機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
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再びネオ・ジェネシスが放たれる…それはもう抑止力でもなんでもない。ただ「敵」を殲滅するものだ。
こんな風になるから、議長の言う新世界を望む人がいるのだろうか?人は、こうしてすぐに、行き着くところまで行ってしまうから…
(…彼の唱える新世界を目指した方が人は幸せなのだろうか…平和で、争いのない世界へと…)
けれど、アスランの心の中で何かが「違う」と否定した。
「撃て…ジェネシ…我らの…世界を奪っ…報い…」
脳裏に、父の言葉が蘇る。皮肉なことに、同じジェネシスを手中に収めた2人を比べることで、アスランには彼らの違いが見えてきた。
デュランダル議長は、父パトリック・ザラのように、世界が間違っていると狂気に走って撃つのではない。
自身が目指す「新世界を創るため」に撃つのだ。それこそまさに、血塗られた創世の光として。
こんな風になるから、議長の言う新世界を望む人がいるのだろうか?人は、こうしてすぐに、行き着くところまで行ってしまうから…
(…彼の唱える新世界を目指した方が人は幸せなのだろうか…平和で、争いのない世界へと…)
けれど、アスランの心の中で何かが「違う」と否定した。
「撃て…ジェネシ…我らの…世界を奪っ…報い…」
脳裏に、父の言葉が蘇る。皮肉なことに、同じジェネシスを手中に収めた2人を比べることで、アスランには彼らの違いが見えてきた。
デュランダル議長は、父パトリック・ザラのように、世界が間違っていると狂気に走って撃つのではない。
自身が目指す「新世界を創るため」に撃つのだ。それこそまさに、血塗られた創世の光として。
発射口には近づいているものの、ネオは進路をダイダロス基地とゴンドワナの守備隊に塞がれていた。
「くそ…!もういい加減にしろ!」
アカツキのドラグーンが群がってくるザクやゲイツRを貫く。しかしそれをかいくぐってきたグフやスラッシュザクファントムにソードやアックスで襲われ、ネオはシールドで防衛しながら毒づいた。
「何でこんなもん守って戦うんだ!」
「一佐!」
苦戦しているアカツキの姿を見つけたイケヤとゴウは、モビルスーツに変形するとライフルで援護した。
「この数だ。簡単には突破できん」
「しかし、このままではレクイエムが撃たれます!」
イケヤが近づきつつあるステーション2を指して言った。
「一佐はなんとか発射口へ。我らが援護します」
「わかった。ついでにザフトのお嬢さんを探してくれ。そろそろ近くに来てるはずだ」
ジャスティスの火力があれば、ここを突破できる…ネオのその言葉に頷いたゴウは、小隊に命じてジャスティスへの迎えに出した。
「オーブを討たせるな!なんとしても守るんだ!」
ムラサメとアカツキは再び戦場へ散って行った。
ミネルバとアークエンジェルの熾烈な戦いにも決着の時が近づいていた。
両艦とも、この戦闘宙域にいる艦の中では屈指の火力を誇っている。
それが互いに主砲を撃ち、あらん限りのミサイルを惜しげもなく撃っているのだから、ダメージの蓄積は尋常ではない。
アークエンジェルはトリスタンに掠められてブリッジのアラートが激しく鳴り響き、照明がちかちかと落ちた。マードックからは隔壁異常や電圧の低下がひっきりなしに報告されてくる。サブスラスターもかなり動かなくなってしまっていた。
「艦長!こっちはもうヤバいですよ!エンジンも…」
「持ちこたえて!」
ノイマンが2発目のトリスタンを避けようと舵を回したが、今度は主砲を掠めて再びブリッジが大きく揺れた。
「ゴットフリート2番、被弾!」
隔壁が吹き飛ばされ、数人の兵が爆発に巻き込まれる。アークエンジェルは、艦内の酸素を燃やして激しく火を噴いた。
「ミサイル、さらに来ます!」
ミリアリアが必死に策敵情報を伝え、チャンドラも装弾作業に追われる。整備兵たちが消火に追われ、エンジンブロックの隔壁がさらに閉鎖された。
「くそっ…出力が…」
ノイマンは必死にコントロールを続けていたが、エンジンの出力は低下し、徐々に高度が下がって月面が迫ってきていた。
マリューは同じく各所からさかんに火を噴いているミネルバを睨んだ。
「突撃する!コリントス、撃ぇ!」
それからノイマンを呼んだ。
「三尉、いくわよ!バリアント照準!」
「はい!」
イチかバチかの突撃でミネルバの頭上を飛び越え、そろそろチャージサイクルが危険域のバリアントを、360度、撃てるだけぶち込み続けるつもりだった。
「撃ぇ!」
残ったミサイルとバリアントを撃ちながら向かってきたアークエンジェルに、最初に気づいたのはアーサーだった。
「かっ、艦長!」
「突進する気!?」
タリアが腰を浮かし、マリクに回避を命じる。
その途端、アークエンジェルはミネルバの頭上を取り、そしてぐるりと回転した。バリアントも撃ち続けたまま360度回転し、ミネルバの艦上部と主砲をぶち抜いた。
激しい振動と武装を破壊された時の激しい爆発が艦を襲う。
「ト、トリスタン、1番2番被弾!両舷ランチャー発射不能!」
なんとかシートにつかまり、アーサーがダメージを報告する。
「艦長!」
そして彼はタリアを呼んだ。
武装がほとんど破壊された今、ミネルバには戦う力が残っていない。ただ推進を続けるミネルバもまた、徐々に高度を下げていった。
インパルスとデスティニーを撃破したジャスティスがミネルバを見つけたのは、まさにこの瞬間だった。
あちこちで火を噴くミネルバは既に戦える状態ではない。
アスランが辺りに視線を送ると、アークエンジェルがいた。無論傷ついてはいるが、ミネルバほどではない。勝敗が決した事は傍目からもよくわかった。
「グラディス艦長…」
ザフト軍人として、最後まで諦めずに戦い抜いたのだろう。
けれど、聡明な彼女の事だ…レクイエムを撃つ事が正しいなどとは思わなかったはずだ。
アスランがミネルバの脇をすり抜けてようとしたその時、近づいてきた3機のムラサメがミネルバに攻撃を加えた。
「アスラン・ザラか!?」
「はい」
アスランはそう返事をしてから、攻撃を加えられても迎撃すらできず、さらに火を噴くミネルバを見つめていた。
「ロアノーク一佐がお待ちだ!早く発射口へ!」
モビルスーツに変形した1機がライフルを構えてジャスティスを援護する様子だった。アスランはミネルバをもう一度見た。
「ここは我らが!急げ!」
「あ……いえ…」
アスランは一瞬迷い、そして言った。
「この艦は、私が撃沈します!」
「いや、貴官は…」
驚くムラサメを置いて、ジャスティスは飛び立った。
(スラスターが生きている限り、狙われてしまう…ならば!)
アスランは艦後部のメインスラスターへと向かう。
初めてミネルバに乗った時はこの艦を救った自分が、共に戦い抜いた彼らに引導を渡す事になるとは…アスランはふっと息をついた。
ブリッジでは今まさに攻撃を仕掛けられると悟って、皆固唾を呑んでジャスティスを見ているに違いない。
(裏切り者のアスラン・ザラが、かつての母艦を沈めると…)
アスランはミネルバに攻撃を仕掛けていたもう1機のムラサメに、離脱するよう通信を入れた。彼もまた怪訝そうな返答をしたものの、仲間たちと合流してアスランの行動を見守っている。
(…でもこれが、彼らの命を守るなら…!)
