機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
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「…シン、シン!」
肩を揺さぶられ、シンははっと眼を覚ました。
宿舎ではなくいつもの戦艦の部屋なので窓がなく、常夜灯である足元灯がほんのりと部屋を照らしていた。
「…レイ…」
はぁ、と息をついてシンは上半身を起こした。
早く寝たはずなのにぐったりと疲れきり、背中は寝汗でぐっしょり濡れている。
立ち去ったレイがタオルを投げ、ドリンクのボトルを持ってきて渡した。
「うなされていた。大丈夫か?」
「ああ…うん…ありがとう」
シンはタオルで顔を拭き、ストローに口をつけた。
(夜驚症を起こさなかっただけマシか…)
そんなものを起こしたらレイがさぞびっくりした事だろう。
シンは夢を見ていた。とりとめもない悪夢だ。
家族の死、ステラの死、ヘブンズベースでの戦闘、クレタ沖での、オーブ沖での戦闘、インド洋での虐殺、ガルナハンの惨状、ベルリンの壊滅、貫いたフリーダム、そして…嵐のジブラルタル。
「私は…あなたに殺されはしない!」
「黙れっ!裏切り者っ!」
「くそっ!」
シンは呻いた。
(おまえは死んだ…死んだはずなのに…なんで…いつまでも…!)
「…アスランとメイリン…俺…」
「彼らは敵だ。裏切ったんだ、シン」
レイがにべもなく言い、シンは黙りこんだ。
「仕方がない」
「わかってるよ」
シンはもう一度タオルで顔を拭いた。
「それはわかってるさ…ただ…」
「悪夢はそれか」
レイがほっとため息をついた。
シンもまた、悪夢を見ることの意味がよくわかっているため、黙り込む。
(こんなにも俺の心に傷が残ったのか)
澱のように、苦い想いが心の底に溜まっている。
自分の弱さを認めるようで「そんな事はない」と大声で否定したいところだが、シンは経験上、人の心には深い傷が残る事を知り過ぎていた。
「俺が討てばよかったな…」
レイもまた、まさかこれほどシンの心にアスランが大きく存在しているとは思っていなかった。
(これでは、まるでアスランと同じだ)
アスラン自身が殺さない限り、キラ・ヤマトはその心の中で生き続けると言ったのは自分だ。なのにシンは、自ら手を下してなお、こうして苦しんでいる。
「優しすぎる、おまえは。それは弱さだ。それでは何も守れない」
レイはそう言うと振り返り、自分のベッドに戻った。
確かに、この揺らぎは自分の弱さだ。
シンはしばらくタオルで顔を抑え、やがて手を下ろすと息をついた。
(…割り切らなければいけないのに、割り切れない…)
思わず、寝癖のついた頭をぐしゃぐしゃと掻き毟る。
(アスラン・ザラ…)
いつまでも鬱陶しい。
いつまでも…俺を苦しめる…
肩を揺さぶられ、シンははっと眼を覚ました。
宿舎ではなくいつもの戦艦の部屋なので窓がなく、常夜灯である足元灯がほんのりと部屋を照らしていた。
「…レイ…」
はぁ、と息をついてシンは上半身を起こした。
早く寝たはずなのにぐったりと疲れきり、背中は寝汗でぐっしょり濡れている。
立ち去ったレイがタオルを投げ、ドリンクのボトルを持ってきて渡した。
「うなされていた。大丈夫か?」
「ああ…うん…ありがとう」
シンはタオルで顔を拭き、ストローに口をつけた。
(夜驚症を起こさなかっただけマシか…)
そんなものを起こしたらレイがさぞびっくりした事だろう。
シンは夢を見ていた。とりとめもない悪夢だ。
家族の死、ステラの死、ヘブンズベースでの戦闘、クレタ沖での、オーブ沖での戦闘、インド洋での虐殺、ガルナハンの惨状、ベルリンの壊滅、貫いたフリーダム、そして…嵐のジブラルタル。
「私は…あなたに殺されはしない!」
「黙れっ!裏切り者っ!」
「くそっ!」
シンは呻いた。
(おまえは死んだ…死んだはずなのに…なんで…いつまでも…!)
