機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
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忌わしい記憶は、全て封印した。
傷跡も、痛みも、苦しみも、全ては忘れ去った。
自分にとって過去にこだわることは、精神の死を意味した。
あの時、暗い廊下で泣いていた自分に、差し伸べられた手。
赤い軍服を着た彼が差し伸べてくれた手は、温かかった。
「何も見なくていい…眼を閉じなさい」
自分を抱き上げた彼は優しく言った。
酸鼻さを感じさせる血の臭いが鼻を衝いたが黙って耐え、彼がもういいよと言うまで眼を開けなかった。
そこに、自由が待っていた。
傷跡も、痛みも、苦しみも、全ては忘れ去った。
自分にとって過去にこだわることは、精神の死を意味した。
あの時、暗い廊下で泣いていた自分に、差し伸べられた手。
赤い軍服を着た彼が差し伸べてくれた手は、温かかった。
「何も見なくていい…眼を閉じなさい」
自分を抱き上げた彼は優しく言った。
酸鼻さを感じさせる血の臭いが鼻を衝いたが黙って耐え、彼がもういいよと言うまで眼を開けなかった。
そこに、自由が待っていた。
「要塞の裏側へ回り込め!」
激しい砲撃を回避しながらバルトフェルドが突破口を探す。
「いくらデカいビームでも、当たらなければどうということはない!」
ダコスタは内心では無茶言わないでくださいと嘆きつつ、必死に航路を探しながら、操舵手に命じた。
「足の止まっているあのナスカ級の脇をすり抜ける!慎重に行け!」
再び、全門からミサイルが放たれた。
バンクしながら要塞に沿って縦に流れるエターナルを守り、ドムとガイアはしつこく追尾してくるモビルスーツを攻撃した。
「ほらほら!下がんなよ、ひよっこは!」
ヒルダもバズーカを構えて追いかけてくるグフに攻撃する。彼らの標的になった敵は、一射目はなんとか避けられても、必ず二射か三射目に捉えられてしまった。
「やれやれ、忙しいな」
ヘルベルトは、サーベルでゲイツRと切り結んでいるガイアにも援護射撃をしてやりながら、ガナーザクのオルトロスを撃った。続けてマーズも武装を失って戸惑うザクのボディを撃って破壊した。それによってゲイツRの手足を斬り飛ばしたメイリンの進路が開けた。
「すみません、助かります」
「ちっとはやれてるようだな、小僧」
「しかし、きりがねぇ」
ヘルベルトがうんざりしたように笑った。
「ええい…いい加減に!」
イザークもまた、動き始めたエターナルに追随していた。
メサイアの港口からはまだ続々とモビルスーツが出てきてはエターナルを目指し、彼らのグフとザクを見て一瞬ひるむ。ひるんだ相手を斬るというのは何とも後味が悪かった。
「フリーダムは何をやっている!?」
イザークはエターナルが動いても追ってくる気配のないキラに苛立って言った。
「何だよ、助けて欲しいのか?」
ディアッカがライフルでブルーのパーソナルカラーに塗られたブレイズザクファントムを狙いながらちゃちゃを入れた。
「違うわ!馬鹿者!」
エターナルが動くと、モビルスーツや艦隊が一斉に追うのを見て、ネオは苦笑した。
「えらい数だな、こりゃ…いや、数だけいたってね!」
そう言いながら追いすがるモビルスーツ部隊にドラグーンを放つ。一方向からではないビーム砲に戸惑い、グフが慌てて離脱すると、ネオは手早く通信を開いた。
「おい、聞こえるか、虎!」
「ん?」とバルトフェルドがモニターを見る。
「ここはお嬢ちゃんに任せるぞ!俺はアークエンジェルを追う。おまえらも頑張れよ!」
明るく言って去った彼の様子に、バルトフェルドやラクス、ダコスタも思わず顔を見合わせた。
「…フラガ…?」
「ゴットフリート、撃ぇ!」
追撃してくるミネルバには威嚇のミサイルとイーゲルシュテルンを、そして前方でゴンドワナからの増援に追われているクサナギには援護を行いながら、アークエンジェルはようやく残存艦隊と合流した。
「ラミアス艦長!!」
攻撃に耐えていたソガ一佐がモニターに現れる。
「陣形を立て直して!レクイエムを早く!」
クサナギやツクヨミの方がレクイエムに近い。マリューは本艦が盾となりますと促したが、ソガは首を振った。
「発射口に陽電子リフレクターが装備されている。突破は無理だ!」
そこにミリアリアがミネルバの到来を告げた。
「ミネルバ、ブルーアルファ、距離、16」
「もう!?」
マリューは引くも押すもできない状況を思い知る。
「ソガ一佐!リフレクターのデータをこちらに!」
「ミサイル、来ます!」
マリューはノイマンに主砲の射線を取るための回頭を命じる。
再びゴットフリートが放たれると、回避したミネルバのブリッジも大きく揺れた。
「イゾルデ、撃ぇ!」
ミネルバも応戦し、互いのミサイル発射管も再び火を噴いた。
戦況は、未だどちらの優勢にも転んでいなかった。
ミネルバを護衛しながら追随してきたルナマリアは、オーブ艦隊を守るムラサメと交戦の末、撃破した。
再び飛び出してきたMA形態のムラサメのイカヅチを避けながら、ライフルで軌道を狙う。インパルスのビームが敵機を貫いた時、目の前に見慣れない赤い機体が現れた。
「…ジャスティス!?…アスラン?」
「インパルス!ルナマリア?」
両者は互いの姿を見て機体の制動をかけた。
ルナマリアはレイが見せてくれた画像や映像そのもののその機体と、更新されたライブラリの「X19A インフィニット・ジャスティス」のデータを見て、そのコックピットにいるはずの人を想う。
「アスラン…本当に…生きて…」
共に過ごした時間や戦った日々が心にあふれ、ルナマリアの顔が歪んだ。
「もっと力を見せてください。せっかく権限も力もお持ちなんだから」
強くて、優しくて、綺麗で…あなたに憧れた、とても。
「シンを助けて…お願い、アスラン…」
でも何より、皆が…艦長でさえ煙たがるシンを、ちゃんと受け止めて、認めてくれたことが嬉しかった。
「ずっと、私たちと一緒にいてくださいね」
(言ったのに…私、そう言ったのに…スパイじゃなかったけど…裏切ったわけじゃなかったけど…)
ルナマリアは俯き、そして顔をあげた。
「でも、今は…!」
アスランもまた、ルナマリアがどう出るのか量りかねていたが、インパルスがライフルを構えて撃ってくるとシールドを構えた。ビームが弾かれ、アスランは攻撃の間隙をついて急速に離脱した。
「ルナマリア、やめなさい!」
「逃げるな!」
ルナマリアはそのまま加速して追ってきた。
彼女の射撃の腕では被弾する事はない。けれどこんなところで時間を取っているわけにはいかない。オーブ艦隊からのデータがアークエンジェル経由で届いていたからだ。
レクイエムには、陽電子リフレクターがある…即ち、アンチビームシールドを持つ者しか突破できないのだ。
ルナマリアは執拗に追ってきてライフルを撃ち続ける。
アスランは彼女を傷つけないようにやり過ごしたかったが、生半可な気持ちの逃げではインパルスのスピードが許さない。
「スパイじゃないって…メイリンも巻き込まれただけって…わかってるけど…」
通信機からは搾り出すような彼女の声が聞こえてきていた。
「…でも!敵なんです、今のあなたは!」
かつてキラと戦った自分が言った言葉をそのまま突きつけられ、彼女が今、自分と同じ葛藤の中にいると知ったアスランは、息が詰まりそうだった。その引きちぎられそうな苦しみを、自分ほどわかる者はいまい。アスランは思わず叫んだ。
「ルナマリア、聞いて!議長は…」
「やめて!聞きたくない!」
インパルスのビームが放たれる中を、アスランは真っ直ぐ突進した。そしてそのままインパルスの懐に飛び込み、シールドを押し付ける。
「…うっ!!」
「あなたを討ちたくない!下がって、ルナマリア!」
ルナマリアは容易くあしらわれている事にプライドを傷つけられ、ジャスティスを振りほどこうと必死にシフトレバーを動かす。スラスターが盛んにふかされるが、もともと生身での格闘術にも長けているアスランのホールドからはなかなか逃れられない。
「離してよっ!私たちは…」
「時間がないの!お願い!」
アスランは言った。
「あなたは正しいと思うの?あんなものを撃つことが!?」
「そんなこと…!」
ルナマリアの脳裏に議長が、メイリンが、レイが、そしてシンが現れた。皆がみな、自分はこう思う、こう信じる、こうすべきだと主張する。
(わからない…わからないわ!)
