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機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
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「エターナル…」
ルナマリアが激しい砲撃戦を繰り返しているミネルバから少し離れ、ムラサメと交戦しながら後方を警戒していると、その戦艦は現れた。
(前大戦の英雄…本物のラクス・クラインが乗っている)
ルナマリアはきゅっと唇を噛み締めた。
(アスランが信じている人であっても、これは敵よ!)
ルナマリアは離脱すると加速してエターナルに向かった。
「モビルスーツ接近、インパルスです!」
「叩き落せ!」
バルトフェルドの命でダコスタがミサイルの全門斉射を行ったが、ルナマリアは時にミサイルを見事に撃ち落してブリッジを目指した。
ラクス・クライン…彼こそがこの戦いの枢軸に間違いなかった。
(彼さえいなくなれば…この戦いは終わる!)
ルナマリアは自分を狙う大量のミサイルとビームをかいくぐり、さらに加速すると、ついにメインブリッジに到達した。
(もう二度と外さない)
狙いを定め、トリガーに指をかける。
(これで…いいのよね?)
ルナマリアの脳裏に、シンとアスランの姿が浮かんで消える。
「これでいいのよね…シン!」
しかしその瞬間、紅い影がインパルスに襲い掛かった。

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「うっ…きゃあっ!!」
「ぐっ…」
激突した両者は摩擦のない宇宙空間を、激流に飲まれた木の葉のようにくるくると回り、やがてスラスターをふかして姿勢を保ち直した。
ルナマリアが顔をあげると、目の前には何度も刃を交えた機体があった。
見慣れない色だが、四足のモビルアーマー形態のこれは…
「ガイア!?」
ルナマリアは、警戒を解かずにライフルを構えたままだ。
やがてMA形態のガイアも制動を終え、インパルスに向き直った。
メイリンは手早くチャンネルを合わせると、インパルスと繋ぐ。
「姉さん?姉さんだろ!?」
その懐かしい声にルナマリアは息を呑んだ。
「…メイ…リン?あんた、メイリンなの?」
驚きのあまり眼が廻る。
(どうしてこんなところにメイリンが!?)
それも、彼が奪取に関わったと疑われているガイアに乗っているなど。
「嘘…なんで…」
ルナマリアは無意識のうちにのろのろと弟にライフルを向けた。
「なんで…あんたがそんなものに乗ってるの!?」
「姉さん、もうよせ! 何で戦うんだ!」
ガイアがビームブレードを展開させず、武器を持たないMA形態のままなのは戦意がないことを示すためだ。
「こんな戦い、おかしいと思うだろ?なぜ議長はあんなものを撃つんだよ!」
「…だって…議長は…」
そこまで言って、ルナマリアははっと我に返った。
(いけない、今は戦闘中なのよ)
インパルスはしっかりとライフルを構え直した。
「黙りなさい!」
「姉さん…?」
「我々はザフト軍人よ。命令に従って、あの艦を討つ!」
軍人としての責務を信じ、凛としたルナマリアの声に一瞬たじろいだメイリンも、負けじと怒鳴り返した。
「じゃあ、姉さんは議長の示す世界を信じてるのか!?」
「なんですって?」
「議長の示す世界はおかしいよ!僕は遺伝子の適性が合わないという、ただそれだけの理由で、パイロットコースを脱落させられたんだ!」
ルナマリアはアカデミーで、成績が悪かったわけでもないのにある日突然脱落したと言って、「僕はもう、パイロットにはなれない」とひどく落ち込んでいたメイリンを思い出した。
「可能性が閉ざされ、努力が否定される、夢を見てはいけない世界。それがデスティニープランが創る『平和な世界』なんだよ!」
メイリンは興奮のあまり、じわりと涙が浮かんだ自分を叱咤した。
(くそっ、泣くな!泣いちゃダメだ、こんな事くらいで!)
「そんなの、僕は絶対いやだ!」
「メイリン…」
「僕は…絶対…パイロットになる…って…」

「ん?何やってんだい、あの小僧は…」
グフを追い掛け回していたヒルダがふと、この2機のモビルスーツに気づいて足を止めた。
「インパルスか!」
彼女は行きがけの駄賃だとニヤリと笑う。
「マーズ!ヘルベルト!あいつをやるよ。いいかい?」
そう言ってヒルダのドムが素早く攻撃態勢に入った。
「あいよ。お任せ」
「おう」
気のない返事のように聞こえたが、2人は素早くヒルダの機体に機体を重ね、見事にスピードと位置をピッタリ合わせてみせた。
素早さに加えスクリーミングニンバスが噴出し、敵の目を撹乱する。
近づく熱紋反応にルナマリアもメイリンもはっと顔をあげた。
「何?あれは…」
ルナマリアは向かってくる機体を見てライフルを構え直す。
(いけない…姉さんが…!)
メイリンは慌てて彼らを止めようと機体を反転させたが、ヒルダは既にサーベルを構えてインパルスに向かっていた。
「ほらほら!切り裂いてやるよ!」
「うぐっ…!」
インパルスはすんでのところでのけぞって切っ先を避けたが、その途端激しいアラートが鳴った。
(ロックされた!?)
バズーカのビームがインパルスを狙い、ルナマリアはシールドを構える。
その衝撃に耐えたと思った瞬間、間髪入れずに2発目が襲ってくる。
「しまっ…」
バランスを崩し、シールドの構えが甘い。

―― 弾き飛ばされる!

