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機動戦士ガンダムSEED DESTINY 男女逆転物語
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潜航したアークエンジェルは、沖合いに展開しているボズゴロフ級や地球軍艦艇を魚雷とバリアントを使って次々に撃沈していった。
相手の魚雷など、水中でも足の速いアークエンジェルとノイマンの敵ではない。回避を続けながら元々海軍士官のアマギが見事に艦艇を撃破していった。
かつて紅海で苦しめられたグーンやゾノが襲い掛かってくるが、既に戦況はオーブに傾きつつあった。
「司令、状況は我が軍に不利です。一時撤退を」
上空から次々と沈められていく艦艇を見て、タリアは旗艦に連絡を入れた。
圧倒的有利だったザフト・地球連合軍が、今は逆に総崩れに陥っている。
頼みの綱のデスティニーとレジェンドも、フリーダムとアンノウンに阻まれて戦局をひっくり返すことができていない。デスティニーはダメージを受けているとの報告も入っている。

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「何を言うか!」
セントヘレンズの艦長はその言葉に怒り心頭の様子だった。
「ここでジブリールを逃がしたらまたどれほどの事態になることか!」
確かに、ジブリールはまだ見つかっていない。彼らはタリアたちが来る前から戦っており、当初のザフトの圧倒的優勢を見ていることもあって、ここで諦めるなど到底聞ける相談ではなかった。
「ですが…」
タリアはレーダーを見ながら、もはや完全に内陸部と海岸線で分断されつつある戦場を見て困惑する。このままでは内部に入り込んだ友軍を援護に行く事もできなくなってしまう。
タリアは拠点のないモビルスーツへの撤退だけでもと食い下がった。
しかしその時、司令の声が途絶え、沖合いで大きな爆発が起きた。
タリアはいきなりブツッと音声が途切れた受話器を耳から放して巨大な水柱が収まるまで見つめていた。
「旗艦…セントヘレンズ…シグナル消失」
ブリッジに重苦しい沈黙が流れた。旗艦が失われ、戦況も傾いた。
ジブリール発見の報がなければ、もはやここにいる理由もなかった。

「本島2区に発進する機影」
血眼になってジブリールを探していたオペレーターの1人が、不審な動きを捉えてカガリたち首脳陣を振り返りながら叫んだ。
カガリはすぐにモニターに映せと命じ、キサカやソガや将校たちが集まった。
「これは、セイラン所有のシャトルです」
「何っ!?」
カガリが驚くと、オペレーターがシャトルの尾翼にあるセイラン家の紋章を映し出した。そういえば2区は、先ほどから何度も口頭確認で「異常なし」と繰り返すばかりだった…ソガがギリリと唇を噛んだ。

旗艦・僚艦が次々と撃沈されたため、暫定的にミネルバが後ろに下がって指揮を執っていたところに、バートが機影を捉えたと伝えた。
「シャトル?」
タリアが地図をモニターに出させると、マークが動きつつあった。
「島の裏側からか?」
アーサーが「これってやっぱりジブリールですよね?」と言うと、タリアも急いでハンガーで待機しているルナマリアを呼んだ。
「ルナマリア、発進!」
ルナマリアはそれを聞いてギクリとした。
自分がシンの邪魔になると言うレイの言葉が彼女を傷めつけ、自信を失わせているところに艦長から発進命令が下ったからだ。
「今上がったシャトルを止めて!ジブリールの逃亡機の可能性が高いわ」
(シャトル…ジブリール…私たちの、目的…ロゴス!)
ルナマリアの瞳に生気が戻った。
「最悪の場合は撃墜も許可します」
「はい!」
ルナマリアは元気よく返事をして敬礼すると、ヘルメットを掴んでコックピットへと急いだ。

国防本部でも当然撃墜のため部隊が向かわされた。
「ムラサメを向かわせろ!」
カガリは動けるムラサメに全て命じろと伝えた。
「撃ち落としてもいい!絶対に宇宙に上げるな!」
そして自身もイケヤたちに「動ける者は第2区へ向かえ」と命じた。
カガリは確実性を帰すためキラにも頼めないかとオノゴロ上空にモニターを切り替えさせた。しかしあの時一旦は退いたものの、再び出撃してきたデスティニーがいる。
(今回はキラには無理か)
カガリがそう思った時、そのデスティニーと戦っているとばかり思っていたキラが、見慣れない機体と戦っていることに気づいた。
カガリはわずかな間に戦場の様子が変わっていることに驚いて、「今どうなっている?戦況は?」とオペレーターに尋ねた。
「フリーダムと交戦中の機体は、デスティニーと共にミネルバより出撃してきたアンノウンです。そしてこちらのアンノウンはデスティニーと交戦中」
しかしその赤いシルエットを見て、カガリは驚きで眼を見張った。
「ジャスティス!?」
その機体は、共に戦場を駆け、要塞ヤキン・ドゥーエに向かった機体によく似ていた。ジェネシスと共に失われたそれが今、新たな姿になって戦っている。
いや、そんな事より…カガリはごくりと唾を飲んだ。
(…あれに…誰が乗ってる…?)
途端に心臓が激しく脈打ち始めた。
(ラクス!きさま…!)
カガリは拳で壁を殴りつけ、その音に驚いて数人が振り返った。

