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機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
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「オペレーション・フューリー開封承認。コンディションレッド発令。砲撃目標点確認。オーブ本島セイラン家、国防本部、オーブ行政府」
「目標はロード・ジブリールだが、ロゴスに与するオーブ政府にも遠慮することはない。速やかにこれを排除、あるいは捕獲せよ。市街地、民間人への被害は最小限にとどめるよう努力」
旗艦セントへレンズを中心に、ボズゴロフ級からはモビルスーツが出撃を始めた。
デュランダルはロゴス追討を名目にして連合にも参戦を呼びかけており、ある程度の規模の艦隊が送り込まれている。
議長は巧妙に彼らを取り込むことで、このオペレーションの目的があくまでも「オーブに匿われたジブリールの確保」であるとし、戦闘行為は目的のため「必要不可欠」だったと、後々国際社会への説明がつくよう根回ししていた。
しかし、つぎこまれたザフトのこの戦力を見れば、そうではない事など誰の眼にも明らかだった。

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モビルスーツ隊は続々と揚陸を開始した。
何しろ防衛すべき護衛艦群はおらず、イザナギ海岸もがら空きなのだ。
それはあまりにもたやすく決着がつきそうに思われた。
グフやバビが対空砲一つ、警報一つないオーブの空を侵していき、アッシュがゾノを率いてのそのそと上陸を始めた。見慣れない鱗のような装甲のグーンが突然海底に激突したかと思うと、機体に仕込まれたドリルで掘削を始め、地中へと潜り始めた。
「ザフト艦より、モビルスーツ発進です」
ミリアリアがついに始まった侵攻の状況を伝えた。
カガリとマリューがそれを聞いて振り返る。
多数が揚陸開始…ミリアリアが敵影をポイントしていく。
「オーブ軍は?どう展開している?」
カガリがミリアリアの席に駆け寄って彼女の肩越しにモニターを覗き込んだ。
「まだ動いていないわ」
ミリアリアは忙しなくモニターを切り替えてレーダーの中にオーブ軍の機影や艦影を探したのだが、そこには何もない。
「本島や、カグヤは?」
カガリは続けて聞いたが、結果は同じだった。
「それじゃ…避難などの状況はどうなんだ?」
絶望的な答えばかりが返ってくることに焦るカガリは言った。
ミリアリアもデータを確認し、戸惑ったように彼を見上げる。
「避難勧告も出ていない。それどころか、オノゴロ沖がこうなってることすら、市民には知らされていないみたいよ」
「バカな…」
カガリは声を失い、アマギもまた思わず立ち上がった。

本島のセイラン家を狙うバビやグフが市街地を飛び始めると、市民は驚き、一体何事かとパニックに陥った。ビルの谷間をバビがすり抜け、大通りの上空を青いグフが飛んでいく。
「なんだ!?」
「…演習?いや…ザフトのモビルスーツ!?」
人々は空を飛び交うモビルスーツに怯え、驚きで立ちすくんだ。
てんでに走り出した人々や、ハンドルを切り損ねた車など、いつも通り穏やかだった街はにわかに騒がしくなり始めた。
この騒ぎにさすがにウナトが行政府へと向かうと、セイラン家に残されたジブリールも事態がまずい方向に進み始めたと悟っていた。
(ちっ、どこまでも無能な親子だ)
うまいこといいくるめればいいものを、デュランダルの逆鱗に触れるとは…
「馬鹿め!」
ジブリールは立ち上がると側近に合図をし、リムジンを用意させた。
相変わらず逃げ足の早いジブリールが裏口からこっそり逃げ出した頃、セイラン家には招かれざる客…バビやグフが次々と到着していた。
彼らはジブリールを引き渡すよう簡単な勧告を行い、従わない場合は攻撃すると有無を言わさぬ警告をした。
ウナトの妻はそれを聞いて飛び出し、モビルスーツの姿に一瞬ひるんだものの果敢に抗議した。
無論、そんなものはあっさり黙殺され、使用人たちが慌てて逃げ出した後、バビのミサイルが容赦なくセイラン家を襲った。
豪奢な屋敷はあっという間にただの瓦礫と化し、セイラン夫人は何がなんだかわからないまま、更地の前でぺたりと座り込んだ。