後部に達したアスランは、ファトゥムを射出した。
ビームブレードと大型装甲ナイフがメインスラスターを貫き、大爆発を起こす。ミネルバは急激に失速し、高度を落としていく。アスランは艦が完全に月面に着陸するまでは一切手を抜かず、生きているスラスターはサブも含めて全て破壊していった。
ムラサメの攻撃に為す術もなかったミネルバのブリッジでは、ジャスティスのスラスターへの攻撃で再び激しい振動を受けた。
「…メインスラスター損傷!姿勢制御不能!」
なんとか立て直そうとしていたマリクがついに匙を投げた。
「ダメです、艦長!墜落します!」
「総員、衝撃に備えて!」
やがて艦は滑るように月面に突っ込み、ゆっくりと傾いた。
しばらく沈黙が続き、やがてクルーが恐る恐る顔を上げ、体を起こした。メインモニターは壊れ、画像が乱れている。各員はもう役に立たないアラートを止めた。ミネルバはついに、完全に航行不能に陥ったのだ。
タリアは黙ったまま、デジタル画像が乱れて非常に見にくくなったモニターに眼をやった。
「アスラン・ザラ…」
そこには、インフィニットジャスティスが迎えのムラサメを率いて去っていく姿があった。
タリアは呆れたようにため息をつき、そして苦笑した。
「…全く、最後の最後までやってくれるわね」
「レクイエム発射口に、オーブ軍モビルスーツ」
「ステーション2、間もなくポジションです」
メサイアではアカツキとムラサメが、レクイエム発射口までの最後の防衛ラインを突破しようと戦っている様子が伝えられた。デュランダルは頬杖をつきながら戦況を見守っていたが、ネオ・ジェネシスのチャージ状況を確認させた。
「発射口のオーブ軍を排除する。ネオ・ジェネシス照準」
それから近くにいた黒服の将校に尋ねた。
「レジェンドとデスティニーは?」
「どちらも、シグナルロストです」
デュランダルの表情が暗くなった。
(デスティニーが…敗れた?)
その時、彼にとっては忌わしい情報がもたらされた。
「グリーン18、ベータにフリーダム!」
メサイアに向かってくるストライクフリーダムの光学映像が出ると、デュランダルは眉を顰めた。
(レイも討たれたというのか、あれに)
その頃、月の引力に引かれながら漂っていたレジェンドでは、怪我をしたレイが眼を覚ました。
バイザーが割れて破片が彼の額を傷つけている。
レイは衝撃に揺さぶられてまだ眩暈の残る状態だったが、すぐにパネルを操作し始めた。
スラスターは何とか生きているが、通信系統はすべて破壊されている。
(ギル…)
レイはシフトレバーを入れ、ほとんどスピードの出ないボロボロのレジェンドでメサイアへと向かった。
一方キラは、まだ攻撃を受けているエターナルとようやく合流した。
ドム部隊とメイリン、それに残ってくれたイザークとディアッカが奮闘し、エターナルはダメージを受けつつも自力航行を続けている。
キラはほっとすると、エターナルの周りに群がるモビルスーツを全てマルチロックオンしていく。鋭い感覚でエターナルの裏手に隠れている敵までをも捉えてスーパードラグーンを斉射し、周囲の敵を一掃した。
「キラさん…よかった」
メイリンはキラの無事を知ってホッとすると同時にストライクフリーダムの威力に呆気に取られ、ディアッカも口笛を吹いて「すげぇな」と呟く。キラは彼らに合図を送ると、エターナルに通信を繋いだ。
「ラクス、ミーティアを!」
「準備はできてるよ」
「要塞を討つ。エターナルは下がって!」
こうしてついに合流した両者を見て、デュランダルはやれやれと息をついた。
(全く、厄介な存在だな…ラクス・クライン、キラ・ヤマト)
そして彼らからさほど離れていないダイダロス基地に視線を向ける。
ネオ・ジェネシスでは、警戒して要塞の裏側に回りこんでいるラクス・クラインたちをまとめて撃つことはできなかった。
(まあ仕方がない。奴らを討つのはまたあとだ)
「面舵13、下げ舵8、ネオ・ジェネシス、射線軸固定。出力90%」
巨大な要塞が射線をとるためにゆっくりと移動を始めた。
それを見て、エターナルのブリッジのラクスたちも、ミーティアの射出を待つキラも不安げな表情になった。
「発射口の敵を掃討後、オーブを討ってこの戦闘を終わらせる」
デュランダルはついにオーブを討つという命令を発した。
全軍に通達するよう伝えると、司令部は再び慌しさを増した。
司令部からのネオ・ジェネシス発射の報せは、当然イザークが乗っているグフにも入っていた。
イザークはパネルにざっと眼を通すと、ちっと舌打ちした。
(…同じだ、あの時と…)
かつてジェネシスを撃ったパトリック・ザラは、ナチュラルを殲滅させんとあんなものを放った。それが今度は、オーブを討つレクイエムを守るために放つのだ。
前大戦を教訓とし、ザフトの本懐はプラントを守るものだという信念を持って戦ってきた彼にとって、プラントの道の踏み外しは承服できなかった。だからこそ今、こうして戦っているのだが…イザークは苛立ちながらヴォルテールに連絡を入れた。
実直で真面目な艦長は言いつけを守り、戦闘宙域には出ずに後方支援に徹している。気が逸った赤服どもは勝手に出撃して戦闘に加わったようだが、特に大きな被害はないという。
自分たちが無事である事を伝えると、イザークは「引き続きそのまま待機していろ」と艦長に伝えた。
イザークはふと、相棒の黒いザクファントムを見た。ディアッカも当然、この情報を眼にしているはずだ。いつもならそろそろ「どーすんの?イザーク」と呑気に聞いてきそうなものだが、ディアッカとのチャンネルは沈黙したままだ。
(まぁいい…時間もあまりないしな)
やや怪訝に思いつつも、イザークはエターナルとのチャンネルを開いた。
「エターナル!」
要塞の動きを警戒していたエターナルのブリッジに、突然イザークからの通信が入った。
「イザーク・ジュール?」
バルトフェルドがかつての部下を見て少し驚く。
まさか彼がエターナルを守って戦っているなどとは思っていないバルトフェルドは、苦笑しながら「おまえ、そこで何してるんだ?」と尋ねた。
イザークは「そんな事はどうでもいい!」と喚いてから続けた。
「メサイアが撃ってくるぞ!射線上の連中を下がらせろ!早く!」
それを聞いたラクスがパネルを操作し、映像を拡大した。
射線を分析すれば、狙いはレクイエム射出口付近の一掃だ。
「隊長!至急アークエンジェルに…」
「メサイアが撃ってくるんですって!?」
その途端アークエンジェルから通信が入ったので、ラクスもバルトフェルドも少なからず驚いた。
「おいおい、情報が早いねぇ」
マリューのその言葉に、バルトフェルドが笑った。
「聞いての通りだ。オーブ艦隊を下がらせてくれ」
ディアッカが何も言ってこない事をイザークがいぶかしんだ少し前、ネオ・ジェネシスの情報を得たディアッカの行動は迅速で、全く迷いがなかった。
(変わってねぇかな…)
チャンネルを合わせてみると、無事にアークエンジェルと繋がる。
「アークエンジェル、応答しろ。こちらディアッカ・エルスマン」
一瞬映像が乱れたが、やがて明瞭になった。
「…エルスマンくん?」
モニターには驚いた顔のマリューが映る。
ディアッカはにやりと笑って軽く挨拶すると、「ネオ・ジェネシスが撃たれるってよ。データを送る」とキーを叩いた。
すると艦長の上からチャンドラが覗きこんできた。
「よぉ、エルスマン!こんな時になんだけど、久しぶり!元気?」
「おかげさんで。マードックのおっさんもいんの?」
「いるいる。集まったの、独身ばっかだもん」
わずかな時間に言葉を交わし、転送が終わると、ディアッカは通信を切ろうとした。
「んじゃ、気ぃつけてな。後はよろしく」
ところが画面の向こうがなんとなく騒がしい。
「ちょっと、エルスマン!待った待った!」
チャンドラが手をパタパタさせて姿を消す。
「…ええ?…だってきみ、いつも…」
データを受け取り、すぐに回避命令を出したマリューも、後ろを振り返って誰かと何やら話しているようだ。
「…え?でも…いいの?…さなくて…?」
なんだ?と思った瞬間、心臓が飛び出しそうになった。
「いいんですってば!!」
そこにいてはいけない、いないでくれと祈り続けた人の声が聞こえたのだ。
そこから先はマリューに「悪いんだけど、通信を返してくれる?」と言われるまで、「そこで何してんだよ!」「あんたこそ何してんのよ!」という、いつもの2人の果てしない応酬が続く事になったのだった。
「ラミアス艦長、そちらの状況は?」
そんな経緯でいち早く情報を得て通信を入れてきたマリューに、ラクスは訊ねた。両者は分断されているため、互いの動きがわからないのだ。
「ジャスティスとアカツキが合流したところだけど…」
「すぐに下がらせてください。そして発射と同時に突破を!」
ラクスがやや硬い声で言った。
「ジェネシスの次は、レクイエムです」
ディアッカからの情報によって既にノイマンが舵を取り回したので、アークエンジェルは早々に射線軸からはずれている。他にもオーブ艦やムラサメが射線から続々下がって行った。それでもキラは心配になり、ジャスティスに呼びかけた。
「アスラン…」
「大丈夫よ、キラ」
しかしネオはそう答えたアスランのジャスティスが右腕を失っていることに気づいた。
「どうした?珍しいな、きみが」
「機関には問題ありません。大丈夫です」
「そうか」
ネオは「ま、きみのことだ。心配はしてないさ」と笑った。
「じゃ、次はあれをぶっ壊しに行こうぜ、ザフトのお嬢さん!」