ルナマリアがそのままシフトレバーを思い切り入れると、インパルスの体がジャスティスから離れた。
(私たちが選ぶべきは、新しい世界なのか、今の世界なのか…)
ルナマリアはライフルの銃口をジャスティスに向けた。
「誰が正しいかなんて、わからない!」
ほとんど距離のない状態でこちらを狙うインパルスを見て、アスランはくっと顔を歪めた。ビームの発射と同時に、ジャスティスの左足が眼にも止まらぬ速さで蹴り上げられる。
「きゃあっ!!」
一瞬、何が起こったかわからなかったルナマリアは、駆動系の小爆発の衝撃と異常アラートで、右腕が斬り飛ばされたと悟った。
(いつの間に…)
ルナマリアはアラートを止め、ジャスティスを見る。
(強い…やっぱり…でも!)
次の瞬間、ルナマリアは腕の動きを妨げるシールドを思い切って投げ捨てた。
身軽になったインパルスは残った左腕でサーベルを抜くと果敢にも向かってくる。
アスランはルナマリアの思いがけない勇気と潔さに感心した。そして彼女に敬意を表し、インパルスの正面に向き直る。
ルナマリアは、かつての自分のように迷いながら戦っている。戦うしか、道は残されていないのだと思いこんで…アスランは全てを受け止める覚悟で叫んだ。
「誰が正しいかじゃない!」
インパルスは再び素晴らしい加速を見せ、ジャスティスに迫る。
アスランは素早く反応してシールドを構えるとサーベルを受け止めた。
「何が正しいかを考えて!」
そして大きく距離を取って飛び退ると、シールドに仕込まれたシャイニングエッジブーメランを取り出して投げつけた。
「あっ!」
ジャスティスに弾かれていたルナマリアには避けきれず、右足を奪われたインパルスは衝撃を受けてバランスを崩した。そのまま流されていく機体を立て直そうと必死に操作しながら、ルナマリアはたった今言われたアスランの言葉を反芻していた。
(何が…正しいか……アスラン…シン…私…)
「ルナマリア…」
ダメージは与えたものの、インパルスが無事だと視認したアスランが振り返った途端、けたたましくアラートが鳴り響いた。アスランはすぐに宙域に目をやったが、それと同時に激しい衝撃を受け、ガクンと体が揺れる。無意識にも近い状態でかろうじて繰り出したシールドには、アロンダイトが受け止められていた。
「デスティニー…シン!」
「アスラン、貴様…」
アスランを追撃してきたシンは、追いついたその時、ジャスティスのブーメランがインパルスの足を切断する瞬間を見た。
(迂闊だった!戦闘に気を取られて接近に気づかないとは…)
アスランはアロンダイトを押し上げて逃れようとしたが、デスティニーはびくともしない。
「よくも…」
シンの体中の血が一瞬で沸点に達し、そのまま隅々まで駆け巡った。指先や足先まで神経が張り巡らせ、全ての情報が鮮明に流れ込む。視力も聴力も感覚もいつものように研ぎ澄まされ、高まったが、それ以上に彼を支配したのは「怒り」だった。
「ルナをやったなっ!」
「…ぐっ…シン!」
デスティニーは光の翼を輝かせ、信じられないパワーでジャスティスをそのまま押し通した。
「ステーション2、ポジションまで、100」
「ネオ・ジェネシス、パワーチャージ60%」
「まだ沈まないのか、エターナルもアークエンジェルも」
議長はやや苛立ちを含めた声で尋ねた。
メサイアではダイダロス基地からの通信と共に、刻々と変わる戦況が報告されている。アークエンジェルの援護がなくなったエターナルへの一斉攻撃は行われているが、依然として落ちない。ミネルバと激闘を繰り広げているアークエンジェルも然りだった。
「撃沈報告は未だ…」
黒服が慌てて更新データを示すが、状況は変わらない。
とはいえ、奴らもまだ、メサイアにもレクイエムにも取りつけない。
(長引けば当然、こちらが有利にはなるが…)
議長はふっとため息をつきながら戦場のような司令室を眺めた。
「パープル1からグリーン2にオレンジ警報が発令されました」
「シェラ、エクセレイ、ノベンバー、スターブロス隊とのリンクが回復しません」
「残存隊はステータス1で待機中」
わずかな手勢でかかってきている連中に、ザフト側の被害も大きい。
目の前の大きなモニターではザクがドムに撃ち抜かれている。逆に、モビルスーツに変形したと同時にグフに斬られるムラサメもいる。戦場のあちこちで爆発が起き、デブリが凄まじい速さで飛んで行った。
(しかし、すごいものだ…戦い、戦い、戦い)
平和が一番と嘯きながら、いつまでたっても矛を収められない人々。
(人というものは、本当に戦うのが好きだ)
デュランダルは呆れたように苦笑する。
(きみも好きだった…戦うことが。そうだろう?ラウ)
負けるとわかっていても、勝てなくてもいいのだと戦った。
デュランダルは手元のレーダーのフリーダムを探した。
(私は戦いたくなどない。だが、勝ちたい)
それが、この壮大な計画の始まりだった。
(戦っても勝てず、どうしても得られないものがあるのなら)
愛する人をこの手に抱けない。ささやかな幸せすら得られない。
(人が生きるのも、生まれるのも、 ただそれを…)
デュランダルは、クルーゼの言葉を思い出した。
生きることで、人は希望も夢も、何もかなうことはないと知るのだと。
(その先に待つのは、敗北であると知るためなのか?)
クルーゼは、生きる意味を問い続けていた自分を嘲笑った。考えても仕方がないと。どうせ何も得られはしないのだと。そのくせ、彼自身が最後まで自分の運命に抗い、足掻き続けた。そしてキラ・ヤマトに挑み、戦い、敗れ去ったのだ。
(レイ…きみはどうする?)
デュランダルの眼が細くなる。フリーダムに挑んでいるモビルスーツのマークはレジェンドだ。
(きみは…ラウの…)
キラは不思議な感覚に捉われながらも、レジェンドと戦い続けていた。
レジェンドのドラグーンが一斉に発射されると、網の目のようなビームがストライクフリーダムを包み込んだ。キラはサーベルで信じられない量のビームを薙ぎ払い、その合間をかいくぐっていく。
「ええい…!」
大気圏下ではスピードに劣って決定打が打てなかったが、ドラグーンのこれだけの攻撃でもヤツを捉えられないとは…レイは再びドラグーンを放つと、今度はより拡散した攻撃で相手をかく乱しようとした。
キラは、避けるばかりではなくレジェンドに突っ込んでいった。そしてフルゴールとサーベルでビームを弾きながら叫んだ。
「きみは誰?誰なんだ!?」
(……女!?)