「オーブ本島に爆撃です。狙われたのはセイラン家のようですが…」
カガリが再びモニターを覗くと、ミリアリアが地図を拡大してくれた。
「ほら、ここよ」と指を差す座標は、確かにセイラン家のあたりだった。
「ジブリールは確保できたのかな?」
「わからないわ。でも、侵攻はまだ続いてる」
一方マリューは受話器を取ってマードックに尋ねた。
「本艦はまだ出られないの?」
「無理ですよ!まだエンジンが終わってねぇんですから」
不眠不休で働いているマードックが騒音の中、怒鳴り返した。
アークエンジェルはまだ出られない。ノイマンもチャンドラも顔を見合わせ、ミリアリアはオーブ軍や行政府に何がしかの動きがないかデータを更新し続けたが、未だ何の変化もない。
「敵モビルスーツ群、展開。数40。侵攻してきます」
国防本部の司令室ではオペレーターが慌しく状況を報告していた。
すでにオノゴロ沖にはモビルスーツが上陸し、本島にも入られている。
「ソガ一佐、敵軍の侵攻が始まっているというのに、何故まだ何の命令もないのでありますか!?市民の避難も!」
各基地からも当然問い合わせが殺到しており、オペレーターはてんてこまいだ。
年はまだ若いが、海軍ではトダカと共にその名を馳せるソガ一佐が、行政府の命令を待たないエマージェンシーとし、各基地で各個に防衛ラインを整えるようてきぱきと指示を下す。
「行政府を呼び続けろ!セイランめ…何を…」
権限のある者とは連絡が取れず、現場に丸投げされた状態である今、セイランの采配のあまりの杜撰さにソガの怒りは頂点に達している。
その時、彼の怒りの「原因」がのこのこと司令室にやってきた。
「ああ、もう!どうしてこうなるの?」
首長服を着たユウナはぶつぶつ言っている。
「彼はいないと回答したのに、何で連中は撃ってくるの?」
ユウナが壁面の大きなモニターを見上げると、思った以上に敵影のマークが多いことにぎょっとした。
(…やだ、何よこれ!?)
オノゴロ沖を真っ赤に埋め尽くした敵影を示すマークは、既に本島の奥深くにも入り込んでおり、ユウナはようやく事態の深刻さを感じたようだ。
「嘘だと知ってるからですよ」
「何ですって?」
ユウナはソガを睨みつけた。
「政府は何故あんな馬鹿げた回答をしたのです!?」
ソガはユウナに詰め寄り、ユウナはやや気圧されたように後ずさった。
「だって…昔…アークエンジェルの時には…」
「あの時とは政府も状況も違います!」
3年前、オーブは連合と同盟など結んでいない厳然たる中立国だった。
連合と戦っていたプラントは、ここで中立国オーブと刃を交える事に何の意義も見出せなかったからこそ引いたのだ。しかしそのプラントはいまや連合を従え、彼らと共に、敵とみなしたロゴスを追っている。
「我が国は今、『ロゴスを庇う不埒な国』と全世界から非難を浴びているのです!」
オペレーターや副官など、司令室にいるほぼ全員が非難めいた眼をユウナに向ける中、ソガが冷静かつ怒りをこめて彼女を恫喝した。
「その意味がおわかりか、ユウナ様!」
ユウナはその剣幕に一旦引いたが、すぐに押し返してきた。
「う…うるさいわね!ほら、とにかくこっちも防衛体制をとるのよ!」
やけくそのように叫ぶと、腰に手を当てて腕を振り上げながら命じた。
「護衛艦群出動!迎撃開始!モビルスーツ隊発進!」
それを受けてようやくオーブ軍は動き始めたが、政府のこの対応はあまりにも後手に廻りすぎている。
ザフト軍は「ジブリールを探す」という名目で各地で施設を破壊し始めていた。
マスドライバーが再建されたカグヤにもモビルスーツが迫っており、国土の被害は拡大する一方だ。
「第一、第二護衛艦群出動。侵攻する敵脅威を速やかに排除せよ」
「モビルスーツ隊発進開始。第一から第四小隊、イザナギ海岸防衛線へ」
慌てて飛び出したM1部隊が海岸線の防衛を、シュライク装備のM1とムラサメが対空防衛のために飛び立つ。完全に無防備状態だった海では、クラオミカミ級やイージス艦がようやくオーブの領海を守るために出航した。

「アマギ、ムラサメ隊は出られるな?」
アークエンジェルではカガリが静かな声でアマギに言った。
アマギは唐突な質問に面食らったが、すぐに「はい」と答える。
「なら行こう。艦長、スカイグラスパーを俺に貸してくれ」
「ええ?何言ってるんだよ」
マリューより先に、チャンドラが驚きの声をあげた。
ミリアリアとノイマンも思わず顔を見合わせる。
「カガリ様…」
「俺は国防本部へ向かう。一刻も早く指揮を執らなければ」
カガリは、無数の敵影を示すメインモニターを見ながら言った。
マリューは当然反対した。
「そんな、無茶よ!スカイグラスパーでなんて…」
「戦うわけじゃない。俺がすべき事をしに行くだけだ」
カガリはそう言うと歩き始めた。
「待ちなさい!」
彼が本気だと見て取り、マリューが慌てて立ち上がる。
「あれだけのモビルスーツが展開しているのよ?いくらムラサメが護衛しても…」 
「オーブが再び焼かれようとしているんだ。もう、何も待ってなどいられない」
足を止めたカガリはブリッジのクルーたちに向き直った。
「皆、本当に色々と世話になった。心から礼を言う」
ありがとう…と頭を下げ、それからマリューに言った。
「艦長。あいつらを…アスランとメイリンを頼む」
そのカガリの表情は今まで見たことがないほど寂しげで、マリューは心が締め付けられそうだった。
カガリはそのままアマギを伴ってブリッジを出て行こうとしたが、その時ちょうどブリッジの扉が開き、キサカが入ってきたので両者は鉢合わせた。
「ではそのように…カガリ?どうした?」
シモンズと話している途中だったキサカは険しい表情のカガリを見て聞いた。
しかしカガリはそれには答えず、アマギを振り返った。
「行くぞ、アマギ。艦長、機体はお借りする」
その言葉を聞いて、キサカはカガリが出撃するつもりであると悟った。
「待て、カガリ」
「もう待てない。待つだけでは何も変わらない」
キサカの大きな手が肩を掴むと、カガリは体をよじり「離せ!」と抗う。
「…こんな状況になったのは、全ては俺の力不足が原因だ。肝心な時に国を離れていた事もあるが、もとを糺せば、俺に代表として首長会をまとめる力が欠けていたからだ!」
「だが力なきまま戻ったところで何もできはしまい」
キサカに言われ、カガリは一瞬言葉を失ったが、すぐに反論した。
「確かに俺には何の力もない。それに何もできないかもしれない。だが!」
彼の琥珀色の瞳が真っ直ぐにキサカを見つめた。
「このままここで見ているくらいなら…国と一緒に、この身も焼かれた方がましだ!」
ブリッジクルーもこの押し問答を固唾を呑んで見守っていた。
ミリアリアは彼の姿を見て、いつも明るく気さくであっけらかんとしたカガリが、そこまで責任を感じ、ずっと苦しんでいたのだと知った。そして彼は、まがりなりにもこの国の国家元首なのだと改めて認識した。
「それでは困るから来いと言っているんだ!」
「離せ!止めるな、キサカ!」
キサカが厳しい表情のまま言うと、二人の緊張が否応なく高まる。
「はーい、はいはい」
その時、2人の間にエリカ・シモンズが割って入った。
「2人ともそこまで。カガリ様、私たちは、行くのはいいけど、その前にウズミ様の言葉を聞いてと言いたいの」
「…親父の?」
「そう。遺言を」
カガリは驚いて眼を見開いた。
「若様のことですもの、そろそろ業を煮やしていらっしゃると思って、大急ぎで準備したんです」
シモンズがにっこりと笑ったので、カガリは力を抜いて言った。 
「そんなもの…俺は知らないぞ」
「気になるでしょ?なら、一緒にいらっしゃい」

