れるなと言って。レイとルナマリアは甲板から上空のモビルスーツを狙撃」
大気圏内では飛行ができないザクは、砲座にせざるを得ない。
実質、戦力として頼れるのはシンのインパルスのみだった。
「イゾルデとトリスタンは左舷の巡洋艦に火力を集中。左を突破する!」
シンを見送ったレイとルナマリアは、そのまま徒歩でデッキを出た。
ミネルバが下がりさえしなければ、後方のオーブの攻撃はないはずだ。
レイは突破する左舷を、ルナマリアは右舷を担当することにした。
「海に落ちるなよ、ルナマリア。落ちても拾ってはやれない」
「意地悪ね!」
マウントしたオルトロスを伸ばしながらルナマリアは口を尖らせた。
「イゾルデ、ランチャーワン1番から4番。パルシファル、撃ぇ!」
大気圏内用ミサイル、パルシファルが放たれて戦いが始まった。
「3時方向よりモビルスーツ接近。数3」
バートが敵影を見つけ、メイリンがデータをモビルスーツ隊に送る。
「回避!取り舵10!」
迎撃ポジションについた途端、艦が大きく左に旋回したのでザクの足元が揺らいだ。
「やだ、ホントに落ちるってば!」
ルナマリアは慌ててスタビライザーのデータを修正した。
斥候なのか、3機のウィンダムがミネルバに近づいてくる。
長距離に強いオルトロスが放たれる中を、インパルスが駆け抜けた。
(俺たちの艦に近寄るな!)
シンはサーベルを抜くと、制動をかける間もない2機のウィンダムのコックピットを切り裂いた。抜けたものをレイが突撃銃で狙い撃つ。
しかしすさまじい量の艦砲はシンたちには防ぎきれない。
8隻ものダニロフ級が一斉に放つミサイルやガトリング砲が矢のごとく襲い掛かり、速射砲がインパルスを狙った。ミサイルが艦体近くに着弾し、水しぶきを上げて艦が大きく揺れると、レイたちもバランスを保つのに必死だ。
「くっ…こんなことで…やられてたまるか!」
上空からダメージを見て、シンは艦の近くにいるようにという命令を無視し、急速にスピードを上げて地球軍艦隊の前に出た。
オーブのメディアはこの戦闘を一切報道していなかった。
報道統制が行われているためなのだが、如何せん領海に近すぎるため、視力のいい者には肉眼で捉える事ができたし、爆裂音も響き始めている。
岬や展望台にいる人々がそれに気づくと、少しずつ騒ぎが広まってきた。
「ユウナ・ロマはどこにいる?」
ユウナの手から逃げ出したカガリは、オーブ領海の動きを見て宰相のウナトに連絡をつけたのだが、彼は連邦への使者として既に行政府を後にしていた。
「…軍本部?なんでそんなところに…ああ、いい。わかった、ありがとう」
カガリは急いで司令本部に車を回させた。
「4時の方向よりミサイル接近!多数!」
「回避!面舵20、迎撃!」
CIWSが迎え撃ち、イゾルデが敵艦を狙う。
ルナマリアがミサイルを叩き落し、シンもまた頭部のCIWSとライフルでミサイルを迎撃する。これだけの艦砲を防ぐならブラストシルエットに換装する事も考えたが、4隻もの空母に搭載されている、恐ろしい数のモビルスーツが出てくる事を思えば、それも早計と思えた。
どちらにせよ、手駒がない中では今やれる事をやるしかない。
「なるほど。確かになかなかやる艦だな」
地球軍司令官は、ロアノーク大佐の報告の真偽は十分確かめられたと納得して頷いた。しかしこれだけの砲撃に見舞われながら、ミネルバからはまだ2機のザクと白い新型以外、連中お得意のモビルスーツが出てこない。
「どうやらあの艦には、たった3機しかいないらしい」
司令官は空母のハッチから続々とウィンダムを発射させた。
その数たるや、シンが危惧したように尋常ではない。
メイリンはレーダーを覆い尽くす機影に息を呑み、オルトロスを構えて果敢にも迎撃態勢に入った赤いザクウォーリアを見た。
「あの数…冗談じゃないわよ!」
ルナマリアが空を覆い尽くすウィンダム部隊を見て悲鳴に近い声を挙げた。
「余計な口をきいてる暇があるのか!」
レイはルナマリアを叱責し、ミサイルポッドを開いた。
地球軍の量産モビルスーツに、腕で劣るつもりなどさらさらない。
(それにしてもあれだけの数だ…)
レイは隣でウィンダムを蹴散らしているルナマリアをちらりと見た。
しかしそこに、フォースインパルスが守護神のごとく立ちはだかった。
