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機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
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優先的にドック入りを許されたミネルバのエンジンがゆっくりと停止した。
ミネルバもこれでようやく長旅を終え、目的地に辿り着いたのだ。
(ヴィーノやヨウランが暇なら、一緒に宿舎に行こう)
バートから「先に上陸していいぞ」と言われたメイリンがハンガーに向かうと、彼らはちょうど巨大なコンテナの運び出しに立ち会っているところだった。
「大きいねぇ。モビルスーツ?」
「ガイアだよ。やーっとこいつを下ろせる」
ヨウランが振り向いて教えてくれた。
「ああ…そういえばジブラルタルで下ろすってスケジュールが出てたっけ」
メイリンは納得し、そのまま作業を見守る事にした。
「けどどうするんだろうね、これ。やっぱレストアかな?」
「エクステンデッドが乗ってたんだもんな。あんまいい気はしないよ」
「言えてる。だから結局誰も直さなかったしね」
ヴィーノとヨウランがそんな事を話している間、メイリンは巨大なコンテナにでかでかと描かれた絵を見つめていた。
(この輸送会社のイメージ・キャラクターなのかな?) 
そこには、荒野をバックに豪快にジャンプする虎の絵が描かれていた。

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「デスティニーは火力、防御力、機動力、信頼性…その全ての点において、インパルスを凌ぐ最強のモビルスーツだ」
デュランダルが目の前にあるモビルスーツについて説明した。
シンは頭部から脚部にかけてのフォルムをじっくりと見ていった。
かなり鋭く突き出したアンテナ、CIWS、フリーダムを髣髴とさせるような背中に折りたたまれた翼、マウントされた巨大なソードとビーム砲…額の機体番号の下には「DUE」の文字が彫りこまれている。
(腰部にもスラスター…それに腕のアーマーにも何か…?)
気になったのは脚部のパーツが非常に細かく分かれている事だったが、それはモビルスーツにより柔軟な動きをさせるために開発された新たな工夫だった。
デスティニーの値踏みをするような、パイロットとしてのシンの瞳を見たデュランダルは満足げに頷くと、次にもう一機の説明を始めた。
こちらはアスランに対してだ。
「一方のレジェンドは量子インターフェイスの改良により、誰でも操作出来るようになった新世代のドラグーンシステムを搭載する、実に野心的な機体でね」
アスランは背に大きなバックパックを背負ったその機体を見つめた。
「どちらも工廠が不休で作り上げた自信作だよ」
デュランダルも2機を見上げると、それを見つめている2人に聞いた。
「どうかな?気に入ったかね?」 
「ええ…凄いですね…」
シンはそう答えたが、アスランは無言のままだ。
「デスティニーには特にきみを想定した調整を加えてある」
「え?俺…自分を、ですか?」
シンはその言葉にやや驚いた。
「最新のインパルスの戦闘データを参考にしてね」
最新といえばフリーダムとの戦いだ。
(そういえばあの時、色々なトラブルもデータとして提出させられた)
「きみの操作の癖…特にスピードはどうやら、通常を遙かに越えて来始めているようだね」
それはミネルバの担当技師にも事あるごとにぼやかれている事だった。
「これじゃ機体が参っちまうよ!」
そうは言われても、実際にはその自分をも遥かに上回るスピードとパワーを持った者がいたのだから歯がゆい。
(でも、この機体ならそんな心配はない…)
これならフリーダムにも…と思ってしまってから、シンは慌てて打ち消した。
(フリーダムは俺が倒したんだ。ヤツはもう死んだんだ!)
デュランダルはそんなシンの心など知らず、にこやかに褒め称えた。
「いや、凄いものだな、きみの力は。このところますます」
「いえ、そんな…」
「インパルスでは機体の限界にイラつくことも多かったと思うが、これならそんなことはない。私が保証するよ」
(俺の、新しい力)
シンは議長を見ると、「ありがとうございます」と礼を述べた。

「きみの機体はこのレジェンドということになるが、どうかな、アスラン。ドラグーンシステムは?」
デュランダルは次に、相変わらず無言のままのアスランに向き直った。
「きみならこれを使いこなせると思うが…どうしたね?アスラン」
未だ一言も返答のないアスランをいぶかしみ、デュランダルは尋ねた。
ミーアが不安そうに無言のままのアスランを見つめている。
シンもまた、何も言わないアスランの様子を窺った。
やがてアスランが重い口を開く。
「…これは、これからロゴスと戦っていくために…ということですか?」
まるで…いや、明らかにこのタイミングで機体を渡すために開発を進めていたに違いない。
連合による強引な開戦、その後の膠着状態、戦いといえば連合の暴走を止める「人々を救い、正義を為す」紛争介入と言えるものばかり…これでは今までの不可思議な戦いはすべて、ロゴスと戦うための準備段階に過ぎなかったとでも言わんばかりだ。
「戦争をなくすためにロゴスと戦うと、議長はおっしゃいました」
アスランは議長の方に向き直り、堅い声で詰め寄った。
「ああ。戦いを終わらせるために戦うというのも矛盾した困った話だが」
デュランダルはそんな彼女の様子に動じる事もなく、落ち着いて答えた。
「仕方ないだろう?彼らは言葉を聞かないのだから」
彼は困ったように言った。
「…でも、では、なぜ彼らを…」
アスランはついに、未だにどうしても納得できない事を口に出した。
「アークエンジェルとフリーダムを討てと命じられたのですか?」
「おい!」
それを聞いて、シンは思わず彼女をにらみつけた。
「あんた、まだ…」
「あの艦は、確かに不用意に戦局を混乱させたかもしれません」
アスランはシンの横やりには反応せず、やや上ずった声で早口でまくし立てる。
「でも、その意志は私たちと同じでした!」
シンは腕を組んで呆れたように彼女を見つめ、ミーアは何やら怪しくなった雲行きに、不安げにアスランと議長を見比べている。
しかし、議長だけは冷静にアスランの訴えに耳を傾けているように見えた。
「デストロイに立ち向かっていったのだって、彼らの方が先です!」
アスランのその言葉に、実際にデストロイと戦ったシンが眉を顰めた。
連中の方が先にベルリンに着いていたから何だというのだ…?
(自分はあの時、フリーダムに機体を破壊されて何もできなかったくせに)
シンは不機嫌そうにぷいっとそっぽを向いた。
アスランはそうとも知らず珍しく声を荒げている。
「なのになぜ!?話し合う機会すらないままあんな命令を…!」
しばらくの沈黙の後、デュランダルの反撃が始まった。
柔和な笑顔は崩さないが、その口調は今までよりやや厳しい。
「では私も聞くが、ならばなぜ、彼らは私たちの所へ来なかった?」
「それは…」 
途端にアスランは言葉に窮した。
(そして、何で本物のラクスは殺されそうになるの?)
あの艦には、ザフトのモビルスーツを駆る者に暗殺されかけたラクスがいた。
彼を守ることがキラの最優先事項であり、それゆえに彼らは議長に疑いを持っており、「信じられない」と言ったこと…それが彼らが議長を拒む理由だった事が浮かんでいた。