驚くカガリを連れ、シモンズとキサカはドックを出て島の裏側へと向かった。
アークエンジェルが隠れているアカツキ島は国の東端にあり、政府や民間企業が所有する様々な研究所がある小さな島である。
キサカ、シモンズ、カガリ、そしてアマギの4人がボートで裏手の崖に廻ると、洞窟に偽装したドックの入り口があり、そこからさらにエレベーターで大深度までおりていく。
最深部には、硬く閉ざされた巨大な扉があった。
「そこに言葉が彫ってあるでしょ?読んで」
シモンズが指し示したところには、記念碑のような台がある。
プレートには埃がたまり、長い事触られていない年月を感じさせた。
カガリはそれを手で払うと読み上げた。
「この扉、開かれる日が来ぬことを切に願う」
「この扉が開かれる日、それはこのオーブが再び炎に包まれる日かもしれないとそういうことよ」
シモンズはそう言いながら壁に隠されたスイッチを押した。
「そしてこれが、封印されていたウズミ様の遺言です」
扉が開くと同時にライトがつき、暗闇に慣れていたかガリはその眩しさに思わず腕で眼を覆った。しかし果たしてこの時、眩しいと感じたのがライトの光だけだったのかわからない…
そこには、眩いばかりの金色に輝くモビルスーツがあったのだ。
「黄金の…モビルスーツ?」
アマギも眼を見張った。
それは海軍士官の彼の知識にはない、見たこともないモビルスーツだった。
カガリも声もなく見上げている。左の肩に「暁」と書かれており、大きなシールドは周りが機体同様の黄金色、中央部が黒だった。
『カガリ』
その時懐かしい父の声が響いて、カガリははっと息を呑んだ。
(親父…?)
シモンズが流すウズミの声が響き渡った。
『もしもおまえが力を欲する日来たれば、その希求に応えて私はこれを贈ろう』
(力…これが、俺に与えられる力…?)
『教えられなかったことは多くある。が、おまえが学ぼうとさえすれば、それは必ずやおまえを愛し、支えてくれる人々から受け取ることができるだろう』
カガリはその言葉を聞き、真っ先にキラを思い出した。
それからアスランを、ラクスを、キサカやミリアリア、マーナやマリュー、バルトフェルドなど、これまで彼を支えてきたありとあらゆる人々が浮かんでは消えていった。
父の言うとおり、未熟な自分がどれほど彼らに援けられ、教えられ、導かれたかしれなかった。

『故に私はただ一つ、これのみを贈る。力はただ力。多く望むのも愚かなれど、無闇と厭うのもまた愚か。守るための剣、今必要ならばこれを取れ。道のまま、お前が定めた成すべき事を成すためならば』

「我らは同じ目的のために、別の道を行くのだ」
穏やかな、既に覚悟を決めていたあの時のウズミの顔が浮かぶ。
「想いが同じなら、道は違えど、やがて同じ場所にたどり着く」
(俺は今、ようやく辿り着いたのだろうか…親父が目指していたところに)
『が、真に願うのはおまえがこれを聞く日の来ぬ事だ。今この扉を開けしおまえには届かぬ願いかもしれないが…どうか、幸せに生きよ…カガリ…』
カガリは清清しい顔でこの「力」を見上げ、眩しそうに眼を細めた。
一人前の振りをしていたのに、まだまだ父に守られていたなんて…
「ちくしょう…汚いぞ、親父…」
カガリは呟いた。けれどその声は心なしか嬉しそうだった。
(あんたがまたこうして正しい道を示してしまったら、俺は自分で答えを見つけたことにならないじゃないか)
かつてM1を前にしたキラに、自分は「これは、オーブの力だ」と言った。
オーブの理念を守るための力を、ウズミは泥を被りながらも用意していたのだ。
父が、代表の座を降りてでも守りたかったのは、オーブという国だった。
(俺は前大戦という過去に囚われすぎて、忘れていたのかもしれない)
彼の肩から、ふと力が抜けていった。
するとまるでぼやけていた視界がクリアになるように澄み切っていき、自分が本当に守りたかったものが見えてきた。それはかつての強いオーブ…理念を守り、誰に対しても凛として意思を示し、主張を貫き通せる「中立国オーブ」だった。

「オーブは戦わない国じゃない。守るためには剣を取り、闘う国であるべきだ」

カガリは振り返り、キサカやシモンズ、アマギに言った。
「戦うとは、武力で相手を傷つけることだけを言うんじゃない。人は時に、言葉や態度、文章や表現する事、意志や想いでも闘う」
理念や信義を守るため、人々を守るため、その意志を貫くため…自ら傷つき、命を賭しても守らねばならないものがあるのなら…カガリは強い光を宿した琥珀色の瞳で、父の遺してくれた遺産を見つめていた。