「ルナ!とにかく落とせるだけ落とせ!できるな?」
シンの言葉に、ルナマリアは「当たり前でしょ!」と息巻いた。
「レイ、俺が斬り込む!こぼれた連中と援護を頼む!」
「了解した」
インパルスはライフルを撃ちながら大胆にも正面から向かっていく。
驚いたウィンダムに、ザクの誘導ミサイルとビーム砲が襲い掛かった。
仲間の援護を信じて防御を捨てたシンは、持ち替えたサーベルを一閃してウィンダムを切り裂いた。この鉄砲玉にたちまち戦場は混乱に包まれる。
機動性のある敵はたった1機と侮り、密集陣形を取っていた部隊は、愚かにも深く潜り込まれ、同士討ちを避けるためライフルが撃てない。
ウィンダムが陣形を崩すと、今度はルナマリアの射撃が彼らを蹴散らした。
「こんのぉ!近づくんじゃないわよ!」
艦に近づけさせないのはレイの役目だった。
接近した敵にはファイアビーを食らわせ、さらにそれをかいくぐった者を突撃銃で捉える。3人の防御と攻撃バランスが見事にはまり始めると、あれだけの数を誇ったウィンダムも徐々に数を削られていった。
とりわけ敵軍に飛び込んでバッサバッサと相手を切り裂くインパルスは、敵から見れば悪鬼羅刹そのものだった。頭から真っ二つになって墜落・爆散する仲間の機体を見て、戦意を失う者までいる。
司令官はそれを見て指揮官を振り返った。
「ザムザザーはどうした?」
「はっ。準備でき次第、発進させます」
オペレーターが忙しく指示を送り、モニターにはまるで甲虫のような姿の「それ」が現れた。YMAF-X6BDザムザザー。巨大なモビルアーマーだ。
「身贔屓かもしれんがね。私はこれからの主力は、ああいった新型のモビルアーマーだと思っている。ザフトの真似をして作った蚊トンボのようなモビルスーツよりもな」
長く宇宙戦の主力だったメビウスが、ジンの登場で歴史的かつ壊滅的な敗北を喫した時、机を叩いて悔しがった元モビルアーマー乗りは呟いた。
時代がどちらを選ぶのかは、再び開かれた砲火が教えてくれるだろう。
ザムザザーは昆虫の複眼にも見えるカメラを光らせ、発進した。
「アンノウン接近。これは…?」
バートがライブラリに照会したが、データがない。
「光学映像、出ます」
それを見て艦長はじめブリッジクルーが驚いて声をあげた。
「なんだあれは!? モビルアーマー?」
それにしては大き過ぎた。
小さな駆逐艦ほどもあるそれは、ホバーエンジンで浮き上がっている。
「あんなのに取りつかれたら終わりだわ。アーサー、タンホイザー起動。あれと共に、左前方の艦隊を薙ぎ払う!」
「ええ!?」
アーサーが律儀にいちいち驚いてみせるので、タリアはピシリと叱咤した。
「沈みたいの!?」
「あ、はいっ!いや…いいえっ!」
もはや自分でも何を言っているのかわからないが、指示は的確だった。
「タンホイザー起動!射線軸コントロール移行!照準、敵モビルアーマー!」
完璧に整備の済んだ、ミネルバ自慢の陽電子破砕砲が艦中央から競りあがった。
「敵艦、陽電子砲発射態勢確認」
ザムザザーの3人の搭乗員が忙しなく準備を始めた。
敵艦の陽電子砲の威力についてはオーブからも極秘裏に受け取っている。
推測できる威力を計算し、データをインプットして準備が整った。
「陽電子リフレクター、展開準備」
パイロットが逆噴射を行って機体後部を持ち上げる。
「敵艦に向け、リフレクション姿勢」
まるで逆立ちでもするような極端な前傾姿勢になったザムザザーは、大胆にもタンホイザーの射線に陣取り、リフレクターを展開した。
「撃ぇ!」
強力な砲がザムザザーを襲い、コックピットが激しい衝撃に包まれた。
もしもリフレクターが破られれば、彼らは一瞬で蒸発し、消滅する。
この任務は、ザムザザーの防御力を信じ、鉄の意志を持つ者でなければ到底受けられない危険を孕んでいたが、選ばれた3人は声もあげずに耐えた。
逆算時計が減っていく。
やがて、その数字が「0」を指すと、陽電子砲の威力が完全に消えた。
ミネルバの眼前には、全く無傷のザムザザーがあった。
これにはさしものレイでさえ驚きの表情を隠せなかった。
「まさか…このモビルアーマーは…」
「タンホイザーを、そんな…跳ね返した?」
シンがレイに続いて驚きを表した。
ルナマリアなど、声も出せずに呆然と見ているだけだ。