「想いが同じというのなら、彼らがこちらへ来てくれてもよかったはずだ」
議長は穏やかに、諭すように言った。
「私の声は届いていただろう?なのになぜ、彼らは来ようともせず戦ったのだ?」
シンはアスランが何と答えるのか待ったが、彼女は言葉を失っている。
「グラディス艦長も戦闘前には投降を呼び掛けたと聞いている」
「…はい」
アスランはその申し出をきっぱりと断ったマリューを思い出した。
彼女の後ろには、彼女を支える、アスランもよく知る者たちがいるはずだった。
(彼らは何も変わっていない…信じる道を、信じる仲間と共に歩んでいる)
「しかし、結局彼らは応じようとはしなかった」
議長は問いかけるようにアスランの瞳を覗き込んだ。
「オーブの代表がいたからですよ」
その時シンが突然口を挟んだので、アスランも議長も、ミーアですらぎょっとしてシンを見た。シンはそのまま苦々しげに言った。
「さっきから聞いてればなんなんですか。いい加減にしてください」
アスランは唇を噛んでシンを睨みつけたが、シンはお構いなしだ。
「あの艦にはアスハが乗っていた。だから連中が投降なんかするわけがない」
議長をチラリと見たシンの言葉に、議長の眼が鋭く光った。
「アークエンジェルは公式にはいないことになっています。アスハもまだ行方不明のままだ。だからザフトがあれを撃沈したとしても、少なくともオーブとの外交問題にはなりません」
「む…」
「投降なんかされたら、むしろ面倒な事になったはずだ」
シンのこの分析に、議長は内心驚いていた。
(頭が切れるとは聞いていたが…どうやら思った以上のようだ)
デュランダルの黒い瞳の奥に、チリッと警戒の火が灯った。
「それに、議長…自分もお聞きしたいと思っていたところです」
シンの瞳は、デュランダルの厳しい視線を真っ向から捉えて臆する事はない。  
「なぜ、ベルリンの映像からフリーダムを消す必要があったんですか?」
「あ…」
アスランは驚きのあまり声を上げた。
フリーダムを倒したあの時の様子からしても、今の言葉がまさかシン自身の口から出てくるなどとは想像もできなかったからだ。

「デストロイを倒したのは俺じゃない。フリーダムです」
 
アスランは無意識に呼吸を止めていた事に気づき、小さく息をついた。
「ベルリンを救ったのがザフトではなく、彼らではまずい…だから、真の英雄であるヤツはデリートされてしまったんですか?」
「シン…」
デュランダルはやや当惑したが、それを表に出さぬようゆっくりと口を開いた。
「まさか、きみまでがそんな事を言うとはな…」
レイの報告では、フリーダムを倒したシンとアスランは激しく衝突し、その後の関係も険悪だとあったのに、よもやそのシンがこのような事を聞いてくるとは…
(レイの観察が足りなかったのか?それとも私が何か判断を間違ったか?)
「確かにあの時、フリーダムはデストロイを止めようとしているように見えた」
しかし彼とて百戦錬磨の政治家である。
いくら鋭いとはいえ、舌戦でこんな若僧に後れを取るつもりはなかった。
「だが彼らは、その意思を明確に示したわけではない。そんな存在が知られれば、どうなると思うかね。否定する者、盲目的に支持する者、不安に思う者…世界は、必ず混乱するだろう」
議長のその「政治家じみた」言葉を聞いて、アスランは不快そうに眼を伏せた。
「だから私は彼らを『隠した』。そして討てと命じたのだ。当然だろう?」
彼の答えは決して明確なものではなかったが、シンは黙って聞いている。
「ミネルバも撃たれ、きみやアスランも傷つけられたのだ。ラクスと離れて何を思ったのかは知らないが、突如としてオーブの国家元首を攫い、戦闘になると現れて好き勝手に敵を討つ…それを見過ごすわけにはいかない」
議長はため息混じりに言った。
「そうですね。確かに」
シンは頷きながら答えた。
「でも、彼らは戦争を終わらせたいと…こんなことはもう嫌だと…!」
「だからといって、勝手な武力介入が許されるわけではあるまい?」
再び2人の会話に割り込んだアスランの弁明を、議長はピシャリと跳ね除けた。
「彼らはあれだけの武力を持ちながら、どこの国にも属していない。ではそれは何なのかと問われたら、テロリストと答えるしかないだろう」
「テロ…リスト…」
国の後ろ盾を持たぬ武装組織が何と呼ばれるのか、頭ではわかっていた。
けれど実際にキラたちにそのレッテルが貼られると、その言葉は思った以上にアスランの心を深くえぐった。
「平和を願うのはいいが、軍でもないのに武力を振るうなど言語道断だ」
(勝手な理屈と正義でただ闇雲に力を振るえば、それはただの破壊者よ)
マハムールで自分が言った言葉が、今、自分に向けられている。
「でも…彼らは決して…」
「テロリストに正義などないことは、きみもよく知っているはずだ」
アスランは再び言葉を失った。
ユニウスセブンを落とした犯人がパトリック・ザラを信奉していたとしても、自分とは何の関係もないときっぱり言ってくれたのは、今ここにいる議長その人だった。
「無秩序で危険な存在である彼らを、国際社会の一員として、国家元首として、私は許してはおけなかったのだよ」
次の瞬間シンがふっと笑ったので、議長は少しイラッとして訊ねた。
「…何かな、シン?言いたい事があるなら言いたまえ」
「いえ…自分は単に、また肝心なところで奴らに出てこられたら困るからかと思っていましたので」
彼の言葉に痛烈な皮肉を感じ取り、議長が片目をピクリと動かした。
「ふふ…面白い事を言うね、きみは」
デュランダルは笑ったが、漆黒の瞳の奥は全く笑っていなかった。
(どうやら私は、彼をずいぶんと侮っていたようだ)
議長は掌にうっすらとかいた汗を隠すため、そっと拳を握りこんだ。