「俺は闘う。今、はっきりわかった。それが、俺が目指すオーブだ」

その言葉に頷いたキサカがカガリの傍にやってきて尋ねた。
「カガリ。暁に乗るか?」
「アカツキ?」
カガリは新たなオーブの守りであるそれをもう一度仰ぎ見た。
キサカはキラたちが懸念したように、命を狙われる彼が帰還するためには力を授けなければならないと考えて、このアカツキの封印を解く事を決めたのだ。
(ウズミ様…私のこの選択が正しいと思ってくださいますな)
幼い頃から守ってきた若き獅子は今、自身の牙と爪の使い方を知ったのだ。
キサカは一年ほど前、港で別れた時とは見違えるほど大人になった彼を見つめた。
やがて、カガリは答えた。
「ああ。乗ろう」
その言葉に迷いは一切なかった。
そして彼は、かつて砂漠で戦っていた頃のように明るく笑った。
「オーブを守るために、俺は戦おう、この命を賭けて」
(闇の中を、手探りで歩いてきた…だけど怖くはなかった。いつだってキラが、ラクスが、アークエンジェルの皆が、この未熟な俺と共にいてくれたからだ)
そして今、ようやく戻ってこられた。自分の場所に。戦うべきところに。
(俺の戦場は、やっぱりここにあったんだ)

カガリはパイロットスーツに身を包み、コックピットに座った。
巨大な扉は堅く閉ざされ、プレートも埃にまみれていたが、ハンガーの中は空気が澄んでおり、人々が常に出入りしていた気配があった。
3年前にはフレームが出来上がっていたというこのアカツキは、シモンズたちが何か新たな技術革新があるとそれを施し、徐々に徐々に開発が加えられてきた機体なのだ。
(使われることなく、永遠に「開発中」であるべきだった機体…)
けれど今、再び訪れた危機に封印は解かれ、力が放たれる。
暴力はいけない、武力では何も解決できない…それもわかる。
けれど、理不尽な暴力を恐れず、無慈悲な武力に声をかき消されないためには…
(力が必要な時もある)
カガリはぎゅっと眼を閉じた。
(俺が望むのは、人々が安心して暮らせる国を守る力だ)
やがてオペレーターを務めるエリカ・シモンズの声がアカツキの発進を告げた。
「ORB-01アカツキ、システム起動。発進どうぞ」
バックパックのオオワシを装着したアカツキが起動する。
「カガリ・ユラ・アスハ、アカツキ、出るぞ!」
アカツキの膝のサスペンションが深く沈み込むと、VLSによって一気にオーブの真っ青な空に飛び出した。

国防本部が慌てて敷いた防衛線は悲惨な状態だった。
陸軍も動き出し、ランチャーを載せたトラックや戦闘ヘリが出たが、既に本土奥深くまでバビやグフが自由に入り込めている状態では防戦などあってなきが如しである。それでも上陸してきたゾノが不用意にのそのそと歩き始めたところを、岩陰に隠れていたM1のライフルがしとめ、アッシュもムラサメのビームで爆発した。そんな風に善戦したM1やムラサメも、バビに、グフに屠られた。
「アラマツバラ、第二次防衛ライン突破されました!」
ユウナは出てはすぐに消えていく友軍のマークを見て絶句する。
ソガが苛立ちながらも機甲中隊を島の中心部へ向かわせるよう声をあげた。
避難民を誘導するよう命じている別の将校が早くしろと怒鳴り、もう1人は艦隊にボズゴロフを島に近づけるなと命じている。
「本島防衛線が総崩れです。立て直さなければ全滅します!」
ユウナはこの喧騒の中でおろおろしていたが、そう尋ねてきたソガに向かって逆に叫んだ。
「だったらやってよ! 」
「ですから、その御命令は!?」
しかしユウナは疑り深そうな眼で彼を睨み、指を立てた。
「そんなこと言って、また負けたら…あなたのせいですからね!」
もはや司令本部にはあきれ返った不快な空気しかない。
ザフトの攻撃は軍関係施設のみならず、町の中心部や港にも及んだ。
人々は大慌てでシェルターに向かい、都市部から逃げ、避難船に乗り込んだ。
あの時と、3年前のオーブ危機と全く同じだった。いや、迎撃体制すらとっていない状況は、あの時よりずっと悪かった。
しかも相手は、当時はまだようやくモビルスーツの実戦投入を始めたばかりの地球軍だったが、今回はモビルスーツ戦の錬度の高いザフトが相手なのだ。
いきなり切って落とされた火蓋に、人々はなす術もなく、バビのビームで壊れたビルの瓦礫に潰された。
グフが放ったビームガンに巻き込まれて家が壊れ、車が爆発し、時に人も蒸発してしまった。
一方、予想以上に何の抵抗もない国を焼きながら、ザフト兵たちはそれでも、「ロゴスを…ロード・ジブリールを匿っている国なのだ」と心許ない大義名分を抱き締めながら攻撃を仕掛けていた。
両者にとってどこか腑に落ちない戦場はしかし、ただ犠牲を蓄積していった。
「カガリ、防衛線を立て直さないと総崩れだぞ」
キサカとアマギが一旦アークエンジェルに戻り、キサカは残っていたムラサメ隊をすべて率いてカガリのアカツキと合流していた。アマギはマリューたちと共にアークエンジェルの発進準備を急がせている。
マードックの計らいで、バルトフェルドが残した虎色のムラサメにもナチュラル用OSが載せかえられており、これにキサカが搭乗することになったのだった。
「まずは国防本部を掌握し、戦線を立て直す」
カガリが国防本部の座標をインプットしながら言った。
オノゴロ、本島へと入れば、敵との戦闘は必至となるだろう。
「本島に着いたら、一個小隊は俺と来い。残りは防衛線へ向かえ」
戦いは最低限にしなければならない。
けれど完全に敗北した状態では、プラントとの停戦交渉は難航する。
「とにかく押し戻す!」