「…アスランとメイリン…俺…」
「彼らは敵だ。裏切ったんだ、シン」
レイがにべもなく言い、シンは黙りこんだ。
「仕方がない」
「わかってるよ」
シンはもう一度タオルで顔を拭いた。
「それはわかってるさ…ただ…」
「悪夢はそれか」
レイがほっとため息をついた。
シンもまた、悪夢を見ることの意味がよくわかっているため、黙り込む。
(こんなにも俺の心に傷が残ったのか)
澱のように、苦い想いが心の底に溜まっている。
自分の弱さを認めるようで「そんな事はない」と大声で否定したいところだが、シンは経験上、人の心には深い傷が残る事を知り過ぎていた。
「俺が討てばよかったな…」
レイもまた、まさかこれほどシンの心にアスランが大きく存在しているとは思っていなかった。
(これでは、まるでアスランと同じだ)
アスラン自身が殺さない限り、キラ・ヤマトはその心の中で生き続けると言ったのは自分だ。なのにシンは、自ら手を下してなお、こうして苦しんでいる。
「優しすぎる、おまえは。それは弱さだ。それでは何も守れない」
レイはそう言うと振り返り、自分のベッドに戻った。
確かに、この揺らぎは自分の弱さだ。
シンはしばらくタオルで顔を抑え、やがて手を下ろすと息をついた。
(…割り切らなければいけないのに、割り切れない…)
思わず、寝癖のついた頭をぐしゃぐしゃと掻き毟る。
(アスラン・ザラ…)
いつまでも鬱陶しい。
いつまでも…俺を苦しめる…
「ヘブンズベース戦での功績を称え、シン・アスカにネビュラ勲章を授与するものとする」
授与式はジブラルタルの前時代的な骨董品クラスの会議室で行われた。
ルナマリア、レイが受け取った後、主役であるシンが、ミネルバに乗って彼の戦いぶりを見、感心した国防委員会の幹部から受け取った。
「おめでとう。2つ目だな。いや、全く素晴らしい」
人々が拍手をする中、もっとも盛大に拍手を送ったのはアーサーだ。
いつもいつもブリーフィングの時はシンに苦労させられている彼だが、指揮下にいる部下がこうして栄誉を受けることを心から喜び、感激しているようだ。
だがタリアが表情を硬くしたままなので、アーサーは尻すぼみに拍手をやめた。
「ありがとうございます」
シンは穏やかな表情で礼を述べ、差し出された手を握り締めた。
ルナマリアとレイも誇らしげにシンを見つめている。
「それからこれを、シン・アスカとレイ・ザ・バレルに」
勲章の授与が終わると、今度はデュランダルが進み出た。
彼の手には箱があり、羽を象ったFAITHの証が入っている。
「議長…」
シンはFAITHのバッジを見つめ、それから彼を見た。
シンの眼に戸惑いと疑念が混じっている事を見て取り、デュランダルは言った。
「不服かね?」
「…いえ」
その言葉とは裏腹に、シンはあからさまに不服そうな表情を示した。
(アスランがいなくなったから、次は俺ってわけか)
しかしデュランダルの鳶色の瞳は柔和に微笑む。
「これは我々が、きみたちの力を頼みとしているということの証だ」
周りの黒服や紫の服を着た国防委員会の役人がそれを聞き、うんうんと頷く。
「どうかそれを誇りとし、今この瞬間を裏切ることなく、今後もその力を尽くして欲しいと思ってね」
「光栄です。ベストを尽くします」
それを聞いたレイが、場を取り持とうと一足先に敬礼した。
しかしシンはまだ黙りこくっている。
(シン…?)
ルナマリアが心配そうに彼を見ている。
タリアもいつもと様子が違うシンを見た。
(きみだってそうだ。皆議長の決めた役割を果たしてる!)
忌々しいミーアの声が蘇り、シンはぎりっと唇を噛み締めた。
そして自分に向かって微笑みかけている議長を見る。
(議長は全部知ってるんだ。きみが…戦うことしかできない人間だってね!)
―― 違う…!
シンは心の中で激しく否定した。
(俺は、俺の意志で戦うと決めたんだ!)
それから姿勢を正して踵を合わせ、議長に敬礼する。
「俺…いえ、自分も頑張ります」
そう答えながら、シンは自分を叱咤していた。
(議長の意図などどうでもいい…本物を手に入れるまで、俺は逃げない)
自分の中に、いつまでも弱い自分が存在する事が許せなかった。
式が終わり、3人は部屋を辞した。
タリアは部下たちをねぎらい、彼らも礼を言ってエレベーターに向かう。
けれどそれが来る前に議長とタリアがホールに出てきたので、レイが階段を指差した。先に行こうという合図だった。
「きみが何も言わないのも怖いな。タリア」
議長は話しかけるが、タリアはそっけない。
「シンとレイをFAITHとしたことで、絶対何か一言あると覚悟していたんだがね」
タリアは不機嫌そうに議長を見、それから口を開いた
「言いたいことは山ほどありますが、迂闊に言えることでもないので黙ってるんです。聞く気がないのなら放っておいていただきたいわ!」
そんなにあるんじゃないか…と思いながら彼はため息をついた。
「聞く気がないだなんて、そんな…」
デュランダルは困ったような、けれど殊勝な顔で彼女に笑いかけた。
どうして女というのはこういう演出が好きなんだろう?
(私は怒っている、私の言う事を聞いて欲しい、私に構って欲しい…そういう派手な演出を散々してからでないと、話し始めようとしないのだからな)
「アスラン・ザラとメイリン・ホーク撃墜の件、私はまだ納得したわけではありません」
硬い声でタリアが言うのを聞きながらデュランダルは分析を続けた。
(こちらが聞く気があるとわかると途端にその気になる。そしていざ話し始めると、自分勝手にまくしたてる)
「わかってるさ、それも」
実に面倒くさい。面倒くさいが、だからこそ興味深い。
「議長」
その時、黒服が追いかけてきて議長を呼んだ。
「何だ?」
階段を降りかけていたルナマリアが議長と艦長が呼ばれたことに気づき、シンの袖を引っ張った。
「ロード・ジブリールの所在がわかりました」
それを聞いた3人は顔を見合わせ、階段を駆け上がった。
「カーペンタリア情報部からの報告です」
デュランダルはようやくきたかと思ったが、ポーカーフェイスを崩さずに尋ねた。
「カーペンタリアから?で、彼はどこに?」
「オーブです」
その言葉に、シンは思わず階段から身を乗り出した。
「オーブ!?」
風雲は、急を告げた。
「なんだと?ジブリールがセイランに?」
カガリがキサカからの報告を受け、驚いてブリッジに向かう。
「本当か、それは?」
「ああ、間違いない」
キサカが大型のボードを操作しながら答えた。
「そしてそれはもうザフトにも知れたようだ」
ジブラルタルに残っている、東アジア共和国軍潜入兵からの情報だ。
カーペンタリアの情報部がジブリールがオーブにいる証拠を掴み、デュランダルもカーペンタリアに攻撃準備をさせているという。
「ジブラルタルも警戒態勢に入っている。うまくないな」
「ラミアス艦長にも報告を。急ごう」
2人はブリッジに来ると、皆に手短に掴んだ情報を伝えた。
キサカが潜入兵から送られてきた画像ファイルを開き、モニターに出した。
そこには、結婚式まで軟禁状態に置かれたカガリにとっては思い出したくもないセイラン家の貴賓室の窓が写っており、窓辺にウナト、ユウナと共に、ロード・ジブリールがいた。
「ザフトの動きが早い」
連合軍にもこの情報はオープンになっており、肝心のオーブ政府以外はもはや誰もが知っている状態だという。
さらにキサカは、議長がジブラルタルから出した通達もモニターに出した。
「既にオノゴロ沖合にカーペンタリアより発進した艦隊が展開中だ」
それを聞いてカガリは息を呑み、それから呟いた。
「議長は、初めから戦うつもりでかかってきているというのか?」
(他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない?)
