機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
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本島に入り込んだグフやバビ、ザクの攻撃がますます激しくなる中、ウナトは自分の息がかかった首長たちと共にセイラン家が持っているシェルターに隠れていた。政府が建造したものより強度が高いので、何かあった時は海底に掘らせたこちらに逃げ込む事にしていたのだ。
屋敷のジブリールとは連絡が取れていないが、何かあったら2区の格納庫にシャトルを準備させていると説明してある。
モニターに映るオーブの状況はますます悪くなるばかりだ。
もう今さら行政府に戻ったところで、責任を問われるだけで何もいいことなどありはしない。
彼らはこのままここに隠れ続け、時機を見て2区からジブリールと共に月に向かう予定だった。
(それにしても遅い)
ウナトはチラリと腕時計を見た。
何度も連絡を入れているのだが、返事もなければ来る様子もない。
(何をしているのだ、ユウナは…)
その時だった。
突然轟音が聞こえてきたと思うと、頑丈なシェルターが凄まじく揺れ始めた。
ウナトは驚き、他の首長や高官たちも立ち上がって辺りを見回した。
音はますます大きくなり、振動もさらに激しくなっていく。やがて破壊音と共に、壁にぼこっと穴が開いた。現れたのは地底用グーンだった。
海底からの魚雷攻撃には十分耐えられる位置に作ってあったシェルターに、まさか掘削によってモビルスーツが到達するとは…しかしそう考えたのは、戦闘が終了した後、このシェルターの残骸を発見したオーブ軍であり、実際にグーンに襲われたウナトではない。
なぜなら彼らは、グーンが突入したその瞬間に瓦礫の下敷きとなってほとんどの者が一瞬で圧死し、それを免れた者も、グーンが連れてきた大量の海水に飲み込まれてあっという間に水死したからである。
屋敷のジブリールとは連絡が取れていないが、何かあったら2区の格納庫にシャトルを準備させていると説明してある。
モニターに映るオーブの状況はますます悪くなるばかりだ。
もう今さら行政府に戻ったところで、責任を問われるだけで何もいいことなどありはしない。
彼らはこのままここに隠れ続け、時機を見て2区からジブリールと共に月に向かう予定だった。
(それにしても遅い)
ウナトはチラリと腕時計を見た。
何度も連絡を入れているのだが、返事もなければ来る様子もない。
(何をしているのだ、ユウナは…)
その時だった。
突然轟音が聞こえてきたと思うと、頑丈なシェルターが凄まじく揺れ始めた。
ウナトは驚き、他の首長や高官たちも立ち上がって辺りを見回した。
音はますます大きくなり、振動もさらに激しくなっていく。やがて破壊音と共に、壁にぼこっと穴が開いた。現れたのは地底用グーンだった。
海底からの魚雷攻撃には十分耐えられる位置に作ってあったシェルターに、まさか掘削によってモビルスーツが到達するとは…しかしそう考えたのは、戦闘が終了した後、このシェルターの残骸を発見したオーブ軍であり、実際にグーンに襲われたウナトではない。
なぜなら彼らは、グーンが突入したその瞬間に瓦礫の下敷きとなってほとんどの者が一瞬で圧死し、それを免れた者も、グーンが連れてきた大量の海水に飲み込まれてあっという間に水死したからである。
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「私は…」
アスランはそのままジャスティスを見上げている。
(ラクス様とアスランさんの話は、僕にはよくわからないけど…)
メイリンはそんな彼女を心配そうに見つめていた。
(でも、もしあんな体でモビルスーツに乗ったりしたら…しかも、相手がシンだったら…)
メイリンは自分たちを躊躇なく攻撃したデスティニーを思い出し、背筋が寒くなった。
味方なら誰よりも頼もしいシンが、あんなに恐ろしいと思えるなんて…いつものシンは口は悪いけれど根っこは優しくて、だらしないところもあるけど喧嘩の強い兄貴みたいで、メイリンは友人として彼のことがとても好きだった。
「アスランさ…」
不安のあまり、思わず踏み出そうとしたメイリンをラクスが止めた。
優しい微笑を湛え、彼は唇に指を立てて静かに、とサインを出す。
やがてアスランが振り向いた。透き通るように美しい碧眼が、ラクスを見つめている。
それから、彼女はゆっくり歩き出した。
アスランはそのままジャスティスを見上げている。
(ラクス様とアスランさんの話は、僕にはよくわからないけど…)
メイリンはそんな彼女を心配そうに見つめていた。
(でも、もしあんな体でモビルスーツに乗ったりしたら…しかも、相手がシンだったら…)
メイリンは自分たちを躊躇なく攻撃したデスティニーを思い出し、背筋が寒くなった。
味方なら誰よりも頼もしいシンが、あんなに恐ろしいと思えるなんて…いつものシンは口は悪いけれど根っこは優しくて、だらしないところもあるけど喧嘩の強い兄貴みたいで、メイリンは友人として彼のことがとても好きだった。
「アスランさ…」
不安のあまり、思わず踏み出そうとしたメイリンをラクスが止めた。
優しい微笑を湛え、彼は唇に指を立てて静かに、とサインを出す。
やがてアスランが振り向いた。透き通るように美しい碧眼が、ラクスを見つめている。
それから、彼女はゆっくり歩き出した。
潜航したアークエンジェルは、沖合いに展開しているボズゴロフ級や地球軍艦艇を魚雷とバリアントを使って次々に撃沈していった。
相手の魚雷など、水中でも足の速いアークエンジェルとノイマンの敵ではない。回避を続けながら元々海軍士官のアマギが見事に艦艇を撃破していった。