そう思った瞬間、目の前に何かが立ちはだかった。

「何してるんだい、ホーク!」
ルナマリアが気づいた時、目の前にはモビルスーツに変形したガイアがシールドを構えて立っていた。
「メイリン…!?」
「どけ、小僧!」
「どきません!ここは僕に任せてください!」
「バカお言い。そいつはインパルスじゃないか!やれば大手柄だ!」
「お願いします。僕に…!」
3人は彼の不可解な言動に不機嫌そうに黙り込んだが、その間にエターナルが前進していくのを見て、ヒルダがちっと舌打ちした。
「仕方がないね、行くよ。ラクス様を守るのが先だ」
マーズが「ふざけんじゃねぇぞ」と荒っぽく言い捨てたが、メイリンは黙って頭を下げた。

「メイリン…」
ルナマリアは自分を庇った弟を見てライフルを下げた。
メイリンは3機のドムトルーパーと先行するエターナルを見送っている。
「僕は…姉さんと戦いたくない。いや、本当は戦う必要なんかないんだ」
バイザーの向こうで、弟は寂しそうに笑った。
「だけど、今は彼らと行くよ。いやなんだ、どうしても…議長の示す世界に、僕は行きたくない」
やがてガイアはインパルスに背を向けた。
シフトレバーを握ったメイリンは一瞬躊躇し、そして言った。
「僕が、どうしてもパイロットになりたかったのはね…」

―― いつも弱虫の僕を守ってくれた姉さんを、守りたかったからだよ。

弟のその言葉に、ルナマリアの心がグラリと揺らいだ。
(弱虫で、泣き虫で、でも優しいいい子なの…たった1人の、私の弟…)
「メイリン、待っ…」
「またね、姉さん!気をつけて!」
その時、ガイアのマニピュレーターが素早く動いた。
共に訓練を重ねたシンとレイとルナマリアが作り上げた3人だけのサインを、メイリンが知るはずがない。
けれどその手は正確に「ごめん」と示していた。
(いつの間に…あの子…)
ルナマリアの心に、望みながらも取り残された者の痛みが伝わってきた。
けれど次の瞬間ガイアは飛び去り、暗い宙域にはインパルス1機だけが残された。

「キラたちはまだ取り付けないのか?」
アークエンジェルとミネルバの戦いを前にしつつ、ザクやゲイツR、隙あらば取り付こうとするグフと戦うムラサメやアカツキの援護をしながら進んでいくエターナルでは、バルトフェルドが2人の位置を確認させている。
2機とはもはやかなり距離が離れ、分断状態だ。
激しい砲撃の中で揺れる艦に耐えながら、タリアはふと前方のモニターを見て、千載一遇のチャンスが巡ってきた事に気づいた。
(あれを守るフリーダムもジャスティスもいない…今だわ!)
タリアは「マリク!」と操舵手の名を呼んだ。
「左30度回頭!タンホイザー起動!」
その声と同時に、陽電子砲の艦首がせり上がっていく。
「ミネルバ、陽電子砲発射態勢!」
これに気づいたチャンドラが叫び、マリューはいつものようにノイマンに「回避」と命じようとして言葉を飲み込んだ。
「しまった…!」

―― アークエンジェルが動けば、軸線上にエターナルが…!

マリューの顔が恐怖に歪んだ。
避ければエターナルは確実に沈む。
避けなければアークエンジェルもまた、確実に沈むのだ。
「艦長!これでは…!」
その時、ただ1人その事実に気づいたノイマンが振り返った。
彼の瞳に、驚愕と戸惑いに歪んだマリューの表情が写る。
気づいている…ノイマンは、マリューが今、二者択一を迫られ、自分たちが彼女が選ぶ運命の岐路に立っているのだと悟った。
(チャンドラ…ミリアリア…)
彼は装弾を続ける友を、策敵を続ける後輩を見た。
マリューもまた同じく、視線を動かしたノイマンの表情に残酷な事実を見ていた。
ついてきてくれたクルーたちの顔がスライドのようによぎっていく。
けれど今、要であるラクス・クラインをやらせるわけにはいかなかった。
(だけどこんな…こんな結末って…!)
完全に艦首を上げ、こちらを狙っているタンホイザーの砲口が熱せられ、眼に見えないデブリやダストを巻き込んで輝き始める。
(マリュー・ラミアス…それがあなたの選択なの?)
タリアは射程に捉えたアークエンジェルがエターナルを庇い、回避しないことに気づいていた。
(どうやらあなたには、未来を託せる人たちがいるようね)
「なら、これで終わりよ!」
タリアは迷いなく命じた。
「撃ぇ!」
見る見るうちに周りのガスを熱して、陽電子砲が放たれる。
「あ…ああ…!」
マリューが息もできないまま運命を受け入れかけたその時、アークエンジェルの前に、突然何かが飛び出してきた。
それはブリッジの全員に、忌わしい記憶を呼び起こす。
金色に輝く小さなモビルスーツが、白い巨艦の前でシールドを構え、陽電子砲を受け止めたのだ。

「アークエンジェルはやらせん!」

ブリッジでは輝きが眩しくて何が起きたのか誰にもわからない。
それはアカツキで陽電子砲の前に飛び出したネオも同じだった。
永遠にも思える数秒間が過ぎて行き、失われたストライクが熔けていったあの時と同じ時間が経過してもなお、護りの要、アカツキのミラーコーティングは陽電子砲に耐え続けていた。
「…あ…!?」
マリューだけでなく、ノイマンもチャンドラもミリアリアも皆が既視感を持つ中、ネオも光の中に不思議な光景を見た。
それはすっかり見慣れた、居心地のいいあの戦艦での生活…見慣れないクルーたちと戯れ、愛する女と深く結ばれた日々だ。
(なんだ、これは…?俺の…記憶…?)
それはやがて激しい戦いの様相を映し出す。
謎の仮面をつけた、不思議な感覚を持つ男との戦いと、大切なものを命懸けで守れたというこの上ない幸福感と、二度と還れないという絶望感が彼を襲う。
「…ントム…ペイン…」
「…だとすれば…面白い…利用の…」
動かない体と、朦朧とした意識の中で、誰かが喋る言葉を聞いていた。
(鏡の中に俺がいる…傷だらけの顔をマスクで隠すように言われている)
「…ネオ・ロアノーク…階級は?」
再び記憶が流れていく。
3人の子供たちが自分に向かって敬礼している。
「スティング・オークレーだ。どうも。よろしく」
「アウル・ニーダ。ねぇあんた、なーんでそんな仮面かぶってんの?」
「…ステラ…ルーシェ…」
ネオの心に痛みが走る。
(おまえたち…もうどこにもいない…おまえたち…)
3人の子供たちと過ごした時間が駆け巡る。
殺戮人形だろうが、戦闘の道具だろうが、生意気で可愛いヤツらだった。
(だが、利用した…俺には中途半端な同情なんかする資格もないのに…)
赤い瞳の少年が自分を睨みつけている。地獄の業火を背負って。
そこから先はネオの記憶がムウの記憶と重なっていく。
ストロボのようにコマ送りの記憶がネオの脳裏を駆け巡る。
(…俺は…)
彼の意識とは別に記憶が選択されていく。
ムウの記憶が強くなると、ネオの記憶がかすんでいった。
割れるような頭痛が襲う。また、何かを忘れてしまうのだろうか?