「なんだ!?新手か!?」
カガリはバックパックのオオワシに装備されているビーム砲を起こすと、突然現れた見慣れぬモビルスーツに戸惑うグフに向けた。
その強大な砲とライフルが3機同時に彼らを貫き、撃墜した。
「イケヤ!」
「はい!」
「おまえは防衛中のモビルスーツをまとめ、タカミツガタに集結しろ。ゴウはムラサメの一個小隊を連れて、行政府の上空援護に向かえ」
「了解しました!」
「もし連中が命令に従わない場合は、あとで行政府に来いと言え!俺がじきじきに文句を聞いてやる!」
カガリがそう言うと、彼らはどっと笑った。
「文句なんか言わせませんよ!」
「お任せを!」
カガリはビームライフルを振り、それを合図にムラサメが追い越していく。
「ニシザワはキサカと共に俺と来い。戦線を援護しながら国防本部へ向かうぞ」
ザフトもこのアンノウン部隊に気づいていた。
統制が取れておらずどの部隊も面白いように崩れていくので、バビ隊が彼らも同じだろうと悠々とビームを撃ちかけてきたが、虎色のムラサメがアカツキを守り、機動性に勝る数機のムラサメに追いまくられ、ビーム砲とミサイルに狙われて最後は全機撃墜された。
カガリもまたバビやグフにライフルを向け、思ったより見事な腕で次々としとめていったが、それ以上に彼を守ろうとして果敢に戦うムラサメの動きがいい。
ニシザワの指揮により、数機が連携し、ハヤテを数発撃ち込んで追い詰めたところに別働隊からのビームを喰らわせたり、モビルスーツ形態に変形して待ち構え、サーベルで一閃するカオスを倒した時の戦法などを駆使して、コーディネイター相手によく戦っている。無論、こちらのパイロットにもコーディネイターがいるのかもしれないが、それをわざわざ本人に聞くのはオーブでは野暮のきわみだ。
「ドボツ隊被弾。撤退します」
「エリア12、海岸線、押し戻されています」
その報告を聞いて「ん?」とセントへレンズの艦長が振り返った。
こちらの優勢な情報ばかりだったのに、先ほどから少しずつ撤退だの被弾だのという言葉が聞こえてくる。初めはあまり気にもしていなかったのだが、艦長がレーダーを見てみると、確かに一部の戦線が押し返されているような気がしなくもない。
「んー?どうしたというのだ?先ほどまで総崩れだったというのに」
彼が渋い顔をすると、副官も頷いた。
とはいえ、まだほんの一部に過ぎませんよと彼は答えたが、勝利を確信していた司令は不愉快そうにオペレーターに命じた。
「グフをもう二個小隊ほど送ってやれ」
(全く、未だにジブリールを引き渡す気配もなく、悪あがきを…)
腕を組んだ彼はそれをほどくと、制帽をかぶりなおした。
「この国はもういい加減、素直に討たれてほしいものだな」
その時オペレーターが、ジブラルタルから遠路はるばる、驚異的な足でオーブに辿り着いたミネルバの到着を告げた。

「ソガ一佐、沖合上空に新手の友軍部隊が…」
オペレーターの言葉にソガが振り返り、ユウナも驚いてレーダーを見る。
「この識別コードは…タケミカヅチ搭載機のものです」
「なんだと!?」
「ええ!?だってあれは…!」
ユウナが薄気味悪いものでも見るようにそれらのマークを見た。
さらにオペレーターは続けた。
「加えてアンノウンモビルスーツ1。ムラサメと共にこちらへ向かってきます」
「光学映像、出ます!」
通信士がジャマーを取り払うと、やがてモニターには黄金のモビルスーツが現れた。
「な、なんなの、あれは!?」
ユウナがその光り輝くモビルスーツを見て呆気に取られて叫んだ。 ソガとて驚きは同じである。
だがその時、通信が入った。
「俺はウズミ・ナラ・アスハの子、カガリ・ユラ・アスハだ」
「ええっ!?」
ユウナもソガも、国軍本部にいた誰もが息を呑んだ。
「国防本部、聞こえるか?指揮官と話したい。指揮官を出せ!」
カガリは厳しい声音で命じた。
ソガたちは思わずユウナを見る。
今ここで、カガリに次ぐ地位にいるのは彼女だ。
そのユウナはモニターの黄金のモビルスーツを見て、信じられないという顔をしていた。
(カッ…カガリですって!?一体なぜ…どこから!?)
ユウナはインカムをつけるとためらいながら聞いた。
「…カガリ!?本当にカガリなの?」
「…ユウナ?ユウナ・ロマ・セイランか!?」
その途端、本部では「おおっ!」ため息が漏れた。
「やはりカガリ様だ」
「若様が帰ってこられたんだ!」
「カガリ…あなた…いえ、待って…待ってちょうだい」
ユウナは動揺を隠せず、一度話を切るとすぅっと息を吸った。
(落ち着いて…落ち着きなさい、ユウナ・ロマ)
なぜカガリが今になって…見れば、モニターの向こうには確かにオーブ軍のパイロットスーツを身につけたカガリがいた。琥珀色の瞳は見間違うはずもない。
それは確かに、生意気で小憎たらしい幼馴染のものだった。
(今頃…あんなものに乗って…ヒーローにでもなったつもりなの!?)
アカツキを睨みつけながらユウナはギリッと唇を噛んだ。
(今日まで国を守ってきたのはセイランよ!あんたじゃないわ、カガリ!)
既に父からはセイラン派と共に、本島にあるセイラン家の頑丈なシェルターに隠れているとの連絡が入っている。
ジブリールを置いて行政府に向かったはいいが、マスコミや市民がたかっており、入れなかったという。
「おまえも早く来なさい」とさっきから何度も連絡が入っていた。
(いえ、むしろこんな時だからこそ…)
動揺を鎮めようと、ユウナはチラリと戦況図を見た。
見ている間に、大慌てで立てた防衛線が崩れていく。
本島にはモビルスーツが入り込み、ムラサメ隊がそれだけはと必死に守ってはいるものの、グフやバビの連隊が行政府まで迫っている。
オーブ艦隊もグーンやゾノ、アッシュといった、オーブが海洋国家であることを鑑みて多くつぎ込まれている水中用モビルスーツに襲われ、思うように迎撃ができていない。しかもボズゴロフからはディンやバビが次々と出撃し、護衛艦に取り付いて撃沈していくのだ。
人々は傷つき、街は破壊されている。
冷静な人間が見れば、たかが民間人のジブリールの確保に、ここまでの徹底的な破壊と攻撃が必要なのかと言うだろう。
激しい攻撃を受け、オーブの被害は時間と共に拡大してきていた。
こちらの旗色は悪く、一刻も早い戦闘停止…すなわち「降伏」が不可欠だった。
ユウナはニヤリと笑った。
(なら、カガリの帰還は好都合じゃないの)
カガリは再びユウナに呼びかけた。
「俺をオーブ首長国連邦代表首長、カガリ・ユラ・アスハと認めるか?」
「いいえ。認められません」
「なっ…!?」
思いもかけないユウナの回答に、カガリは言葉を失った。
モニターの中のユウナは、少し前までの動揺などおくびにも出さず、冷静そのものに見えた。逆に背後の司令本部では驚きとざわめきが起こっている。
「バカな事を言うな!」
「ならば、国防本部へおいでください」
ユウナは冷たく言い放ち、カガリは「きさま…」と鼻白んだが、どちらにせよ実際に会えば自分を認めざるをえまいと考え直した。
「いいだろう。おまえ自身がそこで確認するというのだな?」
「ええ、私が確認しますわ」
カガリは怒りを抑えながら「約束したぞ」と言ったが、ふふんと笑ったユウナが続けた言葉には仰天させられた。
「あなたが、本物の私の夫かどうかをね!」
「…はぁ!?」
カガリは思わず身を乗り出したが、既に通信は切られていた。
「バッ…おいっ、ユウナッ!ユウナッ!くそっ!」
「カガリ…」
通信を聞いていたキサカがやや気の毒そうに声をかけると、カガリは怒鳴った。
「冗談じゃない!そんな…そんなもんは絶対に認めさせるか!」
ユウナのこの狡猾で慎重な言葉にソガたちはちっと舌打ちしたが、それでもカガリがくれば全軍の指揮はカガリに移る。
それまで、もう少しの辛抱だ…司令本部は歓びに沸き、ユウナがいつの間にか席を外した事には気づかなかった。