かつて紅海で苦しめられたグーンやゾノが襲い掛かってくるが、既に戦況はオーブに傾きつつあった。
「司令、状況は我が軍に不利です。一時撤退を」
上空から次々と沈められていく艦艇を見て、タリアは旗艦に連絡を入れた。
圧倒的有利だったザフト・地球連合軍が、今は逆に総崩れに陥っている。
頼みの綱のデスティニーとレジェンドも、フリーダムとアンノウンに阻まれて戦局をひっくり返すことができていない。デスティニーはダメージを受けているとの報告も入っている。
相手の魚雷など、水中でも足の速いアークエンジェルとノイマンの敵ではない。回避を続けながら元々海軍士官のアマギが見事に艦艇を撃破していった。
かつて紅海で苦しめられたグーンやゾノが襲い掛かってくるが、既に戦況はオーブに傾きつつあった。
「司令、状況は我が軍に不利です。一時撤退を」
上空から次々と沈められていく艦艇を見て、タリアは旗艦に連絡を入れた。
圧倒的有利だったザフト・地球連合軍が、今は逆に総崩れに陥っている。
頼みの綱のデスティニーとレジェンドも、フリーダムとアンノウンに阻まれて戦局をひっくり返すことができていない。デスティニーはダメージを受けているとの報告も入っている。
「僕と同じ顔、同じ声、同じ名前の方が、デュランダル議長と共にいることは知っています」
ラクス・クラインは真っ直ぐ前を向いたまま言った。
彼はあくまでも柔和な笑みを湛えており、シンは初めて見る「本物の」ラクス・クラインの様子を鋭い眼で観察していた。
シンがデータで見たのは当然、今から3年以上前の彼だったから、今の彼は当時より大分大人びており、男性としての精悍さも増している。
しかし、ワイプの中でこの事態に驚きを隠せず、おどおどしている偽者と比べれば、その落ち着き、立ち居振る舞い、柔和ながら隙のない雰囲気、何より人を圧倒する存在感は桁違いに思えた。
(誰がどう見たって本物はこっちだ…)
シンはため息をついた。
ラクス・クラインは真っ直ぐ前を向いたまま言った。
彼はあくまでも柔和な笑みを湛えており、シンは初めて見る「本物の」ラクス・クラインの様子を鋭い眼で観察していた。
シンがデータで見たのは当然、今から3年以上前の彼だったから、今の彼は当時より大分大人びており、男性としての精悍さも増している。
しかし、ワイプの中でこの事態に驚きを隠せず、おどおどしている偽者と比べれば、その落ち着き、立ち居振る舞い、柔和ながら隙のない雰囲気、何より人を圧倒する存在感は桁違いに思えた。
(誰がどう見たって本物はこっちだ…)
シンはため息をついた。
「ヤヌアリウス、1から4、直撃。ディセンベル7、8、ヤヌアリウス4の衝突により崩壊」
「ヤヌアリウスだと!?」
ジブリールはその報告を聞いて心外だという顔をした。
照準を命じた司令官もまた詳細を報告するよう求めた。
「グノーの射角が計算外にずれたようです。戦闘の影響かと思われますが…」
ジブリールはそれを聞いて忌々しそうに拳を振り下ろした。
「アプリリウスを撃ち損じるとは!ザフトめ!」
「ヤヌアリウスだと!?」
ジブリールはその報告を聞いて心外だという顔をした。
照準を命じた司令官もまた詳細を報告するよう求めた。
「グノーの射角が計算外にずれたようです。戦闘の影響かと思われますが…」
ジブリールはそれを聞いて忌々しそうに拳を振り下ろした。
「アプリリウスを撃ち損じるとは!ザフトめ!」
ヤヌアリウスとディセンベルを襲った悲劇がプラント全域に知れるのは時間の問題だった。
人々は当然ながら恐れおののいた。ユニウスセブンの悲劇が思い出され、自分たちが生を営むこの頼りない砂時計がいかにもろいかを再認識し、逃げ場のないことに絶望が走った。
「落ち着いてください!慌てずに!」
「馬鹿を言うな!まだ奴らの攻撃が終わったわけじゃないんだろ?」
市内の各所では治安のためにザフト兵が配備されたが、恐慌に陥った人々の流れは止まらない。けれど一体どこへ逃げようというのか…崖に向かうレミングのように、人々はただ言われるままに歩くばかりだ。
「いきなり撃ってくるなんて…」
「どこへ行けばいいんです?」
宇宙港は逃げ出す人々とシャトルでごった返し、行き先のない人々は気休めのシェルターにこもり、かつてユニウスセブンが落下した時、地球の辺境に住む多くの人々がそうだったように、プラントでももう逃げないと諦める人も多かった。
人々は当然ながら恐れおののいた。ユニウスセブンの悲劇が思い出され、自分たちが生を営むこの頼りない砂時計がいかにもろいかを再認識し、逃げ場のないことに絶望が走った。
「落ち着いてください!慌てずに!」
「馬鹿を言うな!まだ奴らの攻撃が終わったわけじゃないんだろ?」
市内の各所では治安のためにザフト兵が配備されたが、恐慌に陥った人々の流れは止まらない。けれど一体どこへ逃げようというのか…崖に向かうレミングのように、人々はただ言われるままに歩くばかりだ。
「いきなり撃ってくるなんて…」
「どこへ行けばいいんです?」
宇宙港は逃げ出す人々とシャトルでごった返し、行き先のない人々は気休めのシェルターにこもり、かつてユニウスセブンが落下した時、地球の辺境に住む多くの人々がそうだったように、プラントでももう逃げないと諦める人も多かった。
「何だ!?」
その時、ミネルバのタンホイザーを受け止めたゲルズゲーと共に基地の防衛にあたっていたウィンダムが、ミネルバより先行して戦っているデスティニーやレジェンドとは別の方向から熱源が接近する事に気づいた。ウィンダムが警戒を強めて月面を離れる。
「別働隊か!?」
(気づかれた…!)
ルナマリアは山陰から飛び出すとライフルを抜き、シールドを構えた。
「ええい!」
向かってくるウィンダムと交戦しながら、ルナマリアは発射口の位置を探る。
(ここを突破すれば、射出口まであと少し…!)