初めてキラの声を聞き、レイは驚きのあまり体を硬くした。
レイがドラグーンの操作を緩めたため、キラはそのままサーベルを振り下ろした。
「ぐ…!」
まだ少し動揺が残っていたが、レイはビームシールドを展開させて干渉させた。
「きみは…あの人にとても似ている…!」
キラが言う。
レイはパワーをあげてストライクフリーダムを弾くと、バックパックから高エネルギービームライフルを射出して構えた。そして離脱したストライクフリーダムを続けざまに狙撃する。
フリーダムは回転しながら超高速でビームを避け、大きく旋回しながら舞い戻ってきた。待ち構えていたレイは再びドラグーンを向かわせる。
「…だけど、あの人は…」
キラは制動をかけると、負けじとスーパードラグーンを放つ。互いのビーム砲がそれぞれの砲を狙い、乱れ撃ち状態になった。
「ラウ・ル・クルーゼは、もう…!」
その名を聞いてレイはギクリとした。
(そうだ、ラウ…あの日おまえが殺した、もう1人の…)
「そんな風に、もう1人のことを『俺』なんて言うなっ!」
シンの声が響く。けれど続けてギルが現れた。
「だが、きみもラウだ」
レイは表情をゆがめながら、フリーダムに向けて再びライフルを放った。
(俺の役割…俺がすべきこと…ギルのために…ラウのために…)
「それが、きみの運命なんだよ」
そして、シンのために。
「あの人はもういない!」
「違う。彼はいる…今、ここに!わかるだろう?おまえには」
レイの答えを聞いて、キラもまたギクリとした。あの仮面の男によく似た声…けれどまだ若く、幼ささえ感じる声。
「人の夢、人の未来、その素晴らしき結果…キラ・ヤマト!」
「うぅ…!」
かつて、自分を最高のコーディネイターであり、夢の子であり、同時に欲望に暴走した世界の罪であると言ったあの男が蘇る。キラの心には動揺が走り、攻撃の手も明らかに鈍ってしまう。
「俺もおまえも、この世界のどうしようもない欲望の果てだ。だから消えなくてはならない!」
ドラグーンが襲い掛かり、キラはこれまでのように回避しようとしたが反応が遅れる。自身のドラグーンを弾かれ、制御がうまくいかない。
しかしキラの判断の遅れはレジェンドにライフルをマウントさせ、脚部からジャベリンを抜いてアンビデクストラスモードにするだけの時間を許してしまった。レジェンドはそれを構えて向かってくる。
「人類の罪と共に!」
「ぐ…この…!」
襲い掛かるジャベリンを2本のラケルタでさばきながら、キラはまだ戸惑っていた。
「自分からは、決して逃れられない」
レイは絶望的な想いで呟いた。
「そして取り戻せないもの、それが過去だ!」
生まれてしまった自分。戦闘人形にされた少女。
家族を失い、死よりも辛い苦しみに苛まれている友。
未来のないクローンであることを呪い、憎み、宿命に挑んだ彼…
「きみは…!?」
キラはそんなレイの言葉に戸惑いを隠せない。
(違う、何かが違う…あの時、オーブで感じたように…彼は…)
「だから、もう終わらせる!そしてあるべき正しき姿へと戻るんだ!世界は!」
レイが再びドラグーンを一斉に放った。
キラは、なぜだか悲鳴のようにも聞こえるその声に違和感を覚えながら、感覚を研ぎ澄ませていった。相手のドラグーンの位置を把握する。
キラは敵をマルチロックオンするように、バイザーに反射するビーム砲を感覚的に捉えていく。全ての軌道まで捉える必要はない…イメージを固めるんだ…
「でも…違う!」
そしてキラはスーパードラグーンをパージし、全ての出力を上げていく。
ストライクフリーダムは青い輝きを放ち、ビーム砲もスピードを上げた。そしてキラが感覚的に捉えたレジェンドのビーム砲を射程に収める。決して、レイの操作が遅れているわけではない。キラが早過ぎるのだ。やがてレジェンドのビーム砲が見る見るうちに捕捉され、爆破された。
「これは…くっ!」
レジェンドのモニターには真っ赤なアラートが出て、ほとんど無事な砲が残っていない。
「きみは…」
キラはサーベルをマウントしてラッチからライフルを取り出した。
「誰かを気にして、誰かのために戦ってるじゃないか!」
クスィフィアスが起き上がり、カリドゥスが輝き始める。
キラは傷ついたデスティニーのために離脱したレジェンドと、それによく似たプロヴィデンスが無力な脱出ランチを撃ったことを思い出した。
「あの人は、たくさんの命を奪った!」
サイクロプスに巻き込まれて死んだあのザフト兵も、要塞に核を撃たれた人たちも…最期に見たフレイの優しい笑顔が、キラの胸を突き刺した。
「何を今さら!おまえの手だって汚れているだろう!」
レイはその言葉に苛立ち、再びロングライフルを構えた。
「その力を誇り、殺し、奪い、力なき弱いものを苦しめる!綺麗事を言うな!」
「そんな事はわかってる!だけど!」
キラはかぶりを振った。
力がなければ、強い者に嬲られ、虐げられる。力があれば、今度は逆に弱い者への脅威となる。ゆえに、力を持つ自分はそれを心に刻む必要があった。
「だからこそ忘れたくない!命は、何にだって一つだ!」
途端、ハイマットフルバーストモードのフリーダムから凄まじい火力のビームが放たれた。
ドラグーンを失った今、レジェンドには対抗する術がない。レイは続けざまにライフルを放ったがとても太刀打ちなどできず、シールドを展開して防衛態勢に入って離脱のチャンスを窺う。しかしフリーダムの砲撃はやまず、徐々に機体が削られていった。
キラは無差別に撃ち続けているようでいながら、相手を正確にロックし、コックピットやスラスター以外の、なるべくダメージが少ない部分を狙って撃っていた。
そのかわりその攻撃は全く容赦がない。
「ち…この…!」
攻撃はありとあらゆるパーツに向けられた。まず構えている高エネルギーライフルが爆発し、シールドを発生させる手甲部が弾き飛ばされる。脚部、腕部、肩、バックパック、アイカメラ、アンテナ…信じられない緻密さでロックされ、ビームが機体を破壊していく。
キラの冷静な眼が、レジェンドから全てを奪い去っていった。
「うわあぁぁ!!」
凄まじい火力が駆動系を破壊し、ついにコックピットに激しい火花が散って、破片でレイのヘルメットに傷がついた。
レイは衝撃で気を失い、やがてレジェンドは完全に沈黙した。
機体は爆発しない。そんな事は、絶対にさせはしない。
キラは砲撃をやめると、動かなくなったレジェンドを確認した。
パイロットは無事なはずだ。
スラスターも傷つけていないから、気がつけば脱出できるだろう。
キラはディアクティヴモードになったレジェンドを見てポツリと呟いた。
「その命は、きみのものだ。きみは、彼じゃない…」
激しい砲撃を回避しながらバルトフェルドが突破口を探す。
「いくらデカいビームでも、当たらなければどうということはない!」
ダコスタは内心では無茶言わないでくださいと嘆きつつ、必死に航路を探しながら、操舵手に命じた。
「足の止まっているあのナスカ級の脇をすり抜ける!慎重に行け!」
再び、全門からミサイルが放たれた。
バンクしながら要塞に沿って縦に流れるエターナルを守り、ドムとガイアはしつこく追尾してくるモビルスーツを攻撃した。
「ほらほら!下がんなよ、ひよっこは!」