「ジブリールは見つかったのか?」
一方ミネルバでは、到着後すぐに出撃があるかもしれないとシンたち3人はパイロットルームで待機していた。オーブに近づくにつれシンの苛立ちは募ったが、レイはいつも通り答えた。
「まだ見つからない。なかなか頑固に抵抗されているようだ」
「くそ!」
シンは拳を掌に打ちつけた。
(オーブがジブリールを匿い、守って戦うなんて…いくら理念を忘れた愚かな国とはいえ、そこまでバカな真似をするだろうか?)
シンが引っかかるのはそこだった。
オーブを見捨てたとはいえ、それでもあの国の本質を一番知るのはシンだ。彼の中にあるオーブに対する矛盾が、二律背反が疑念を抱かせた。考えたくないのは、国民の与り知らぬところで全てが動いているのでは…という懸念だった。少なくとも3年前は、ウズミもホムラも事態を国民に詳らかにしていたからだ。
「初手から3機出ることもない。俺だけでいいだろう」
レイがヘルメットを取ると、シンがそれを遮るように先に立って歩き出した。
「俺が出る」
それを聞いてルナマリアは驚き、慌ててシンに駆け寄った。
「シン、でも…」
「ああ、やめておけ」
レイは珍しくシンを止め、ルナマリアに聞こえないよう小さな声で囁いた。
「オーブも、おまえにとってのアスランになる」
「…」
シンは先日の悪夢に苦しんだことを、レイはその時の彼の様子を思い出して、互いに気まずい空気が流れた。
「いや、俺が行く!」
けれどシンはそれを吹っ切るようにエレベーターのボタンを乱暴に押した。
「だって、オーブは…あなたの国じゃない!」
背中に投げかけられたルナマリアの言葉にシンがピクリと反応し、レイはチラリと彼女を見た。
「俺の故郷は…プラントだ」
「嘘よ!」
ルナマリアがシンの正面に廻って懇願した。
「シン、お願い。ここはレイに任せて?」
ディオキアでシンの重い症状を目の当たりにしたルナマリアは心配していた。
(シンがあんなに深い傷を負ったオーブで戦ったりして、もし…もしもまた、あんな症状が出たりしたら…)
「俺は大丈夫だよ」
シンが心配そうな顔をするルナマリアを覗き込み、いつものように笑った。
「それに…」
その笑顔から一転、シンは厳しい顔つきで、モニターに映し出される見慣れた島影を睨みつけた。
「オーブを討つなら…俺が討つ!」

「え!?シンが?」
艦長はレイからの通信に驚きを隠せなかった。
「いやぁ、でも彼は…」
アーサーもまたそれを聞いて戸惑いを隠せない。
「オーブ出身だろう?いくらなんでも祖国を自らの手で攻撃するなんて…」
「本人が志願しました」
心配する彼らに、レイはこの出撃はFAITH権限である事を告げて黙らせる。
タリアもまた、彼らに命令する権限を持たなかった。
(シン…)
「ありがとう、ルナ。行ってくる」
そう言って笑ったシンを思い出しながら、ルナマリアはふと表情を曇らせた。そして刻々と伝えられる戦況を聞きながら、祈るように眼を閉じた。
(あなたが祖国を討つなんて…そんなの、やっぱりいけない気がする)
「デスティニー発進スタンバイ。全システムの起動を確認しました。発進シークエンスを開始します。ハッチ開放。カタパルトオンライン。針路クリアー。デスティニー、発進どうぞ!」
アビー・ウィンザーの声がデスティニーの発進を告げる。
(オーブ…俺たちを守ってくれなかった国。俺から全てを奪った国)
シンは発進シークエンスを終えてふうと息をついた。 
(理念すら忘れ、国民を守ることを忘れ、ロゴスなどを守るというのなら、もはやこの国に存在する意義も意味もない)
「シン・アスカ、デスティニー、行きます!」
その無様な姿をこれ以上晒さずに済むよう、俺の手で滅ぼしてやる!