レーダーには友軍であるミネルバ、レイのレジェンドがマークされ、シンのデスティニーが思った以上にすぐ近くで戦っている事がわかる。
今、シンに助けを求めればきっとすぐに駆けつけてくれるだろう。
(だめよ、シンに頼っちゃ…)
ウィンダムを1機破壊したルナマリアは、ケルベロスを起こして放つ。
「この任務は、私がやり遂げるんだから!」
その時、ミネルバのタンホイザーを受け止めたゲルズゲーと共に基地の防衛にあたっていたウィンダムが、ミネルバより先行して戦っているデスティニーやレジェンドとは別の方向から熱源が接近する事に気づいた。ウィンダムが警戒を強めて月面を離れる。
「別働隊か!?」
(気づかれた…!)
ルナマリアは山陰から飛び出すとライフルを抜き、シールドを構えた。
「ええい!」
向かってくるウィンダムと交戦しながら、ルナマリアは発射口の位置を探る。
(ここを突破すれば、射出口まであと少し…!)
レーダーには友軍であるミネルバ、レイのレジェンドがマークされ、シンのデスティニーが思った以上にすぐ近くで戦っている事がわかる。
今、シンに助けを求めればきっとすぐに駆けつけてくれるだろう。
(だめよ、シンに頼っちゃ…)
ウィンダムを1機破壊したルナマリアは、ケルベロスを起こして放つ。
「この任務は、私がやり遂げるんだから!」
制圧したダイダロス基地に停泊したミネルバは、事後処理のために向かわされる部隊に現場を引き継ぐため、まだ警戒態勢が解けない。
シンたちは交替で休憩を取りながらミネルバの警護にあたっている。
フォーレの近くに停泊したゴンドワナを眺めながら、シンは周囲のレーダーを確認していた。
視認できる範囲にも、モビルスーツやモビルアーマーの残骸が、月の重力に引かれて月面に散乱している。
(今度こそ、ロゴスはいなくなった)
プラントを脅かした「極悪人」ジブリールはついに討たれ、これによって戦争は完全に終結したと言える。
(これで…本当にこれで、平和に…)
けれどシンの心はいまひとつ晴れなかった。
戦いを終えるため、平和な世界のために戦うと議長が宣言して以来、ヘブンズベース、オーブ、そしてダイダロスと戦いに次ぐ戦いばかりだ。
さらにはフリーダムが蘇り、生きていたアスランもジャスティスという新たな機体に乗り込み、そしてラクス・クラインは「議長を支持しない」と宣言した。
オーブとは国交が正常化していないので、敵対の可能性はまだ残っている。
シンはアスランの、カガリの声を思い出して苦しそうな表情を浮かべた。
「でも、それは本当にあなたが望んだこと!?」
(裏切り者のおまえなんかに、俺が望んでいる事がわかるのか…)
「いつまでも後ろを見るな、シン!俺はもう前に進むぞ!」
(失った過去を忘れろと…俺に、おまえの罪を忘れろと言うのか、アスハ!)
「くそっ…!」
目的を果たすために戦うことを嫌だとは思わない…でも…だけど…
シンはデスティニーのシフトレバーを力いっぱい握り締めた。
まるでそれが、これから先の自分の運命を左右するかのように。
シンたちは交替で休憩を取りながらミネルバの警護にあたっている。
フォーレの近くに停泊したゴンドワナを眺めながら、シンは周囲のレーダーを確認していた。
視認できる範囲にも、モビルスーツやモビルアーマーの残骸が、月の重力に引かれて月面に散乱している。
(今度こそ、ロゴスはいなくなった)
プラントを脅かした「極悪人」ジブリールはついに討たれ、これによって戦争は完全に終結したと言える。
(これで…本当にこれで、平和に…)
けれどシンの心はいまひとつ晴れなかった。
戦いを終えるため、平和な世界のために戦うと議長が宣言して以来、ヘブンズベース、オーブ、そしてダイダロスと戦いに次ぐ戦いばかりだ。
さらにはフリーダムが蘇り、生きていたアスランもジャスティスという新たな機体に乗り込み、そしてラクス・クラインは「議長を支持しない」と宣言した。
オーブとは国交が正常化していないので、敵対の可能性はまだ残っている。
シンはアスランの、カガリの声を思い出して苦しそうな表情を浮かべた。
「でも、それは本当にあなたが望んだこと!?」
(裏切り者のおまえなんかに、俺が望んでいる事がわかるのか…)
「いつまでも後ろを見るな、シン!俺はもう前に進むぞ!」
(失った過去を忘れろと…俺に、おまえの罪を忘れろと言うのか、アスハ!)