しかし再びウィンダムの攻撃が始まり、それどころではなくなった。
「取り舵20、機関最大!トリスタン照準、左舷敵戦艦」
驚きが消えないブリッジでは、冷静さを取り戻したタリアの声が響いた。
「でも艦長!どうするんです?あれ!?」
アーサーも動揺を隠せない。
タンホイザーは地球軍の陽電子砲より強化されているはずなのだ。
「あれで破壊できないって…あんなの、聞いてませんよ!」
「あなたも考えなさい!」
(言うとおりにしろとか自分で考えろとか、副長も大変だよな)
「マリク!回避任せる!」
「は、はいっ!」
密かにアーサーに同情していたマリクは、突然の命令に慌てて返事をした。
タリアは苛立ち、親指を噛みながら考えた。
あんなものに取りつかれたらひとたまりもないだろう。
「メイリン、シンは?戻れる?」
陽電子砲を跳ね返した事で自らの兵装に絶対の自信を持ったザムザザーは、今度は攻撃に転じた。4つの主砲のうち1番と2番を開き、ミネルバに照準を合わせた。主砲ガムザートフは、かつてGシリーズのイージスや後発機カラミティに搭載された位相砲スキュラと同様の強力な砲である。
そこに多くのウィンダムを海に沈めたインパルスが襲い掛かってきた。
「くそっ…何なんだよ、こいつは!」
しかしその装甲はビームライフルを寄せつけない。
飛び回るインパルスを狙い、ザムザザーはよりフレキシブルな弾道を取れる単装砲にシフトすると、前部から上部に砲口を向けてインパルスを追った。
シンはさらに上昇したが、実弾を防ぐたび、VPSがエネルギーを削った。
長引く戦闘により、インパルスのエネルギーゲージはかなり減っていた。
「クロー展開!」
ザムザザーはガムザートフを格納し、左右1対の巨大なヒートクロー、ヴァシリエフを展開させた。
「うわ!」
「そのひ弱なボディー、引き裂いてくれるわ!」
機体をかすめる重機並みのパワーに、シンは一旦退かざるを得ない。
(あんなのに掴まれたらヤバいぞ)
シンは距離を保つため空中を旋回した。
「でも凄いですね、あの兵器」
「陽電子砲を跳ね返しちゃうとはなぁ」
この激しい戦闘を前にしても、対岸の火事でしかないオーブの司令本部は穏やかだった。兵たちはどこかのんびりモニターを覗き、談笑している。
カガリは扉から中を覗き、ユウナが司令官と話している姿を認めた。
そのまま勢いよく扉を開けると、人々は驚いて立ち上がり、彼に敬礼した。
「何をしている!?」
「…カガリ」
ユウナは慌てて微笑んだが、カガリは語気を荒げた。
「これは一体どういうことだ!?」
肉眼では見えにくかった戦闘がくっきりと映し出されたモニターを見て、カガリは眉を顰めた。ミネルバの艦体は既に大分痛めつけられている。
「ミネルバが戦っているのか?地球軍と…」
「そうよ。オーブの領海の外でね」
「あんな大群相手に」
エンジンをやられたのか、少し煙を吐くミネルバの周りを飛び交うのはウィンダム。そして地球軍艦隊との前には見慣れないモビルアーマー。
「心配いらないわ、カガリ。既に領海線に護衛艦は出してあるもの」
ユウナは自らモニターのスイッチを切り替え、オーブ艦隊の姿を示した。
「領海の外といっても、だいぶ近いから。困ったものだわ」
それを聞いたカガリは思わずユウナに詰め寄った。
「…領海に入れさせない気か!?」
「あら、それがオーブのルールでしょう?」
ユウナの「当然」といわんばかりの言葉に、カガリは二の句が継げなかった。
「オーブは他国を侵略しない。他国の侵略を許さない。他国の争いに介入しない…そして、許可なく領海に近づく武装艦に対しては警告の上、これを排除する」
ユウナは冷静な声で、しかし鼻につく態度でオーブの理念を示した。
「…ですわよね?」
「それは…確かにそうだが…」
「それに、正式に調印はまだとはいえ、我々は既に大西洋連邦との同盟条約締結を決めたのよ」
カガリは「バカな」と聞こえないほどの声で呟いた。
ミネルバはもともと「許可なく」入港した艦などではない。
けれど一度領海を出て戦闘行為を行っているミネルバを、再入国させるなど無理だという事はカガリにもわかっている。
(だけど、まだ同盟も結ばれていないのに、オーブ領海外で連邦が彼らを待ち伏せしていた事自体、仕組まれている事だろうが!)