「はい」
アスランはこの時、彼の自分に対する呼び方が変わったことに全く気づいていなかった。ネオはいつも彼女を、からかいもこめて「美人さん」とか「べっぴんさん」と呼び、さらに二人称では乱暴に「おまえ」と呼んでいたのだから。
けれど昔から筋金入りの鈍さを持つ彼女のことだ。この後キラに教えられるまで、ムウの記憶が戻った事に気づくことはなかった。
退避命令によりザフトが下がったため、発射口はがら空きになったのでむしろ好都合だった。とはいえ、ネオ・ジェネシスの威力を思えばかなりの距離を逃げる必要がある。
「ジェネシスの威力が収まり次第、シールドを突破するぞ!」
「急ぎましょう」
アスランはネオに言ってさらに発射口から離れた。
そして、死のγ線が再び放たれた。
「一佐!」
その思った以上の衝撃に引きずられそうになりながら、アスランが振り返った。その眼に、逃げ切れなかったナスカ級やモビルスーツが多数犠牲になるのが見えた。
(ああ、また…)
アスランの瞳に悲しみを含んだ怒りが宿る。
(こんな無意味な戦いで、あんなにたくさんの命が消えてしまう)
ネオはパワーをあげてジャスティスを追い続けている。アスランもさらにシフトを深く入れた。
(こんなものもレクエイムも、絶対に撃たせてはいけない)
月面に不時着したミネルバでは、何とか通信だけが回復していた。
救助要請を出して一息ついたところに司令部から報せが入り、皆、ネオ・ジェネシスが放たれるのを不安げに見ていた。射線上には退避しきれなかった友軍艦がまだ多くいた。そのくせ、肝心のオーブ艦やアークエンジェルはほとんど無事だったのだ。
「ああっ!マルベースとプルトンが…」
アーサーが悲壮な声をあげると、ブリッジもざわめく。
あの様子では、ザクやグフも多数犠牲になっただろう…
タリアもまた、議長のこんな強攻策に唇を噛み締めた。
「レクイエム、カウントダウン開始。Tマイナス30秒」
「ステーション2、射角固定。ゲシュマイディヒパンツァー展開」
メサイアがネオ・ジェネシスを撃ち終わると、今度はレクイエムのカウントダウンが始まった。デュランダルはオーブの残存部隊がほとんど退避し、思った以上の効果をあげられなかった事に苛立った。
(クライン派は脱走で一掃したと思ったが…まだ内通者がいたか)
「だが、頼みのオーブがなくなれば奴らももう動けまい」
デュランダルはほくそ笑んだ。
(チェックメイトだ、白のキング…そして、白のクィーン!)
「行くぞ!」
ネオ・ジェネシスの軌跡が消えると、アカツキとジャスティスは再び射出口へと向かった。
邪魔をする者はもういない。次は着々と進む発射準備との競争になる。
(急げ…本体を破壊しなければ!)
アスランはシールドを構え、陽電子を跳ね返すリフレクターにためらうことなく突入した。アンチビームシールドが反発し、ジャスティスの機体はあっけなく発射口内部へ侵入する。
ネオもまたそのままシールドを突破して内部へ突入すると、2機はかつてルナマリアが行った道を急ぐ。
「くそー!どこだ!?」
レクイエムのチャージが進み、やがて2人が目指す先に明るい光が見えてきた。地球軍基地だった時とは違い、ローラン隊はコントロールルームを地下に作っていない。
そこにはただ、今にもオーブに向けて死の光を放たんとしている、不気味な砲口だけが輝いている。
「よし、こいつだな」
ネオは到着するとドラグーンを放って四方八方にビーム砲を発した。アスランもまたファトゥムをパージし、本体に向けて突撃させる。ドラグーンの破壊があちこちを爆発させ、辺りを爆煙で包んだ。
アスランはより確実な破壊のため、ファトゥムの装甲ソードが砲口の真ん中に刺さったことを確認すると、自爆スイッチを押した。猶予時間はあまりないが、あとは脱出するだけだ。
「行きましょう、一佐!」
両者はスピードをあげて射出口に向かう。
ドラグーンによる破壊で起きた爆発は、あちこちで誘爆を引き起こしていき、2人を爆風と爆煙が襲う。
「急げ!」
ネオは後ろを振り返って後方のアスランを促した。
リフターがなくなった事で実際にはやや機動力が落ちているのだが、ジャスティスのパワーなら十分脱出には間に合う時間だった。
最後にファトゥムが自爆し、レクイエム本体を大爆発に巻き込んだ。
爆風が吹き出す直前に飛び出した2機はそのまま安全圏に離脱する。
チャージされていたレクイエムのパワーは完全に拡散し、中継点に向かうこともなく、何もない虚空へと放たれた。
2人は黙ってその光を見つめていた。
それはアークエンジェルも、エターナルも、キラも同じだった。
(これで、オーブは…)
この戦いが始まって以来、アスランは初めてほっと息をついた。
「くそ…!もういい加減にしろ!」
アカツキのドラグーンが群がってくるザクやゲイツRを貫く。しかしそれをかいくぐってきたグフやスラッシュザクファントムにソードやアックスで襲われ、ネオはシールドで防衛しながら毒づいた。
「何でこんなもん守って戦うんだ!」
「一佐!」
苦戦しているアカツキの姿を見つけたイケヤとゴウは、モビルスーツに変形するとライフルで援護した。
「この数だ。簡単には突破できん」
「しかし、このままではレクイエムが撃たれます!」
イケヤが近づきつつあるステーション2を指して言った。
「一佐はなんとか発射口へ。我らが援護します」
「わかった。ついでにザフトのお嬢さんを探してくれ。そろそろ近くに来てるはずだ」
ジャスティスの火力があれば、ここを突破できる…ネオのその言葉に頷いたゴウは、小隊に命じてジャスティスへの迎えに出した。
「オーブを討たせるな!なんとしても守るんだ!」
ムラサメとアカツキは再び戦場へ散って行った。
ミネルバとアークエンジェルの熾烈な戦いにも決着の時が近づいていた。
両艦とも、この戦闘宙域にいる艦の中では屈指の火力を誇っている。
それが互いに主砲を撃ち、あらん限りのミサイルを惜しげもなく撃っているのだから、ダメージの蓄積は尋常ではない。
アークエンジェルはトリスタンに掠められてブリッジのアラートが激しく鳴り響き、照明がちかちかと落ちた。マードックからは隔壁異常や電圧の低下がひっきりなしに報告されてくる。サブスラスターもかなり動かなくなってしまっていた。
「艦長!こっちはもうヤバいですよ!エンジンも…」
「持ちこたえて!」
ノイマンが2発目のトリスタンを避けようと舵を回したが、今度は主砲を掠めて再びブリッジが大きく揺れた。
「ゴットフリート2番、被弾!」
隔壁が吹き飛ばされ、数人の兵が爆発に巻き込まれる。アークエンジェルは、艦内の酸素を燃やして激しく火を噴いた。
「ミサイル、さらに来ます!」
ミリアリアが必死に策敵情報を伝え、チャンドラも装弾作業に追われる。整備兵たちが消火に追われ、エンジンブロックの隔壁がさらに閉鎖された。
「くそっ…出力が…」
ノイマンは必死にコントロールを続けていたが、エンジンの出力は低下し、徐々に高度が下がって月面が迫ってきていた。
マリューは同じく各所からさかんに火を噴いているミネルバを睨んだ。
「突撃する!コリントス、撃ぇ!」
それからノイマンを呼んだ。
「三尉、いくわよ!バリアント照準!」
「はい!」
イチかバチかの突撃でミネルバの頭上を飛び越え、そろそろチャージサイクルが危険域のバリアントを、360度、撃てるだけぶち込み続けるつもりだった。
「撃ぇ!」
残ったミサイルとバリアントを撃ちながら向かってきたアークエンジェルに、最初に気づいたのはアーサーだった。
「かっ、艦長!」
「突進する気!?」
タリアが腰を浮かし、マリクに回避を命じる。
その途端、アークエンジェルはミネルバの頭上を取り、そしてぐるりと回転した。バリアントも撃ち続けたまま360度回転し、ミネルバの艦上部と主砲をぶち抜いた。
激しい振動と武装を破壊された時の激しい爆発が艦を襲う。
「ト、トリスタン、1番2番被弾!両舷ランチャー発射不能!」
なんとかシートにつかまり、アーサーがダメージを報告する。
「艦長!」
そして彼はタリアを呼んだ。
武装がほとんど破壊された今、ミネルバには戦う力が残っていない。ただ推進を続けるミネルバもまた、徐々に高度を下げていった。
インパルスとデスティニーを撃破したジャスティスがミネルバを見つけたのは、まさにこの瞬間だった。
あちこちで火を噴くミネルバは既に戦える状態ではない。
アスランが辺りに視線を送ると、アークエンジェルがいた。無論傷ついてはいるが、ミネルバほどではない。勝敗が決した事は傍目からもよくわかった。
「グラディス艦長…」
ザフト軍人として、最後まで諦めずに戦い抜いたのだろう。
けれど、聡明な彼女の事だ…レクイエムを撃つ事が正しいなどとは思わなかったはずだ。
アスランがミネルバの脇をすり抜けてようとしたその時、近づいてきた3機のムラサメがミネルバに攻撃を加えた。
「アスラン・ザラか!?」
「はい」
アスランはそう返事をしてから、攻撃を加えられても迎撃すらできず、さらに火を噴くミネルバを見つめていた。
「ロアノーク一佐がお待ちだ!早く発射口へ!」
モビルスーツに変形した1機がライフルを構えてジャスティスを援護する様子だった。アスランはミネルバをもう一度見た。
「ここは我らが!急げ!」
「あ……いえ…」
アスランは一瞬迷い、そして言った。
「この艦は、私が撃沈します!」
「いや、貴官は…」
驚くムラサメを置いて、ジャスティスは飛び立った。
(スラスターが生きている限り、狙われてしまう…ならば!)