「くそっ…!」
目的を果たすために戦うことを嫌だとは思わない…でも…だけど…
シンはデスティニーのシフトレバーを力いっぱい握り締めた。
まるでそれが、これから先の自分の運命を左右するかのように。
やがてラクスが時計を見て、そろそろ行こうかと言う。
「どこへ?」
「目抜き通りを少し歩こう」
アスランは危険だからダメだと言ったが、ラクスは取り合わない。
「待って、ラクス!」
「うん。はぐれないように腕を組む?」
それを聞いたアスランが「バカ言わないで」とまた怒っている。
「…大変だね、アスランも」
「本当に」
キラとメイリンはラクスに振り回されるアスランを見ながらしみじみ言った。
「僕、彼らこそプラント理想の2人と聞かされてました」
「私もそう思ってた」
でも、ねぇ…と視線を交わして2人は苦笑しあった。
「現実って、こんなものだよね」
「どこへ?」
「目抜き通りを少し歩こう」
アスランは危険だからダメだと言ったが、ラクスは取り合わない。
「待って、ラクス!」
「うん。はぐれないように腕を組む?」
それを聞いたアスランが「バカ言わないで」とまた怒っている。
「…大変だね、アスランも」
「本当に」
キラとメイリンはラクスに振り回されるアスランを見ながらしみじみ言った。
「僕、彼らこそプラント理想の2人と聞かされてました」
「私もそう思ってた」
でも、ねぇ…と視線を交わして2人は苦笑しあった。
「現実って、こんなものだよね」
「…はい、そうです。このままアークエンジェルに運んでください」
キラはミーアをストレッチャーに乗せた兵にそう言うと、ダコスタが用意してくれた白い布を彼の遺体にかけてやった。
それからいつまでも動けずにいるアスランとラクスを促し、メイリンに、彼らを乗せるため正面玄関に車を回すよう頼んだ。
しかし次の瞬間、2人はアスランの「ラクス!」という声で振り返った。
見れば倒れこんだラクスを抱え、アスランも膝をついている。
消耗が激しかったのか、ラクスはひどく熱を出していた。
キラはアークエンジェルに連絡を入れてすぐに医療班を待機させ、ネオがアカツキのコックピットに彼を乗せて飛び去った。
誰もが言葉少なく、誰もが何とも言えない重苦しさで一杯だった。
「ラクスくんを庇って?」
ミーアの遺体を安置させると、マリューはキラたちから今回の事件のいきさつを聞いた。ネオは後味が悪そうに呟く。
「ああ。あいつだけが気づいたんだな。飛び出して…」
俺がもう少し早く気づいていればとネオがため息をつくと、マリューは慰めるように彼の肩を叩き、それからキラに訊ねた。
「それで、ラクスくんは?」
「熱が高くて…久しぶりの外出に銃撃戦ですから、かなり疲れたんだと思います」
キラがメイリンと目配せしながら答えた。
アスランはあれ以来、つききりでラクスを看ている。
(こんな時にプラントに動きがあるなんて…)
重苦しい雰囲気の中で、ミリアリアはモニターを見つめた。
ニュースでは先ほどからしきりに、じきにプラント最高評議会議長デュランダルが、全世界に向けて何か発表を行うと告げていた。
キラはミーアをストレッチャーに乗せた兵にそう言うと、ダコスタが用意してくれた白い布を彼の遺体にかけてやった。
それからいつまでも動けずにいるアスランとラクスを促し、メイリンに、彼らを乗せるため正面玄関に車を回すよう頼んだ。
しかし次の瞬間、2人はアスランの「ラクス!」という声で振り返った。
見れば倒れこんだラクスを抱え、アスランも膝をついている。
消耗が激しかったのか、ラクスはひどく熱を出していた。
キラはアークエンジェルに連絡を入れてすぐに医療班を待機させ、ネオがアカツキのコックピットに彼を乗せて飛び去った。
誰もが言葉少なく、誰もが何とも言えない重苦しさで一杯だった。
「ラクスくんを庇って?」
ミーアの遺体を安置させると、マリューはキラたちから今回の事件のいきさつを聞いた。ネオは後味が悪そうに呟く。
「ああ。あいつだけが気づいたんだな。飛び出して…」
俺がもう少し早く気づいていればとネオがため息をつくと、マリューは慰めるように彼の肩を叩き、それからキラに訊ねた。
「それで、ラクスくんは?」
「熱が高くて…久しぶりの外出に銃撃戦ですから、かなり疲れたんだと思います」
キラがメイリンと目配せしながら答えた。
アスランはあれ以来、つききりでラクスを看ている。
(こんな時にプラントに動きがあるなんて…)
重苦しい雰囲気の中で、ミリアリアはモニターを見つめた。
ニュースでは先ほどからしきりに、じきにプラント最高評議会議長デュランダルが、全世界に向けて何か発表を行うと告げていた。
安静を保たねばならない患者が眠る、照明を落とした薄暗い集中治療室では、元気に立ち歩いている人影などなかった。
やがてその静かな病室に1人のナースが入室し、ベッドで眠る患者を一人ひとり丁寧に覗き込んで容態を見ていく。彼女は全員の様子を見終わると、一番奥まったコーナーで眠っている患者に近づいた。
その患者は手術を終えたばかりで、まだ意識が戻らず、呼吸器をつけている。傍らでは医療機器が規則的な機械音を立てていた。
ナースはそっと患者を覗き込んで機器を操作し、点滴を調節する。
最後に患者にかかっている毛布を直すと、静かに部屋を出て行った。
やや時間をおいて別のナースがこの集中治療室を訪れた時には、既にその患者の呼吸は止まっていた。
彼女はまだ若く、重症ではあったが容態も安定してきていたため、急変するとは考えにくかったが、誰もいない空白時間の死であり、身元もはっきりしない患者だったので、病院側は特にその死を不審がることもなく、疑問視する事も言及する事もなかった。
ダコスタたちの元に一連の連絡が入った時には、彼女…サラの遺体は何者かが持ち去り、病院のカルテや記録が綺麗に抹消されていた。
彼女を運び込み、見張りとして置かれていたクライン派の兵士たちも人知れず始末されてしまっており、彼女の存在は忽然と消えてしまった。
大切な証人と仲間を失ったダコスタは、議長側の口封じだと言って地団駄を踏んで悔しがったが、事態を知ったラクスの表情は険しい。
(議長が彼女を消したという事は、こちらが全ての情報を得ていることを、彼もまた知っているということだろう)
優秀で冷酷なデュランダル議長の事だ。
(何か、大きな罠を仕掛けてくるかもしれない…)
ひどく、胸騒ぎがした。
やがてその静かな病室に1人のナースが入室し、ベッドで眠る患者を一人ひとり丁寧に覗き込んで容態を見ていく。彼女は全員の様子を見終わると、一番奥まったコーナーで眠っている患者に近づいた。