(それは我々も無論同じです。そうであれたら一番よい)
あの時そう言ったデュランダルが、力でオーブをねじ伏せようとしている。
カガリは苦悶の表情を浮かべた。
(やはりあなたはキラが…いや、俺たちが疑うに値する人なのか)
ラクス、アークエンジェル、フリーダム、ロゴス、オーブ…さらにカガリは、身も心も深く傷ついたアスランを想った。
(…迷い悩んでいたあいつを、甘い言葉で懐柔したのも、すべて…)
だとしたら、オーブは今、大いなる過ちを犯したことになる。
「ウナト…なぜこんな…」
自分が国政に関わっていない今、彼だけを責めるわけにはいかないが、それでも愚かすぎる。カガリは人知れず拳を握り締めた。
(戻らなければ…オーブを守らなければ!)
その頃行政府では、首長会も揺れていた。
未だ宰相からは何も知らされないまま、行政府ともあろうものがメディアやニュースから得られるような情報しか入らないのだ。
「どういうことなのだ、これは!?」
「ウナト・エマは?」
「週明けの閣議も欠席で、姿を見せていない」
そもそも、今日の首長会に出てきたのはほとんどがアスハ派や中立中道派で、マシマのようなセイラン派は出てきていない。
「とにかく護衛艦群は…」
「国防本部を呼び出せ。誰がいる?」
一体どうしたのだ?何があったのだ?と、彼らは動揺を隠せない。
船頭が逃げ出した船は今、大海原でくるくると渦に巻かれ始めた。
ジブラルタルに司令本部を置いたデュランダルは、オーブに対して即刻、ロード・ジブリールの引渡しを要求すると宣言した。
評議会には事後承諾になるため後々うるさいかもしれないが、今、この現時点では連中との面倒な議論を待たなくていい…
(オーブを叩く絶好の機会だ。理由があっちから歩いてきた)
デュランダルは焦らないよう息をつき、自分を落ち着かせた。
グラスゴー隊のラクス・クライン追討失敗は、最悪のニュースだった。
前大戦で勇名を馳せたストライクが突如現れ、その後フリーダムに似た機体が、それ以上の機体性能と戦闘能力をもって、たった1機で25機のザクとグフを撃破し、ナスカ級3隻を沈黙させたという…それほどの力を持つ者が、アンノウンなどであるわけがない。
キラ・ヤマト…忌々しいスーパー・コーディネイターが生きていた。
(いや、なればこそか…だが彼らは今、幸いにも宇宙にいる)
この絶好の機会、彼らが動く前に何としてもオーブを叩きたい。
デュランダルはそのために自らの手でジブリールに追っ手をかけ、もたつくカーペンタリア情報部に「迅速に」情報を掴ませたのだ。
「ヘブンズベース戦での彼の責任、また、既に得られた様々な証言から、彼の罪状は明らかだ。それを匿おうというのは到底許せるものではない」
他のロゴスたちももう、自分たちをあっさり見捨てて逃げたジブリールを庇おうとはしなかった。
むしろ保身のため、「ブルーコスモスの盟主」であるジブリールに全ての責任をかぶせることで、少しでもコーディネイターからの心象をよくしようと必死だ。
きっぱりとしたデュランダルの言葉を受け、ジブラルタルの総司令官は、ジブラルタルも厳戒態勢を取ると通達した。
「先駈けて、ミネルバには直ちに発進してもらいたい」
「え?本艦がここからでありますか?」
タリアは急な命令に驚き、思わず聞き返した。
「こちらも本気だということを示さねば、交渉にもならん。ミネルバは足自慢だろう?」
そんな…と、タリアは不服そうな顔をした。
いくら足自慢とはいえ、南太平洋のオーブは遠い。パナマや、せめてスエズを使えるなら話は別だが、そこまで連合と話がついているのだろうかとタリアは考え込み、指示を飛ばしている議長を見つめた。
(だとしたら驚くほど用意周到だわね、ギルバート)
やがてあらかたの指示を終えたデュランダルがタリアに向き直り、「連戦で疲れているところをすまないな」と言った。
「オーブは、その軍事技術の高さを誇るだけでなく、マスドライバーなどの宇宙への道をも持つ国だ」
私はそれも気に掛かるんだよ…デュランダルが表情を曇らせた。
「オーブの軍事力をもち、月の連合軍と合流するようなことになれば…」
「オーブが…彼に力を貸すと?」
タリアは金色の髪をした若者を思い出した。
まだまだ未熟で心許ないところはあったが、ユニウスセブンの破砕作業を行ったミネルバをねぎらい、自分たちに最大限の礼を尽くしてくれた。
(条約締結を決めたあの時、真っ直ぐな瞳で謝りに来たわ。自分の力不足を恥じながら、けれど真摯に、誠実に)
アークエンジェルと共にいたはずの彼は、哀れ北海の藻屑となった…そこまで思ってタリアは皮肉めいて口角を上げた。
(…とは思えないわね。撃沈の証拠は未だに出ていないもの)
「そもそもロード・ジブリールこそ、ブルーコスモスの盟主であるということを忘れたわけではあるまい?」
その言葉にタリアも将官たちも黙りこくった。
彼は現にオーブにいて、かくまわれている。
「我々が彼を捜していることを、あの国だけが知らないはずはないだろうに」
デュランダルの言葉に、後ろの方で聞いていた黒服や白服がざわめく。
「オーブはロゴスの陣営なんだ」
「ちっ、ブルーコスモスめ」
「だから議長の呼びかけにも応えなかったのだな」
そんな言葉を耳にしたタリアはあっけにとられて彼らを見つめた。