「今ここで我々がどんな姿勢を取るべきか、そのくらいのこと、あなたにだってわかりますね?」
「だがあれは、ユニウスセブンの破砕に努めた恩義ある艦だぞ!」
「でも、ザフトの艦よ」
ユウナは感情的なカガリの訴えなどにべもなく流した。
「間もなく盟友となる大西洋連邦が敵対している、ね」
カガリは孤軍奮闘しているインパルスを見つめた。
オーブの卑劣な罠だと、シンは怒りに身を焦がしたことだろう。
(おまえには、もうどうしたって許してもらえないんだろうな)
「トリスタン、撃ぇ!」
ザムザザーにインパルスが手を取られた途端、息を吹き返した地球軍艦隊が徐々にラインを上げ、ミネルバは逆に下がり気味になった。
「なんて火力とパワーだよ…こいつは…」
シンは単装砲を避けながら横に回り、そこを側面の砲に狙い撃たれてバランスを崩した。なるべくシールドで避けるようにはしているのだが、ポディに実弾を食らうたび、ますますエネルギーゲージが減っていく。
「インパルスのパワー、危険域です」
メイリンがシンと艦長の双方に伝える。
しかし敵の攻撃はまだやまない。
「7時の方向にモビルスーツ、4!」
大きなダメージはないが、ルナマリアとレイにも疲労が蓄積しつつあった。
「キリがないわ!レイ!」
「くそっ…」
レイは後ろを振り返った。オーブの領海が近づいていた。
「ミネルバ、領海線へ更に接近。このままいけば数分で侵犯します」
さっきまでのんびりしていた司令本部にアラートが響き始めた。
「警告後、威嚇射撃を。領海に入れてはいけません」
きびきびと動き始めたオペレーターにユウナが指示する。
「それでも止まらないようなら、攻撃も許可すると伝えて」
「ちょっと待て!」
その言葉にカガリがユウナの腕を掴んで止めた。
しかしユウナは彼の腕を振りほどくと叫んだ。
「国はあなたのオモチャではないのよ!」
カガリは一瞬驚いて言葉を失った。
そして「…なんだと?」と拳を握り締める。
「あの艦は敵性国家のもので、しかも戦闘中なの!いい加減、感情でものを言うのはやめなさい!」
ユウナの一声は、カガリのみならず司令部にも沈黙をもたらした。
ただ1人オペレーターだけが、警告を行うよう護衛艦群に伝えていた。
一方護衛旗艦では、通信士が司令本部からの打電内容を伝えにきた。
「以前国を焼いた軍に味方し、懸命に地球を救おうとしてくれた艦を討て、か」
現在は第ニ護衛艦群を率いるトダカ一佐が頬を掻きながら言った。
「こういうの、恩知らずって言うんじゃないかと思うんだがね、俺は」
そう言ってから「でもまぁ、恩だの義理だのなんて言葉は、もともと政治の世界にはない言葉なのかもしれんな」と副官にぼやいてみせる。
「はぁ」
「まぁいい。砲をミネルバの艦首前方に向けろ。絶対に当てるなよ」
「一佐、それでは命令に…」
副官が慌てて止めたが、トダカはふんと鼻を鳴らした。
「知るか!俺は政治家じゃないんだ」
トダカはあれだけの数を相手に一歩も退かず戦うインパルスを見て言った。
まさかそれが、あの日彼が救った小さな命だなどとは思いもせずに。
「ザフト軍艦ミネルバに告ぐ。貴艦はオーブ首長国連邦の領域に接近中である。我が国は貴艦の領域への侵入を認めない。速やかに転進されたし」
オープンチャンネルによる警告はブリッジを震撼させた。
「今転進したら確実に沈むわ。針路そのまま。ギリギリまで逃げなさい」
タリアは命じたが、既にミネルバはギリギリまで下がってきている。
警告に従わないミネルバに対し、やがて砲撃が開始される。
砲首はミネルバを狙ってはいないのだが、撃たれる彼らにとっては、至近距離に着弾する砲もダメージを受けた時と変わらない衝撃がある。
「オーブが…本気で…!」
シンは攻撃を始めたオーブ艦隊を見て怒りを覚え、歯を食いしばった。
その途端、近づいてきたザムザザーがインパルスの右足を捉えた。
「しまった!」
赤く熱を帯びたヒートクローに掴まれ、インパルスが振り回される。
「うわぁぁっ!」
コックピットの中で激しく揺さぶられ、シンは気が遠くなりそうだった。
その途端、インパルスがPSダウンして急速にディアクティブモードになる。
―― ダメだ…こんなところで意識をトバすな…
シンの脳裏にかつての日々が蘇った。
あどけない笑顔を見せている妹が、父が、母が続けて現れた。
そして戦友たち。レイ、ルナ、メイリン、ヴィーノ、ヨウラン…大切な仲間たちが、必死に戦っている。シンは瞳を見開いた。
「こんなことで…こんなことで、俺はっ!」
体が急激に熱くなり、電流のような痺れが脳天を突き抜けた。
頭の中で何かが弾けたような感覚があり、視界が急激に晴れた。
曇っていたフィルターが取り除かれ、クリアな世界が広がっていく。
拾うべき音だけが耳に入ってくる。今自分が何をすべきかを悟り、信じられないスピードで脳が回転を始めた。
「まだ落ちないか!」
脚部を切断されて海に墜落したと思ったのに、インパルスはすんでのところでスラスターを噴射し、再び飛び去った。
「ミネルバ!メイリン!デュートリオンビームを!」
「シン!?」
「それからレッグフライヤー、ソードシルエットを射出準備!」
「で、でも…」
「いいわ。シンの言う通りにして」
メイリンは一瞬戸惑ったが、タリアに促され、慌てて準備を始める。
シンの声は非常に強かったが、冷静さを欠いているものではなかった。
「デュートリオン・チェンバー、スタンバイ。捉的追尾システム、インパルスを捕捉しました」
シンは手早くOSプログラムを立ち上げ、受電システムを起動した。
Generation Unrestricted Network Drive Assault Module…モニターには起動時にお馴染みの文字が並び、ミネルバの送電装置に向かう。