―― 忘れちゃだめよ…

彼女の優しい声が届いた。
そしてネオは眼を開き、はっきりと認識する。
(マリュー…俺は!)

「うわぁ!」
陽電子砲が弾き返され、カウンターとなってタンホイザーが爆発した。
ミネルバのブリッジには激しい衝撃が襲い掛かる。
(バカな!リフレクターでもないのに、陽電子砲を弾いた!?)
タリアは無傷のアークエンジェルを見て呆然とした。 
アークエンジェルのブリッジでも、目の前で何が起こったのかわからずに、誰一人口も利けなかった。ただ、航路の異常を感知して鳴り響いたアラートを、ノイマンが止めただけだ。
「撃て!ステーションに近づけさせるな!」
結果として決定打が打てなかったミネルバをやり過ごしたアークエンジェルは、ステーション1の防衛ラインに到達し、切り込んだ形になった。
守備隊はミネルバが止められなかった戦艦の登場に慌てて迎撃態勢をとり、ナスカ級が火線砲を開く。
マリューが今度こそ回避を命じようとした時、アカツキのドラグーンが一斉に放出され、ビーム砲が艦首に集まった。
それはまるでリフレクターデバイスのように各々の出力を上げ、立体的なバリアシールドとなって火線砲はもちろん、ザクのオルトロスを弾き返す。
そこに追いついてきたムラサメ隊が、防衛のため前進してきたモビルスーツに切りかかった。 
「大丈夫だ」
やがてモニターにネオ・ロアノークが現れて笑顔を見せた。
ブリッジの4人はその笑顔を見て不思議な違和感を感じ、マリューがいぶかしそうに「え?」と聞き返した。
「もう俺は、どこへも行かない」
ああ…とマリューが声を上げた。
ミリアリアとチャンドラも振り向いて互いに顔を見合わせ、ノイマンも振り返ってこちらを見た。
「終わらせて帰ろう、マリュー」
彼の言葉に、微笑むマリューの瞳が潤んだ。
「ムウ…」
ミリアリアも嬉しくていつしか溢れた涙を拭き、お人よしで人情家のチャンドラも、ずずーっと盛大に鼻をすすった。
「フラガ少佐」
ノイマンも、マードックやヤマトがさぞ喜ぶだろうとしみじみ思う。
帰ってきたのだ…もうどこにもいなくなったと思った彼が、今度こそ、本当に。

ミサイルが向かってくるのを見て、アスランは一瞬戸惑った。
迎撃するには距離が近くなり過ぎた。判断を誤ったとちりっと苛立つ。
(回避しながら叩き落す…!)
そう決めて構えた途端、ミサイルが見る間に爆発して衝撃を喰らう。
「…うっ!」
アスランは思いもかけない爆発の光に射されて片目をつぶり、次の瞬間には素早く何が起きたのかと状況を把握しようとした。
目の前には、ザクとグフがいた…が、それを認識したアスランはいぶかしんだ。
(…後姿?)
「貴様!またこんなところで何をやっている!?」
その途端、通信機から怒鳴り声が飛び込んできた。
モニターの中では久々に見る戦友が怒り狂って睨んでいる。
「イザーク?」
アスランは呆気に取られ、一瞬言葉を失った。
やがて画面がもう一つ開いた。
「何をって、こいつを落とそうとしてんじゃんかよ」
彼は「なぁ?」とアスランに同意を求めた。
「ディアッカ…」
もう1人の戦友の姿もアスランを驚かせ、なぜ彼らが…と思う。
「俺が言ってるのはそういうことじゃない!」
イザークは横やりを入れてきたディアッカを怒鳴りつけている。
「この3年間、動かない時は梃子でも動かなかったくせに、動くとなったら復隊だFAITHだ脱走だ討伐だと…」
イザークは拳を握り締めて怒りを露にしている。
「挙句の果てにこれかっ!何をやってるんだ、貴様は!」
「だーからぁ…」
言葉もないアスランに代わってディアッカが言う。
「もういいだろ、そんなことは」
ディアッカは今にもジャスティスに飛び掛らんばかりのグフの前に出ると、ライフルを持ち上げてくるくるまわした。
「それより早くやることやっちまおうぜ」
「え?」
アスランがその意味を図りかねて問い返す。
「…ディアッカ!貴様…」
イザークはディアッカが何をする気なのか悟って叫んだ。
「こいつを落とすんだろ?」
今は回りくどい事をしてる場合じゃない…ディアッカとしては素直になれないイザークの気持ちを代弁したつもりなのだ。
「…あ、ええ…」
アスランは上ずった声で答えた。
「キラは?」
ディアッカがそのままジャスティスを促し、イザークにも合図をした。
「先に行ってる。でも…いいの?」
アスランは恐る恐る尋ねた。何しろディアッカには自分同様脱走の前科があるのだ。下手な事をすれば生半可な処分では済まないだろう。
「いいんじゃない?」
ディアッカがぎゃんぎゃん喚きながらも着いて来るグフを確認して言う。
「ダメなもんはダメって事で。シンプルに行こうぜ」