「ああ、それと…」
その場の気まずい沈黙など気にも留めず、シンはつかつかとラクス・クラインに近づいた。
「な…何?」
ミーアは思わず後ずさり、赤いハロが「Go there!」と警告を発する。
「誰ですか?この人」
その言葉に、アスランは再びぐっと息を呑んだ。
「…ぼっ…僕は…っ!」
ミーアは真っ青になって否定しかけたが、シンがギロリと睨みつけたので慌てて口をつぐんだ。
「何を言うのかね、シン」
これにはデュランダルも驚いたが、それを表に出さないよう押さえ込んだ。
「彼はクライン元議長のご子息であられるラクス・クラインだ。我々と共に戦おうとしてくれている彼に対して、あまり失礼な事を言うものではないよ」
「自分はオーブ育ちで、ラクス・クラインをよく知らないんですが…」
シンは蔑むような眼でミーアを見ながら、冷たい声で言った。
「この人、ラクス・クラインじゃありませんよね」

「待てよ、ルナ!」
ジブラルタルに到着する直前、ミネルバの甲板でルナマリアの不可解な言葉を聞いたシンは、慌てて戻ろうとするルナマリアの腕を掴んで引き止めた。
「なんか変だな…おまえ、何を知ってる?」
「え…し、知らないわよ、何も」
ルナマリアはとぼけようとして無理に笑顔を作った。
「ラクス・クライン…」
シンはそれにはお構いなしで素早く記憶を手繰り寄せていく。
「そういえばおまえ、俺たちとは別働の任務に就いた事があったよな。あれは確か…」
「あ、あれは別に…やだな、シンってば」
「タルキウス…俺たちがロドニアに向かって、アスランが離脱した時だ」
シンはアーサーがルナマリアが別の任務に就いていると説明した事、アスランがセイバーで戻ってほどなく、ルナマリアも戻ってきていた事も思い出した。
「おまえ、もしかしてあいつを尾行してたのか?」
(あ…相変わらず鋭いわね…)
ルナマリアは次々と辻褄をあわせていくシンの様子を見ながら、観念せざるを得ない事を悟った。もとはといえば自分の失言が原因なのだから仕方がない。
「何があったんだ、ルナ」
「えっと…それは…」
「聞かせてくれ。頼む」
勘のいいシンにカマなどかけるべきではなかったと思っても後の祭りだった。
ルナマリアはため息をつき、再びシンに向き直った。
「わかったわ。話す。でも絶対、他言無用だからね」
ルナマリアはシンに、アスランがあの時カガリ・ユラ・アスハらと会っており、「ラクス・クライン」が何者かに暗殺されかけたと話していたことを説明した。
「じゃ、アークエンジェルにはラクス・クラインも乗っていたのか?本物の?」
「それはわからない。でも、私の報告書は司令部に届いてるはずよ」
(議長が偽者のラクス・クラインを使って今の状況を作り出しているなら、一番邪魔なのは、当然、本物のラクス・クラインだ)
シンは「ラクス・クライン」が登場するたびに、熱に浮かされたようになる基地やプラントを思い出して少し黙り込んだ。
(しかもその本物が属するアークエンジェルはあのフリーダムを擁していて、連邦とザフトを阻む厄介な連中だ)
アスランの言う通り、先のロゴス追討宣言とはどうしても繋がらなかったあのエンジェルダウン作戦が、この時ようやく繋がったことにシンは舌打ちをした。
「…シン?」
ルナマリアが黙り込んだままのシンに不安そうに声をかけると、シンはやや不機嫌そうな声で言った。
「なんですぐ言わなかった?どうして隠してたんだよ、ルナ!?」
「だ、だって…」
ルナマリアは小さな声で任務そのものが秘密だった事、口止めされた事を告げた。
「それに…」
「それに?」
「あの頃は、シン…あの子の事で、大変そうだったから…」
「…」
眼を伏せたルナマリアを見て、シンは彼女を責めてしまった事を後悔した。
確かにあの頃の自分は、ルナマリアからこの話を聞いても上の空だったろう。
「ルナ…」
「でも、ごめん!ちゃんと相談すればよかったね」
「いや、俺こそごめん。おまえの行動は正しいよ。命令だったんだもんな」
話してくれてありがとう…シンはそう言うと優しく笑った。
ルナマリアもそれに応え、ほっとしたように笑った。