「レイ!ルナ!頼んだぞ!」
片足のないインパルスが近づいてくると、ルナマリアが広域を警戒し、そしてレイがインパルスを護衛する。送電中は無防備になるからだ。
「デュートリオンビーム、照射!」
インパルスの額の受信機に真っ直ぐビームが照射され、パワーゲージが見る見るうちに復活していった。
チャージを終えたシンは、損傷したレッグフライヤーを空中換装した。
ザムザザーではパイロットたちがこの様子に驚いたが、再び向かってきたインパルスを見て迎撃態勢を整えた。単装砲とイーゲルシュテルンが追うが、インパルスは驚くほどのスピードでかわすとそのまま腹部に回り込んだ。
下方からライフルが撃ち込まれる。ザムザザーは腹部が弱点だった。
「海面に押し潰せ!」
パイロットはホバーを落としてインパルスをプレスしようとしたが、シンは一瞬早く機体下から抜け出した。そして攻撃が止んだ相手の上部に周ると、ライフルを連射して単装砲の砲口を潰していく。
「くそっ、上だ!もう一度クローで捕まえろ!」
しかし機体に取り付いたインパルスに、クローが届く事はなかった。
シンはサーベルを抜き、コックピットに狙いを定める。
(機体は硬くたって、乗っている人間は柔らかいんだ)
まるで知っているかのように、シンには機体の脆い部分がわかった。
ビームサーベルは天井を突き抜け、機長を貫いて機関に届いた。
「シルエット射出!」
「はい!」
爆散するそれを足がかりに飛び退ると、シンは再びメイリンに命じた。
ブリッジにはもう、シンの言葉に異議を唱えたり戸惑う者などいなかった。
シンはフォースを捨ててソードシルエットに換装すると、エクスカリバーを2本繋げ、アンビデクストラスフォームと呼ばれるツインモードにする。
巨大な対艦刀を手にしたインパルスが向かったのは、地球軍艦隊だった。
「シン、何する気!?ムチャよ!」
そのムチャクチャな特攻にルナマリアが驚いて叫んだ。
しかしシンは左舷の駆逐艦に降り立つと、いきなり艦塔を薙ぎ払った。
駆逐艦を切り裂いたシンは、後ろに控えるイージス艦、空母と飛び移り、ブリッジはもちろんミサイルバンク、そして艦体そのものを切り裂いた。
あちこちで破壊による煙が上がり、人々が海に落ちていく。
頼りない救命ボートの中で怪我人が仰ぎ見れば、巨大な対艦刀を振り回すインパルスがところ狭しと暴れている。恐ろしげな姿は兵を震え上がらせた。
(化け物だ!)
頭部のCIWSで甲板を撃ち、マニピュレーターでバンクを殴って破壊すると、対艦刀で後部エンジンを突き刺し、甲板を斬り裂いて大爆発を誘った。
被害は広がるばかりで、艦隊はパニックに陥り、もはや攻撃どころではない。
「ウソでしょ…たった一人でここまで戦局を変えちゃうなんて…」
ルナマリアは脅えたように、レイは冷静な表情でインパルスを見つめていた。
(おまえたちが攻撃をしてくるなら、俺は守る。全てを守る)
シンは未だ攻撃を続ける艦のブリッジを睨んだ。
司令官がその禍々しい姿にすくみ、総員に退避を叫んでいる。
「守り抜いてやる!」
シンは再び対艦刀を振るい、人々が逃げ惑うブリッジを斬り裂いた。
「な…なんなの、あれは…」
そのあまりにも激しい戦いぶりには、ユウナも言葉がなかった。
カガリは今、眼の前の戦場で凄まじい力を振るっている彼を思った。
「これで彼らは、オーブの最強の敵になった」
カガリは淡々と呟いて振り返ると、通信士に「状況は?」と尋ねた。
「地球軍艦隊、撤退します」
「ミネルバが去ったことを確認後、ただちに救援を行え。人道的措置だ」
そう命じると、カガリは破壊の限りを尽くしてミネルバに合流したシンを…インパルスを眼で追った。煙に包まれ、満身創痍のミネルバは南へ向かっている。
恐るべき軍神を従え、戦女神は荒ぶる戦いの海へと漕ぎ出したのだ。
デュランダル議長との面会を終え、アスランは久々に赤服に袖を通した。
「わぁ…!」
ミーアがそれを見て歓声を上げた。
「ザフトの制服は男性が着るとすごく格好いいけど、きみもすごく似合うね!」
「これを」
眼を細めて彼女を見つめていた議長は、小さな小箱を渡した。
アスランが箱を開くと、FAITHの証であるバッジが入っていた。
「きみを通常の指揮系統の中に組み込みたくはないし、きみとて困るだろう?そのための便宜上の措置だよ」
FAITHはもともと、軍に忠誠を誓い、国と軍に全てを捧げるべき部隊だ。
かつて父から拝受したその力を思い出し、アスランは表情を曇らせたが、議長はそれを見越したように、ゆっくりと首を振った。
「きみは、己の信念や信義に忠誠を誓ってくれればいい。忘れないでくれ」
戸惑っているアスランの手から、ミーアがバッジを受け取った。
「きみの力は、私たちを正すべきものでもあると」
「そのまま動かないで…はい、いいよ」
アスランの首元に、ミーアの手で羽根のモチーフのバッジがつけられた。
「きみは自分の信ずるところに従い、今に堕することなく、また必要な時には戦っていくことのできる人間だろう?」
アスランは議長に「そうでありたいと思ってはいますが」と答えた。
(私は…それほどまでに崇高な人間じゃない)
迷い、悩み、それでも答えを見つけられずに、今はここにいる。
議長は「きみにならできるさ」とアスランの細い肩に手を置いた。
「だからその力を、どうか必要な時には使ってくれたまえ。大仰な言い方だが、ザフト、プラントの為だけではなく、皆が平和に暮らせる世界のためにね」
「はい」
アスランは顔を上げて返事をした。
今はそう信じて進むしかない。自分の選んだ道を信じて。
セイバーの発進準備を整えながら、アスランは降下手順と座標を確認した。
議長はオーブにいるミネルバに合流し、彼らを援けて欲しいと言う。
(カガリに…そしてキラになんと伝えよう?)