子供じゃあるまいし、議長の言葉を聞いただけでこんな事を言うとは…連合との同盟があるにしても、もともと中立国であるオーブが呼びかけに応じない事は想像に難くない。しかもコーディネイターを広く受け入れているあの国で、本当にブルーコスモスの力が強いのであれば、これまでそうしたテロがほとんど起きていないという、国際的にもよく知られた実績は一体何だったというのか。
そんな疑念を抱いて、(バカバカしい)とまた前を向いたタリアははっとする。
デュランダルが自分を射抜くように見つめていたからだ。
けれど彼はすぐに彼女ににこりと微笑んだ。
「長く友好国だったオーブとこのような事になるのは残念だが」
議長はそう前置きをしながら続けた。
「我々もこのたびの件に関しては一歩も引くことはできん。今度こそ必ず彼を押さえるのだ!」
議長の言葉に、全員が敬礼した。
「何で出動命令が出ないんだ?奴らは領海ぎりぎりまで来ているんだろう?」
オーブでは、基地の兵士たちが自分の機体を見上げて囁いていた。
既に衛星からの映像やレーダーには接近してくる敵影が見えているのに、行政府からは未だ何の発表もないのだ。
「行政府はなぜ何も発表しない?」
「司令はなんと…」
市民の間でも、ザフトがオーブに攻撃を仕掛けるらしいと物騒な噂が広がっているが、何しろ政府が動かない。
「オノゴロにまた?」
「ああ、そういう噂だ」
いつものように日向ぼっこをしながら昼休みを満喫する会社員が噂する。
「今度は何だ?」
「だって、この間のヘブンズベース戦で戦争は終わったんでしょう」
誰もが不安を抱えながらも、「そんなはずない」と信じたいと願い、嵐が去る事を願った。もう二度とあんな怖い思いをしなくて済むように…
キサカがもたらした情報によって、いまのところ最も正確な情報を掴んでいるといっていいアークエンジェルでも焦りの色が隠せない。
何しろ満身創痍で長い航海を終え、修理と補給が急ピッチで進められているとはいえ、万全と呼べる状況ではないからだ。
「全ての作業が終わるのにあとどのくらいかかるの?」
マリューが再びマードックに様子を聞きにきた。
「ん~、エンジン、電気系、補給…」
マードックは頭をかきながら、ボードやタブレットをいくつも見て言った。
「諸々含めると最低でも2日は…」
「なるべく急いでもらえないかしら?間に合わなかったら話にならないわ」
「それはわかってまさぁ…けどねぇ」
渋い顔をするマードックのままならない気持ちは、元技官の自分にもよくわかる。だが再び襲ってきたこの未曾有の危機に、アークエンジェルが何もできないなどとは、彼らにとって考えられない事だった。
「もし私たちがオーブのために戦えないなんて事になったら、今までしてきたことがすべて、無駄になってしまうわ」
マードックもそれを聞いて唸っている。彼とて気持ちは同じだった。
「とにかく、必要不可欠なところから急がせますよ」
「無理を言って悪いけど、お願いね」
ムラサメがひしめくハンガーでも、ニシザワたちが行政府の遅すぎる対応に首をひねっていた。
「え?政府は何も発表していないのかよ」
「ああ、報道も抑えられているようだ」
イケヤがボードにニュースを映して見せたが、どれもいつものオーブの日常の風景だ。情報番組、音楽番組、ドラマや映画…ニュースも特に何も伝えていない。世間は不気味なくらいいつも通りだった。
「セイランは一体どうするつもりなんだ?」
ゴウがしかめつらをすると、セイラン嫌いのニシザワが「さぁな。あいつらはバカだからなぁ」と相変わらず吐き捨てるように言って肩をすくめた。
「カガリ様…」
「わかっている」
アマギの呼びかけに、カガリは頷いて答えた。
皆不安を隠せない。キサカが情報部に連絡を取り、ジブラルタルから発せられている議長の通達や動向などを流しているが、いかんせん政府に動きがないため、軍は動きようがない。
カガリはこの状況に苛立ちながらも、周囲の者に止められて行政府に向かえずにいた。艦長はじめ、今はまだキラの主張…もともとはラクスの言葉を守るべきだという者が多いのだ。
その事情を知らないカガリは無論抗ったが、キラの説得に納得したキサカもまた、首を縦に振らない。
「時機を見誤るな。もう少し待て」
カガリは焦りを隠せなかったが、同時に、ここは冷静であるべきだと必死に自分を律してもいた。
(せめてセイランの…ウナトの意図がわかればよいのだが)
「まだ戦闘になるとは限らない。俺が無闇に飛び出すべきではない」
ウナト達の対応を待たねばならん…と、自分の本当の気持ちとはややかけ離れた元首の顔で答えながら、カガリは気が気ではない。
3年前のあの時も、この先どうなるかわからず、こんないやな雰囲気だった。
「はい。キサカ一佐もそう…」
我らもわかっておりますとアマギは苦渋の表情を浮かべながら言う。
彼とて、この状況に自分自身が何もできないのは歯がゆいのだ。
皆がこうして我慢し、耐えているのに、自分が爆発するわけにはいかない。
「俺にだってわかっている」
カガリはふぅと小さく息をついて自分を落ち着かせた。
(だが戦いが始まってしまったら…それはもう止めようがない…)
セイランの屋敷では、ジブリールがいつものように余裕の表情で一席打っていた。ヘブンズベースから連れて来た黒猫も膝にいる。
「ま、ちょっとはもののわかった人間ならね、すぐに見抜くはずだ」
両手を広げ、呆れたように言う。