シンはその後も、自分が知らない前大戦以前の記録を当たって調べてみた。
「本物」のラクス・クラインが語った事、書いたもの…ヤキン・ドゥーエ戦での彼の呼びかけなどは、ザフトが隠したがっているはずなのに、調べようと思えばすぐに入手できた。
ナチュラルの核で傷つきながらも平和を訴える彼の言葉は、クライン派のプロパガンダとわかっていても、時には彼を知らないシンの心にさえ響いた。
「どれをとっても、この人が本物のラクス・クラインとは思えない」
シンは今、はっきりとそう確信していた。
「それに、彼は病を患ってますね。かなり重篤な放射線障害だ」
「そ、それは…ザフトの…最新の治療で…」
「黙ってろ!」
シンはミーアの言葉をぴしゃりと跳ね除けると、アスランに向き直った。
「で?彼を一番よく知ってるはずのあなたが、なぜこんな嘘を許したんです?」
アスランは今、何より聞かれたくない質問をぶつけてきたシンに見つめられ、思わず眼を逸らした。
「フリーダムもアークエンジェルも、俺たちザフトの敵じゃない…」
シンは彼女の言葉を反芻すると、大げさにため息をついてみせた。
「軍の命令でフリーダムを討てばなじられ、インド洋では勝手な事をするなと殴られ、捕虜を返したのも独りよがりの間違いだと、あなたに言われましたっけ」
「…く」
「別に責めちゃいません」
シンは肩をすくめた。
「あなたは隊長だし、FAITHだし…俺にも落ち度はありましたから」
「だけど…」と、シンの瞳が真っ直ぐアスランを射抜いた。
「そんな風に、いつでも正しいことを正しいと主張するあなたが、一体なぜ、こんな馬鹿げた嘘を許したんですか?」
アスランは最も痛いところをつかれて言い返せない。
何より、自分自身がこの嘘を容認し続ける事にずっと嫌悪感を抱いてきたのだ。
なのにミーアの純粋な想いと、あの時議長を信じたがゆえに、こんな事は間違っていると、やめなければならないと言うことができなかった。
(いえ…言おうと思えば言えたのに、言わなかった…私は…)
アスランの顔が苦痛に歪むと、シンはガッカリしたように言った。
「必要だと思えば…あなたも意外と簡単に、白を黒と言うんですね」
「違う、私は…」
否定しようと口を開くと同時に、議長が先に言葉を発した。
「彼女を責めないでくれ、シン」
アスランは思わず、自分を庇うような発言をした議長を見た。
「アスランは私の目指す平和な世界に賛同してくれたのだ。これもまた、平和のために必要な事と理解してくれてね」
アスランは首の後ろにチリチリとした痛みを感じ、拳を握り締めた。
(…確かにあの時は、そう思って復隊した…けれど…でも、今は…)
今こうしてシンに突きつけられてみれば、こんな事は自分が願ったことではないとはっきりとわかる。
もはやラクスとは似ても似つかぬミーア、インパルスに貫かれたフリーダム、ミネルバのタンホイザーに撃たれ、冷たい海に消えたアークエンジェル…平和な世界のために戦うと決めたあの時の自分の純粋な願いとは、大きく食い違ってきてしまっている現実がそこにあった。
同時に、アスランの心にぞっとするような戦慄が走る。
「時が経てば状況も人の心も変わるわ。あなただって変わったでしょう!?」
タリアの言葉がズキリと胸を刺した。
(そうじゃない…そうじゃなかった…)
今はっきりとわかった事実は、あまりに残酷だった。
(私は…間違ったんだわ、また…)

少し黙り込んでいたシンが、やがて口を開いた。
「自分は戦争で家族を失いました。力がなかったばかりに守れなかったものを今度こそ守りたいと思い、移民の身ではありますが、ザフトに入りました」
議長は頷き、落ち着き払った声で静かに答えた。
「知っているよ。きみの働きは誰もが賞賛して然るべきものだ」
(けれど、俺は結局守れなかった…可哀想なあの子を守れなかった…)
シンの心にステラのあどけない笑顔と、苦い後悔が浮かぶ。
「でも、戦争がある限り、いくら守ろうとしても守りきれないんです」
「…」
議長は彼の意図を量りかね、次の言葉を飲み込んだ。
「そのためには議長の言うように、根源を砕くしかない」
シンは燃えるような赤い瞳で議長を見つめ、議長は力強く頷いた。
「自分は、その先にそれが…望むものがあると信じていいんですね?」
「約束しよう、シン」
デュランダルはシンの問いかけにはっきりと答えた。
「そのための戦いだ。その先には、きみが望む世界が必ずある」 
「俺が欲しいものは…戦争を終わらせる力と、戦争のない世界です」
シンはしばらく考えてから再び口を開いた。
「本当に守りたいものがあるなら、絶対に守りきる。たとえそれが誰かを傷つけることになっても…」
シンは顔を上げた。その視線の先には議長ではなく、アスランがいた。 
「俺は戦う!」