アスランは艦後部のメインスラスターへと向かう。
初めてミネルバに乗った時はこの艦を救った自分が、共に戦い抜いた彼らに引導を渡す事になるとは…アスランはふっと息をついた。
ブリッジでは今まさに攻撃を仕掛けられると悟って、皆固唾を呑んでジャスティスを見ているに違いない。
(裏切り者のアスラン・ザラが、かつての母艦を沈めると…)
アスランはミネルバに攻撃を仕掛けていたもう1機のムラサメに、離脱するよう通信を入れた。彼もまた怪訝そうな返答をしたものの、仲間たちと合流してアスランの行動を見守っている。
(…でもこれが、彼らの命を守るなら…!)
後部に達したアスランは、ファトゥムを射出した。
ビームブレードと大型装甲ナイフがメインスラスターを貫き、大爆発を起こす。ミネルバは急激に失速し、高度を落としていく。アスランは艦が完全に月面に着陸するまでは一切手を抜かず、生きているスラスターはサブも含めて全て破壊していった。
ムラサメの攻撃に為す術もなかったミネルバのブリッジでは、ジャスティスのスラスターへの攻撃で再び激しい振動を受けた。
「…メインスラスター損傷!姿勢制御不能!」
なんとか立て直そうとしていたマリクがついに匙を投げた。
「ダメです、艦長!墜落します!」
「総員、衝撃に備えて!」
やがて艦は滑るように月面に突っ込み、ゆっくりと傾いた。
しばらく沈黙が続き、やがてクルーが恐る恐る顔を上げ、体を起こした。メインモニターは壊れ、画像が乱れている。各員はもう役に立たないアラートを止めた。ミネルバはついに、完全に航行不能に陥ったのだ。
タリアは黙ったまま、デジタル画像が乱れて非常に見にくくなったモニターに眼をやった。
「アスラン・ザラ…」
そこには、インフィニットジャスティスが迎えのムラサメを率いて去っていく姿があった。
タリアは呆れたようにため息をつき、そして苦笑した。
「…全く、最後の最後までやってくれるわね」
「レクイエム発射口に、オーブ軍モビルスーツ」
「ステーション2、間もなくポジションです」
メサイアではアカツキとムラサメが、レクイエム発射口までの最後の防衛ラインを突破しようと戦っている様子が伝えられた。デュランダルは頬杖をつきながら戦況を見守っていたが、ネオ・ジェネシスのチャージ状況を確認させた。
「発射口のオーブ軍を排除する。ネオ・ジェネシス照準」
それから近くにいた黒服の将校に尋ねた。
「レジェンドとデスティニーは?」
「どちらも、シグナルロストです」
デュランダルの表情が暗くなった。
(デスティニーが…敗れた?)
その時、彼にとっては忌わしい情報がもたらされた。
「グリーン18、ベータにフリーダム!」
メサイアに向かってくるストライクフリーダムの光学映像が出ると、デュランダルは眉を顰めた。
(レイも討たれたというのか、あれに)
その頃、月の引力に引かれながら漂っていたレジェンドでは、怪我をしたレイが眼を覚ました。
バイザーが割れて破片が彼の額を傷つけている。
レイは衝撃に揺さぶられてまだ眩暈の残る状態だったが、すぐにパネルを操作し始めた。
スラスターは何とか生きているが、通信系統はすべて破壊されている。
(ギル…)
レイはシフトレバーを入れ、ほとんどスピードの出ないボロボロのレジェンドでメサイアへと向かった。
一方キラは、まだ攻撃を受けているエターナルとようやく合流した。
ドム部隊とメイリン、それに残ってくれたイザークとディアッカが奮闘し、エターナルはダメージを受けつつも自力航行を続けている。
キラはほっとすると、エターナルの周りに群がるモビルスーツを全てマルチロックオンしていく。鋭い感覚でエターナルの裏手に隠れている敵までをも捉えてスーパードラグーンを斉射し、周囲の敵を一掃した。
「キラさん…よかった」
メイリンはキラの無事を知ってホッとすると同時にストライクフリーダムの威力に呆気に取られ、ディアッカも口笛を吹いて「すげぇな」と呟く。キラは彼らに合図を送ると、エターナルに通信を繋いだ。
「ラクス、ミーティアを!」
「準備はできてるよ」
「要塞を討つ。エターナルは下がって!」
こうしてついに合流した両者を見て、デュランダルはやれやれと息をついた。
(全く、厄介な存在だな…ラクス・クライン、キラ・ヤマト)
そして彼らからさほど離れていないダイダロス基地に視線を向ける。
ネオ・ジェネシスでは、警戒して要塞の裏側に回りこんでいるラクス・クラインたちをまとめて撃つことはできなかった。
(まあ仕方がない。奴らを討つのはまたあとだ)
「面舵13、下げ舵8、ネオ・ジェネシス、射線軸固定。出力90%」
巨大な要塞が射線をとるためにゆっくりと移動を始めた。
それを見て、エターナルのブリッジのラクスたちも、ミーティアの射出を待つキラも不安げな表情になった。
「発射口の敵を掃討後、オーブを討ってこの戦闘を終わらせる」
デュランダルはついにオーブを討つという命令を発した。
全軍に通達するよう伝えると、司令部は再び慌しさを増した。
司令部からのネオ・ジェネシス発射の報せは、当然イザークが乗っているグフにも入っていた。
イザークはパネルにざっと眼を通すと、ちっと舌打ちした。
(…同じだ、あの時と…)
かつてジェネシスを撃ったパトリック・ザラは、ナチュラルを殲滅させんとあんなものを放った。それが今度は、オーブを討つレクイエムを守るために放つのだ。
前大戦を教訓とし、ザフトの本懐はプラントを守るものだという信念を持って戦ってきた彼にとって、プラントの道の踏み外しは承服できなかった。だからこそ今、こうして戦っているのだが…イザークは苛立ちながらヴォルテールに連絡を入れた。
実直で真面目な艦長は言いつけを守り、戦闘宙域には出ずに後方支援に徹している。気が逸った赤服どもは勝手に出撃して戦闘に加わったようだが、特に大きな被害はないという。
自分たちが無事である事を伝えると、イザークは「引き続きそのまま待機していろ」と艦長に伝えた。
イザークはふと、相棒の黒いザクファントムを見た。ディアッカも当然、この情報を眼にしているはずだ。いつもならそろそろ「どーすんの?イザーク」と呑気に聞いてきそうなものだが、ディアッカとのチャンネルは沈黙したままだ。
(まぁいい…時間もあまりないしな)
やや怪訝に思いつつも、イザークはエターナルとのチャンネルを開いた。
「エターナル!」
要塞の動きを警戒していたエターナルのブリッジに、突然イザークからの通信が入った。