「なんだ!?」
周囲の警戒を厳にしていた警戒役のムラサメが、信じられない速さで近づいてくるモビルスーツに気づき、仲間たちにアラートを流した。
「カガリ様、お気をつけください!ザフトの新手が」
ニシザワがカガリの前に立つ。
「あれは…!」
カガリがデスティニーを視認して唇を噛む。
「ジブラルタルの…カガリ、気をつけろ。こいつは手ごわいぞ」
キサカが警告したが、カガリは何も言わず、ただ一歩前に出た。
一方デスティニーは素晴らしいスピードで戦場に到達すると、相変わらず巧みなスラスター操作でアカツキの前に立ちはだかる。
因縁深き両者がついに、互いを倒すべき敵として相見えた瞬間だった。

「おいおい!」
ネオがふと、扉が開いている廊下に眼をやって驚いた。
アスランが壁伝いによたよたと歩いていたからだ。
「何やってんだ、べっぴんさん!」
「アスランさん!?」
その声に驚いたメイリンが飛び起きて廊下に向かうと、よろめいたアスランを支えた。
「大丈夫ですか?」
「そんなんでじたばたしたってしょうがないだろう?」
ネオも病室から声をかけた。
「なぁ、大人しく寝てろって」
「でも…行かなくちゃ…」
メイリンは再び歩き出そうとするアスランを見ておろおろするばかりだ。

(たとえ今、何もできなくても…私は、行かなくちゃ…)
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secret
制作裏話-PHASE41②-
後半は戦闘が激しくなり、カガリがいてもたってもいられなくなります。カガリが行政府に戻っていないのは、周囲の反対、特にキラの説明を受けて説得されたキサカが反対するからとしています。

本編ではこれがおかしいんですよね…だってカガリが戻らない理由ってないでしょう。フィクションなんだから、もっと誰にでもわかりやすい、逆転のように「殺されかけたから」という理由でいいと思うんですよね。しかもこのオリジナル設定(ユウナがカガリを疎んじ、あわよくば殺して権力を奪おうと画策している)のおかげで、だからこそキサカもアカツキを準備し、カガリが力ある者として国に帰還できるよう整えたとできましたしね。

キサカがカガリを止めようとして言う、「力なきまま戻っても仕方がない」というのは私の創作ですが、カガリ殺しという伏線以外にもこういうセリフを散りばめておけば、アカツキの唐突な登場を少しは緩和でき、ウズミの遺言を解くきっかけにすることができたのではと思うのです。

とにかくこのPHASEで一番書きたかったのが、ウズミの遺産を受け取り、自分の目指すもの、自分がすべき事をはっきりと認識するカガリ・ユラ・アスハでした。
本編ではこの期に及んでびーびー泣くばかりだったカガリに心底ゲンナリしたので、とにかく逆転では「カガリは明るさと前向きさを見失わず、愚かで未熟だけれど、自分なりの考えを持って必死に立とうとする」キャラクターにしたかったのです。
道を見出したカガリには、自分同様、形は違えど3年前のオーブ戦という過去に囚われ続けているシンに、「先に行くぞ!」と言わせたかったのです。だってカガリにしか言えないじゃないですか、この言葉は。 アスランでもキラでもダメ。これだけはカガリじゃないと決着がつかないんですよ。

だからカガリはオーブは中立国ではあるけれど、戦わない国ではないとはっきりと言います。守るためなら全力で戦うのです。傷ついても、失っても、譲れないものがある時は血を流さなければならない…そして何より、そんな悲劇を引き起こさないように、血の滲むような政治的努力をする事こそが大切だと学んでいくわけです。人々が戦いのことなど完全に忘れ、安穏と暮らしている平和な時代こそが、政治家にとっては何よりも大切で、命懸けで戦うべき時代、ということですね。

このPHASEも書き込んだ部分以外はさほど大きく変えたわけではなく、他はひたすら侵攻されるオーブの様子を描くばかりです。ウナト妻は果敢に抗議しましたが、ジブリールがとっとと逃げ出した屋敷はあっという間に灰になってしまいます。夫も子も死んでしまった彼女のその後は本編では明かされませんでした。

ユウナとソガの陰険な一騎打ちのあと、いよいよカガリが国防本部に通信を入れます。
ここは本編とは真逆の展開になります。本編では切羽詰ったユウナが「僕の女神ぃ~~ん」と「野島さん、やり過ぎだ」というバカ殿演技を見せ、ソガにぶん殴られて拘束されますが、逆転ではユウナは悪女設定なのでもう少しひねりを効かせてみました。

すなわち、カガリを本物とは認めないと言い張り、確認のため国防本部に来るよう伝えて首実検を行おうとするのです。けれどこれが彼女の策略であり、ただの時間稼ぎだった事は、次のPHASEで明かされます。

カガリは自分を認めないこの申し出に怒りを禁じえませんが、しぶしぶ承知します。そんな彼にユウナが「夫」かどうかも確認すると言い放つのですからたまりません。せっかくアスランと仲直りしたのに、以前チラッと心配していたように、あの結婚が有効では困りますからね。

さて一方、祖国を討つことになるシンの出撃も迫っています。3年前の傷がうずく中、シンはレイやルナマリアが止めるのも聞かず、自分がオーブに引導を渡すのだという悲壮な使命感すら持っています。