(シン…)
シンの表情に彼の決意を見たアスランは、今ここで、間違いに気づいた自分とシンの道が完全に分かれた事を察知していた。
シンは議長を信じると言い、かつて議長を信じた自分は疑念と共にその思想を否定する事を考えている。
(議長の考えは確かに正しく聞こえるけれど…でも、私には…)
やがてシンが今度はアスランに問いかけた。
「あなたは議長を信じ、地球軍のやり方が間違っていると思ってザフトに戻った。偽りのラクス・クラインを使ってでも、議長が成そうとすることに賛同した。なら、あなたがこだわり続けるアークエンジェルもフリーダムも、それと同じことじゃないんですか?」
「…同じ?」
アスランはややいぶかしそうに聞いた。
「議長がフリーダムを討ったのは、あなたも知る『目的』のためだ」
そう言いながらシンが議長を見ると、議長は力強く頷く。
「議長に賛同しないだけなら、彼らが何をしようがもちろん自由です。だけど彼らは牙を剥く。殺さないと言っても、弱い者に彼らの牙は脅威です。彼らの力は危険で、目的の遂行には邪魔なものだ。だから討たれた…」
「それは…!」
「いい加減、認めろよ!」
シンがまだ反論しようとする彼女を怒鳴りつけ、アスランははっとして口をつぐんだ。
「俺が間違ってるってんならそれでいい。だがあいつらも間違ってる!」
シンの怒りに満ちた声に、男の怒声には慣れているアスランも一瞬気圧された。
けれどぐっと歯を食いしばる。今ここで黙りこんでしまうわけにはいかなかった。
「やつらには何も示せない!俺が欲しいものも!世界も!答えもだ!」
「違う!」
(撃て…ジェネシ…我らの…世界を奪っ…報い…)
アスランの脳裏に浮かんだのは、腕の中で事切れた父の最期の言葉だった。
父が望んだのは、誰もが望むような、ほんのささやかな幸せが溢れる世界だった。そしてそれは自分にとっても同じだったのだ。
厳格だが立派な父、美しく聡明な母、そして甘ったれで優しい友がいる世界…けれどそんな些細な望みはいつしか歪み、修羅の向こうに霞んで消えた。
自分もそれに飲み込まれ、ただ言われるままに戦っていた。
「でも、私たちは本当は何と、どう戦わなくちゃいけなかったの?」
その問いの答えを、自分はまだ探し出せていない。
けれど反面、アスランは確信していた。
だからこそシンのその言葉は、とても危険に思えたのだ。
「世界も答えも、誰かに与えられるものじゃない!」
「うるさいっ!」
しかしシンは、アスランのその言葉を遮るように怒鳴った。
「俺がどんなに平和な世界が欲しいか、あんたは何も知らないだろう!?」
シンが少し苦しげに言い、アスランは口をつぐんだ。
「父も母もあっという間に吹き飛んで、妹は…腕しか…残らなかった!俺には力がなかった。何も守れなかった。ただ一人で泣くしかなかったんだ!」
悲痛な声で呟くシンの顔は、それこそまるで泣いているようだった。
「守るためには、力が必要だ」
「シン…」
そんな彼に対し、いたわるような表情で声をかけたのはデュランダルだった。
「でも、力があっても…俺はまた守れなかった。守るなんて…嘘をついて…」
刺すような痛みがシンの心を襲ったが、かつて彼を苦しめたフラッシュバックは起きなかった。まだ新しい、鋭い痛みが彼を苛んだだけだった。
「…だから、本当に世界が平和になるのなら…それがたとえ…」
アスランは本能的に、シンが今、危険な領域に足を踏み入れようとしていると悟って思わず口を挟んだ。
「違う!そんなものが本当の平和と言えるの?考えて、シン!」
シンは無言だった。
アスランにもわかっていた。
彼を引き止める「力」が、自分にはない。
かつて議長の嘘を認めてしまった自分には。
「皆、嘘をつく…」
やがてシンが言った。
「俺も、あの男も、艦長も、議長も、そしてアスラン、あんたもだ」
「…っ!」
「でも、それでいい…」
シンの赤い瞳が再びアスランの碧眼を捉えた。
「嘘でも偽りでも、最後に手に入るのが本物なら、俺はかまわない!」
その言葉を聞いて、アスランの中で何かが壊れる音がした。