「イザーク・ジュール?」
バルトフェルドがかつての部下を見て少し驚く。
まさか彼がエターナルを守って戦っているなどとは思っていないバルトフェルドは、苦笑しながら「おまえ、そこで何してるんだ?」と尋ねた。
イザークは「そんな事はどうでもいい!」と喚いてから続けた。
「メサイアが撃ってくるぞ!射線上の連中を下がらせろ!早く!」
それを聞いたラクスがパネルを操作し、映像を拡大した。
射線を分析すれば、狙いはレクイエム射出口付近の一掃だ。
「隊長!至急アークエンジェルに…」
「メサイアが撃ってくるんですって!?」
その途端アークエンジェルから通信が入ったので、ラクスもバルトフェルドも少なからず驚いた。
「おいおい、情報が早いねぇ」
マリューのその言葉に、バルトフェルドが笑った。
「聞いての通りだ。オーブ艦隊を下がらせてくれ」
ディアッカが何も言ってこない事をイザークがいぶかしんだ少し前、ネオ・ジェネシスの情報を得たディアッカの行動は迅速で、全く迷いがなかった。
(変わってねぇかな…)
チャンネルを合わせてみると、無事にアークエンジェルと繋がる。
「アークエンジェル、応答しろ。こちらディアッカ・エルスマン」
一瞬映像が乱れたが、やがて明瞭になった。
「…エルスマンくん?」
モニターには驚いた顔のマリューが映る。
ディアッカはにやりと笑って軽く挨拶すると、「ネオ・ジェネシスが撃たれるってよ。データを送る」とキーを叩いた。
すると艦長の上からチャンドラが覗きこんできた。
「よぉ、エルスマン!こんな時になんだけど、久しぶり!元気?」
「おかげさんで。マードックのおっさんもいんの?」
「いるいる。集まったの、独身ばっかだもん」
わずかな時間に言葉を交わし、転送が終わると、ディアッカは通信を切ろうとした。
「んじゃ、気ぃつけてな。後はよろしく」
ところが画面の向こうがなんとなく騒がしい。
「ちょっと、エルスマン!待った待った!」
チャンドラが手をパタパタさせて姿を消す。
「…ええ?…だってきみ、いつも…」
データを受け取り、すぐに回避命令を出したマリューも、後ろを振り返って誰かと何やら話しているようだ。
「…え?でも…いいの?…さなくて…?」
なんだ?と思った瞬間、心臓が飛び出しそうになった。
「いいんですってば!!」
そこにいてはいけない、いないでくれと祈り続けた人の声が聞こえたのだ。
そこから先はマリューに「悪いんだけど、通信を返してくれる?」と言われるまで、「そこで何してんだよ!」「あんたこそ何してんのよ!」という、いつもの2人の果てしない応酬が続く事になったのだった。
「ラミアス艦長、そちらの状況は?」
そんな経緯でいち早く情報を得て通信を入れてきたマリューに、ラクスは訊ねた。両者は分断されているため、互いの動きがわからないのだ。
「ジャスティスとアカツキが合流したところだけど…」
「すぐに下がらせてください。そして発射と同時に突破を!」
ラクスがやや硬い声で言った。
「ジェネシスの次は、レクイエムです」
ディアッカからの情報によって既にノイマンが舵を取り回したので、アークエンジェルは早々に射線軸からはずれている。他にもオーブ艦やムラサメが射線から続々下がって行った。それでもキラは心配になり、ジャスティスに呼びかけた。
「アスラン…」
「大丈夫よ、キラ」
しかしネオはそう答えたアスランのジャスティスが右腕を失っていることに気づいた。
「どうした?珍しいな、きみが」
「機関には問題ありません。大丈夫です」
「そうか」
ネオは「ま、きみのことだ。心配はしてないさ」と笑った。
「じゃ、次はあれをぶっ壊しに行こうぜ、ザフトのお嬢さん!」
「はい」
アスランはこの時、彼の自分に対する呼び方が変わったことに全く気づいていなかった。ネオはいつも彼女を、からかいもこめて「美人さん」とか「べっぴんさん」と呼び、さらに二人称では乱暴に「おまえ」と呼んでいたのだから。
けれど昔から筋金入りの鈍さを持つ彼女のことだ。この後キラに教えられるまで、ムウの記憶が戻った事に気づくことはなかった。
退避命令によりザフトが下がったため、発射口はがら空きになったのでむしろ好都合だった。とはいえ、ネオ・ジェネシスの威力を思えばかなりの距離を逃げる必要がある。
「ジェネシスの威力が収まり次第、シールドを突破するぞ!」
「急ぎましょう」
アスランはネオに言ってさらに発射口から離れた。
そして、死のγ線が再び放たれた。
「一佐!」
その思った以上の衝撃に引きずられそうになりながら、アスランが振り返った。その眼に、逃げ切れなかったナスカ級やモビルスーツが多数犠牲になるのが見えた。
(ああ、また…)
アスランの瞳に悲しみを含んだ怒りが宿る。
(こんな無意味な戦いで、あんなにたくさんの命が消えてしまう)
ネオはパワーをあげてジャスティスを追い続けている。アスランもさらにシフトを深く入れた。
(こんなものもレクエイムも、絶対に撃たせてはいけない)
月面に不時着したミネルバでは、何とか通信だけが回復していた。
救助要請を出して一息ついたところに司令部から報せが入り、皆、ネオ・ジェネシスが放たれるのを不安げに見ていた。射線上には退避しきれなかった友軍艦がまだ多くいた。そのくせ、肝心のオーブ艦やアークエンジェルはほとんど無事だったのだ。
「ああっ!マルベースとプルトンが…」
アーサーが悲壮な声をあげると、ブリッジもざわめく。
あの様子では、ザクやグフも多数犠牲になっただろう…
タリアもまた、議長のこんな強攻策に唇を噛み締めた。
「レクイエム、カウントダウン開始。Tマイナス30秒」
「ステーション2、射角固定。ゲシュマイディヒパンツァー展開」
メサイアがネオ・ジェネシスを撃ち終わると、今度はレクイエムのカウントダウンが始まった。デュランダルはオーブの残存部隊がほとんど退避し、思った以上の効果をあげられなかった事に苛立った。
(クライン派は脱走で一掃したと思ったが…まだ内通者がいたか)
「だが、頼みのオーブがなくなれば奴らももう動けまい」
デュランダルはほくそ笑んだ。
(チェックメイトだ、白のキング…そして、白のクィーン!)
「行くぞ!」
ネオ・ジェネシスの軌跡が消えると、アカツキとジャスティスは再び射出口へと向かった。
邪魔をする者はもういない。次は着々と進む発射準備との競争になる。
(急げ…本体を破壊しなければ!)