「あんなデュランダルの欺瞞は」
「…ええ」
閣議にも出ず、行政府にも行かず、軍に指示もせず、こんなところでジブリールのお相手を務めているのは今まさに世界中の注目を浴びながら渦中にいるはずのオーブ首長国連邦の宰相ウナト・エマ・セイランだった。
「奴の支配する世界などになれば、あなた方も居場所はない」
ヤツはどうせ、「次のロゴスを生まぬよう」とかなんとか言って世界を味方につけ、自分の邪魔だと思う者を消していくだろう…
「そういう男ですよ、あのデュランダルというのは」
「全くですな」
ウナトが大げさなまでに頷いてみせた。
(それにしても、自分が何かしようとすると必ずあの男の邪魔が入る)
自信家のジブリールもさすがにこの頃には、これまで様々な時点で議長に行動を先んじられることが多かったと気にし始めていた。
アーモリーワンでの強奪はとりあえずは成功はしたものの、その実、あの男は「インパルス」とかいう新型を隠し持っていた…そのインパルスに強奪した3機はことごとく阻まれ、ガイアは鹵獲、アビスは撃破。カオスにしてもまるっきり体のいい引き立て役だった。
(しかもデストロイまで倒し、ザフトのヒーロー性を決定付けた)
データ上、デストロイを倒したのが本当は何だったかなど、彼にとってはどうでもよい。ただインパルスという隠し球があった事に苛立っている。
ユニウスセブンの落下は実に都合よく起きたテロだと思い、開戦の口実にしたものの、核攻撃は完全に防衛され、その後はこの体たらくだ…英雄となったザフトはいまやナチュラルからも歓迎され、世界中が右へ倣えでコーディネイターと仲良しこよし…
「ふんっ!」
ジブリールは不機嫌そうに鼻を鳴らし、ワインを煽った。
「ま、心配せずとも我らはすぐに反撃に出る」
「え?」
浮かない顔をしていたウナトが思わずジブリールを見た。
「奴が宇宙に戻り、私が宇宙に上がり、レクイエムが流れれば、全て終わるのだ」
「レクイエム?」
その言葉の意味を掴めず、ウナトは聞き返した。
「その時勝ち残っていたければ、今どうすべきかは、聡明なあなたにはよくおわかりだろうな、ウナト・エマ」
「は…いや、ええ…」
冷たい眼でジロリと見るジブリールに、ウナトは何も答えられない。
カグヤ再建時の贈賄や、ロゴス系列会社の誘致に必要だった裏金、今後考えていた数々の事業展開について資金援助を受けること…金が彼らを繋いでおり、何度もその金に助けられているセイランは彼に逆らう事ができなかった。
けれど実際それがオーブ経済を潤し、軍備の増強を推し進めることができたということも確かなのだ。
白は黒に、黒は白に…戦争でなくとも、世界は常に揺らいでいる。
「オーブ政府からの回答文、発信されました」
ようやく動いたオーブ政府に、皆振り返った。
ミリアリアが忙しなく操作し、モニターを見られない部署にも全て聞こえるよう、艦内スピーカーをオンにした。
ネオとメイリン、アスランも、それぞれの病室でモニターを見つめている。
「オーブ政府を代表して通告に対し回答いたします」
てっきり宰相のウナト・エマ・セイランが出てくるとばかり思っていたので、しっかりと化粧を施したユウナ・ロマ・セイランが画面に現れた時は、皆、「え?」と驚きの声を隠せなかった。
「ユウナ…」
カガリがあっけにとられる。いかに彼女が首長代理であろうとも、プラントからの正式な通告に答えるべきは、かつてホムラ代表が連合の通告に対してその職を務めたように、自分がいない今は宰相の役目であろう。彼らのこの認識の甘さこそが、現状を全く理解していないという現われだった。
実際、彼女にはむしろなぜこんな事で大騒ぎするのかと不可解ですらある。
だからユウナ・ロマ・セイランは、いつもと変わらずにこやかに微笑んで挨拶をすると、いつも通りの声で声明文を読み上げた。
「貴官らが引き渡しを要求する、ロード・ジブリールなる人物は我が国内には存在しておりません」
それを聞いてノイマンが驚き、チャンドラも「おいおい」と呟いた。
「いないですって?」
「嘘よ。何言ってるの、この人」
ミリアリアとマリューも顔を見合わせて言い合っている。そして皆一斉にカガリを見た。カガリは青ざめた顔で拳を握り締め、黙ってこの声明を聞いている。
急な出航により、今は急ぎオーブまで航海を続けているミネルバでも、このふざけた返答に驚きが走っていた。
タリアが思ったとおり、議長は「ロゴス討伐のため」ということで既に連合との話をつけ、パナマを使って太平洋に抜けるルートを確保していた。
パナマを通れるなら南極・北極回りはもとより、スエズを廻るインド洋航路より大幅に時間短縮してオーブに辿り着く事ができる。
「ええっ!?どういう…」
アーサーが驚いて声を荒げたのでタリアが手を上げた。
「いいから黙って!」
ユウナはさらに続けた。
「また、このような武力を以ての恫喝は、一主権国家としての我が国の尊厳を著しく侵害する行為として、大変遺憾に思います」
自室でこの言葉を聞いていたシンは、ぎりっと歯を食いしばった。
この愚かな選択により、オーブはまた国を戦火にさらすことになるだろう。
何より、今回は戦いを仕掛けるのは連合ではなくプラントなのだ。
シンはそう思うと心に電流のように痛みが走ることに、気づかないふりをした。
(…あいつ、こんなオーブの一大事にも表に出てこない気か?)