やがてデュランダルが「ふふっ…」と笑った。
「きみは賢いな、シン」
シンは黙りこくり、アスランはただシンを見つめている。
「私が目指すものは確かに平和な世界だ。それには嘘も偽りもない」
シンが自分についてくると知ったデュランダルは満足げに微笑んだ。
(思ったより頭が切れるので驚いたが、むしろそれは嬉しい誤算かもしれん)
「議長、ですがそんな…」
しかし一方のアスランは、納得するどころかますます怒りを新たにしている。
困ったお嬢さんだ…デュランダルは聞き分けのない我侭な彼女に言った。
「きみの憤りはわかる」
アスランは「え?」と聞き返す。
「なぜこんなことに、なぜ世界は願ったように動かないのかと…だが言ってみればそれが今のこの世界、ということだ」
アスランだけでなく、シンもまた議長の言葉を聞いて首を傾げた。
「今のこの世界では、我らは誰もが本当の自分を知らず、その力も役割も知らず、ただ時々に翻弄されて生きている」
「本当の…」
「…自分?」
シンとアスランは思わず顔を見合わせてしまった。
「きみたちはそんな中で、自分に何ができ、何をすべきかを知っている」
議長は順番にシンとアスランを見回し、最後にミーアに優しく微笑んだ。
シンの断罪に声すら出せずおろおろしていたミーアは、その笑顔を見てホッとし、それからチラリとアスランを見た。アスランは険しい表情のままだ。
「しかしアークエンジェル…いや、きみの友人のキラ・ヤマトに限って言っても、そうだな、私は実に不幸だったと思う。気の毒に思っているよ」
「キラ・ヤマト…」
シンは唐突に出てきたその名前を呟いた。
「それが、フリーダムの…?」
「そうだ。きみが討ったパイロットだよ」
「不幸とはどういうことです?」
アスランは2人の会話にはかまわず、議長に尋ねた。
「うん。あれだけの資質、力だ。キラ・ヤマトは本来戦士なのだ。モビルスーツで戦わせたら、かなう者はないというほどの腕の」
「ふん」
シンが不機嫌そうに鼻を鳴らした。
(だが確かにヤツは強かった…誰よりも)
そして自分はその最強のパイロットを確かに討ったのに、あれ以来なぜかもやもやした気持ちが晴れないでいる。それがたびたび彼を苛立たせていた。
「なのに誰一人、自分自身すらもそれを知らず、知らぬが故にそう育たず、そう生きず、ただ時代に翻弄されてしまった」
「いいえ、キラは…!」
(戦いに巻き込まれ、仲間を守るために戦い、悩みながら戦い抜いた)
アスランは友の優しげな、少しはにかむような笑顔を思い出した。
無邪気で明るく、暢気で甘ったれだった幼い日の彼女の姿も。
(キラは、戦いなんかとは一番無縁なはずだったのに…)
「あれほどの力、正しく使えばどれだけのことができたかわからないというのにね」
それを無駄にしてしまった…デュランダルはアスランの言葉を遮って言った。
「結局のところ、力に溺れ、力に奢り、力に頼って、力を振るった挙句、その力を凌駕する者に討たれて果てたのだ」
議長は「凌駕する者」であるシンを見つめた。
「本当に不幸だった。誰でもそうだが、もっと早く自分を知っていたら…きみたちのようにその力と役割を知り、それを活かせる場所で生きられたら」
それを聞いたミーアがシンに見られないようにうんうんと頷いている。シンとアスランの激しい応酬をハラハラしながら見守っていた彼は、ようやく議長がイニシアチブを取り戻した事にほっとしていた。
「そうすれば悩み苦しむこともなく、その力は称えられて幸福に生きられただろうに」
「幸福…」
シンがデュランダルの言葉を繰り返した。
「そうだよ。人は自分を知り、精一杯出来ることをして役立ち、満ち足りて生きるのが一番幸せだろう?」
先ほどから繰り返される「役割」という言葉がアスランの心にやけに引っかかる。
(違う。何かおかしい…どうしても噛み合わない、議長とは)
一方シンもしばらく考えこんでいた。
だが、自分にとってはそんなものが自分を幸せにするとは思えなかった。
自分を幸せにするもの…それはシンにとってはたった一つだけだ。
「俺…自分にとっては、平和な世界が訪れるこそが幸福です」

シンの言葉に、デュランダルは「わかっているよ」と頷いた。
「この戦争が終わったら、私は是非ともそんな世界を創り上げたいと思っているのだよ。誰もが皆、幸福に生きられる世界になれば、もう二度と戦争など起きはしないだろう。夢のような話だがね」
(誰もが満ち足りて、幸福になれば戦争はなくなる?本当に?)
アスランが考え込んでも、デュランダルはお構いなく先を続けた。
「だが、必ずや実現してみせる。だからその日のためにも、きみたちにも今を頑張ってもらいたいのだ」
アスランの心はもはや疑念の渦で一杯だった。
議長やシンが「平和な世界」を求めるというのはわかる。
けれど議長は、それこそが「誰もが幸福に生きられる世界」だと言う。
(そもそも、全ての人々を満足させる事などできるの?)
「今度こそ本当に、戦争のない平和な世界になるのなら…」
やがてシンが言った。
「それを手に入れるためなら、俺は戦います。どんな敵とも」
シンはそのまま、アスランを振り返った。
「あなたも戦いますよね?アスラン」
アスランは唇を噛んだ。
「あなただって一度は議長の嘘を受け入れて戦うと決めたんだ。今更自分だけが正しくて潔白だなんて言わないでください」
シンが人々を騙している「偽者」を睨みながら言うと、ミーアは脅えたように議長の後ろに隠れた。
「アスラン…きみはたおやかで美しい女性ではあるが、きみもまた、比類なき優れた戦士なのだ。戦争を終わらせ、平和を手にするために、どうか私に力を貸してほしい。我々と共に戦ってはくれないだろうか?」
アスランはシンの言葉にも議長の言葉にも何も言えず、思わず眼を逸らした。
まるで逃れられない蜘蛛の糸に絡み取られていくような不快感が迫る。
アスランは無意識に胸に下がっている守り石を制服の上から握り締めた。

それだけがたった一つ自分に残された、大切な心の拠り所であるかのように…
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secret
制作裏話-PHASE36①-
種以来、裏切り者の二つ名を持つアスランが本領を発揮する「アスラン脱走」です。
ここは種デスの中でも特に改変したいと思った話の一つであり、色々と趣向と演出をこらし、本編沿いでありながらオリジナル要素をかなり入れ込んでいます。
もちろん基本は「本編ではさっぱり語られなかった主人公のシンの主張」ですが、本編では「うう」とか「ああ」しか言わなかったアスランにも、きちんと自己主張させ、現在の自分の立ち位置を感じ取らせています。

冒頭のガイア搬出シーンは、本編でいきなり色を塗り替えられて再登場したガイアがあまりにも唐突だったので、これをラクスとバルトフェルドが奪取した、という事を匂わせてみました。これがPHASE33のラストで2人が語っていた「レンタル料」です。
実はこの時点ではまだ、メイリンをガイアに乗せることは全く考えていなかったので、この後の展開には書いている自分も少し驚いたものです。だからメイリンがこの場にいたのは全くの偶然(単にメイリンがアスランの助け手となるので、何気なく配しただけでした)なのです。

シンははしゃぎまくっていた本編と違い、デスティニーという新たな力を冷静に見つめています。一方アスランは本編同様、議長に舌戦を挑みます。
しかしここで、逆転ならではのテイストが加わります。
それはシンが議長に牙を剥くこと。これは本編のシンでは考えられないことです。