アスランはそっと胸元に手を置いた。
まるでそこにある2つの大切なものに勇気をもらうように。
(迷う必要はない。堂々と告げればいい)
「アスラン・ザラ、セイバー、発進します!」
自分は道を選んだのだと。ザフトに戻る道を選んだのだと。
「そうか、ご苦労だったね」
議長はセイバーが発進した報せを受け取り、受話器を置いた。
「…あれ?だけど議長…」
ミーアが用意された原稿を暗記しながら、ふと顔を上げた。
「オーブって、確か連合と条約を結ぶんでしょう?」
議長は眼を閉じ、聞こえないふりをした。
アークエンジェル、ラクス・クライン、アスラン・ザラ。
これで彼のシナリオに必要な、対になるものたちは全て揃った。
あとはシン・アスカがふさわしい役をこなし、絶対的な力となりうるかだ。
(キラ・ヤマトのようにね)
「議長?」
ミーアが見ると、議長はいかにも満足げに微笑んでいた。
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制作裏話-PHASE12-
大艦隊を向こうに回す「アスカ無双」が開幕です。
種のPHASE22「紅に染まる海」とサブタイトルが酷似していますが、ネタギレか確認ミスかどちらなんでしょう(あちらは予告では実は「紅に燃える海」だったという経緯も有名ですね)
それにしても1クールも終わろうとするここに来てようやく、よーやく、種が割れたシンとインパルスが活躍します。当時はまさにクリスマスプレゼントではありましたが、ちょっと遅すぎやしないかとは誰もが思いますよね。
陽電子リフレクターを備えたザムザザーとのバトルですので、大きな改変はありません。
このバトルは結構印象に残っているので(クローで足をつかまれたとか、脳天からサーベルを刺したとか)あまり苦労しませんでした。とにかくインパルスを強く、シンを格好よく書く事に務めました。
シンの戦闘は「一人でやってる」本編とは違い、逆転ではかなり意識的にレイやルナマリアと連携を取りながら、協力してミネルバを守っているとしています。フラガはいたものの、基本的に一人ぼっちで戦っていたキラとは違い、彼には戦場で助け合い、共に敵に立ち向かえる仲間がいるのです。
さらには、エースであるシンを彼らに指示を与える「司令塔」にもできます。何度も言ってますが、シンはいくらでも頭がよくて格好いいキャラにできるのです(実際逆転のシンは仲間の信頼も得ており、視野が広いためアスランより指揮能力そのものは優れています。様々なものを克服して成長した逆転のシンなら、なんとなくいい隊長になりそうです)
出撃前に「遅いのはルナマリアのせいだ」という男2人のおふざけも入れてみました。この会話はもちろん言葉ではなく、彼らの「サイン」で行われています。
ルナマリアは誰にでも愛される素直で可愛い子なので、驕らされたりデザートを奪われたりとシンの格好のからかいの的になってしまうのです。彼女もからかわれたと知ってはいつも怒るのですが、すぐにケロッと水に流してしまいます。度量が大きく、サバけているのも彼女のよいところなのです。
一方、カガリとユウナのドラマについてはやや手を加えています。
「国はあなたのおもちゃではない」というセリフで完全に黙らされてしまった本編のカガリのバカっぷりが情けなくて情けなくて本気でイヤだったので、逆転のカガリには、ユウナの浅はかな策略が「オーブ最強の敵を生み出してしまった」と釘を刺させました。
カガリは次回、ユウナの野心に敗れて結婚を受諾しますから、ここでは反撃をさせておきたかったのです。喧嘩はやっぱり双方の力関係が拮抗してこそですから。
「最強の敵」についても実際その通りなので、シンとカガリの因縁をさらに深められるセリフにもなったと思います。
ちなみにカガリが救援を命じることも本編にはありません。為政者なら現状を分析し、これくらい冷静であって欲しいと思っての事です。それこそ感情でただギャンギャン叫ぶより、こういう態度でこそ代表という立場や力、器を示して欲しかったですよ。
一方、シンのこともカガリのことも知らないアスランは、ついに再び赤服に袖を通してしまいました。
このシーンでは本編同様ミーアがアスランの凛々しさに心を奪われますが、この時点で「軍服を着たラクス・クライン」の構図が浮かびました。私は本物の彼にピンクのパイスーを着せる悪趣味はないので、代わりに「ザフトのコスプレでディオキアに現れるラクス」を描く事にしました。
本編だって、あそこでは色っぽいザフト軍服を着たミーア(ラクス)がザクに乗って出てきたら面白かったのではないかと思うんですよね。そこで逆転ではその役は構想していた暗殺部隊クライン・ガールズに担ってもらう事にしました。
FAITHのバッジをミーアがアスランにつけるシーンは創作ですが、今となっては本編でもこんなシーンがあってもよかったんじゃないかと思います(当時はそんなの見たらかなりガッカリしたでしょうけど)ちなみにこのシーンは後のアスランとミーアの訣別の伏線にもなっています。