一瞬、もう思い出したくもないと思っていた金色の髪の男の姿が眼に浮かぶ。
それと同時に自分が貫いたフリーダムと、激しい水飛沫を上げて爆発した海面を思い出し、ふとシンの表情が曇った。
(本当に死んだのか、あいつも…アスランのように…)
「よって、直ちに軍を引かれることを要求いたします」
ユウナは語り終えると得意げな顔をし、それきり放送は終わった。
ミネルバでもジブラルタルでも皆呆気にとられ、そしてざわめいた。
「なんと馬鹿にした…!」
議長と共にこの放映を聞いていたジブラルタルの司令官が机を叩いた。
「ジブリールと共に窓辺に立っているのはおまえと父ではないか!」
兵たちは皆怒りを覚えてざわめいた。
「そう言えば討たぬとタカをくくってるんだ」
「そもそも中立を謳いながら同盟を結んだような国だ」
「コロコロと簡単に立場を変える国など信用できん」
ユウナのバカげた回答は兵たちを怒らせ、急激にオーブとの開戦の気概が高まり始めた。
同時にオーブ軍も、宰相の真意を図りかねて更なる動揺が拡がっていた。
無論、出撃命令もまだ出ていない。
「本当にジブリールはいないのか?」
「わからん。だが陸軍情報部では既にザフトが証拠を掴んだと…」
「なぜ宰相は何の発表もしないのだ?」
ましてや国民など、そもそもザフトが勧告を行っていたことも報道統制で伏せられていたのだから、この放映は寝耳に水だった。
「そんな…そんな言葉が…」
カガリが搾り出すように呟いたので、マリューたちが振り返った。
「この状況の中…彼らに届くと思うのか?ユウナ・ロマ!」
彼の顔からはすっかり血の気が引き、握られた拳が白くなっている。
「これでは同じだ、あの時と…」
父が、伯父が、顔なじみの首長たちが話し合っていた3年前の忌わしい日と…
(そして、オーブが再び焼かれる…)
カガリは痛いほど唇を噛み締めた。
「…最早、どうにもならんようだな」
回答を聞いて将兵たちが騒ぐ中、沈黙を守っていたデュランダルが、ついに重々しく口を開いた。
それを聞いてそこにいた者たちは皆、はっと議長を見た。
議長はいつになく厳しい顔つきで両手を顎の前で組んでいる。
「このような虚偽を以て応ずるというのなら、私は正義と切なる平和への願いを以て断固これに立ち向かう」
議長は立ち上がると、長い右腕をまっすぐ伸ばして命じた。
「ロード・ジブリールをオーブから引きずり出せ!」
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制作裏話-PHASE41①-
DESTINY最強の機体ではないかと噂されるアカツキが登場する回の前半パートです。
しかし正直、内容的には全然面白くない。
SEEDならまだしも、DESTNYの政治的駆け引きモドキはただただチンタラしているだけで間延びするばかりなので、1話分無駄にしたという感じです。残り10話しかないのにインフィニットジャスティスはまだ出ないし、どうなってるんだと視聴者もさすがに「ざわ…ざわ…」という感じでした。
しかも本編ではこれが本当のPHASE40ですからね。この後因縁の深いシンとカガリが激突!というところでいきなりアスランの回想総集編。しかも待ちに待ったPHASE42のシンVSカガリは意見のぶつけ合いもなく圧倒的にデスティニー有利、しかしアカツキはパイロットの未熟をビームコーティングでなんとかカバー、そして現れる我らがヒーロー、キラ・ヤマト!というアホ展開です。バカじゃないのと心の広い視聴者もゲンナリですよ。
カガリとアスランのきちんとした会話もなく、ラクスが宇宙で調べると言っていたことの解明もなく、そしてシンの出番もなく、なし崩しにオーブ戦に突入してしまうわけです。
メイリンはどうすんだとか、ネオの記憶はどうなってんのとか、これまでの話はもうすべて投げっぱなしと言っていいでしょう。ちんたらしていた前半のせいでケツカッチンとなり、「ここでオーブ戦をやらねば!」という性急さが物語をグダらせます。
キャラクターの行動に責任を負えずに何が作者か。何がフィクションか。こうした制作陣の明らかな力不足は、全て主役のシンがかぶる事になってしまいました。何しろシンには、心情の吐露も、隠された本心を暴かれることも、正義と真実の狭間での葛藤も、何より重要人物とのきちんとした「会話」すらも許されず、これらを描かれる時間が一切与えられないんですから。
まぁこのあたり、本編で輝いていたのはユウナですかね。初めこそ政治家としてはカガリより上かと思わせていたユウナの捨石&泥まみれぶりは失笑以外の何物でもありませんでした。それがあまりにも不憫だったので、私ははじめからユウナを小物ながらカガリを廃し(または篭絡して)、権力を得んとする悪女として描きました。フレイさんとはまた違う悪女タイプがいてもいいと思うんですよ。本編では男でしたけど。
このPHASEについては私もほとんど改変していませんが、シンに関するシーンは書き込んでいます。
戦争とは無縁だった少年が、家族を眼の前で無残に失うというPTSDをようやく克服したのに、シンは再び、アスランとメイリンを殺したことに苦しみ続けています。
シンの心には深い古傷があるからこそ、新たな傷を負ってしまったことが、痛々しさを強調します。
逆転のシンは本編のシンより(筆者の愛情を受けているため)思慮深く頭もいいので、この苦しみから抜け出すために、新たな目標を見つけることで力を取り戻し、弱さを克服しようとします。
それはもちろん「議長の計画を支持し、平和な世界を手に入れること」です。
しかし運命は残酷で、彼が見つけた「次の目標」は、シンが今なお追ってやまない故国オーブへの制裁であり、さらにその後、次々と厄介な相手が立ちはだかるのです。