アスランはシールドを構え、陽電子を跳ね返すリフレクターにためらうことなく突入した。アンチビームシールドが反発し、ジャスティスの機体はあっけなく発射口内部へ侵入する。
ネオもまたそのままシールドを突破して内部へ突入すると、2機はかつてルナマリアが行った道を急ぐ。
「くそー!どこだ!?」
レクイエムのチャージが進み、やがて2人が目指す先に明るい光が見えてきた。地球軍基地だった時とは違い、ローラン隊はコントロールルームを地下に作っていない。
そこにはただ、今にもオーブに向けて死の光を放たんとしている、不気味な砲口だけが輝いている。
「よし、こいつだな」
ネオは到着するとドラグーンを放って四方八方にビーム砲を発した。アスランもまたファトゥムをパージし、本体に向けて突撃させる。ドラグーンの破壊があちこちを爆発させ、辺りを爆煙で包んだ。
アスランはより確実な破壊のため、ファトゥムの装甲ソードが砲口の真ん中に刺さったことを確認すると、自爆スイッチを押した。猶予時間はあまりないが、あとは脱出するだけだ。
「行きましょう、一佐!」
両者はスピードをあげて射出口に向かう。
ドラグーンによる破壊で起きた爆発は、あちこちで誘爆を引き起こしていき、2人を爆風と爆煙が襲う。
「急げ!」
ネオは後ろを振り返って後方のアスランを促した。
リフターがなくなった事で実際にはやや機動力が落ちているのだが、ジャスティスのパワーなら十分脱出には間に合う時間だった。
最後にファトゥムが自爆し、レクイエム本体を大爆発に巻き込んだ。
爆風が吹き出す直前に飛び出した2機はそのまま安全圏に離脱する。
チャージされていたレクイエムのパワーは完全に拡散し、中継点に向かうこともなく、何もない虚空へと放たれた。
2人は黙ってその光を見つめていた。
それはアークエンジェルも、エターナルも、キラも同じだった。
(これで、オーブは…)
この戦いが始まって以来、アスランは初めてほっと息をついた。
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制作裏話-PHASE50④-
最終回は本編があまりにも詰め込みすぎなので(それはFPに至っても全く同じ)、数パートに分けると決めていました。導入→レイVSキラ→シンVSアスランときて、物語はレクエムの破壊→メサイア突入→ボクらのキラきゅん大勝利!で終わるわけですが(途中で「敗れたフェイクの主人公、泣く」が加わります)、逆転においてはメサイア突入について大いなる改変を加えるつもりだったので、まずはここでレクエム破壊を1章としました。
それにしても最終回に入ってからのサブタイトルがひねりなさ過ぎであることはわかっているのですが、この頃は連日連夜逆デスに没頭し過ぎていて、もうサブタイを考えるところまでアタマが廻らないんですよ。かつて毎週毎週80時間くらい寝ないでぶっ続けでDESTINYのレビューをやっていた頃のように、脳みそはパンク寸前で、もう何も考えられない状態まで行ってました。
なので諦めて「後でゆっくり考えよう」とテキトーなものをつけたのですが(ホントにテキトーもいいとこ)、既に一年半も経ってしまうと今さら考え直して変えるのも…と思ってしまい、そのままにしてあります。激戦の勲章とでも言いましょうか(言いません)
さて、この章はそんなわけで本当は分けなくてもよかったのでは?と不満に思われる節もあるかと思う部分ですが、私としては演出上、やはり必要な章でした。
(1)アスランに敗れたシンが再登場するまで、少し時間が欲しかったこと。
(2)本編では大した葛藤もなくミネルバを落としたアスランの行動に、彼女なりの意図を持たせ、何より元母艦を落とす本人に苦味を感じさせたかったこと。
(3)逆種時代から描写してきたディアッカとミリアリアに、救済を与えたかったこと。
これらを描くには必要な章であり、さらに少し遊びを入れてキャラクター同士を絡ませる、「続編ならでは」のお楽しみもあちこちに入れ込んであります。こんな感じで書いているので、実際テキスト量は他の章と比べてもさほど少ないというわけでもありませんでした。
ジャスティスに代わってリフレクターを突破しようと勇んでやってきたムウですが、基地の守りは堅く、単機突破は不可能でした。ここではそれを表現するため、本編ではオーブ艦隊と共に戦っていたムラサメ部隊を合流させています。けれどここには一つの意図がありました。
ムウは突破にはやはりジャスティスの火力が不可欠と悟り、ムラサメにアスランを迎えに行かせます。
そしてこのオリジナルの伏線が生きるのは、ついに決着がつき、アークエンジェルに敗れ去ったミネルバをインフィニットジャスティスが見つけるシーンです。
アスランは墜ちたミネルバを見て、タリア・グラディスが一体何を思って戦ったのかと想いを馳せます。本編でも逆転でも人づき合いの下手なトウヘンボクですから、ほとんど艦の仲間と絡みはなかったものの、やはりPHASE2からお世話になった艦なので感慨もひとしおです。
けれどムラサメ小隊はそんな事知った事ではありません。彼らは援護もかねてミネルバに攻撃を仕掛けつつ、アスランに至急レクイエムに向かうよう伝令するわけです。
実際ジャスティスは合流に遅れていたのだし、こういうシーンがあっても別に不自然ではないと思います。ネオが階級的な仕事をしている事も含め、逆転のアスランはザフト軍服をまとっていますが、本編ではアスランはネオたちと同じく一佐なんですから、オーブ軍であるムラサメの援護はありでしょう。
どちらにせよムラサメはジャスティスを行かせる為に、きっとミネルバに最後の攻撃を仕掛けるはずです。そもそもミネルバは航行不能であろうがかつてオーブを攻撃した艦ですからね。
アスランは決断します。
ここで何もしなければ、もはや手も足も出ないミネルバはムラサメに撃沈されてしまうでしょう。けれどスラスターを破壊して完全に沈黙させれば、彼らも納得するはずと考えたことにしました。
だって本編のアスランがあまりにもあっけなく、何の躊躇もなく(ま、ちょっと表情を曇らせはしましたけども…)、一体どういう気持ちでミネルバを討ったのかもさっぱりわからなかったので、ここは改変し、より「アスランらしい判断」をしてもらいました。キラと違って、時には非情とも思える行動を取れるのはアスランのいいところ(種の初期は結構こんな行動がありました)なので、「落とすのも優しさ」という矛盾を実行し、苦い思いをして欲しかったのです。
私はとにかくアスランには全てにおいて猛省して欲しいという思いがあるので、ジャスティスの損傷にしろ、ミネルバ撃墜にしろ、逆転ではちゃんと痛みを感じて欲しかったのです。でなきゃあんたの行動はどうしたって許せないよ!まぁ逆転のアスランは本編よりはナンボかマシだと思ってますけど。
物語の方はついにストライクフリーダム…キラがエターナルと合流した事で、議長がレクイエムより先にネオ・ジェネシスを撃てと命令を下します。レクイエムにこだわるより、ここでラクスとキラを討っておけば議長にも勝算はあったのにねぇ。
そしてこの時、無印の種同様ネオ・ジェネシスが撃たれると知ったイザークはエターナルにそれを知らせます。
私、続編の醍醐味の一つといえば、「既に前作で構築されているキャラクターの相関図が時間の経過と共にどう変化したか」を見せる事だと思うんですよ。
だからこそ続編と聞くと皆、「あの人はどうなったのか」「あのカップルはうまくいったのか」とざわめくんだと思うんですね。
でも種ってそれがほとんど描けていない。マリューとバルトフェルドがどんな経緯でモルゲンレーテにいたのか、そもそもアスランがなぜオーブにいたのか、いや、なんでラクスがプラント捨ててんのとか、「物語上それだけはちゃんと語らないと」ということが語れていない。そりゃキラとアスランが一体どんな子供時代を送ったかを視聴者が全く知らないまま、「親友同士(らしい)の戦い」を見せられた種の続編だけあるわなぁ…と絶望しかありません。
だからここはちょっとだけ元上官バルトフェルドと元部下イザークの会話を膨らませています。
そしてここでさらに逆転ならではの改変が加わります。
イザークがいつもなら「どーすんの?」と聞いてきそうなディアッカが何も言わないことをいぶかしんでいた頃、ディアッカはネオ・ジェネシスの情報をアークエンジェルに伝えていた、というものです。
私、実はこういうシーンがいつかあるだろう、なきゃおかしいとずっと信じていたんですよ。
だってそうじゃなきゃイザークとディアッカが裏切った意味がわからないじゃないですか。そもそもディアッカはアークエンジェルに乗ってたんですよ?しかも寝返った今こそ、知らん顔できるわけないじゃないですか。ミリアリアが乗っていようがいまいが、マードックやチャンドラと共にいる描写があった彼ならこんな事やっちゃいそうじゃないですか。どちらにせよ、ディアッカとマリューたちクルーとの「関係性」はどこかに入れ込む事はできたと思うんですよ。