「全てを守る」と決めて、軍神もかくやの戦いぶりを見せるシン、それとは知らずに彼と相見えているトダカ、怪しげな計画を心に秘めているらしいデュランダルなど、運命が動き出す雰囲気も描写してみました。
けれどこれだけのシンの活躍も、次回は全て吹き飛ばされてしまいます。インパルスの活躍で暮れて行った2004年が明けると、2005年、ヤツはフリーダムと共にやってきたのです。
そう、まるで「主人公は昔も今も自分だけ」とでも言うように…
種のPHASE22「紅に染まる海」とサブタイトルが酷似していますが、ネタギレか確認ミスかどちらなんでしょう(あちらは予告では実は「紅に燃える海」だったという経緯も有名ですね)
それにしても1クールも終わろうとするここに来てようやく、よーやく、種が割れたシンとインパルスが活躍します。当時はまさにクリスマスプレゼントではありましたが、ちょっと遅すぎやしないかとは誰もが思いますよね。
陽電子リフレクターを備えたザムザザーとのバトルですので、大きな改変はありません。
このバトルは結構印象に残っているので(クローで足をつかまれたとか、脳天からサーベルを刺したとか)あまり苦労しませんでした。とにかくインパルスを強く、シンを格好よく書く事に務めました。
シンの戦闘は「一人でやってる」本編とは違い、逆転ではかなり意識的にレイやルナマリアと連携を取りながら、協力してミネルバを守っているとしています。フラガはいたものの、基本的に一人ぼっちで戦っていたキラとは違い、彼には戦場で助け合い、共に敵に立ち向かえる仲間がいるのです。
さらには、エースであるシンを彼らに指示を与える「司令塔」にもできます。何度も言ってますが、シンはいくらでも頭がよくて格好いいキャラにできるのです(実際逆転のシンは仲間の信頼も得ており、視野が広いためアスランより指揮能力そのものは優れています。様々なものを克服して成長した逆転のシンなら、なんとなくいい隊長になりそうです)
出撃前に「遅いのはルナマリアのせいだ」という男2人のおふざけも入れてみました。この会話はもちろん言葉ではなく、彼らの「サイン」で行われています。
ルナマリアは誰にでも愛される素直で可愛い子なので、驕らされたりデザートを奪われたりとシンの格好のからかいの的になってしまうのです。彼女もからかわれたと知ってはいつも怒るのですが、すぐにケロッと水に流してしまいます。度量が大きく、サバけているのも彼女のよいところなのです。
一方、カガリとユウナのドラマについてはやや手を加えています。
「国はあなたのおもちゃではない」というセリフで完全に黙らされてしまった本編のカガリのバカっぷりが情けなくて情けなくて本気でイヤだったので、逆転のカガリには、ユウナの浅はかな策略が「オーブ最強の敵を生み出してしまった」と釘を刺させました。
カガリは次回、ユウナの野心に敗れて結婚を受諾しますから、ここでは反撃をさせておきたかったのです。喧嘩はやっぱり双方の力関係が拮抗してこそですから。
「最強の敵」についても実際その通りなので、シンとカガリの因縁をさらに深められるセリフにもなったと思います。
ちなみにカガリが救援を命じることも本編にはありません。為政者なら現状を分析し、これくらい冷静であって欲しいと思っての事です。それこそ感情でただギャンギャン叫ぶより、こういう態度でこそ代表という立場や力、器を示して欲しかったですよ。
一方、シンのこともカガリのことも知らないアスランは、ついに再び赤服に袖を通してしまいました。
このシーンでは本編同様ミーアがアスランの凛々しさに心を奪われますが、この時点で「軍服を着たラクス・クライン」の構図が浮かびました。私は本物の彼にピンクのパイスーを着せる悪趣味はないので、代わりに「ザフトのコスプレでディオキアに現れるラクス」を描く事にしました。
本編だって、あそこでは色っぽいザフト軍服を着たミーア(ラクス)がザクに乗って出てきたら面白かったのではないかと思うんですよね。そこで逆転ではその役は構想していた暗殺部隊クライン・ガールズに担ってもらう事にしました。
FAITHのバッジをミーアがアスランにつけるシーンは創作ですが、今となっては本編でもこんなシーンがあってもよかったんじゃないかと思います(当時はそんなの見たらかなりガッカリしたでしょうけど)ちなみにこのシーンは後のアスランとミーアの訣別の伏線にもなっています。
「全てを守る」と決めて、軍神もかくやの戦いぶりを見せるシン、それとは知らずに彼と相見えているトダカ、怪しげな計画を心に秘めているらしいデュランダルなど、運命が動き出す雰囲気も描写してみました。
けれどこれだけのシンの活躍も、次回は全て吹き飛ばされてしまいます。インパルスの活躍で暮れて行った2004年が明けると、2005年、ヤツはフリーダムと共にやってきたのです。
そう、まるで「主人公は昔も今も自分だけ」とでも言うように…
Natural or Cordinater?