ヒルダもバズーカを構えて追いかけてくるグフに攻撃する。彼らの標的になった敵は、一射目はなんとか避けられても、必ず二射か三射目に捉えられてしまった。
「やれやれ、忙しいな」
ヘルベルトは、サーベルでゲイツRと切り結んでいるガイアにも援護射撃をしてやりながら、ガナーザクのオルトロスを撃った。続けてマーズも武装を失って戸惑うザクのボディを撃って破壊した。それによってゲイツRの手足を斬り飛ばしたメイリンの進路が開けた。
「すみません、助かります」
「ちっとはやれてるようだな、小僧」
「しかし、きりがねぇ」
ヘルベルトがうんざりしたように笑った。
「ええい…いい加減に!」
イザークもまた、動き始めたエターナルに追随していた。
メサイアの港口からはまだ続々とモビルスーツが出てきてはエターナルを目指し、彼らのグフとザクを見て一瞬ひるむ。ひるんだ相手を斬るというのは何とも後味が悪かった。
「フリーダムは何をやっている!?」
イザークはエターナルが動いても追ってくる気配のないキラに苛立って言った。
「何だよ、助けて欲しいのか?」
ディアッカがライフルでブルーのパーソナルカラーに塗られたブレイズザクファントムを狙いながらちゃちゃを入れた。
「違うわ!馬鹿者!」
エターナルが動くと、モビルスーツや艦隊が一斉に追うのを見て、ネオは苦笑した。
「えらい数だな、こりゃ…いや、数だけいたってね!」
そう言いながら追いすがるモビルスーツ部隊にドラグーンを放つ。一方向からではないビーム砲に戸惑い、グフが慌てて離脱すると、ネオは手早く通信を開いた。
「おい、聞こえるか、虎!」
「ん?」とバルトフェルドがモニターを見る。
「ここはお嬢ちゃんに任せるぞ!俺はアークエンジェルを追う。おまえらも頑張れよ!」
明るく言って去った彼の様子に、バルトフェルドやラクス、ダコスタも思わず顔を見合わせた。
「…フラガ…?」
「ゴットフリート、撃ぇ!」
追撃してくるミネルバには威嚇のミサイルとイーゲルシュテルンを、そして前方でゴンドワナからの増援に追われているクサナギには援護を行いながら、アークエンジェルはようやく残存艦隊と合流した。
「ラミアス艦長!!」
攻撃に耐えていたソガ一佐がモニターに現れる。
「陣形を立て直して!レクイエムを早く!」
クサナギやツクヨミの方がレクイエムに近い。マリューは本艦が盾となりますと促したが、ソガは首を振った。
「発射口に陽電子リフレクターが装備されている。突破は無理だ!」
そこにミリアリアがミネルバの到来を告げた。
「ミネルバ、ブルーアルファ、距離、16」
「もう!?」
マリューは引くも押すもできない状況を思い知る。
「ソガ一佐!リフレクターのデータをこちらに!」
「ミサイル、来ます!」
マリューはノイマンに主砲の射線を取るための回頭を命じる。
再びゴットフリートが放たれると、回避したミネルバのブリッジも大きく揺れた。
「イゾルデ、撃ぇ!」
ミネルバも応戦し、互いのミサイル発射管も再び火を噴いた。
戦況は、未だどちらの優勢にも転んでいなかった。
ミネルバを護衛しながら追随してきたルナマリアは、オーブ艦隊を守るムラサメと交戦の末、撃破した。
再び飛び出してきたMA形態のムラサメのイカヅチを避けながら、ライフルで軌道を狙う。インパルスのビームが敵機を貫いた時、目の前に見慣れない赤い機体が現れた。
「…ジャスティス!?…アスラン?」
「インパルス!ルナマリア?」
両者は互いの姿を見て機体の制動をかけた。
ルナマリアはレイが見せてくれた画像や映像そのもののその機体と、更新されたライブラリの「X19A インフィニット・ジャスティス」のデータを見て、そのコックピットにいるはずの人を想う。
「アスラン…本当に…生きて…」
共に過ごした時間や戦った日々が心にあふれ、ルナマリアの顔が歪んだ。
「もっと力を見せてください。せっかく権限も力もお持ちなんだから」
強くて、優しくて、綺麗で…あなたに憧れた、とても。
「シンを助けて…お願い、アスラン…」
でも何より、皆が…艦長でさえ煙たがるシンを、ちゃんと受け止めて、認めてくれたことが嬉しかった。
「ずっと、私たちと一緒にいてくださいね」
(言ったのに…私、そう言ったのに…スパイじゃなかったけど…裏切ったわけじゃなかったけど…)
ルナマリアは俯き、そして顔をあげた。
「でも、今は…!」
アスランもまた、ルナマリアがどう出るのか量りかねていたが、インパルスがライフルを構えて撃ってくるとシールドを構えた。ビームが弾かれ、アスランは攻撃の間隙をついて急速に離脱した。
「ルナマリア、やめなさい!」
「逃げるな!」
ルナマリアはそのまま加速して追ってきた。
彼女の射撃の腕では被弾する事はない。けれどこんなところで時間を取っているわけにはいかない。オーブ艦隊からのデータがアークエンジェル経由で届いていたからだ。
レクイエムには、陽電子リフレクターがある…即ち、アンチビームシールドを持つ者しか突破できないのだ。
ルナマリアは執拗に追ってきてライフルを撃ち続ける。
アスランは彼女を傷つけないようにやり過ごしたかったが、生半可な気持ちの逃げではインパルスのスピードが許さない。
「スパイじゃないって…メイリンも巻き込まれただけって…わかってるけど…」
通信機からは搾り出すような彼女の声が聞こえてきていた。
「…でも!敵なんです、今のあなたは!」
かつてキラと戦った自分が言った言葉をそのまま突きつけられ、彼女が今、自分と同じ葛藤の中にいると知ったアスランは、息が詰まりそうだった。その引きちぎられそうな苦しみを、自分ほどわかる者はいまい。アスランは思わず叫んだ。
「ルナマリア、聞いて!議長は…」
「やめて!聞きたくない!」
インパルスのビームが放たれる中を、アスランは真っ直ぐ突進した。そしてそのままインパルスの懐に飛び込み、シールドを押し付ける。
「…うっ!!」
「あなたを討ちたくない!下がって、ルナマリア!」
ルナマリアは容易くあしらわれている事にプライドを傷つけられ、ジャスティスを振りほどこうと必死にシフトレバーを動かす。スラスターが盛んにふかされるが、もともと生身での格闘術にも長けているアスランのホールドからはなかなか逃れられない。
「離してよっ!私たちは…」
「時間がないの!お願い!」
アスランは言った。
「あなたは正しいと思うの?あんなものを撃つことが!?」
「そんなこと…!」
ルナマリアの脳裏に議長が、メイリンが、レイが、そしてシンが現れた。皆がみな、自分はこう思う、こう信じる、こうすべきだと主張する。
(わからない…わからないわ!)
ルナマリアがそのままシフトレバーを思い切り入れると、インパルスの体がジャスティスから離れた。
(私たちが選ぶべきは、新しい世界なのか、今の世界なのか…)
ルナマリアはライフルの銃口をジャスティスに向けた。
「誰が正しいかなんて、わからない!」
ほとんど距離のない状態でこちらを狙うインパルスを見て、アスランはくっと顔を歪めた。ビームの発射と同時に、ジャスティスの左足が眼にも止まらぬ速さで蹴り上げられる。
「きゃあっ!!」
一瞬、何が起こったかわからなかったルナマリアは、駆動系の小爆発の衝撃と異常アラートで、右腕が斬り飛ばされたと悟った。
(いつの間に…)
ルナマリアはアラートを止め、ジャスティスを見る。
(強い…やっぱり…でも!)