というわけで、元々はキャラの「関係性」から考えていたシーンなのですが、このシーンを作るとなると自然、ディアッカとミリアリアの救済へと繋がっていきます。まさか乗ってないだろうなと不安に駆られていたディアッカにとってはバッドニュース以外の何物でもなかったでしょう。こんな状況の中で口喧嘩が始まったのをマリューが押し留めるのも無理はないです。本当に本編にこんなエピソードが一つでもいいからあったら嬉しかったのになぁと思います。
しかもこの情報提供により、「オーブ艦隊も早めに下がれた」というメリットが生まれます。アスランもネオと共に距離を取り、ジェネシスの威力が消えたらすぐに突入できるよう準備しています。
ちなみにアスランはこの時のネオがムウとは気づいていない(多分本編も最後まで気づいていない)という朴念仁ぶりを露呈しています。なお「大佐!」と呼んだ本編のセリフはおかしいと思うので「一佐!」に変えてあります。意図的にしてもおかしい(だってムウは種では少佐だったし)
リフレクターを難なく突破した2機は、ドラグーンを発射し、リフターを突撃させてレクイエムを破壊します。本編ではこのへんの駆け足ぶりは凄まじいものでしたね。何しろ既にBパートに入ってますから、番組はあと10分を切ってるんですよ。最終決戦くらい、せめて2話くらいかけてじっくりやればいいものを…(ちなみに種は4話かけてましたよね)
ただしFPでTV版の倍の時間に延びても、肝心なところは全く変わっていなかった(むしろ改悪も多し)ので、結局監督に力がないと言うことなんですよね。
「今回は自爆しないのか?」「最終奥義『自爆』はまだか?」と揶揄され続けてきたアスランですが、DESTINYでは結局自爆はせず、代わりにこの時リフターを自爆させました。どうやらやはり自爆スキーではあるようです。
これでレクイエムはもう撃たれることはありません。ネオ・ジェネシスもキラがメサイアを破壊しまくっているので(この時のミーティア付ストライクフリーダムは土木工事屋も真っ青)、オーブが攻撃される危険はなくなりました。
そしていよいよ物語は主役VSラスボスの直接対決に向かいます。本編はここは確かに「キラ・ヤマトVSギルバート・デュランダル」でした。
FPが放映された時、私は祈るように「シンが同席!ここにシンが来る!」と思ってましたが、なんでか来たのはアスランでした。しかも信じられないことに彼は本当の本当に「いただけ」で、あれだけ関係性のある議長を問い質す事もせず、レイ(元部下)を助けようともせず、残ろうとするタリアを説得もせず、ただただボケーッと突っ立っているだけでした。何しに来たのアスラン…
もう一度言います。この後は「主役VSラスボス」の直接対決です。逆デスの主人公は誰なのか…ここまで読んでくださった方なら、もう改めて言わなくてもおわかりですよね。
それにしても最終回に入ってからのサブタイトルがひねりなさ過ぎであることはわかっているのですが、この頃は連日連夜逆デスに没頭し過ぎていて、もうサブタイを考えるところまでアタマが廻らないんですよ。かつて毎週毎週80時間くらい寝ないでぶっ続けでDESTINYのレビューをやっていた頃のように、脳みそはパンク寸前で、もう何も考えられない状態まで行ってました。
なので諦めて「後でゆっくり考えよう」とテキトーなものをつけたのですが(ホントにテキトーもいいとこ)、既に一年半も経ってしまうと今さら考え直して変えるのも…と思ってしまい、そのままにしてあります。激戦の勲章とでも言いましょうか(言いません)
さて、この章はそんなわけで本当は分けなくてもよかったのでは?と不満に思われる節もあるかと思う部分ですが、私としては演出上、やはり必要な章でした。
(1)アスランに敗れたシンが再登場するまで、少し時間が欲しかったこと。
(2)本編では大した葛藤もなくミネルバを落としたアスランの行動に、彼女なりの意図を持たせ、何より元母艦を落とす本人に苦味を感じさせたかったこと。
(3)逆種時代から描写してきたディアッカとミリアリアに、救済を与えたかったこと。
これらを描くには必要な章であり、さらに少し遊びを入れてキャラクター同士を絡ませる、「続編ならでは」のお楽しみもあちこちに入れ込んであります。こんな感じで書いているので、実際テキスト量は他の章と比べてもさほど少ないというわけでもありませんでした。
ジャスティスに代わってリフレクターを突破しようと勇んでやってきたムウですが、基地の守りは堅く、単機突破は不可能でした。ここではそれを表現するため、本編ではオーブ艦隊と共に戦っていたムラサメ部隊を合流させています。けれどここには一つの意図がありました。
ムウは突破にはやはりジャスティスの火力が不可欠と悟り、ムラサメにアスランを迎えに行かせます。
そしてこのオリジナルの伏線が生きるのは、ついに決着がつき、アークエンジェルに敗れ去ったミネルバをインフィニットジャスティスが見つけるシーンです。
アスランは墜ちたミネルバを見て、タリア・グラディスが一体何を思って戦ったのかと想いを馳せます。本編でも逆転でも人づき合いの下手なトウヘンボクですから、ほとんど艦の仲間と絡みはなかったものの、やはりPHASE2からお世話になった艦なので感慨もひとしおです。
けれどムラサメ小隊はそんな事知った事ではありません。彼らは援護もかねてミネルバに攻撃を仕掛けつつ、アスランに至急レクイエムに向かうよう伝令するわけです。
実際ジャスティスは合流に遅れていたのだし、こういうシーンがあっても別に不自然ではないと思います。ネオが階級的な仕事をしている事も含め、逆転のアスランはザフト軍服をまとっていますが、本編ではアスランはネオたちと同じく一佐なんですから、オーブ軍であるムラサメの援護はありでしょう。
どちらにせよムラサメはジャスティスを行かせる為に、きっとミネルバに最後の攻撃を仕掛けるはずです。そもそもミネルバは航行不能であろうがかつてオーブを攻撃した艦ですからね。
アスランは決断します。
ここで何もしなければ、もはや手も足も出ないミネルバはムラサメに撃沈されてしまうでしょう。けれどスラスターを破壊して完全に沈黙させれば、彼らも納得するはずと考えたことにしました。
だって本編のアスランがあまりにもあっけなく、何の躊躇もなく(ま、ちょっと表情を曇らせはしましたけども…)、一体どういう気持ちでミネルバを討ったのかもさっぱりわからなかったので、ここは改変し、より「アスランらしい判断」をしてもらいました。キラと違って、時には非情とも思える行動を取れるのはアスランのいいところ(種の初期は結構こんな行動がありました)なので、「落とすのも優しさ」という矛盾を実行し、苦い思いをして欲しかったのです。
私はとにかくアスランには全てにおいて猛省して欲しいという思いがあるので、ジャスティスの損傷にしろ、ミネルバ撃墜にしろ、逆転ではちゃんと痛みを感じて欲しかったのです。でなきゃあんたの行動はどうしたって許せないよ!まぁ逆転のアスランは本編よりはナンボかマシだと思ってますけど。
物語の方はついにストライクフリーダム…キラがエターナルと合流した事で、議長がレクイエムより先にネオ・ジェネシスを撃てと命令を下します。レクイエムにこだわるより、ここでラクスとキラを討っておけば議長にも勝算はあったのにねぇ。
そしてこの時、無印の種同様ネオ・ジェネシスが撃たれると知ったイザークはエターナルにそれを知らせます。
私、続編の醍醐味の一つといえば、「既に前作で構築されているキャラクターの相関図が時間の経過と共にどう変化したか」を見せる事だと思うんですよ。
だからこそ続編と聞くと皆、「あの人はどうなったのか」「あのカップルはうまくいったのか」とざわめくんだと思うんですね。
でも種ってそれがほとんど描けていない。マリューとバルトフェルドがどんな経緯でモルゲンレーテにいたのか、そもそもアスランがなぜオーブにいたのか、いや、なんでラクスがプラント捨ててんのとか、「物語上それだけはちゃんと語らないと」ということが語れていない。そりゃキラとアスランが一体どんな子供時代を送ったかを視聴者が全く知らないまま、「親友同士(らしい)の戦い」を見せられた種の続編だけあるわなぁ…と絶望しかありません。
だからここはちょっとだけ元上官バルトフェルドと元部下イザークの会話を膨らませています。
そしてここでさらに逆転ならではの改変が加わります。
イザークがいつもなら「どーすんの?」と聞いてきそうなディアッカが何も言わないことをいぶかしんでいた頃、ディアッカはネオ・ジェネシスの情報をアークエンジェルに伝えていた、というものです。