やがて3人はステーションを防衛しているモビルスーツを撃破し、振り返ったキラに追いついた。キラは黒いザクファントムと白いグフの姿に一瞬身構えたが、アスランが敵ではないと告げ、ディアッカが「よう」とモニターに現れると、嬉しそうに笑った。
ステーション1はもう目の前だ。
ザクファントムがファイアビーとビームを放って道を開くと、イザークもしぶしぶ、自分たちを見て果たして友軍機なのか敵なのかと戸惑う守備隊のグフを、ウィップで蹴散らした。
「とっとと行け!落とし損ねたら許さんぞ!」
「アスラン、行こう」
キラはアスランを促すと砲撃を続けるナスカ級を足止めし、ジャスティスはその間に円筒状のステーションに取り付いてミーティアのソードで壁面を斬り裂いた。
アスランはさらにはスピードを上げ、まずは外部、続けて内部とできる限り深くダメージを与えると、あちこちで爆発が起きた。
彼らの破壊を止めようと襲い掛かってくるザクやゲイツRは、小回りの利くディアッカとイザークが片付けてくれた。
キラと共にスラスターを完全に破壊すると、やがてステーション1は完全に沈黙して動きを止め、座標から外れてゆっくりと流れていく。
「一次中継ステーション、停止しました。こちらはこのまま進みます。艦隊は作戦通り基地へ向かってください」
ステーションの沈黙を確認したキラが、ダイダロスに向かっている本隊のソガ一佐とアークエンジェル、そしてエターナルに通信を入れると、その通信内容を捉えたディアッカが思わずぴゅーっと口笛を吹いた。
「何、あいつが司令?」
「オーブ艦隊のね。実質的な指揮官はラクスだけど」
そう答えたアスランに、ディアッカは「へぇ。やるね」と笑った。

「なぜあんな事を言ったんだ!」
議長がらみになると相変わらず口調を荒げるレイを置き去りにして、先にロッカールームに引き上げたシンはベンチに座り、ため息をついた。
(オーブを滅ぼさなければ手に入らない平和…か…)
あの頃はそれが何より尊いなんて、気づきもしなかった幸せな日々。 
「あなたは本当はオーブが好きだったんじゃないの?」
「俺たちは、こんな形でオーブを失わせたくないんだ!」
忌々しくも懐かしい声の後に、さらに忌々しい男の言葉が蘇った。
「シン、頼む!行かせてやってくれ!」
(…俺はあの時、なぜあいつの言葉を聞いたんだろう?)
シンは、フリーダムを見逃して去った自分を思い出して軽く額を抑えた。
(そして、オーブはどうなる?)
もし議長がオーブを手中に納めたらどうするか。
アスランやメイリンを簡単に斬り捨てた議長ならどうするか。
「そうだよ、シン」
シンは迷うことなく答えた議長を思い出し、眉をひそめた。
(議長は、本気でオーブを地上から消し去るつもりだ)
その先に、デスティニープランによる平和な世界があるから、と。
(俺の…幸せだった過去が眠るあの国を滅ぼして)
シンはポケットに入っている携帯を取り出し、マユの声を聞いた。
「はい、マユで~す。でもごめんなさい。今マユはお話できません」
マユ…おまえとは、もう二度と話すことも会うこともできない。
過去に囚われ、過去から一歩も抜け出せなくなった哀れな妹。
おしゃまで、生意気で、気分も表情もコロコロ変わったマユ。
全てを失ったあの日、体さえ残らなかった。たった1つ、細い…腕しか…

―― ドクン…

その瞬間、シンはこみ上げてくる不安感に絡め取られ、捕えられた。
(…しまった!)
もうこんな症状は出ないと思ったのに…シンは必死でフラッシュバックを押さえ込もうとしたが、冷や汗と震えが襲い、視野が狭まってブラックアウトが始まる。
(くそっ…こんな時に…)
久々のフラッシュバックは、かなり激しい発作をもたらした。
砲撃音、爆風、血まみれの両親、ちぎれた腕…骨と肉と血…吐き気がする。
寒い。暑い。震えが止まらない。気が遠くなる。
怖い、怖い、怖い、怖い…助けて、父さん、母さん…怖いよ…
マユは?マユはどこに行った?俺は?俺も死んだんじゃないか?

「…シンッ!!」
頬に感じた痛みにはっと顔をあげると、レイが自分の名を呼んでいる。
「しっかりしろ!大丈夫か?」
「あ…ああ…」
「深呼吸しろ。ゆっくりだ。落ち着け」
いつの間にかしゃがみこんでいたシンはすぅっと息を吸い、手で口をぬぐった。
「全て終わったことだ。おまえは今、ちゃんとここにいる」
レイが背中をさすってくれ、やがて落ち着いたシンは彼を見た。
「…レイ…おまえ……知ってたのか?」
「フラッシュバックか?知っている。夜驚症状も何度も見た」
夜中に飛び起きて暴れまくり、しまいに気を失う。
泣きながら誰かに「ごめん、ごめん」と謝り続けるシンを、なのに翌日には何事もなかったように全てを忘れてしまい、明るく笑っているシンを、レイは何度も見てきた。
「だから、いつもおまえとの同室を願い出た」
レイは呼吸を整えるシンに言った。
「おまえの発作は激しくて、他のヤツが見たら仰天する。それにヘタに個室になって、1人にするのも心配だったからな」
だが、ここ最近はこんなひどい発作はほとんどなくなっていた。
この間もただの悪夢だったようだし…そう言いながら、手慣れた様子でドリンクとタオルを持ってきてくれたレイを見て、(ああ…そうか)とシンは思う。
そういえばこのレイの行動…この光景はアカデミー以来、何度も見た。
いや、実際には何も覚えていないのだが、自分の記憶に刻まれているのだろう。
「なんで…何も聞かなかった?」
「言いたくないことを、わざわざ聞く必要はないだろう」
忘れてしまいたいおぞましい記憶を思い出すことがどれほど辛く苦しいか、レイは誰よりも知っていた。それに彼自身も急激な老化に伴う不調に日々、苦しめられているのだ。そんな彼は、シンが隠したがる症状について根掘り葉掘り聞く気など毛頭なかった。
「お互い様だ。気にするな。俺は気にしていない」
ため息をつくシンを気にする様子もなく、レイはボードを開いて戦況を確認している。
(隠し通せていると思っていた…)
レイは全てを知りながら何も言わず、聞かず、ただ見守っていてくれたのだ。
何かが胸にこみ上げ、シンは慌ててもう一度タオルで顔を拭った。
「そんな事より、俺たちもそろそろ出撃だぞ。しっかりしろ」
「ああ、もう大丈夫だ。状況は?ミネルバはどうした?」
シンはタオルをランドリーボックスに投げると、努めて平静に問い返した。
「ミネルバも奮戦したようだが、ステーション1は落とされた」
「そうか」
(なら、ひとまずレクイエムは撃たれない)
心のどこかでほっとしている自分に気づき、シンはうつむいた。
「今はこちらへ向かっているアークエンジェルを追撃している」
「向かっている…やつらが、メサイアに…?」
そうだ、とレイは答えた。
「キラ・ヤマト…そしてアスラン・ザラもだ」
(アスラン)
シンがその名を反芻する。
(ルナ…おまえは、戦場でアスランと出会ったら…)
「嘘つきっ!」
怒りを露にした彼女を思い出すと同時に、鈍い痛みがシンの心を抉った。
ルナ…あんなに怒って…泣かせてしまった…俺が真実を告げたばかりに。
(でも、告げずにはいられなかったんだ、ルナ)