次の瞬間、ルナマリアは腕の動きを妨げるシールドを思い切って投げ捨てた。
身軽になったインパルスは残った左腕でサーベルを抜くと果敢にも向かってくる。
アスランはルナマリアの思いがけない勇気と潔さに感心した。そして彼女に敬意を表し、インパルスの正面に向き直る。
ルナマリアは、かつての自分のように迷いながら戦っている。戦うしか、道は残されていないのだと思いこんで…アスランは全てを受け止める覚悟で叫んだ。
「誰が正しいかじゃない!」
インパルスは再び素晴らしい加速を見せ、ジャスティスに迫る。
アスランは素早く反応してシールドを構えるとサーベルを受け止めた。
「何が正しいかを考えて!」
そして大きく距離を取って飛び退ると、シールドに仕込まれたシャイニングエッジブーメランを取り出して投げつけた。
「あっ!」
ジャスティスに弾かれていたルナマリアには避けきれず、右足を奪われたインパルスは衝撃を受けてバランスを崩した。そのまま流されていく機体を立て直そうと必死に操作しながら、ルナマリアはたった今言われたアスランの言葉を反芻していた。
(何が…正しいか……アスラン…シン…私…)
「ルナマリア…」
ダメージは与えたものの、インパルスが無事だと視認したアスランが振り返った途端、けたたましくアラートが鳴り響いた。アスランはすぐに宙域に目をやったが、それと同時に激しい衝撃を受け、ガクンと体が揺れる。無意識にも近い状態でかろうじて繰り出したシールドには、アロンダイトが受け止められていた。
「デスティニー…シン!」
「アスラン、貴様…」
アスランを追撃してきたシンは、追いついたその時、ジャスティスのブーメランがインパルスの足を切断する瞬間を見た。
(迂闊だった!戦闘に気を取られて接近に気づかないとは…)
アスランはアロンダイトを押し上げて逃れようとしたが、デスティニーはびくともしない。
「よくも…」
シンの体中の血が一瞬で沸点に達し、そのまま隅々まで駆け巡った。指先や足先まで神経が張り巡らせ、全ての情報が鮮明に流れ込む。視力も聴力も感覚もいつものように研ぎ澄まされ、高まったが、それ以上に彼を支配したのは「怒り」だった。
「ルナをやったなっ!」
「…ぐっ…シン!」
デスティニーは光の翼を輝かせ、信じられないパワーでジャスティスをそのまま押し通した。
「ステーション2、ポジションまで、100」
「ネオ・ジェネシス、パワーチャージ60%」
「まだ沈まないのか、エターナルもアークエンジェルも」
議長はやや苛立ちを含めた声で尋ねた。
メサイアではダイダロス基地からの通信と共に、刻々と変わる戦況が報告されている。アークエンジェルの援護がなくなったエターナルへの一斉攻撃は行われているが、依然として落ちない。ミネルバと激闘を繰り広げているアークエンジェルも然りだった。
「撃沈報告は未だ…」
黒服が慌てて更新データを示すが、状況は変わらない。
とはいえ、奴らもまだ、メサイアにもレクイエムにも取りつけない。
(長引けば当然、こちらが有利にはなるが…)
議長はふっとため息をつきながら戦場のような司令室を眺めた。
「パープル1からグリーン2にオレンジ警報が発令されました」
「シェラ、エクセレイ、ノベンバー、スターブロス隊とのリンクが回復しません」
「残存隊はステータス1で待機中」
わずかな手勢でかかってきている連中に、ザフト側の被害も大きい。
目の前の大きなモニターではザクがドムに撃ち抜かれている。逆に、モビルスーツに変形したと同時にグフに斬られるムラサメもいる。戦場のあちこちで爆発が起き、デブリが凄まじい速さで飛んで行った。
(しかし、すごいものだ…戦い、戦い、戦い)
平和が一番と嘯きながら、いつまでたっても矛を収められない人々。
(人というものは、本当に戦うのが好きだ)
デュランダルは呆れたように苦笑する。
(きみも好きだった…戦うことが。そうだろう?ラウ)
負けるとわかっていても、勝てなくてもいいのだと戦った。
デュランダルは手元のレーダーのフリーダムを探した。
(私は戦いたくなどない。だが、勝ちたい)
それが、この壮大な計画の始まりだった。
(戦っても勝てず、どうしても得られないものがあるのなら)
愛する人をこの手に抱けない。ささやかな幸せすら得られない。
(人が生きるのも、生まれるのも、 ただそれを…)
デュランダルは、クルーゼの言葉を思い出した。
生きることで、人は希望も夢も、何もかなうことはないと知るのだと。
(その先に待つのは、敗北であると知るためなのか?)
クルーゼは、生きる意味を問い続けていた自分を嘲笑った。考えても仕方がないと。どうせ何も得られはしないのだと。そのくせ、彼自身が最後まで自分の運命に抗い、足掻き続けた。そしてキラ・ヤマトに挑み、戦い、敗れ去ったのだ。
(レイ…きみはどうする?)
デュランダルの眼が細くなる。フリーダムに挑んでいるモビルスーツのマークはレジェンドだ。
(きみは…ラウの…)
キラは不思議な感覚に捉われながらも、レジェンドと戦い続けていた。
レジェンドのドラグーンが一斉に発射されると、網の目のようなビームがストライクフリーダムを包み込んだ。キラはサーベルで信じられない量のビームを薙ぎ払い、その合間をかいくぐっていく。
「ええい…!」
大気圏下ではスピードに劣って決定打が打てなかったが、ドラグーンのこれだけの攻撃でもヤツを捉えられないとは…レイは再びドラグーンを放つと、今度はより拡散した攻撃で相手をかく乱しようとした。
キラは、避けるばかりではなくレジェンドに突っ込んでいった。そしてフルゴールとサーベルでビームを弾きながら叫んだ。
「きみは誰?誰なんだ!?」
(……女!?)