その患者は手術を終えたばかりで、まだ意識が戻らず、呼吸器をつけている。傍らでは医療機器が規則的な機械音を立てていた。
ナースはそっと患者を覗き込んで機器を操作し、点滴を調節する。
最後に患者にかかっている毛布を直すと、静かに部屋を出て行った。
やや時間をおいて別のナースがこの集中治療室を訪れた時には、既にその患者の呼吸は止まっていた。
彼女はまだ若く、重症ではあったが容態も安定してきていたため、急変するとは考えにくかったが、誰もいない空白時間の死であり、身元もはっきりしない患者だったので、病院側は特にその死を不審がることもなく、疑問視する事も言及する事もなかった。
ダコスタたちの元に一連の連絡が入った時には、彼女…サラの遺体は何者かが持ち去り、病院のカルテや記録が綺麗に抹消されていた。
彼女を運び込み、見張りとして置かれていたクライン派の兵士たちも人知れず始末されてしまっており、彼女の存在は忽然と消えてしまった。
大切な証人と仲間を失ったダコスタは、議長側の口封じだと言って地団駄を踏んで悔しがったが、事態を知ったラクスの表情は険しい。
(議長が彼女を消したという事は、こちらが全ての情報を得ていることを、彼もまた知っているということだろう)
優秀で冷酷なデュランダル議長の事だ。
(何か、大きな罠を仕掛けてくるかもしれない…)
ひどく、胸騒ぎがした。
「艦長」
ミネルバのブリッジでは、アビーが艦長を呼んだ。
「なに?」
「艦隊司令部より入電です。連合軍、アルザッヘル基地に動きあり」
タリアもアーサーもその報告に姿勢を正した。
「月艦隊並びにミネルバは、直ちに座標、4286へ集結せよ」
タリアは了承し、早速マリクに発進を命じた。
艦内にアビーの声でコンディションイエローが発令されると、シンもルナマリアも顔を見合わせた。ルナマリアがブリッジに通信を入れると、アルザッヘルに動きがあるのでミネルバも動くと言う。
「あなたたちはまだ待機しなくていいわ。でも心積もりはしておいて」
「わかりました」
通信が切れると、シンは不愉快そうに言った。
「やっぱり連合軍は、まだ戦う気なのか…」
「そのようだな」
その途端、レイの声がしたので2人は振り返った。
ミネルバのブリッジでは、アビーが艦長を呼んだ。
「なに?」
「艦隊司令部より入電です。連合軍、アルザッヘル基地に動きあり」
タリアもアーサーもその報告に姿勢を正した。
「月艦隊並びにミネルバは、直ちに座標、4286へ集結せよ」
タリアは了承し、早速マリクに発進を命じた。
艦内にアビーの声でコンディションイエローが発令されると、シンもルナマリアも顔を見合わせた。ルナマリアがブリッジに通信を入れると、アルザッヘルに動きがあるのでミネルバも動くと言う。
「あなたたちはまだ待機しなくていいわ。でも心積もりはしておいて」
「わかりました」
通信が切れると、シンは不愉快そうに言った。
「やっぱり連合軍は、まだ戦う気なのか…」
「そのようだな」
その途端、レイの声がしたので2人は振り返った。
「それだけの業!重ねてきたのは誰だ!」
「守りたい世界があるんだ!」
あの日…事実上、戦争が終結したあの日以来、彼はいなくなった。
ザフトに属していた彼は、戦争が激しくなるにつれて姿を見せることが少なくなり、レイは自然、彼の友人であるギルバート・デュランダルと2人きりで過ごす時間が増えた。ギルバートからはラウとはまた違った愛情と信頼がもたらされた。兄のように、父のように、レイは彼を慕った。
「ねえ…ラウは?」
「ラウは…もういないんだ」
デュランダルはレイの質問に静かに答えた。
はじめこそ、彼はラウ・ル・クルーゼの死を「戦死」としか伝えなかったが、成長してきたレイの理解力にあわせて、クルーゼが何を思って何をしたのか、彼らの出生の秘密と共に語るようになった。
きみたちは、老人のクローンであると…
「だが、きみもラウだ」
ある時、デュランダルは言った。
「…え?」
意味がわからない。
ラウはあのおぞましい研究施設から自分を救い出してくれた。
服を与え、食物を与え、ピアノを与え、愛情を与えて育ててくれた。
「きみもラウの1人だ、レイ」
(今の俺なら、「どういう意味ですか?」と聞き返したろう)
パイロットスーツに着替えながら、レイはふっと苦笑いした。
あの時は…まだ子供だった自分には、とてもではないが聞けなかった。
(ギルに嫌われたくなくて…ギルが言うなら、きっとそうなんだろうと無理やり納得した)
「それが、きみの運命なんだよ」
すなわちそれが、彼から与えられた俺の「役割」なのだと。
自分はレイ・ザ・バレルではなく、新たなラウ・ル・クルーゼなのだと。
「守りたい世界があるんだ!」
あの日…事実上、戦争が終結したあの日以来、彼はいなくなった。
ザフトに属していた彼は、戦争が激しくなるにつれて姿を見せることが少なくなり、レイは自然、彼の友人であるギルバート・デュランダルと2人きりで過ごす時間が増えた。ギルバートからはラウとはまた違った愛情と信頼がもたらされた。兄のように、父のように、レイは彼を慕った。
「ねえ…ラウは?」
「ラウは…もういないんだ」
デュランダルはレイの質問に静かに答えた。
はじめこそ、彼はラウ・ル・クルーゼの死を「戦死」としか伝えなかったが、成長してきたレイの理解力にあわせて、クルーゼが何を思って何をしたのか、彼らの出生の秘密と共に語るようになった。
きみたちは、老人のクローンであると…
「だが、きみもラウだ」
ある時、デュランダルは言った。
「…え?」
意味がわからない。
ラウはあのおぞましい研究施設から自分を救い出してくれた。
服を与え、食物を与え、ピアノを与え、愛情を与えて育ててくれた。
「きみもラウの1人だ、レイ」
(今の俺なら、「どういう意味ですか?」と聞き返したろう)
パイロットスーツに着替えながら、レイはふっと苦笑いした。
あの時は…まだ子供だった自分には、とてもではないが聞けなかった。
(ギルに嫌われたくなくて…ギルが言うなら、きっとそうなんだろうと無理やり納得した)
「それが、きみの運命なんだよ」
すなわちそれが、彼から与えられた俺の「役割」なのだと。
自分はレイ・ザ・バレルではなく、新たなラウ・ル・クルーゼなのだと。
「エターナル…」
ルナマリアが激しい砲撃戦を繰り返しているミネルバから少し離れ、ムラサメと交戦しながら後方を警戒していると、その戦艦は現れた。
(前大戦の英雄…本物のラクス・クラインが乗っている)
ルナマリアはきゅっと唇を噛み締めた。
(アスランが信じている人であっても、これは敵よ!)