「心配しなくとも、ルナマリアは無事だ」
その時、レイがまるでシンの考えている事を読んだかのように言った。
シンは驚いてレイを見る。
「もっと信じてやれ。彼女は強い」
レイはふっと笑う。
「あいつは…いいヤツだ」
「…うん」
シンはいつだったかルナマリアも「いいヤツよ、レイは」と言っていたことを思い出して、寂しそうに笑った。
やがてレイは真顔で言った。
「奴らはこのままダイダロスへ向かう主力隊と合流し、レクイエムを破壊して、オーブのその力を世界中に見せつける気だ」
シンは再び黙り込む。
「そうなればまた、世界は割れる」
「オーブは…」
「おまえが救ってやるんだ。あの国を」
「救う?」
シンがその言葉に反応して考え込んだ。
(レクイエムが放たれればひとたまりもない、小さな国…なのに、アスハたちはそれを守ろうとこうして今も必死に抗っている)
「俺は…議長の言う事がよくわからない」
「今さら何を言ってる!」
レイがシンの肩を掴んで自分の方を向かせた。
「世界を変えるために戦うと決めたろう?人の欲望や業の果てに生まれたあの少女や、俺のような人間を、二度と作らないために」
「わかってる…おまえが望む世界もわかってるよ」
シンは拳を握り締めた。
「けど、オーブを滅ぼさなければ手に入らない平和って、一体何なんだ?そこまでしなきゃ、俺たちは平和な世界に行き着けないっていうのか?」
「…だから、議長にあんな事を言ったのか。議長を…ギルを討つなどと…」
レイは手を下ろした。
(嘘でも偽りでも、最後に手に入るのが本物なら、俺はかまわない!)
自分はあの時、確かにそう思った。
戦いに明け暮れる、嘘と偽りにまみれたこの世界が変わるならと。
(でも…俺が本当に望んでいたのは…)
「役割を果たしてくれ、シン」
レイが眉を顰めて言う。
「…役割?」
「議長の望む役割を果たして、平和な世界を、新しい世界を手に入れるんだ」
シンは戸惑うように首を振った。
「俺は…役割なんて…」
「俺たちにできるのは戦うことだ。歪みきったこの世界を変えるために」
レイはいつになく熱心に言う。それはもう懇願と言ってよかった。
「新たな世界を目指す議長は、役割を果たさない者を決して許さない。だからやるべき事をやるんだ、シン。俺たちにはそれができるんだからな」
「おまえ…」
シンはレイを見つめる。
(俺たちが戦っているのは、議長が望んだ役割だからだと言うのか?)
そしてやはりそれが「役割」と言った偽者のラクス・クラインを思い出した。
「…俺は、新しい世界では生きられないが…」
レイがふと、ひどく寂しそうに呟いた。
「戦争で苦しんだおまえには、戦争のない世界で生きる権利がある」
レイのその言葉に、シンはもうそれ以上何も言えなかった。 

「目標、距離8000」
キラからの状況報告を受け、目標に向かう艦隊を率いる副旗艦のクサナギは、ダイダロス基地に近づきつつあった。
ステーション1を目指すアークエンジェルやエターナルほど足は早くないが、彼らが防衛隊の眼をひきつけてくれているおかげで大きな障害もなく基地は既に射程に入っている。
善戦するムラサメがグフやザクと鎬を削る中、ソガは陣を張って着々と基地を包囲した。
やがて破壊されたまま、修復さえ終わっていないダイダロス基地が各艦の射程に収められた。
僚艦を下がらせ、ソガは特装砲を起動させた。
照準はもちろんレクイエムの発射口である。
「ローエングリン照準!撃ぇ!」
外しようのない距離で陽電子砲が発射されたが、次の瞬間、アマギもソガも悔しさのこもったため息をつくことになった。
ルナマリアがブラストインパルスで突入した時にはザムザザーが守っていた発射口には、陽電子リフレクターが新たに装備されていたのだ。
ローラン隊の仕事にはレクイエムの修復だけではなく、防衛力を向上させるという目的も含まれていたということだろう。
「ああ…」
弾き返された陽電子砲を見てアマギが溜息ともつかぬ声をあげた。
やはり一筋縄ではいかない…しかも続けてレーダーに感ありというオペレーターの言葉に、彼はソガ共々顔をあげてモニターを見上げる。
彼らが気づいたのは、とてつもなく大きな移動物体だった。
要塞であるメサイアが、月面を滑るように移動し始めたのだ。
既にコンディションレッドが発令されている要塞内では、全ての攻撃オプションが起動し、ダイダロス基地に向かう艦隊を狙っている。
「ネオ・ジェネシス、スタンバイ」
その、いかにも禍々しい名がオペレーターからもたらされ、かつて月面基地を焼き払った忌わしいγ線兵器が再び起動を始めた。

「艦長!オレンジ186より進行する巨大構造物」
ミリアリアが移動を始めたメサイアをモニターに映し出す。
「…要塞?」
マリューが不気味にねじれたそれを見て言った。
「何か来る!」
「これは…」
キラと共に月面を進んでいたアスランも、同じ月面を何か巨大な物が動き出したことに気づいて分析を始めた。
「…メサイア」

「目標、射程まであと20」
「ニュートロンジャマー・キャンセラー起動。ニュークリアカートリッジ、激発位置へ」
司令室では、発射シークエンスが着々と進んでいく。
かつてヤキン・ドゥーエに建造されたジェネシスに比べればやや小ぶりな照準ミラーが重機によって準備され、設置された。
起動も早く、オリジナルのジェネシスよりもチャージが早い。