初めてキラの声を聞き、レイは驚きのあまり体を硬くした。
レイがドラグーンの操作を緩めたため、キラはそのままサーベルを振り下ろした。
「ぐ…!」
まだ少し動揺が残っていたが、レイはビームシールドを展開させて干渉させた。
「きみは…あの人にとても似ている…!」
キラが言う。
レイはパワーをあげてストライクフリーダムを弾くと、バックパックから高エネルギービームライフルを射出して構えた。そして離脱したストライクフリーダムを続けざまに狙撃する。
フリーダムは回転しながら超高速でビームを避け、大きく旋回しながら舞い戻ってきた。待ち構えていたレイは再びドラグーンを向かわせる。
「…だけど、あの人は…」
キラは制動をかけると、負けじとスーパードラグーンを放つ。互いのビーム砲がそれぞれの砲を狙い、乱れ撃ち状態になった。
「ラウ・ル・クルーゼは、もう…!」
その名を聞いてレイはギクリとした。
(そうだ、ラウ…あの日おまえが殺した、もう1人の…)
「そんな風に、もう1人のことを『俺』なんて言うなっ!」
シンの声が響く。けれど続けてギルが現れた。
「だが、きみもラウだ」
レイは表情をゆがめながら、フリーダムに向けて再びライフルを放った。
(俺の役割…俺がすべきこと…ギルのために…ラウのために…)
「それが、きみの運命なんだよ」
そして、シンのために。
「あの人はもういない!」
「違う。彼はいる…今、ここに!わかるだろう?おまえには」
レイの答えを聞いて、キラもまたギクリとした。あの仮面の男によく似た声…けれどまだ若く、幼ささえ感じる声。
「人の夢、人の未来、その素晴らしき結果…キラ・ヤマト!」
「うぅ…!」
かつて、自分を最高のコーディネイターであり、夢の子であり、同時に欲望に暴走した世界の罪であると言ったあの男が蘇る。キラの心には動揺が走り、攻撃の手も明らかに鈍ってしまう。
「俺もおまえも、この世界のどうしようもない欲望の果てだ。だから消えなくてはならない!」
ドラグーンが襲い掛かり、キラはこれまでのように回避しようとしたが反応が遅れる。自身のドラグーンを弾かれ、制御がうまくいかない。
しかしキラの判断の遅れはレジェンドにライフルをマウントさせ、脚部からジャベリンを抜いてアンビデクストラスモードにするだけの時間を許してしまった。レジェンドはそれを構えて向かってくる。
「人類の罪と共に!」
「ぐ…この…!」
襲い掛かるジャベリンを2本のラケルタでさばきながら、キラはまだ戸惑っていた。
「自分からは、決して逃れられない」
レイは絶望的な想いで呟いた。
「そして取り戻せないもの、それが過去だ!」
生まれてしまった自分。戦闘人形にされた少女。
家族を失い、死よりも辛い苦しみに苛まれている友。
未来のないクローンであることを呪い、憎み、宿命に挑んだ彼…
「きみは…!?」
キラはそんなレイの言葉に戸惑いを隠せない。
(違う、何かが違う…あの時、オーブで感じたように…彼は…)
「だから、もう終わらせる!そしてあるべき正しき姿へと戻るんだ!世界は!」
レイが再びドラグーンを一斉に放った。
キラは、なぜだか悲鳴のようにも聞こえるその声に違和感を覚えながら、感覚を研ぎ澄ませていった。相手のドラグーンの位置を把握する。
キラは敵をマルチロックオンするように、バイザーに反射するビーム砲を感覚的に捉えていく。全ての軌道まで捉える必要はない…イメージを固めるんだ…
「でも…違う!」
そしてキラはスーパードラグーンをパージし、全ての出力を上げていく。
ストライクフリーダムは青い輝きを放ち、ビーム砲もスピードを上げた。そしてキラが感覚的に捉えたレジェンドのビーム砲を射程に収める。決して、レイの操作が遅れているわけではない。キラが早過ぎるのだ。やがてレジェンドのビーム砲が見る見るうちに捕捉され、爆破された。
「これは…くっ!」
レジェンドのモニターには真っ赤なアラートが出て、ほとんど無事な砲が残っていない。
「きみは…」
キラはサーベルをマウントしてラッチからライフルを取り出した。
「誰かを気にして、誰かのために戦ってるじゃないか!」
クスィフィアスが起き上がり、カリドゥスが輝き始める。
キラは傷ついたデスティニーのために離脱したレジェンドと、それによく似たプロヴィデンスが無力な脱出ランチを撃ったことを思い出した。
「あの人は、たくさんの命を奪った!」
サイクロプスに巻き込まれて死んだあのザフト兵も、要塞に核を撃たれた人たちも…最期に見たフレイの優しい笑顔が、キラの胸を突き刺した。
「何を今さら!おまえの手だって汚れているだろう!」
レイはその言葉に苛立ち、再びロングライフルを構えた。
「その力を誇り、殺し、奪い、力なき弱いものを苦しめる!綺麗事を言うな!」
「そんな事はわかってる!だけど!」
キラはかぶりを振った。
力がなければ、強い者に嬲られ、虐げられる。力があれば、今度は逆に弱い者への脅威となる。ゆえに、力を持つ自分はそれを心に刻む必要があった。
「だからこそ忘れたくない!命は、何にだって一つだ!」
途端、ハイマットフルバーストモードのフリーダムから凄まじい火力のビームが放たれた。
ドラグーンを失った今、レジェンドには対抗する術がない。レイは続けざまにライフルを放ったがとても太刀打ちなどできず、シールドを展開して防衛態勢に入って離脱のチャンスを窺う。しかしフリーダムの砲撃はやまず、徐々に機体が削られていった。
キラは無差別に撃ち続けているようでいながら、相手を正確にロックし、コックピットやスラスター以外の、なるべくダメージが少ない部分を狙って撃っていた。
そのかわりその攻撃は全く容赦がない。
「ち…この…!」
攻撃はありとあらゆるパーツに向けられた。まず構えている高エネルギーライフルが爆発し、シールドを発生させる手甲部が弾き飛ばされる。脚部、腕部、肩、バックパック、アイカメラ、アンテナ…信じられない緻密さでロックされ、ビームが機体を破壊していく。
キラの冷静な眼が、レジェンドから全てを奪い去っていった。
「うわあぁぁ!!」
凄まじい火力が駆動系を破壊し、ついにコックピットに激しい火花が散って、破片でレイのヘルメットに傷がついた。
レイは衝撃で気を失い、やがてレジェンドは完全に沈黙した。
機体は爆発しない。そんな事は、絶対にさせはしない。
キラは砲撃をやめると、動かなくなったレジェンドを確認した。
パイロットは無事なはずだ。
スラスターも傷つけていないから、気がつけば脱出できるだろう。
キラはディアクティヴモードになったレジェンドを見てポツリと呟いた。
「その命は、きみのものだ。きみは、彼じゃない…」
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制作裏話-PHASE50②-
本編ではついに明かされませんでしたが、相当重苦しい過去を持つらしいレイがラウ・ル・クルーゼに助け出された時、待っていたのは「自由」でした…
フラガとヒビキの欲望の果てに始まったレイVSキラは、こうしたアバンで始めてみました。世界が開けた彼に与えられた「自由」は今、大いなる脅威としてレイの前に立ちはだかっています。いよいよ決着の時です(私としては正直、シンVSキラのガチンコ対決の方が見たかったんですが)
レイのドラマも、力のある監督と脚本家が練りこめば本編で十分描く事ができたと思うのですが、全てが中途半端な上にくだらない女難などをやっているから結局何も描写できないままでした。それまでほとんど喋らず、キャラもいまひとつ立っていなかったレイは、ジブラルタルで人が変わったように喋り捲ってアスランを討ち、ルナマリアを邪魔者扱いし、あとはひたすらシンをギル一派に引き込むのみ。すっかりつまらないキャラに成り下がったと思ったら、まさかの議長殺しで終わるというさらに視聴者置き去りポカーンキャラに。
私はレイの描写にも気を遣ってきたつもりです。セリフが少ないのでアレンジしづらかったのですが、同じくクローンでありながら彼がラウ・ル・クルーゼのように世を憎み、自分の存在を憎まずに済んだのは、シンと同じく、彼を大切に想う人や友達がいたからとしたかったからです。だから意図的にルナマリアやヨウランやヴィーノたちともコミカルな会話をさせ、なるべくキャラ同士を絡めてきました。切り捨てたメイリンとの関係修復ができなかったのは残念ですが、そこはメイリン自身も驚くべき成長キャラとなったため、その修復は彼に任せることにしました。
特に彼にとってシンは本当に大切な友達です。
優秀ですが浮き沈みが激しくムラのあるシンは、常に冷静で実力的には拮抗するレイとつきあう事で落ち着いていき、仲間とも接する事ができるようになりました。そしてレイもまた、シンを介して仲間を得る事ができたとしたかったのです。素っ気ないけどソツのない彼は、むしろ人づき合いはアスランよりずっとうまいといえましょう。PHASE20を「PAST」というサブタイトルにして総集編をやるなんて、恐らく他の監督や脚本家が見たら失笑ものでしょう。ここは絶対、シンの「空白の過去」、すなわちオーブを去ってからミネルバに乗艦するまでのエピソードを描くべきなんです。
シンに救われた事で心が軽くなったレイは、本編のようにクルーゼと自分を同一化することはありません。セリフ上ではそのような事を言うのですが、本編と違い、キラは何かが違うと嗅ぎ取ります。
レイもクルーゼもキラ・ヤマトを創り出す過程の産物ではありますが、キラは、「彼らはあくまでも別の存在」として認識しています。
アークエンジェルがオーブ艦隊への援護のためにムラサメを行かせたのは創作です。本編ではレクイエムに突っ込むムウが連れて行くのですが、艦隊の状況が悪いので先行させる事にしました。MSなしでミネルバと戦うのは分が悪いですが、あちらもインパルスVSジャスティスでMSを失うのですぐに五分になります。
ムウはアークエンジェルのしんがりを務める形でエターナルを守っていますが、ここで「ムウが完全復活した」ことをラクスやバルトフェルドが知るシーンを創作しました。49話も引っ張ったんですから、こんなシーン、ホントはあってもよかったと思うんですよ。死んだ女の日記を盗み読んでる場合じゃないですよ。寝たきり男の回想話とか冗談じゃないですよ。
物語はヒロインVSアスランの対決に至ります。
逆デスのルナマリアは純粋に優れた女性兵士であるアスランに憧れる娘なので、ここで葛藤が起きます。本編のなんだかよくわからない(恋愛なんだか妹を奪われた怒りなんだか裏切られた事なんだか…)怒りよりわかりやすいと思います。なぜならこれ、キラVSアスランをなぞってますからね。アスランもルナマリアの苦しみがかつての自分と同じだと気づきます。戦いの意義を見失い、戦いたくないと思いながら戦うしかないと思い込む。そんな彼女の葛藤にアスランが気づけるのは、「過去」を乗り越えてきた旧キャラならではなんですよね。
さらに「誰が正しいのかではなく、何が正しいのかを見極めろ」と言うのは、まさに「正しい事を正しいと主張する」アスランならではとしています。それが薄っぺらな綺麗事でも、そう言う資格などなくても、それでも貫き通すのがこの頑固で融通の利かないアスランの「力」としているのですから。もうアスランは開き直って、こういう「綺麗事キャラ」にしちゃった方がいいんですよ。それゆえに他人とは相容れず孤独ですが、だからこそキラがいてカガリがいるんですから。
インパルスを退けたアスランの前に、ついにシンが立ちはだかります。ルナマリアを傷つけたと怒り狂うシンが、勢いづいていたとはいえそのルナマリアを殺そうとするなんて描写、ホントに許せないじゃない!?