議長は、「キラたちも想いが同じならなぜ自分の元に来ないのか」と言ってアスランを黙らせようとします。自分が暗殺しようとした彼らが自分を信じないことがわかっていて、敢えて言っているのです。一方アスランは、確信の持てないこと…議長がラクスを暗殺しようとしたという事を口に出せず、グレーのままです。だから黙らされてしまいます。

しかしシンはここで中立に立ち、客観的視点を提示するのです。アークエンジェルが降伏しなかったのはカガリを乗せているため。そして降伏されればカガリの立場を図らねばならず、国際的にも面倒な事になる…こう言わせる事で、シンが頭脳明晰であり、感情的に見えて論理的類推に長けていることを示しています。

さらに、議長に対しては「デストロイを倒したフリーダムをなぜ消したのか」と詰問します。
これは本編のシンも聞いて然るべきだと思います。何しろ本編ではデュランダルの思惑ってほとんどわからないですから、こういう機会にシンから質問をぶつければ、主人公は面目躍如、ラスボスとしてはその片鱗を少し覗かせられる…と、一石二鳥だと思うんですがね。

そして彼らを「テロリスト」と断じる議長の言葉を聞き、アスランは自分の言葉を刃として受けることになります。議長の主張には万人に受ける正義があるように見えてしまいます。

けれどここでもシンのクレバーさが顔を見せます。
議長の綺麗事と大義を嘲り、「肝心なところでアークエンジェルが出てきて邪魔をしないよう」片付けたかったんじゃないですかと言うのです。それは即ち、議長が「邪魔なラクス・クラインを始末したい」と思っていることを遠まわしに示唆しているのです。

読者に対しては、シンがこういう事で、既にこの時点で議長の「方法」は決して「清廉潔白ではない」と認めていることを示しています。さしもの議長も、シンに対する認識を改めざるを得ないと思い、気まずい沈黙が訪れます。

そして、私が一番入れたかったシーンへと突入します。
それはシンがミーアの正体を暴くというもの。
これは主人公なればこそ、絶対欲しかったシーンです。
ことにミーアの決着にシンは立ち会えませんから、むしろここで主人公としてガツンとやらせたかったのです。

そして本編では完全な「死に設定」だった、「ルナマリアはミーアの正体を知っている」という布石がここで生きました。PHASE35では、ルナマリアはシンを誤魔化したように見せかけ、しかし実はその後、シンに呼び止められて白状させられていた…ということが回想方式で明かされるのです。回想とはただのバンクではなく、効果的に使うべき演出手段なのです。

実は、もとはシンはルナマリアから直接聞いたのではなく、ルナマリアの言葉をヒントに自分で調べた、としていたのですが、それでは見せ場もない上に不自然ですし、ルナマリアとシンの会話も書きたかったので加筆修正しました。それによって、PHASE27で「シンに相談したい」と思いながらできなかったルナマリアの気持ちを救ってあげたかったので、今回の修正でよくなったと思います。

けれどこのシーンの真の目的は、単にミーアを貶めるという事ではありません。一番の見せ場は、「正しい事を正しいと主張してきたアスランが、なぜこの嘘を認めたのか」と、シンがアスランに突きつけることなのです。
だからこそシンにはこれまで、ネオの嘘に憤り、自分の嘘に心を痛め、タリアの嘘をせせら笑わせてきました。すべてがこのシーンへの伏線でした。シンはアスランの心の中にも「ひっくり返る正義」があることを認めさせることで、自分の信じる道へと進もうとするわけです。

同じく、アスランにもこの「痛み」は必要だったと思います。自分が信じた道がいつしかまた見失われ、ただの「戦う人形」になりつつあることに気づいてしまうのです。

逆デスではさらに、こんな風に互いに自分の立場と気持ちを吐露した2人をぶつけてみました。
アスランは道を誤った父を思い出し、シンは力がなかった自分の過去を語ります。シンがどれほどの苦しみを抱えているか、本編のアスランはついに知る事がなかったので(アスランが知っているのは、シンがオーブ戦で家族を失った事と、オーブ、そしてアスハに対して強い憤りを持っていることだけ)、逆転では爆発させました。だって最終決戦で、アスランはシンに「おまえは本当は何が欲しかったんだ?」と聞いていましたが、私は正直「はぁ?」でした。「つーかコイツ、そういう大切な事をちゃんとシンに聞いたことあったっけ?」と疑問に思ったからです。聞いてないですよねー、全然。ダメ出しは一杯してたけど。

だからここでシンの本音をアスランに向かって吐露させたかったのです。けれど、答えを探し続けているアスランは「人からもらう答えではいけない」と諭します。でももはやその言葉は届きません。だって、アスランも実は立派な嘘つきだったのですから。
アスランは、ここで完全にシンとは行く道が分かたれたと悟ってしまいます。願いは同じなのに、です。

そして私が一番書きたかったのが、「嘘でも偽りでも、最後に手に入るのが本物なら、俺はかまわない!」というシンのセリフです。
議長のやり方は決して正しくはありません。
けれど、これまで多くの人が「平和な世界を」「ナチュラルとコーディネイターは理解し合い、手を取り合うべき」と言いながら、実際には何もできなかったことを、デュランダルは独自の方法で着実に推し進めています。シンは彼のその手腕を買ったのです。彼の持つ「力」を買ったといえます。
ウズミの理想を語る言葉で家族を失い、カガリの青臭い言葉に憤り、アスランの正しい言葉に苛立つシンにとって、綺麗なだけではないながらも、目標に向かって邁進する議長は信じてみようと思わせるに足る、「実現力のある」人間だった…だからその黒い部分を理解した上で、「清濁併せ呑む」道を選んだのです。暗い過去を持ち、「力」に焦がれ、無力な理想などより実現力のあるリーダーを選んで支える事を決める…これぞ「ダークヒーロー」の醍醐味ではありませんか。
決して本編のように、「自分を認めてくれる人に尻尾を振ってついていった」などという不本意な事ではないのです。シンにはシンの考えがあり、強い信念があるとしたかったのです。