そして両者はついに戦場で相対します。
クレタで出会った時とは違い、今度は完全に互いが対立する者として対決するのです。命を削って意地と意地、主張と主張をぶつけあいます。このためにこそ、PHASE3があり、PHASE5があったというのは過言ではないと思うのに、本編では全くもって、何一つ生かされることはありませんでした。
本編にしろ、フワフワと優しいキャラが多い中、珍しく気の強いシンとカガリはガチンコしてこそ、だと思うんですけどね。(強気キャラといえばあとはイザークと序盤~中盤のフレイさんくらいかな)

しかも本編ではここで次回総集編って、制作陣はキチガイとしか思えない。

なお逆転ではラストを創作して、次回重傷を押してブリッジに入り、ジャスティスを前に逡巡する事になるアスランが、この事態を憂い、よろめきながら病室を出るシーンを描きました。
になにな(筆者) 2012/01/25(Wed)00:12:07 編集
Natural or Cordinater?
サブタイトル

お知らせ
PHASE0 はじめに
PHASE1-1 怒れる瞳①
PHASE1-2 怒れる瞳②
PHASE1-3 怒れる瞳③
PHASE2 戦いを呼ぶもの
PHASE3 予兆の砲火
PHASE4 星屑の戦場
PHASE5 癒えぬ傷痕
PHASE6 世界の終わる時
PHASE7 混迷の大地
PHASE8 ジャンクション
PHASE9 驕れる牙
PHASE10 父の呪縛
PHASE11 選びし道
PHASE12 血に染まる海
PHASE13 よみがえる翼
PHASE14 明日への出航
PHASE15 戦場への帰還
PHASE16 インド洋の死闘
PHASE17 戦士の条件
PHASE18 ローエングリンを討て!
PHASE19 見えない真実
PHASE20 PAST
PHASE21 さまよう眸
PHASE22 蒼天の剣
PHASE23 戦火の蔭
PHASE24 すれちがう視線
PHASE25 罪の在処
PHASE26 約束
PHASE27 届かぬ想い
PHASE28 残る命散る命
PHASE29 FATES
PHASE30 刹那の夢
PHASE31 明けない夜
PHASE32 ステラ
PHASE33 示される世界
PHASE34 悪夢
PHASE35 混沌の先に
PHASE36-1 アスラン脱走①
PHASE36-2 アスラン脱走②
PHASE37-1 雷鳴の闇①
PHASE37-2 雷鳴の闇②
PHASE38 新しき旗
PHASE39-1 天空のキラ①
PHASE39-2 天空のキラ②
PHASE40 リフレイン
(原題:黄金の意志)
PHASE41-1 黄金の意志①
(原題:リフレイン)
PHASE41-2 黄金の意志②
(原題:リフレイン)
PHASE42-1 自由と正義と①
PHASE42-2 自由と正義と②
PHASE43-1 反撃の声①
PHASE43-2 反撃の声②
PHASE44-1 二人のラクス①
PHASE44-2 二人のラクス②
PHASE45-1 変革の序曲①
PHASE45-2 変革の序曲②
PHASE46-1 真実の歌①
PHASE46-2 真実の歌②
PHASE47 ミーア
PHASE48-1 新世界へ①
PHASE48-2 新世界へ②
PHASE49-1 レイ①
PHASE49-2 レイ②
PHASE50-1 最後の力①
PHASE50-2 最後の力②
PHASE50-3 最後の力③
PHASE50-4 最後の力④
PHASE50-5 最後の力⑤
PHASE50-6 最後の力⑥
PHASE50-7 最後の力⑦
PHASE50-8 最後の力⑧
FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開

制作裏話-はじめに-
制作裏話-PHASE1①-
制作裏話-PHASE1②-
制作裏話-PHASE1③-
制作裏話-PHASE2-
制作裏話-PHASE3-
制作裏話-PHASE4-
制作裏話-PHASE5-
制作裏話-PHASE6-
制作裏話-PHASE7-
制作裏話-PHASE8-
制作裏話-PHASE9-
制作裏話-PHASE10-
制作裏話-PHASE11-
制作裏話-PHASE12-
制作裏話-PHASE13-
制作裏話-PHASE14-
制作裏話-PHASE15-
制作裏話-PHASE16-
制作裏話-PHASE17-
制作裏話-PHASE18-
制作裏話-PHASE19-
制作裏話-PHASE20-
制作裏話-PHASE21-
制作裏話-PHASE22-
制作裏話-PHASE23-
制作裏話-PHASE24-
制作裏話-PHASE25-
制作裏話-PHASE26-
制作裏話-PHASE27-
制作裏話-PHASE28-
制作裏話-PHASE29-
制作裏話-PHASE30-
制作裏話-PHASE31-
制作裏話-PHASE32-
制作裏話-PHASE33-
制作裏話-PHASE34-
制作裏話-PHASE35-
制作裏話-PHASE36①-
制作裏話-PHASE36②-
制作裏話-PHASE37①-
制作裏話-PHASE37②-
制作裏話-PHASE38-
制作裏話-PHASE39①-
制作裏話-PHASE39②-
制作裏話-PHASE40-
制作裏話-PHASE41①-
制作裏話-PHASE41②-
制作裏話-PHASE42①-
制作裏話-PHASE42②-
制作裏話-PHASE43①-
制作裏話-PHASE43②-
制作裏話-PHASE44①-
制作裏話-PHASE44②-
制作裏話-PHASE45①-
制作裏話-PHASE45②-
制作裏話-PHASE46①-
制作裏話-PHASE46②-
制作裏話-PHASE47-
制作裏話-PHASE48①-
制作裏話-PHASE48②-
制作裏話-PHASE49①-
制作裏話-PHASE49②-
制作裏話-PHASE50①-
制作裏話-PHASE50②-
制作裏話-PHASE50③-
制作裏話-PHASE50④-
制作裏話-PHASE50⑤-
制作裏話-PHASE50⑥-
制作裏話-PHASE50⑦-
制作裏話-PHASE50⑧-
2011/5/22~2012/9/12
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