「高エネルギー体収束」
ミリアリアが熱紋反応を伝える。
「まさか、艦隊を…!?」
キラは、そのエネルギーが自分たちが合流しようとしているオーブ艦隊を狙うものだと気づいてスピードを上げた。
カガリから与った大切な兵だ。その命を奪わせるわけにはいかない。
しかし、ネオ・ジェネシスはすでに獲物をその手に捉えていた。

「目標、射程内に入ります」
オペレーターが告げると、議長は全く戸惑わず、間髪入れずに言った。
「撃て」
かつてパトリック・ザラが同じように「ジェネシスを撃て」と命じた時には、周囲の者たちに射線上の友軍にはまだ退避命令を出していないと抗議させたのに、この時の議長のあまりにも冷酷な声は、周囲にその抗議さえもさせず、口すらも開かせなかった。
オーブ艦隊と戦っていたナスカ級、ローラシア級、モビルスーツ…何も知らない彼らも今、死神の鎌をつきつけられていた。
月面を凄まじい速さのエネルギー体が貫いていく。
エターナルやアークエンジェル、そしてキラやアスラン、彼らを追走するイザークとディアッカもこの死の光を見た。
(あれは…一体?)
メイリンもまた、ガイアのコックピットから、一直線に伸びる忌わしい光の矢を見つめている。

「機関最大!回避!」
一方狙われたオーブ艦隊では、ソガが艦隊に回避を命じたが、一体どれだけの艦が光に飲み込まれたのかはわからなかった。
クサナギも光の中に消え、ほとんどの艦と連絡が取れなくなった。
キラはソガやアマギに呼びかけたが応答はなく、雑音しか返らない通信機に苛立って、パネルをバンッ、バンバンと続けて叩いた。
戦闘中であっても常に冷静で、温厚なキラが珍しく怒っていた。
「くそっ!あんなものを伏せてあったとは…」
バルトフェルドも渋い顔だ。
ラクスは「被害状況は?」と確認させている。
(一次中継点を機動力と戦力に勝る僕たちに討たせておいて、こちらはこちらでぬかりはないというわけか…さすがだね、議長)
再び形勢を逆転されたラクスは拳を握り、悔しそうに唇を噛み締めた。

ちょうど母艦に戻り、デュートリオンビームのチャージを受けていたルナマリアも、その凄まじい光を見つめていた。
司令部からは射線からの退避命令はなく、友軍機のシグナルが続々とロストされている。チャージシークエンスを終えたアビーに状況を尋ねたが、戦闘宙域は大混乱中で情報どころではない。
(レクイエムだけでなく、あんな兵器まで…議長は本気でオーブを…)
シンの国を滅ぼして、デスティニープランによる平和な世界を目指す…
(けれど、メイリンはそんなものはおかしいと言った。遺伝子が全てを…運命を決める世界なんておかしいと)
だけど…ルナマリアは歯を食いしばって俯いた。 
(レイは、クローンの自分を、エクステンデッドを生み出したこの世界がおかしいって…世界は変わらなければいけないって言ったわ)
ざわめく心には疑念が溢れ、ルナマリアを不安で一杯にさせた。
(誰が正しいの?何が真実なの?わからない…わからないよ…シン…)

「艦隊が…こんな…」
アスランも甚大な被害が出ただろうと予想し、呆然と見つめている。
それだけではない。射線上にはザフト艦やモビルスーツも多数いた。
その強引な攻撃は父が放ったジェネシスを否応なく思い出させる。
(同じだわ…敵がナチュラルではなくなっただけで、結局…同じ…)
戦いが行き着く先は、いつもこんな酷い状況になってしまうのか。
(人々は皆、あんなに苦しい思いをして戦争はいやだと思ったはずなのに)

「隊長…あの手書きのノートにあったメモを覚えてる?」
ラクスがぽつりと呟くと、オーブ艦隊の被害を至急報告させろとダコスタに指示していたバルトフェルドが怪訝そうに振り向いた。
「なんだ?こんな時に」
ラクスはかまわず言った。
「人は、世界のために生きるのではない。人が生きる場所、それが世界だということを…」 
「ああ、そういやそんな事が書いてあったな」
バルトフェルドはそれがどうした、と聞いた。
「人が生きているからこそ、世界は作られていくものなんだ。でも彼は、世界そのものを都合よく創り変えようとしている…」
ラクスは言った。
「議長はやはり履き違えている。止めなければ」

「オーブ艦隊はこれで大分戦力を失ったろう」
司令室からの情報を見てレイが言った。
シンもレイも、既にパイロットスーツに着替えて待機している。
シンはモニターを見て、オーブ艦やモビルスーツの残骸が月面に落下している戦闘宙域を見た。動かなくなった友軍機も多い。
「行くぞ。俺たちの手で終わらせよう」
「ああ、行こう」
シンは力強く頷いた。
(これが、俺が選んだ道だ)
レイが望む世界のために…俺が失った世界のために…議長が示す、これほどまでに血塗られ、犠牲となった屍を踏み越えた先にある世界は、平和だと信じて。

「後方よりミネルバ接近。距離、22」
艦隊の甚大な被害に呆然としていたアークエンジェルも、陽電子砲を弾かれて遅れていたミネルバに再び捕捉された。
「次発のチャージ急げ。デスティニー、レジェンド、発進」
デュランダルはシンとレイの出撃を命じた。
さらに動きを止めたメサイアに防御シールドを張るよう言う。
モニターにはこちらに向かうジャスティスとフリーダムが映っていた。
(シン・アスカ…きみは知っているはずだ…抗えない運命もあることを。運命そのものを変えなければ、人は救われないこともあるのだと…)
さらに、彼らの後方に姿を見せたアークエンジェルとエターナルを見て、議長はふっと楽しげに笑った。
かくれんぼが大好きなきみも、とうとうここまで来たか…
「さあ、今度こそ消えていただこう。ラクス・クライン」
そして永遠に語り継がれる、伝説の逆賊と成り下がるがいい。

「レイ・ザ・バレル、レジェンド、発進する!」
「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」
シンは出撃と同時に出力を最大に上げ、光の翼を広げた。
けれどこんなにまばゆく見えるデスティニーの輝きも、深淵の宇宙にあっては嵐の中の灯台のようにはかない。
どこまでも続くこの闇の向こうに、俺が生きるべき未来がある…
(嘘と偽りの向こうにあるそれを、今度こそ掴み取る!)