サブタイトル
お知らせ PHASE0 はじめに PHASE1-1 怒れる瞳① PHASE1-2 怒れる瞳② PHASE1-3 怒れる瞳③ PHASE2 戦いを呼ぶもの PHASE3 予兆の砲火 PHASE4 星屑の戦場 PHASE5 癒えぬ傷痕 PHASE6 世界の終わる時 PHASE7 混迷の大地 PHASE8 ジャンクション PHASE9 驕れる牙 PHASE10 父の呪縛 PHASE11 選びし道 PHASE12 血に染まる海 PHASE13 よみがえる翼 PHASE14 明日への出航 PHASE15 戦場への帰還 PHASE16 インド洋の死闘 PHASE17 戦士の条件 PHASE18 ローエングリンを討て! PHASE19 見えない真実 PHASE20 PAST PHASE21 さまよう眸 PHASE22 蒼天の剣 PHASE23 戦火の蔭 PHASE24 すれちがう視線 PHASE25 罪の在処 PHASE26 約束 PHASE27 届かぬ想い PHASE28 残る命散る命 PHASE29 FATES PHASE30 刹那の夢 PHASE31 明けない夜 PHASE32 ステラ PHASE33 示される世界 PHASE34 悪夢 PHASE35 混沌の先に PHASE36-1 アスラン脱走① PHASE36-2 アスラン脱走② PHASE37-1 雷鳴の闇① PHASE37-2 雷鳴の闇② PHASE38 新しき旗 PHASE39-1 天空のキラ① PHASE39-2 天空のキラ② PHASE40 リフレイン (原題:黄金の意志) PHASE41-1 黄金の意志① (原題:リフレイン) PHASE41-2 黄金の意志② (原題:リフレイン) PHASE42-1 自由と正義と① PHASE42-2 自由と正義と② PHASE43-1 反撃の声① PHASE43-2 反撃の声② PHASE44-1 二人のラクス① PHASE44-2 二人のラクス② PHASE45-1 変革の序曲① PHASE45-2 変革の序曲② PHASE46-1 真実の歌① PHASE46-2 真実の歌② PHASE47 ミーア PHASE48-1 新世界へ① PHASE48-2 新世界へ② PHASE49-1 レイ① PHASE49-2 レイ② PHASE50-1 最後の力① PHASE50-2 最後の力② PHASE50-3 最後の力③ PHASE50-4 最後の力④ PHASE50-5 最後の力⑤ PHASE50-6 最後の力⑥ PHASE50-7 最後の力⑦ PHASE50-8 最後の力⑧ FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開
制作裏話-はじめに- 制作裏話-PHASE1①- 制作裏話-PHASE1②- 制作裏話-PHASE1③- 制作裏話-PHASE2- 制作裏話-PHASE3- 制作裏話-PHASE4- 制作裏話-PHASE5- 制作裏話-PHASE6- 制作裏話-PHASE7- 制作裏話-PHASE8- 制作裏話-PHASE9- 制作裏話-PHASE10- 制作裏話-PHASE11- 制作裏話-PHASE12- 制作裏話-PHASE13- 制作裏話-PHASE14- 制作裏話-PHASE15- 制作裏話-PHASE16- 制作裏話-PHASE17- 制作裏話-PHASE18- 制作裏話-PHASE19- 制作裏話-PHASE20- 制作裏話-PHASE21- 制作裏話-PHASE22- 制作裏話-PHASE23- 制作裏話-PHASE24- 制作裏話-PHASE25- 制作裏話-PHASE26- 制作裏話-PHASE27- 制作裏話-PHASE28- 制作裏話-PHASE29- 制作裏話-PHASE30- 制作裏話-PHASE31- 制作裏話-PHASE32- 制作裏話-PHASE33- 制作裏話-PHASE34- 制作裏話-PHASE35- 制作裏話-PHASE36①- 制作裏話-PHASE36②- 制作裏話-PHASE37①- 制作裏話-PHASE37②- 制作裏話-PHASE38- 制作裏話-PHASE39①- 制作裏話-PHASE39②- 制作裏話-PHASE40- 制作裏話-PHASE41①- 制作裏話-PHASE41②- 制作裏話-PHASE42①- 制作裏話-PHASE42②- 制作裏話-PHASE43①- 制作裏話-PHASE43②- 制作裏話-PHASE44①- 制作裏話-PHASE44②- 制作裏話-PHASE45①- 制作裏話-PHASE45②- 制作裏話-PHASE46①- 制作裏話-PHASE46②- 制作裏話-PHASE47- 制作裏話-PHASE48①- 制作裏話-PHASE48②- 制作裏話-PHASE49①- 制作裏話-PHASE49②- 制作裏話-PHASE50①- 制作裏話-PHASE50②- 制作裏話-PHASE50③- 制作裏話-PHASE50④- 制作裏話-PHASE50⑤- 制作裏話-PHASE50⑥- 制作裏話-PHASE50⑦- 制作裏話-PHASE50⑧-
2011/5/22~2012/9/12
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