ルナマリアは離脱すると加速してエターナルに向かった。
「モビルスーツ接近、インパルスです!」
「叩き落せ!」
バルトフェルドの命でダコスタがミサイルの全門斉射を行ったが、ルナマリアは時にミサイルを見事に撃ち落してブリッジを目指した。
ラクス・クライン…彼こそがこの戦いの枢軸に間違いなかった。
(彼さえいなくなれば…この戦いは終わる!)
ルナマリアは自分を狙う大量のミサイルとビームをかいくぐり、さらに加速すると、ついにメインブリッジに到達した。
(もう二度と外さない)
狙いを定め、トリガーに指をかける。
(これで…いいのよね?)
ルナマリアの脳裏に、シンとアスランの姿が浮かんで消える。
「これでいいのよね…シン!」
しかしその瞬間、紅い影がインパルスに襲い掛かった。
ルナマリアが激しい砲撃戦を繰り返しているミネルバから少し離れ、ムラサメと交戦しながら後方を警戒していると、その戦艦は現れた。
(前大戦の英雄…本物のラクス・クラインが乗っている)
ルナマリアはきゅっと唇を噛み締めた。
(アスランが信じている人であっても、これは敵よ!)
ルナマリアは離脱すると加速してエターナルに向かった。
「モビルスーツ接近、インパルスです!」
「叩き落せ!」
バルトフェルドの命でダコスタがミサイルの全門斉射を行ったが、ルナマリアは時にミサイルを見事に撃ち落してブリッジを目指した。
ラクス・クライン…彼こそがこの戦いの枢軸に間違いなかった。
(彼さえいなくなれば…この戦いは終わる!)
ルナマリアは自分を狙う大量のミサイルとビームをかいくぐり、さらに加速すると、ついにメインブリッジに到達した。
(もう二度と外さない)
狙いを定め、トリガーに指をかける。
(これで…いいのよね?)
ルナマリアの脳裏に、シンとアスランの姿が浮かんで消える。
「これでいいのよね…シン!」
しかしその瞬間、紅い影がインパルスに襲い掛かった。
園の全ての木から採って食べなさい。
ただし善悪の知識の木からは決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう…
だがやがて、共に創られた野の生き物のうちで、一番賢い蛇がこう言ったという。
『決して死ぬことはない。それを食べると目が開け、神と同じく善悪を知る者となる』
そのことを神は知っているのだ、と。
そうして始まりの人は、その実を食べたのだという。
ただし善悪の知識の木からは決して食べてはならない。食べると必ず死んでしまう…
だがやがて、共に創られた野の生き物のうちで、一番賢い蛇がこう言ったという。
『決して死ぬことはない。それを食べると目が開け、神と同じく善悪を知る者となる』
そのことを神は知っているのだ、と。
そうして始まりの人は、その実を食べたのだという。
忌わしい記憶は、全て封印した。
傷跡も、痛みも、苦しみも、全ては忘れ去った。
自分にとって過去にこだわることは、精神の死を意味した。
あの時、暗い廊下で泣いていた自分に、差し伸べられた手。
赤い軍服を着た彼が差し伸べてくれた手は、温かかった。
「何も見なくていい…眼を閉じなさい」
自分を抱き上げた彼は優しく言った。
酸鼻さを感じさせる血の臭いが鼻を衝いたが黙って耐え、彼がもういいよと言うまで眼を開けなかった。
そこに、自由が待っていた。
傷跡も、痛みも、苦しみも、全ては忘れ去った。
自分にとって過去にこだわることは、精神の死を意味した。
あの時、暗い廊下で泣いていた自分に、差し伸べられた手。
赤い軍服を着た彼が差し伸べてくれた手は、温かかった。
「何も見なくていい…眼を閉じなさい」
自分を抱き上げた彼は優しく言った。
酸鼻さを感じさせる血の臭いが鼻を衝いたが黙って耐え、彼がもういいよと言うまで眼を開けなかった。
そこに、自由が待っていた。
アスランはラクスを、キラを、カガリを思い出した。
「ダメだ!こんなところでおまえたちが死ぬ理由なんか一つもない!」
「なら私は、あなたを討つ!」
「僕の命はさほど長くはない。だから、どこまでできるかわからない」
皆、迷いながら、悩みながら、選択しながらここまで来た。
間違っているから悪で、正しいから正義とは限らない。
(正義は人の数だけ、それぞれの人の心にある…だからこそ譲れない)
皆そうやって、平和な世界に戻りたい、取り戻したいと思いながらも新たな道を歩んできたのだ。
アスランはデスティニーを見つめた。そこにいる彼も、望むものは同じはずだった。
(でも、だからこそ…)
シフトを入れると、インフィニットジャスティスの機関が静かに唸りを上げ始めた。
「私は、あなたの前に立ちはだかる!」
「ダメだ!こんなところでおまえたちが死ぬ理由なんか一つもない!」
「なら私は、あなたを討つ!」
「僕の命はさほど長くはない。だから、どこまでできるかわからない」
皆、迷いながら、悩みながら、選択しながらここまで来た。
間違っているから悪で、正しいから正義とは限らない。
(正義は人の数だけ、それぞれの人の心にある…だからこそ譲れない)
皆そうやって、平和な世界に戻りたい、取り戻したいと思いながらも新たな道を歩んできたのだ。
アスランはデスティニーを見つめた。そこにいる彼も、望むものは同じはずだった。
(でも、だからこそ…)
シフトを入れると、インフィニットジャスティスの機関が静かに唸りを上げ始めた。
「私は、あなたの前に立ちはだかる!」
再びネオ・ジェネシスが放たれる…それはもう抑止力でもなんでもない。ただ「敵」を殲滅するものだ。
こんな風になるから、議長の言う新世界を望む人がいるのだろうか?人は、こうしてすぐに、行き着くところまで行ってしまうから…
(…彼の唱える新世界を目指した方が人は幸せなのだろうか…平和で、争いのない世界へと…)
けれど、アスランの心の中で何かが「違う」と否定した。
「撃て…ジェネシ…我らの…世界を奪っ…報い…」