「キラ、行きましょう」
アスランはそう言うとミーティアを外して身軽になった。
「これ以上、あんなものを撃たせちゃいけない」
そして、今まさに出撃したデスティニーがいる宙域を見つめた。
(シン…全てを失ったあなたが望むものは、確かに平和な世界に違いない)
彼はあの時選択した。間違ったやり方でもいい、最後に本物が手に入るならと。
(でも…だけど…)
アスランは鋭い視線を、メサイアへ、さらには今、シンがいるはずの闇が広がる彼方へと投げた。

「あんなものを撃って手に入れた平和を、真実にしてはいけない」
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制作裏話-PHASE49②-
戦闘は激しさを増し、赤服らしくエターナルの懐に単機で飛び込んだルナマリアは、メイリンのガイアにボディアタックをかまされて吹っ飛びます。
それこそ何の信念も示す事なくアスランに従った妹がエターナルのブリッジで「なんで戦うの!?」と姉に向かってわけのわからない事を言っていた本編とは違い、こちらではまさに弟が戦場で姉の前に立ちふさがります。
ここは本編同様ドムトリオを交えつつ、メイリンが戦う理由をルナマリアが知るという重要シーンとして描ききれたと思います。
キラとアスラン、ムウとラウ、イザークとディアッカ、シンとステラというように様々な因縁対決があった種ですから、こんな姉弟対決があってもいいと思うんですよね。まぁ本編のメイリンはモビルスーツには乗らないので無理だったでしょうけども。
さらにメイリンがパイロットになりたかった理由と、「置き去りにされた者の痛み」としてのサイン…ハイネもいぶかしんだ、シンとルナマリア、レイの3人だけが使う「サイン」を使うというのもずっと温めていた演出だったので、描写できてよかったです。

さてこの回は昔の男を取り戻した女がいました。
監督曰く「もうネオはムウじゃなくてもいいかな」と思った、などとあきれ果てる噂も流れてきましたが、そうです、なんとかギリギリ間に合ったという感じのムウ・ラ・フラガ復活です。できないなら最初からやらなきゃいいじゃないですか。前作であれだけ壮絶な最期を遂げたのに、「復活しちゃうの?」と失望させておいて、終わってみればさらに「復活させる必要性はなかったなぁ」と思うことしきり。ムウについてはストーリーテリングが下手すぎて完全に失敗に終わりました。種では人気が高かったキャラだけに本当に残念でしたね。

とはいえ原作準拠なのでムウは復活させなければなりません。
ネオについては3人のエクステンデッドを「使役した」ことへの後悔を抱かせることに務めてきたことと、「忘れてしまいたいこと」と「失った記憶」をリンクさせたことで、ただシナリオ通り復活させるよりは満足できました。
でも実はこのシーンより、直前の「エターナルを庇うか、逃げるか」の決断を迫られたマリューの表情を見た時のノイマンの描写が一番気に入っていたりします。

ついにアスランと再会を果たしたイザークのセリフはオリジナルに手を加えているのですが、これは私がアスランに言いたいことの代弁でもあります。ホントに何やってるのアスランと。
今となってはアスランの選択は間違いばかりで、やり直せるなら種のオーブ戦でクサナギを見送った後、ザフトに戻るというのが一番ベストだったと思うんですよね。
あの時点ではGシリーズの件で緊張感はあったものの、オーブとプラントは完全には敵対していなかったので、それこそ「敗走兵」であるキラたちを安全な場所(=宇宙)に逃がすというところまでが「特務隊員」であるアスラン・ザラの判断でよかったと思うのです。
ウズミやキラたちの言う事もわかる、けれど自分はディアッカのように間違いとわかったからと陣営を変えるわけにはいかない…そう思いながら、最期までザフトでキラたちと戦いながら、ジェネシスを、即ち父を彼らと共に止めに行く、というのが一番よかった気がします。
そしてDESTINYでオーブの首長(決して代表ではない)となったカガリとアーモリーワンで再会する…というのが正しいストーリーだったと思うんですよね。つーかぶっちゃけ「脱走は一回こっきり!」って事ですね。

さて議長に「間違ってたら討つからね」と宣言したシンは、食い下がるレイを振り切ってロッカールームでため息をついています。
そこで再び考えを巡らせたその時、彼の心の傷が突然蘇り、激しい発作を呼び起こしてしまいます。

ステラとの出会いによってこうした適応障害が克服され、もはや他人との接触嫌悪症状も発作を起こす事もなくなっていたシンにとっては不意打ちでした。
激しい発作に飲み込まれそうになったその時、駆けつけたレイがシンを正気に戻します。
彼の手慣れた様子から、シンはレイが自分の症状を知っていたのだと初めて知る事になったのです。

ここはもちろん、「シンが後遺症に悩むキャラ」という設定にすると決めたと同時に、必ず書こうと思っていたシーンでもあります。
レイはシンが思う以上にシンの事をよく知っていました。シンの症状を知りながら何も言わずに見守り、支えてくれていたのです。レイにとっては同じように心に傷を持ち、実際肉体に不調を持つ自分も同様と気にもしていないのですが、これにより、シンは言葉に出せない感謝を抱く事になります。

これまでもずっと、シンがレイに引きずられるだけでなく、レイもまたギルバートの言いなりでシンと接触したのではないと示す事で2人の絆を描いてきましたが、これらはすべて、最終回の「救い」と「別れ」へ繋げていくのが狙いでした。
その一つ前の小さな「形」がこの「事実」なのです。

さらにレイに、いつかルナマリアが言ったように「あいつはいいヤツだ」というセリフを言わせることで、本編ではなんとなくバランスを崩してしまった赤服三人が、逆デスでは最後まで仲がよく、信じあっていた「戦友同士」である事を示しています。
長く苦しんでいた逆デスのシンが、仲間によって救われたことは、最後までぶれさせたくありませんでした。だからこそ、ああいう最終回になっています。