さて、運命の非情さを回想する議長のモノローグに続き、いよいよレイVSキラのゴングが鳴ります。
まずは逆転ならではの大きな改変点である、「キラ=女」である事をレイに知らせます。デュランダルがこの事をレイに知らせていないなんて明らかに不自然ですけど、むしろシンがキラを見てびっくりする、そして墓碑の前でもう一度、という流れが欲しかったので、必然的にレイは「キラ=男」と思い込んでいたとしています。キラという名前は中性的なので、これは本当に助かりました。
キラとレイの会話は何回読んでもさっぱり意味がわからないので、キラが感じていた違和感を口にさせ、そんな事言うなとシンに叱られたレイがそれを敢えて肯定するという形を取りました。
けれどどこか違う…
それもそのはずです。レイは世界を終わらせたいと願ったクルーゼとは違い、新しい世界をシンに、ルナマリアに託したいと願っているからです。穢れきった自分やステラを作り出した世界を捨て、議長が導く新たな世界へ旅立つ彼らの幸せを願っているからです。
つまり、レイ自身も気づいていないその「友を想う気持ち」に、キラが気づいたとしたかったのです。
その方が深い孤独を知っており、今はレイと同じく心強い仲間を得たキラらしいでしょう。
だからオーブ戦でデスティニーのために離脱したレジェンドを見たキラは、今回再度の邂逅によって彼はクルーゼとは違うと確信するのです。
さらに逆デスのキラには、本編のような「驚かせて総攻撃」は絶対させないと決めていたので、むしろレイの言葉を鋭い刃としてキラに向かわせました。
血にまみれた手で、綺麗事を言うな…シンがカガリに言ったように、アスランがキラに言ったように、レイはキラを断じます。
けれど、過去を乗り越えたキラにとって、それは既に受け入れた事でした。だからキラはぶれない。ここにキラが旧主人公…つまり、逆種を通じて一歩先んじて成長したアドバンテージがあるのです。続編における旧主人公の役割というのは、あくまでも新主人公のサポートであり、好敵手・または導き手であるべきだと思うので、逆デスのキラには常にこの役割を担ってもらうよう気を配ってきました。
既に答えを出しているキラは言います。
自分は罪を背負っているけれど、決して忘れたくないこと…それこそが、「命はたった一つなのだ」ということとしました。本編ではセリフのつなぎが悪くてさっぱり意味の通らなかった言葉なので、こういう流れに乗せる事にしたのです。FPではこのけったいな禅問答が直るかと思いましたが、何も直っていませんでした。期待しちゃダメだというのはわかっているのに、結局期待して裏切られるんですよねぇ…
そしてキラは本編のようなズル(ビックリさせといて不意打ちヒャッホゥ!)はせず正々堂々と、完膚なきまでにレジェンドを叩きのめします。レイは手も足も出ず、スーパーコーディネイターの力を身に受けて敗北します。
そして本編でレイを動揺させた問題のセリフ、まさかまさかの「救いの言葉」は、逆デスではキラの独り言にしました。レイには聞こえなかったこの言葉はしかし、既にシンから彼の心をに届いているというのが、逆転での逆転演出でした。
フラガとヒビキの欲望の果てに始まったレイVSキラは、こうしたアバンで始めてみました。世界が開けた彼に与えられた「自由」は今、大いなる脅威としてレイの前に立ちはだかっています。いよいよ決着の時です(私としては正直、シンVSキラのガチンコ対決の方が見たかったんですが)
レイのドラマも、力のある監督と脚本家が練りこめば本編で十分描く事ができたと思うのですが、全てが中途半端な上にくだらない女難などをやっているから結局何も描写できないままでした。それまでほとんど喋らず、キャラもいまひとつ立っていなかったレイは、ジブラルタルで人が変わったように喋り捲ってアスランを討ち、ルナマリアを邪魔者扱いし、あとはひたすらシンをギル一派に引き込むのみ。すっかりつまらないキャラに成り下がったと思ったら、まさかの議長殺しで終わるというさらに視聴者置き去りポカーンキャラに。
私はレイの描写にも気を遣ってきたつもりです。セリフが少ないのでアレンジしづらかったのですが、同じくクローンでありながら彼がラウ・ル・クルーゼのように世を憎み、自分の存在を憎まずに済んだのは、シンと同じく、彼を大切に想う人や友達がいたからとしたかったからです。だから意図的にルナマリアやヨウランやヴィーノたちともコミカルな会話をさせ、なるべくキャラ同士を絡めてきました。切り捨てたメイリンとの関係修復ができなかったのは残念ですが、そこはメイリン自身も驚くべき成長キャラとなったため、その修復は彼に任せることにしました。
特に彼にとってシンは本当に大切な友達です。
優秀ですが浮き沈みが激しくムラのあるシンは、常に冷静で実力的には拮抗するレイとつきあう事で落ち着いていき、仲間とも接する事ができるようになりました。そしてレイもまた、シンを介して仲間を得る事ができたとしたかったのです。素っ気ないけどソツのない彼は、むしろ人づき合いはアスランよりずっとうまいといえましょう。PHASE20を「PAST」というサブタイトルにして総集編をやるなんて、恐らく他の監督や脚本家が見たら失笑ものでしょう。ここは絶対、シンの「空白の過去」、すなわちオーブを去ってからミネルバに乗艦するまでのエピソードを描くべきなんです。
シンに救われた事で心が軽くなったレイは、本編のようにクルーゼと自分を同一化することはありません。セリフ上ではそのような事を言うのですが、本編と違い、キラは何かが違うと嗅ぎ取ります。
レイもクルーゼもキラ・ヤマトを創り出す過程の産物ではありますが、キラは、「彼らはあくまでも別の存在」として認識しています。
アークエンジェルがオーブ艦隊への援護のためにムラサメを行かせたのは創作です。本編ではレクイエムに突っ込むムウが連れて行くのですが、艦隊の状況が悪いので先行させる事にしました。MSなしでミネルバと戦うのは分が悪いですが、あちらもインパルスVSジャスティスでMSを失うのですぐに五分になります。
ムウはアークエンジェルのしんがりを務める形でエターナルを守っていますが、ここで「ムウが完全復活した」ことをラクスやバルトフェルドが知るシーンを創作しました。49話も引っ張ったんですから、こんなシーン、ホントはあってもよかったと思うんですよ。死んだ女の日記を盗み読んでる場合じゃないですよ。寝たきり男の回想話とか冗談じゃないですよ。
物語はヒロインVSアスランの対決に至ります。
逆デスのルナマリアは純粋に優れた女性兵士であるアスランに憧れる娘なので、ここで葛藤が起きます。本編のなんだかよくわからない(恋愛なんだか妹を奪われた怒りなんだか裏切られた事なんだか…)怒りよりわかりやすいと思います。なぜならこれ、キラVSアスランをなぞってますからね。アスランもルナマリアの苦しみがかつての自分と同じだと気づきます。戦いの意義を見失い、戦いたくないと思いながら戦うしかないと思い込む。そんな彼女の葛藤にアスランが気づけるのは、「過去」を乗り越えてきた旧キャラならではなんですよね。
さらに「誰が正しいのかではなく、何が正しいのかを見極めろ」と言うのは、まさに「正しい事を正しいと主張する」アスランならではとしています。それが薄っぺらな綺麗事でも、そう言う資格などなくても、それでも貫き通すのがこの頑固で融通の利かないアスランの「力」としているのですから。もうアスランは開き直って、こういう「綺麗事キャラ」にしちゃった方がいいんですよ。それゆえに他人とは相容れず孤独ですが、だからこそキラがいてカガリがいるんですから。
インパルスを退けたアスランの前に、ついにシンが立ちはだかります。ルナマリアを傷つけたと怒り狂うシンが、勢いづいていたとはいえそのルナマリアを殺そうとするなんて描写、ホントに許せないじゃない!?