これだけのヤマがあった後に、議長の「幸福な世界」論は蛇足に思えますが、実際本編にある問答ですし、この後のデスティニープランの基礎となる考え方なので省くわけにはいきませんでした。

追い詰められたアスランは、思わず服の下にあるハウメアの石を握り締めます。本編でも心の拠り所としてこういう風にアイテムを使って欲しかったのですが、皆無でしたね。
になにな(筆者) 2011/12/14(Wed)00:20:23 編集
Natural or Cordinater?
サブタイトル

お知らせ
PHASE0 はじめに
PHASE1-1 怒れる瞳①
PHASE1-2 怒れる瞳②
PHASE1-3 怒れる瞳③
PHASE2 戦いを呼ぶもの
PHASE3 予兆の砲火
PHASE4 星屑の戦場
PHASE5 癒えぬ傷痕
PHASE6 世界の終わる時
PHASE7 混迷の大地
PHASE8 ジャンクション
PHASE9 驕れる牙
PHASE10 父の呪縛
PHASE11 選びし道
PHASE12 血に染まる海
PHASE13 よみがえる翼
PHASE14 明日への出航
PHASE15 戦場への帰還
PHASE16 インド洋の死闘
PHASE17 戦士の条件
PHASE18 ローエングリンを討て!
PHASE19 見えない真実
PHASE20 PAST
PHASE21 さまよう眸
PHASE22 蒼天の剣
PHASE23 戦火の蔭
PHASE24 すれちがう視線
PHASE25 罪の在処
PHASE26 約束
PHASE27 届かぬ想い
PHASE28 残る命散る命
PHASE29 FATES
PHASE30 刹那の夢
PHASE31 明けない夜
PHASE32 ステラ
PHASE33 示される世界
PHASE34 悪夢
PHASE35 混沌の先に
PHASE36-1 アスラン脱走①
PHASE36-2 アスラン脱走②
PHASE37-1 雷鳴の闇①
PHASE37-2 雷鳴の闇②
PHASE38 新しき旗
PHASE39-1 天空のキラ①
PHASE39-2 天空のキラ②
PHASE40 リフレイン
(原題:黄金の意志)
PHASE41-1 黄金の意志①
(原題:リフレイン)
PHASE41-2 黄金の意志②
(原題:リフレイン)
PHASE42-1 自由と正義と①
PHASE42-2 自由と正義と②
PHASE43-1 反撃の声①
PHASE43-2 反撃の声②
PHASE44-1 二人のラクス①
PHASE44-2 二人のラクス②
PHASE45-1 変革の序曲①
PHASE45-2 変革の序曲②
PHASE46-1 真実の歌①
PHASE46-2 真実の歌②
PHASE47 ミーア
PHASE48-1 新世界へ①
PHASE48-2 新世界へ②
PHASE49-1 レイ①
PHASE49-2 レイ②
PHASE50-1 最後の力①
PHASE50-2 最後の力②
PHASE50-3 最後の力③
PHASE50-4 最後の力④
PHASE50-5 最後の力⑤
PHASE50-6 最後の力⑥
PHASE50-7 最後の力⑦
PHASE50-8 最後の力⑧
FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開

制作裏話-はじめに-
制作裏話-PHASE1①-
制作裏話-PHASE1②-
制作裏話-PHASE1③-
制作裏話-PHASE2-
制作裏話-PHASE3-
制作裏話-PHASE4-
制作裏話-PHASE5-
制作裏話-PHASE6-
制作裏話-PHASE7-
制作裏話-PHASE8-
制作裏話-PHASE9-
制作裏話-PHASE10-
制作裏話-PHASE11-
制作裏話-PHASE12-
制作裏話-PHASE13-
制作裏話-PHASE14-
制作裏話-PHASE15-
制作裏話-PHASE16-
制作裏話-PHASE17-
制作裏話-PHASE18-
制作裏話-PHASE19-
制作裏話-PHASE20-
制作裏話-PHASE21-
制作裏話-PHASE22-
制作裏話-PHASE23-
制作裏話-PHASE24-
制作裏話-PHASE25-
制作裏話-PHASE26-
制作裏話-PHASE27-
制作裏話-PHASE28-
制作裏話-PHASE29-
制作裏話-PHASE30-
制作裏話-PHASE31-
制作裏話-PHASE32-
制作裏話-PHASE33-
制作裏話-PHASE34-
制作裏話-PHASE35-
制作裏話-PHASE36①-
制作裏話-PHASE36②-
制作裏話-PHASE37①-
制作裏話-PHASE37②-
制作裏話-PHASE38-
制作裏話-PHASE39①-
制作裏話-PHASE39②-
制作裏話-PHASE40-
制作裏話-PHASE41①-
制作裏話-PHASE41②-
制作裏話-PHASE42①-
制作裏話-PHASE42②-
制作裏話-PHASE43①-
制作裏話-PHASE43②-
制作裏話-PHASE44①-
制作裏話-PHASE44②-
制作裏話-PHASE45①-
制作裏話-PHASE45②-
制作裏話-PHASE46①-
制作裏話-PHASE46②-
制作裏話-PHASE47-
制作裏話-PHASE48①-
制作裏話-PHASE48②-
制作裏話-PHASE49①-
制作裏話-PHASE49②-
制作裏話-PHASE50①-
制作裏話-PHASE50②-
制作裏話-PHASE50③-
制作裏話-PHASE50④-
制作裏話-PHASE50⑤-
制作裏話-PHASE50⑥-
制作裏話-PHASE50⑦-
制作裏話-PHASE50⑧-
2011/5/22~2012/9/12
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