戦場ではレクイエムの破壊を阻まれ、ネオジェネシスによってオーブ艦隊が壊滅状態となりました。
キラは悔しがり、ラクスもそのなりふり構わぬ破壊で世界を無理やり創り変えようとする議長のやり方はやはり間違っていると呟きます。

そしてようやく主人公も最終決戦に参戦します。
戻れぬところまできた今、議長の示す世界…ステラやレイのような人間が生み出されない世界を信じて戦うことが、シンのとった選択でした。

正義が勝つのではなく、勝つ事で正義を形成し、真実とする。最後に平和が訪れれば、今の引きちぎられるような痛みはやがて思い出となると信じたのです。
私がシンに「最後に手に入れるのが真実ならかまわない」と言わせたのは、本編では何の意思表示もさせてもらえなかった彼が、この信念を拠り所に戦えるようにでした。
そして同時にアスランもまた、それを真実にしてはいけないと決意を新たにします。

こうして決戦に挑む両者の緊張感を高めていくようにしたのですが、思惑通りうまくいってますかね。
になにな(筆者) 2012/06/19(Tue)00:22:17 編集
Natural or Cordinater?
サブタイトル

お知らせ
PHASE0 はじめに
PHASE1-1 怒れる瞳①
PHASE1-2 怒れる瞳②
PHASE1-3 怒れる瞳③
PHASE2 戦いを呼ぶもの
PHASE3 予兆の砲火
PHASE4 星屑の戦場
PHASE5 癒えぬ傷痕
PHASE6 世界の終わる時
PHASE7 混迷の大地
PHASE8 ジャンクション
PHASE9 驕れる牙
PHASE10 父の呪縛
PHASE11 選びし道
PHASE12 血に染まる海
PHASE13 よみがえる翼
PHASE14 明日への出航
PHASE15 戦場への帰還
PHASE16 インド洋の死闘
PHASE17 戦士の条件
PHASE18 ローエングリンを討て!
PHASE19 見えない真実
PHASE20 PAST
PHASE21 さまよう眸
PHASE22 蒼天の剣
PHASE23 戦火の蔭
PHASE24 すれちがう視線
PHASE25 罪の在処
PHASE26 約束
PHASE27 届かぬ想い
PHASE28 残る命散る命
PHASE29 FATES
PHASE30 刹那の夢
PHASE31 明けない夜
PHASE32 ステラ
PHASE33 示される世界
PHASE34 悪夢
PHASE35 混沌の先に
PHASE36-1 アスラン脱走①
PHASE36-2 アスラン脱走②
PHASE37-1 雷鳴の闇①
PHASE37-2 雷鳴の闇②
PHASE38 新しき旗
PHASE39-1 天空のキラ①
PHASE39-2 天空のキラ②
PHASE40 リフレイン
(原題:黄金の意志)
PHASE41-1 黄金の意志①
(原題:リフレイン)
PHASE41-2 黄金の意志②
(原題:リフレイン)
PHASE42-1 自由と正義と①
PHASE42-2 自由と正義と②
PHASE43-1 反撃の声①
PHASE43-2 反撃の声②
PHASE44-1 二人のラクス①
PHASE44-2 二人のラクス②
PHASE45-1 変革の序曲①
PHASE45-2 変革の序曲②
PHASE46-1 真実の歌①
PHASE46-2 真実の歌②
PHASE47 ミーア
PHASE48-1 新世界へ①
PHASE48-2 新世界へ②
PHASE49-1 レイ①
PHASE49-2 レイ②
PHASE50-1 最後の力①
PHASE50-2 最後の力②
PHASE50-3 最後の力③
PHASE50-4 最後の力④
PHASE50-5 最後の力⑤
PHASE50-6 最後の力⑥
PHASE50-7 最後の力⑦
PHASE50-8 最後の力⑧
FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開

制作裏話-はじめに-
制作裏話-PHASE1①-
制作裏話-PHASE1②-
制作裏話-PHASE1③-
制作裏話-PHASE2-
制作裏話-PHASE3-
制作裏話-PHASE4-
制作裏話-PHASE5-
制作裏話-PHASE6-
制作裏話-PHASE7-
制作裏話-PHASE8-
制作裏話-PHASE9-
制作裏話-PHASE10-
制作裏話-PHASE11-
制作裏話-PHASE12-
制作裏話-PHASE13-
制作裏話-PHASE14-
制作裏話-PHASE15-
制作裏話-PHASE16-
制作裏話-PHASE17-
制作裏話-PHASE18-
制作裏話-PHASE19-
制作裏話-PHASE20-
制作裏話-PHASE21-
制作裏話-PHASE22-
制作裏話-PHASE23-
制作裏話-PHASE24-
制作裏話-PHASE25-
制作裏話-PHASE26-
制作裏話-PHASE27-
制作裏話-PHASE28-
制作裏話-PHASE29-
制作裏話-PHASE30-
制作裏話-PHASE31-
制作裏話-PHASE32-
制作裏話-PHASE33-
制作裏話-PHASE34-
制作裏話-PHASE35-
制作裏話-PHASE36①-
制作裏話-PHASE36②-
制作裏話-PHASE37①-
制作裏話-PHASE37②-
制作裏話-PHASE38-
制作裏話-PHASE39①-
制作裏話-PHASE39②-
制作裏話-PHASE40-
制作裏話-PHASE41①-
制作裏話-PHASE41②-
制作裏話-PHASE42①-
制作裏話-PHASE42②-
制作裏話-PHASE43①-
制作裏話-PHASE43②-
制作裏話-PHASE44①-
制作裏話-PHASE44②-
制作裏話-PHASE45①-
制作裏話-PHASE45②-
制作裏話-PHASE46①-
制作裏話-PHASE46②-
制作裏話-PHASE47-
制作裏話-PHASE48①-
制作裏話-PHASE48②-
制作裏話-PHASE49①-
制作裏話-PHASE49②-
制作裏話-PHASE50①-
制作裏話-PHASE50②-
制作裏話-PHASE50③-
制作裏話-PHASE50④-
制作裏話-PHASE50⑤-
制作裏話-PHASE50⑥-
制作裏話-PHASE50⑦-
制作裏話-PHASE50⑧-
2011/5/22~2012/9/12
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