かつて罵倒したカガリ・ユラ・アスハであり、倒したキラ・ヤマトであり、殺したアスラン・ザラなのですから。
ほら、こうやって両者の対立理由を描写すれば、シンは決してただの悪役ではないのです。
FAITHを拝領するシンが、ミーアの言葉を反芻し、悶々としながらも「自分で決めた事なのだから」と決意を新たにするところなど、つくづく、シンというのはこういう強くて哀しいダークヒーローの素質があるキャラクターだと思いますね。なかなかいないですよ、こういう逸材。
オーブが敵になる…彼の国をよく知る彼には、オーブがロゴスであるジブリールを守って戦うなど信じられることではありません。もちろんそれはセイランの独断専行ですからシンの考えどおりなのですが、そんな中、シンはふとカガリの事を思い出してしまうのです。
前半はオーブに刻々と戦いが迫っていることを描くだけなので、ユウナの「ジブリールはいませんよ」という宣言を受け、デュランダルが攻撃命令を下すところで幕になります。
そしてカガリがウズミの遺産を受け継ぐ後半へと続きます。
それにしてもこのアカツキ建造にアークエンジェル、フリーダムの整備、それにマリューやキラたちの生活など、アスハ家ってどんだけ資産家なんだ…
しかし正直、内容的には全然面白くない。
SEEDならまだしも、DESTNYの政治的駆け引きモドキはただただチンタラしているだけで間延びするばかりなので、1話分無駄にしたという感じです。残り10話しかないのにインフィニットジャスティスはまだ出ないし、どうなってるんだと視聴者もさすがに「ざわ…ざわ…」という感じでした。
しかも本編ではこれが本当のPHASE40ですからね。この後因縁の深いシンとカガリが激突!というところでいきなりアスランの回想総集編。しかも待ちに待ったPHASE42のシンVSカガリは意見のぶつけ合いもなく圧倒的にデスティニー有利、しかしアカツキはパイロットの未熟をビームコーティングでなんとかカバー、そして現れる我らがヒーロー、キラ・ヤマト!というアホ展開です。バカじゃないのと心の広い視聴者もゲンナリですよ。
カガリとアスランのきちんとした会話もなく、ラクスが宇宙で調べると言っていたことの解明もなく、そしてシンの出番もなく、なし崩しにオーブ戦に突入してしまうわけです。
メイリンはどうすんだとか、ネオの記憶はどうなってんのとか、これまでの話はもうすべて投げっぱなしと言っていいでしょう。ちんたらしていた前半のせいでケツカッチンとなり、「ここでオーブ戦をやらねば!」という性急さが物語をグダらせます。
キャラクターの行動に責任を負えずに何が作者か。何がフィクションか。こうした制作陣の明らかな力不足は、全て主役のシンがかぶる事になってしまいました。何しろシンには、心情の吐露も、隠された本心を暴かれることも、正義と真実の狭間での葛藤も、何より重要人物とのきちんとした「会話」すらも許されず、これらを描かれる時間が一切与えられないんですから。
まぁこのあたり、本編で輝いていたのはユウナですかね。初めこそ政治家としてはカガリより上かと思わせていたユウナの捨石&泥まみれぶりは失笑以外の何物でもありませんでした。それがあまりにも不憫だったので、私ははじめからユウナを小物ながらカガリを廃し(または篭絡して)、権力を得んとする悪女として描きました。フレイさんとはまた違う悪女タイプがいてもいいと思うんですよ。本編では男でしたけど。
このPHASEについては私もほとんど改変していませんが、シンに関するシーンは書き込んでいます。
戦争とは無縁だった少年が、家族を眼の前で無残に失うというPTSDをようやく克服したのに、シンは再び、アスランとメイリンを殺したことに苦しみ続けています。
シンの心には深い古傷があるからこそ、新たな傷を負ってしまったことが、痛々しさを強調します。
逆転のシンは本編のシンより(筆者の愛情を受けているため)思慮深く頭もいいので、この苦しみから抜け出すために、新たな目標を見つけることで力を取り戻し、弱さを克服しようとします。
それはもちろん「議長の計画を支持し、平和な世界を手に入れること」です。
しかし運命は残酷で、彼が見つけた「次の目標」は、シンが今なお追ってやまない故国オーブへの制裁であり、さらにその後、次々と厄介な相手が立ちはだかるのです。
かつて罵倒したカガリ・ユラ・アスハであり、倒したキラ・ヤマトであり、殺したアスラン・ザラなのですから。
ほら、こうやって両者の対立理由を描写すれば、シンは決してただの悪役ではないのです。
FAITHを拝領するシンが、ミーアの言葉を反芻し、悶々としながらも「自分で決めた事なのだから」と決意を新たにするところなど、つくづく、シンというのはこういう強くて哀しいダークヒーローの素質があるキャラクターだと思いますね。なかなかいないですよ、こういう逸材。
オーブが敵になる…彼の国をよく知る彼には、オーブがロゴスであるジブリールを守って戦うなど信じられることではありません。もちろんそれはセイランの独断専行ですからシンの考えどおりなのですが、そんな中、シンはふとカガリの事を思い出してしまうのです。
前半はオーブに刻々と戦いが迫っていることを描くだけなので、ユウナの「ジブリールはいませんよ」という宣言を受け、デュランダルが攻撃命令を下すところで幕になります。
そしてカガリがウズミの遺産を受け継ぐ後半へと続きます。
それにしてもこのアカツキ建造にアークエンジェル、フリーダムの整備、それにマリューやキラたちの生活など、アスハ家ってどんだけ資産家なんだ…
Natural or Cordinater?