さて、運命の非情さを回想する議長のモノローグに続き、いよいよレイVSキラのゴングが鳴ります。
まずは逆転ならではの大きな改変点である、「キラ=女」である事をレイに知らせます。デュランダルがこの事をレイに知らせていないなんて明らかに不自然ですけど、むしろシンがキラを見てびっくりする、そして墓碑の前でもう一度、という流れが欲しかったので、必然的にレイは「キラ=男」と思い込んでいたとしています。キラという名前は中性的なので、これは本当に助かりました。
キラとレイの会話は何回読んでもさっぱり意味がわからないので、キラが感じていた違和感を口にさせ、そんな事言うなとシンに叱られたレイがそれを敢えて肯定するという形を取りました。
けれどどこか違う…
それもそのはずです。レイは世界を終わらせたいと願ったクルーゼとは違い、新しい世界をシンに、ルナマリアに託したいと願っているからです。穢れきった自分やステラを作り出した世界を捨て、議長が導く新たな世界へ旅立つ彼らの幸せを願っているからです。
つまり、レイ自身も気づいていないその「友を想う気持ち」に、キラが気づいたとしたかったのです。
その方が深い孤独を知っており、今はレイと同じく心強い仲間を得たキラらしいでしょう。
だからオーブ戦でデスティニーのために離脱したレジェンドを見たキラは、今回再度の邂逅によって彼はクルーゼとは違うと確信するのです。
さらに逆デスのキラには、本編のような「驚かせて総攻撃」は絶対させないと決めていたので、むしろレイの言葉を鋭い刃としてキラに向かわせました。
血にまみれた手で、綺麗事を言うな…シンがカガリに言ったように、アスランがキラに言ったように、レイはキラを断じます。
けれど、過去を乗り越えたキラにとって、それは既に受け入れた事でした。だからキラはぶれない。ここにキラが旧主人公…つまり、逆種を通じて一歩先んじて成長したアドバンテージがあるのです。続編における旧主人公の役割というのは、あくまでも新主人公のサポートであり、好敵手・または導き手であるべきだと思うので、逆デスのキラには常にこの役割を担ってもらうよう気を配ってきました。
既に答えを出しているキラは言います。
自分は罪を背負っているけれど、決して忘れたくないこと…それこそが、「命はたった一つなのだ」ということとしました。本編ではセリフのつなぎが悪くてさっぱり意味の通らなかった言葉なので、こういう流れに乗せる事にしたのです。FPではこのけったいな禅問答が直るかと思いましたが、何も直っていませんでした。期待しちゃダメだというのはわかっているのに、結局期待して裏切られるんですよねぇ…
そしてキラは本編のようなズル(ビックリさせといて不意打ちヒャッホゥ!)はせず正々堂々と、完膚なきまでにレジェンドを叩きのめします。レイは手も足も出ず、スーパーコーディネイターの力を身に受けて敗北します。
そして本編でレイを動揺させた問題のセリフ、まさかまさかの「救いの言葉」は、逆デスではキラの独り言にしました。レイには聞こえなかったこの言葉はしかし、既にシンから彼の心をに届いているというのが、逆転での逆転演出でした。
Natural or Cordinater?
サブタイトル
お知らせ PHASE0 はじめに PHASE1-1 怒れる瞳① PHASE1-2 怒れる瞳② PHASE1-3 怒れる瞳③ PHASE2 戦いを呼ぶもの PHASE3 予兆の砲火 PHASE4 星屑の戦場 PHASE5 癒えぬ傷痕 PHASE6 世界の終わる時 PHASE7 混迷の大地 PHASE8 ジャンクション PHASE9 驕れる牙 PHASE10 父の呪縛 PHASE11 選びし道 PHASE12 血に染まる海 PHASE13 よみがえる翼 PHASE14 明日への出航 PHASE15 戦場への帰還 PHASE16 インド洋の死闘 PHASE17 戦士の条件 PHASE18 ローエングリンを討て! PHASE19 見えない真実 PHASE20 PAST PHASE21 さまよう眸 PHASE22 蒼天の剣 PHASE23 戦火の蔭 PHASE24 すれちがう視線 PHASE25 罪の在処 PHASE26 約束 PHASE27 届かぬ想い PHASE28 残る命散る命 PHASE29 FATES PHASE30 刹那の夢 PHASE31 明けない夜 PHASE32 ステラ PHASE33 示される世界 PHASE34 悪夢 PHASE35 混沌の先に PHASE36-1 アスラン脱走① PHASE36-2 アスラン脱走② PHASE37-1 雷鳴の闇① PHASE37-2 雷鳴の闇② PHASE38 新しき旗 PHASE39-1 天空のキラ① PHASE39-2 天空のキラ② PHASE40 リフレイン (原題:黄金の意志) PHASE41-1 黄金の意志① (原題:リフレイン) PHASE41-2 黄金の意志② (原題:リフレイン) PHASE42-1 自由と正義と① PHASE42-2 自由と正義と② PHASE43-1 反撃の声① PHASE43-2 反撃の声② PHASE44-1 二人のラクス① PHASE44-2 二人のラクス② PHASE45-1 変革の序曲① PHASE45-2 変革の序曲② PHASE46-1 真実の歌① PHASE46-2 真実の歌② PHASE47 ミーア PHASE48-1 新世界へ① PHASE48-2 新世界へ② PHASE49-1 レイ① PHASE49-2 レイ② PHASE50-1 最後の力① PHASE50-2 最後の力② PHASE50-3 最後の力③ PHASE50-4 最後の力④ PHASE50-5 最後の力⑤ PHASE50-6 最後の力⑥ PHASE50-7 最後の力⑦ PHASE50-8 最後の力⑧ FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開
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2011/5/22~2012/9/12
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