脳裏に、父の言葉が蘇る。皮肉なことに、同じジェネシスを手中に収めた2人を比べることで、アスランには彼らの違いが見えてきた。
デュランダル議長は、父パトリック・ザラのように、世界が間違っていると狂気に走って撃つのではない。
自身が目指す「新世界を創るため」に撃つのだ。それこそまさに、血塗られた創世の光として。
こんな風になるから、議長の言う新世界を望む人がいるのだろうか?人は、こうしてすぐに、行き着くところまで行ってしまうから…
(…彼の唱える新世界を目指した方が人は幸せなのだろうか…平和で、争いのない世界へと…)
けれど、アスランの心の中で何かが「違う」と否定した。
「撃て…ジェネシ…我らの…世界を奪っ…報い…」
脳裏に、父の言葉が蘇る。皮肉なことに、同じジェネシスを手中に収めた2人を比べることで、アスランには彼らの違いが見えてきた。
デュランダル議長は、父パトリック・ザラのように、世界が間違っていると狂気に走って撃つのではない。
自身が目指す「新世界を創るため」に撃つのだ。それこそまさに、血塗られた創世の光として。
だって、オーブは戦争をしないと決めたんだ。
ナチュラルもコーディネイターも、一緒に暮らせる国を造ろうって皆で決めて、一生懸命頑張ってるんだから。
少年は画面の中の戦争をもう一回チラッと見て、再び駆け出した。
戦争なんて、バッカみたい。
ゲームならカッコいいし面白いけど、本物なんかバッカみたい。
バッカみたい…
(あれは…俺?)
何も知らなかった頃の…アークエンジェルとストライクがザフトと戦う映像を見て、戦争を映画かゲームでも見ているような気になっていた…俺だ。
幸せだった…怖いものなんか何もなくて。
ベッドに入れば、明日は必ずやってくるもので。
マユと喧嘩しても、ちょっとからかえばご機嫌が直って。
未来は果てしなく広がってて…自由で…どこまでも自由で…
ナチュラルもコーディネイターも、一緒に暮らせる国を造ろうって皆で決めて、一生懸命頑張ってるんだから。
少年は画面の中の戦争をもう一回チラッと見て、再び駆け出した。
戦争なんて、バッカみたい。
ゲームならカッコいいし面白いけど、本物なんかバッカみたい。
バッカみたい…
(あれは…俺?)
何も知らなかった頃の…アークエンジェルとストライクがザフトと戦う映像を見て、戦争を映画かゲームでも見ているような気になっていた…俺だ。
幸せだった…怖いものなんか何もなくて。
ベッドに入れば、明日は必ずやってくるもので。
マユと喧嘩しても、ちょっとからかえばご機嫌が直って。
未来は果てしなく広がってて…自由で…どこまでも自由で…
その瞬間、銃声が響いた。
シンは驚いて誰が撃たれたのかと覗き込んだ。
キラ・ヤマトは無事で、驚いた表情のまま固まっている。
アスランも彼女を庇いながら狙撃手を探していた。
シンはこの時、部屋の隅にもう一人いることに気づいた。
(…レイ?)
しかしすぐ近くでドサリという音がしたので、シンは慌ててそちらに眼を向けた。見れば、議長が倒れていた。
「ギルバート!」
最後にやってきたのは、ノーマルスーツを着たタリアだった。
彼女が司令室に辿り着いたその時、銃声が鳴り響いたのだ。
タリアは、部屋の中で銃を構えている者たちにはかまわず、倒れているデュランダルのもとへ真っ直ぐに進んだ。
デュランダルのわき腹から、じわりと血が流れている。彼の唇は蒼白で、痛みがあるのかやや顔を歪めたが、駆けつけた彼女を見ると嬉しそうに笑った。
「…やあ、タリア。撃ったのはきみか?」
「いいえ」
彼の背中を支えたタリアは首を振った。
誰の銃が火を噴いたのか、一番後ろから入って来た彼女だけが見ていた。
「レイよ」
シンは驚いて誰が撃たれたのかと覗き込んだ。
キラ・ヤマトは無事で、驚いた表情のまま固まっている。
アスランも彼女を庇いながら狙撃手を探していた。
シンはこの時、部屋の隅にもう一人いることに気づいた。
(…レイ?)
しかしすぐ近くでドサリという音がしたので、シンは慌ててそちらに眼を向けた。見れば、議長が倒れていた。
「ギルバート!」
最後にやってきたのは、ノーマルスーツを着たタリアだった。
彼女が司令室に辿り着いたその時、銃声が鳴り響いたのだ。
タリアは、部屋の中で銃を構えている者たちにはかまわず、倒れているデュランダルのもとへ真っ直ぐに進んだ。
デュランダルのわき腹から、じわりと血が流れている。彼の唇は蒼白で、痛みがあるのかやや顔を歪めたが、駆けつけた彼女を見ると嬉しそうに笑った。
「…やあ、タリア。撃ったのはきみか?」
「いいえ」
彼の背中を支えたタリアは首を振った。
誰の銃が火を噴いたのか、一番後ろから入って来た彼女だけが見ていた。
「レイよ」
「こちらストライクフリーダム、キラ・ヤマト」
「キラさんたちは?」
護衛に戻ってきたネオにマリューが訊ねたのと同時に、キラからオーブ全軍に通信が入った。
「レクイエムはアカツキ、インフィニットジャスティスにより撃破。要塞メサイアは損害多大、デュランダル議長は戦闘中に重傷を負い、ザフトの戦闘継続は不可能と思われます。従ってこれより、停戦交渉に入ります。各艦及びモビルスーツは、至急アークエンジェルと合流してください。なお、戦闘行為は護衛または防衛以外、すみやかに停止してください」
「キラさんたちは?」
護衛に戻ってきたネオにマリューが訊ねたのと同時に、キラからオーブ全軍に通信が入った。
「レクイエムはアカツキ、インフィニットジャスティスにより撃破。要塞メサイアは損害多大、デュランダル議長は戦闘中に重傷を負い、ザフトの戦闘継続は不可能と思われます。従ってこれより、停戦交渉に入ります。各艦及びモビルスーツは、至急アークエンジェルと合流してください。なお、戦闘行為は護衛または防衛以外、すみやかに停止してください」
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Natural or Cordinater?