私、実はこういうシーンがいつかあるだろう、なきゃおかしいとずっと信じていたんですよ。
だってそうじゃなきゃイザークとディアッカが裏切った意味がわからないじゃないですか。そもそもディアッカはアークエンジェルに乗ってたんですよ?しかも寝返った今こそ、知らん顔できるわけないじゃないですか。ミリアリアが乗っていようがいまいが、マードックやチャンドラと共にいる描写があった彼ならこんな事やっちゃいそうじゃないですか。どちらにせよ、ディアッカとマリューたちクルーとの「関係性」はどこかに入れ込む事はできたと思うんですよ。
というわけで、元々はキャラの「関係性」から考えていたシーンなのですが、このシーンを作るとなると自然、ディアッカとミリアリアの救済へと繋がっていきます。まさか乗ってないだろうなと不安に駆られていたディアッカにとってはバッドニュース以外の何物でもなかったでしょう。こんな状況の中で口喧嘩が始まったのをマリューが押し留めるのも無理はないです。本当に本編にこんなエピソードが一つでもいいからあったら嬉しかったのになぁと思います。
しかもこの情報提供により、「オーブ艦隊も早めに下がれた」というメリットが生まれます。アスランもネオと共に距離を取り、ジェネシスの威力が消えたらすぐに突入できるよう準備しています。
ちなみにアスランはこの時のネオがムウとは気づいていない(多分本編も最後まで気づいていない)という朴念仁ぶりを露呈しています。なお「大佐!」と呼んだ本編のセリフはおかしいと思うので「一佐!」に変えてあります。意図的にしてもおかしい(だってムウは種では少佐だったし)
リフレクターを難なく突破した2機は、ドラグーンを発射し、リフターを突撃させてレクイエムを破壊します。本編ではこのへんの駆け足ぶりは凄まじいものでしたね。何しろ既にBパートに入ってますから、番組はあと10分を切ってるんですよ。最終決戦くらい、せめて2話くらいかけてじっくりやればいいものを…(ちなみに種は4話かけてましたよね)
ただしFPでTV版の倍の時間に延びても、肝心なところは全く変わっていなかった(むしろ改悪も多し)ので、結局監督に力がないと言うことなんですよね。
「今回は自爆しないのか?」「最終奥義『自爆』はまだか?」と揶揄され続けてきたアスランですが、DESTINYでは結局自爆はせず、代わりにこの時リフターを自爆させました。どうやらやはり自爆スキーではあるようです。
これでレクイエムはもう撃たれることはありません。ネオ・ジェネシスもキラがメサイアを破壊しまくっているので(この時のミーティア付ストライクフリーダムは土木工事屋も真っ青)、オーブが攻撃される危険はなくなりました。
そしていよいよ物語は主役VSラスボスの直接対決に向かいます。本編はここは確かに「キラ・ヤマトVSギルバート・デュランダル」でした。
FPが放映された時、私は祈るように「シンが同席!ここにシンが来る!」と思ってましたが、なんでか来たのはアスランでした。しかも信じられないことに彼は本当の本当に「いただけ」で、あれだけ関係性のある議長を問い質す事もせず、レイ(元部下)を助けようともせず、残ろうとするタリアを説得もせず、ただただボケーッと突っ立っているだけでした。何しに来たのアスラン…
もう一度言います。この後は「主役VSラスボス」の直接対決です。逆デスの主人公は誰なのか…ここまで読んでくださった方なら、もう改めて言わなくてもおわかりですよね。
Natural or Cordinater?
サブタイトル
お知らせ PHASE0 はじめに PHASE1-1 怒れる瞳① PHASE1-2 怒れる瞳② PHASE1-3 怒れる瞳③ PHASE2 戦いを呼ぶもの PHASE3 予兆の砲火 PHASE4 星屑の戦場 PHASE5 癒えぬ傷痕 PHASE6 世界の終わる時 PHASE7 混迷の大地 PHASE8 ジャンクション PHASE9 驕れる牙 PHASE10 父の呪縛 PHASE11 選びし道 PHASE12 血に染まる海 PHASE13 よみがえる翼 PHASE14 明日への出航 PHASE15 戦場への帰還 PHASE16 インド洋の死闘 PHASE17 戦士の条件 PHASE18 ローエングリンを討て! PHASE19 見えない真実 PHASE20 PAST PHASE21 さまよう眸 PHASE22 蒼天の剣 PHASE23 戦火の蔭 PHASE24 すれちがう視線 PHASE25 罪の在処 PHASE26 約束 PHASE27 届かぬ想い PHASE28 残る命散る命 PHASE29 FATES PHASE30 刹那の夢 PHASE31 明けない夜 PHASE32 ステラ PHASE33 示される世界 PHASE34 悪夢 PHASE35 混沌の先に PHASE36-1 アスラン脱走① PHASE36-2 アスラン脱走② PHASE37-1 雷鳴の闇① PHASE37-2 雷鳴の闇② PHASE38 新しき旗 PHASE39-1 天空のキラ① PHASE39-2 天空のキラ② PHASE40 リフレイン (原題:黄金の意志) PHASE41-1 黄金の意志① (原題:リフレイン) PHASE41-2 黄金の意志② (原題:リフレイン) PHASE42-1 自由と正義と① PHASE42-2 自由と正義と② PHASE43-1 反撃の声① PHASE43-2 反撃の声② PHASE44-1 二人のラクス① PHASE44-2 二人のラクス② PHASE45-1 変革の序曲① PHASE45-2 変革の序曲② PHASE46-1 真実の歌① PHASE46-2 真実の歌② PHASE47 ミーア PHASE48-1 新世界へ① PHASE48-2 新世界へ② PHASE49-1 レイ① PHASE49-2 レイ② PHASE50-1 最後の力① PHASE50-2 最後の力② PHASE50-3 最後の力③ PHASE50-4 最後の力④ PHASE50-5 最後の力⑤ PHASE50-6 最後の力⑥ PHASE50-7 最後の力⑦ PHASE50-8 最後の力⑧ FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開
制作裏話-はじめに- 制作裏話-PHASE1①- 制作裏話-PHASE1②- 制作裏話-PHASE1③- 制作裏話-PHASE2- 制作裏話-PHASE3- 制作裏話-PHASE4- 制作裏話-PHASE5- 制作裏話-PHASE6- 制作裏話-PHASE7- 制作裏話-PHASE8- 制作裏話-PHASE9- 制作裏話-PHASE10- 制作裏話-PHASE11- 制作裏話-PHASE12- 制作裏話-PHASE13- 制作裏話-PHASE14- 制作裏話-PHASE15- 制作裏話-PHASE16- 制作裏話-PHASE17- 制作裏話-PHASE18- 制作裏話-PHASE19- 制作裏話-PHASE20- 制作裏話-PHASE21- 制作裏話-PHASE22- 制作裏話-PHASE23- 制作裏話-PHASE24- 制作裏話-PHASE25- 制作裏話-PHASE26- 制作裏話-PHASE27- 制作裏話-PHASE28- 制作裏話-PHASE29- 制作裏話-PHASE30- 制作裏話-PHASE31- 制作裏話-PHASE32- 制作裏話-PHASE33- 制作裏話-PHASE34- 制作裏話-PHASE35- 制作裏話-PHASE36①- 制作裏話-PHASE36②- 制作裏話-PHASE37①- 制作裏話-PHASE37②- 制作裏話-PHASE38- 制作裏話-PHASE39①- 制作裏話-PHASE39②- 制作裏話-PHASE40- 制作裏話-PHASE41①- 制作裏話-PHASE41②- 制作裏話-PHASE42①- 制作裏話-PHASE42②- 制作裏話-PHASE43①- 制作裏話-PHASE43②- 制作裏話-PHASE44①- 制作裏話-PHASE44②- 制作裏話-PHASE45①- 制作裏話-PHASE45②- 制作裏話-PHASE46①- 制作裏話-PHASE46②- 制作裏話-PHASE47- 制作裏話-PHASE48①- 制作裏話-PHASE48②- 制作裏話-PHASE49①- 制作裏話-PHASE49②- 制作裏話-PHASE50①- 制作裏話-PHASE50②- 制作裏話-PHASE50③- 制作裏話-PHASE50④- 制作裏話-PHASE50⑤- 制作裏話-PHASE50⑥- 制作裏話-PHASE50⑦- 制作裏話-PHASE50⑧-
2011/5/22~2012/9/12
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