サブタイトル
お知らせ PHASE0 はじめに PHASE1-1 怒れる瞳① PHASE1-2 怒れる瞳② PHASE1-3 怒れる瞳③ PHASE2 戦いを呼ぶもの PHASE3 予兆の砲火 PHASE4 星屑の戦場 PHASE5 癒えぬ傷痕 PHASE6 世界の終わる時 PHASE7 混迷の大地 PHASE8 ジャンクション PHASE9 驕れる牙 PHASE10 父の呪縛 PHASE11 選びし道 PHASE12 血に染まる海 PHASE13 よみがえる翼 PHASE14 明日への出航 PHASE15 戦場への帰還 PHASE16 インド洋の死闘 PHASE17 戦士の条件 PHASE18 ローエングリンを討て! PHASE19 見えない真実 PHASE20 PAST PHASE21 さまよう眸 PHASE22 蒼天の剣 PHASE23 戦火の蔭 PHASE24 すれちがう視線 PHASE25 罪の在処 PHASE26 約束 PHASE27 届かぬ想い PHASE28 残る命散る命 PHASE29 FATES PHASE30 刹那の夢 PHASE31 明けない夜 PHASE32 ステラ PHASE33 示される世界 PHASE34 悪夢 PHASE35 混沌の先に PHASE36-1 アスラン脱走① PHASE36-2 アスラン脱走② PHASE37-1 雷鳴の闇① PHASE37-2 雷鳴の闇② PHASE38 新しき旗 PHASE39-1 天空のキラ① PHASE39-2 天空のキラ② PHASE40 リフレイン (原題:黄金の意志) PHASE41-1 黄金の意志① (原題:リフレイン) PHASE41-2 黄金の意志② (原題:リフレイン) PHASE42-1 自由と正義と① PHASE42-2 自由と正義と② PHASE43-1 反撃の声① PHASE43-2 反撃の声② PHASE44-1 二人のラクス① PHASE44-2 二人のラクス② PHASE45-1 変革の序曲① PHASE45-2 変革の序曲② PHASE46-1 真実の歌① PHASE46-2 真実の歌② PHASE47 ミーア PHASE48-1 新世界へ① PHASE48-2 新世界へ② PHASE49-1 レイ① PHASE49-2 レイ② PHASE50-1 最後の力① PHASE50-2 最後の力② PHASE50-3 最後の力③ PHASE50-4 最後の力④ PHASE50-5 最後の力⑤ PHASE50-6 最後の力⑥ PHASE50-7 最後の力⑦ PHASE50-8 最後の力⑧ FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開
制作裏話-はじめに- 制作裏話-PHASE1①- 制作裏話-PHASE1②- 制作裏話-PHASE1③- 制作裏話-PHASE2- 制作裏話-PHASE3- 制作裏話-PHASE4- 制作裏話-PHASE5- 制作裏話-PHASE6- 制作裏話-PHASE7- 制作裏話-PHASE8- 制作裏話-PHASE9- 制作裏話-PHASE10- 制作裏話-PHASE11- 制作裏話-PHASE12- 制作裏話-PHASE13- 制作裏話-PHASE14- 制作裏話-PHASE15- 制作裏話-PHASE16- 制作裏話-PHASE17- 制作裏話-PHASE18- 制作裏話-PHASE19- 制作裏話-PHASE20- 制作裏話-PHASE21- 制作裏話-PHASE22- 制作裏話-PHASE23- 制作裏話-PHASE24- 制作裏話-PHASE25- 制作裏話-PHASE26- 制作裏話-PHASE27- 制作裏話-PHASE28- 制作裏話-PHASE29- 制作裏話-PHASE30- 制作裏話-PHASE31- 制作裏話-PHASE32- 制作裏話-PHASE33- 制作裏話-PHASE34- 制作裏話-PHASE35- 制作裏話-PHASE36①- 制作裏話-PHASE36②- 制作裏話-PHASE37①- 制作裏話-PHASE37②- 制作裏話-PHASE38- 制作裏話-PHASE39①- 制作裏話-PHASE39②- 制作裏話-PHASE40- 制作裏話-PHASE41①- 制作裏話-PHASE41②- 制作裏話-PHASE42①- 制作裏話-PHASE42②- 制作裏話-PHASE43①- 制作裏話-PHASE43②- 制作裏話-PHASE44①- 制作裏話-PHASE44②- 制作裏話-PHASE45①- 制作裏話-PHASE45②- 制作裏話-PHASE46①- 制作裏話-PHASE46②- 制作裏話-PHASE47- 制作裏話-PHASE48①- 制作裏話-PHASE48②- 制作裏話-PHASE49①- 制作裏話-PHASE49②- 制作裏話-PHASE50①- 制作裏話-PHASE50②- 制作裏話-PHASE50③- 制作裏話-PHASE50④- 制作裏話-PHASE50⑤- 制作裏話-PHASE50⑥- 制作裏話-PHASE50⑦- 制作裏話-PHASE50⑧-
2011/5/22~2012/9/12
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