サブタイトル
お知らせ PHASE0 はじめに PHASE1-1 怒れる瞳① PHASE1-2 怒れる瞳② PHASE1-3 怒れる瞳③ PHASE2 戦いを呼ぶもの PHASE3 予兆の砲火 PHASE4 星屑の戦場 PHASE5 癒えぬ傷痕 PHASE6 世界の終わる時 PHASE7 混迷の大地 PHASE8 ジャンクション PHASE9 驕れる牙 PHASE10 父の呪縛 PHASE11 選びし道 PHASE12 血に染まる海 PHASE13 よみがえる翼 PHASE14 明日への出航 PHASE15 戦場への帰還 PHASE16 インド洋の死闘 PHASE17 戦士の条件 PHASE18 ローエングリンを討て! PHASE19 見えない真実 PHASE20 PAST PHASE21 さまよう眸 PHASE22 蒼天の剣 PHASE23 戦火の蔭 PHASE24 すれちがう視線 PHASE25 罪の在処 PHASE26 約束 PHASE27 届かぬ想い PHASE28 残る命散る命 PHASE29 FATES PHASE30 刹那の夢 PHASE31 明けない夜 PHASE32 ステラ PHASE33 示される世界 PHASE34 悪夢 PHASE35 混沌の先に PHASE36-1 アスラン脱走① PHASE36-2 アスラン脱走② PHASE37-1 雷鳴の闇① PHASE37-2 雷鳴の闇② PHASE38 新しき旗 PHASE39-1 天空のキラ① PHASE39-2 天空のキラ② PHASE40 リフレイン (原題:黄金の意志) PHASE41-1 黄金の意志① (原題:リフレイン) PHASE41-2 黄金の意志② (原題:リフレイン) PHASE42-1 自由と正義と① PHASE42-2 自由と正義と② PHASE43-1 反撃の声① PHASE43-2 反撃の声② PHASE44-1 二人のラクス① PHASE44-2 二人のラクス② PHASE45-1 変革の序曲① PHASE45-2 変革の序曲② PHASE46-1 真実の歌① PHASE46-2 真実の歌② PHASE47 ミーア PHASE48-1 新世界へ① PHASE48-2 新世界へ② PHASE49-1 レイ① PHASE49-2 レイ② PHASE50-1 最後の力① PHASE50-2 最後の力② PHASE50-3 最後の力③ PHASE50-4 最後の力④ PHASE50-5 最後の力⑤ PHASE50-6 最後の力⑥ PHASE50-7 最後の力⑦ PHASE50-8 最後の力⑧ FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開
制作裏話-はじめに- 制作裏話-PHASE1①- 制作裏話-PHASE1②- 制作裏話-PHASE1③- 制作裏話-PHASE2- 制作裏話-PHASE3- 制作裏話-PHASE4- 制作裏話-PHASE5- 制作裏話-PHASE6- 制作裏話-PHASE7- 制作裏話-PHASE8- 制作裏話-PHASE9- 制作裏話-PHASE10- 制作裏話-PHASE11- 制作裏話-PHASE12- 制作裏話-PHASE13- 制作裏話-PHASE14- 制作裏話-PHASE15- 制作裏話-PHASE16- 制作裏話-PHASE17- 制作裏話-PHASE18- 制作裏話-PHASE19- 制作裏話-PHASE20- 制作裏話-PHASE21- 制作裏話-PHASE22- 制作裏話-PHASE23- 制作裏話-PHASE24- 制作裏話-PHASE25- 制作裏話-PHASE26- 制作裏話-PHASE27- 制作裏話-PHASE28- 制作裏話-PHASE29- 制作裏話-PHASE30- 制作裏話-PHASE31- 制作裏話-PHASE32- 制作裏話-PHASE33- 制作裏話-PHASE34- 制作裏話-PHASE35- 制作裏話-PHASE36①- 制作裏話-PHASE36②- 制作裏話-PHASE37①- 制作裏話-PHASE37②- 制作裏話-PHASE38- 制作裏話-PHASE39①- 制作裏話-PHASE39②- 制作裏話-PHASE40- 制作裏話-PHASE41①- 制作裏話-PHASE41②- 制作裏話-PHASE42①- 制作裏話-PHASE42②- 制作裏話-PHASE43①- 制作裏話-PHASE43②- 制作裏話-PHASE44①- 制作裏話-PHASE44②- 制作裏話-PHASE45①- 制作裏話-PHASE45②- 制作裏話-PHASE46①- 制作裏話-PHASE46②- 制作裏話-PHASE47- 制作裏話-PHASE48①- 制作裏話-PHASE48②- 制作裏話-PHASE49①- 制作裏話-PHASE49②- 制作裏話-PHASE50①- 制作裏話-PHASE50②- 制作裏話-PHASE50③- 制作裏話-PHASE50④- 制作裏話-PHASE50⑤- 制作裏話-PHASE50⑥- 制作裏話-PHASE50⑦- 制作裏話-PHASE50⑧-
2011/5/22~2012/9/12
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