ルナマリアは発進前に大きく深呼吸をした。
(私だって戦える。戦うためにザフトに入ったんだもの)
平和な世界を取り戻すために…彼女の心に、鈍い痛みと共に可愛がっていた弟の顔が浮かんだ。
(世界が平和なら、メイリンだって死ぬ必要はなかった…)
だから、シンと共に戦う。シンと一緒にいたいから、私は戦う。
「足手まといなんかじゃない!邪魔なんかじゃないわ!」
ルナマリアは思わず気持ちを声に出した。
「ルナマリア・ホーク、コアスプレンダー、行くわよ!」
(必ずやり遂げてみせるわ。レイ、あなたに認めさせてみせる!)
第2区上空にはすでに多くのムラサメがおり、シャトルを追っている。
ルナマリアはインパルスの機動力を生かしてそれらをごぼう抜きにすると、あっという間にトップに立った。そしてライフルを構えるとスコープで狙いを定め、ふぅと一瞬息を吐いた。射撃は、正直得意ではない。
(でもそんな言い訳はしない。甘えたりしない。だってシンは、もう私に苦手なものなんかないって言ってくれたんだもの)
ルナマリアは慎重にトリガーに指をかけた。
(だから力を貸して、シン…)

「あなたはトリガーを引く瞬間に手首を捻る癖があるの」
突然、懐かしい光景が心に浮かんだ。
あの時のアスランの優しい笑顔がルナマリアの心をかき乱した。
「だから着弾が散ってしまうのよ」

「やめて…やめてよ…!」
ルナマリアは想い出を振り切ろうと頭を振った。
「これは実弾射撃じゃない。モビルスーツのビーム射撃だわ」

「それに、リコイルにも負けてるから、もう少し筋肉を鍛えること…」
むくれる自分に、優しく笑いかけてくれた彼女を素直にいい人だと思った。
楽しかった日々が、様々な思い出が次々と蘇って心をかき乱した。
(あなたの言う事なんか二度と聞かない…聞くもんですか!)
ルナマリアは面影をかき消すようにそのままビームライフルを撃った。

ジブリールは窓の外を走っていくビームに忌々しそうに眼をやった。
シャトルのパイロットも高度を上げているのにまだついてくる者がいるのかとレーダーを見たが、続けて放たれるビームも当たらない。
ルナマリアは焦り、その後も何度かビームライフルを放ったが、当たらないままシャトルは既に射程圏外へと飛び去ってしまった。
「あ…あ…」
呆然としたルナマリアがそれを見送り、自分たちを追い抜いていったザフト軍機が、あそこまで迫りながらシャトルを撃ち落せなかったと知ったムラサメパイロットたちも言葉がなかった。
駆けつけていたイケヤとゴウがカガリに「撃墜失敗」を伝え、国防本部は一挙に落胆の色に変わった。まさに千載一遇のチャンスだったのに、生かせなかった。

シンとレイも、キラたちと共にこの光景を遠目に見ていた。
2人のモニターにはミネルバからの電文が入っている。
(ジブリールの捕捉・撃墜失敗…あの軌跡はシャトルか…)
シンはチラリと予感した。
撃墜命令を受けたのはルナマリアではなかったか、と。
ミネルバでもアーサーはじめクルーがシャトルの軌跡を呆然と見守っていた。 アーサーががっくりと肩を落とし、各員もため息をついて仕事に戻る。
「ホークだもんなぁ」
「シンかレイだったら…」
聞こえてくるヒソヒソ話に、アーサーが情けない顔をしてタリアを見た。
「どうします?これ…」
タリアは平静さを失わず、指示を下した。
「旗艦撃沈に伴い、これより本艦が指揮を執る」
既に実質的にはミネルバが指揮を執っていたが、正式に全艦艇にその旨が通告され、カーペンタリアにも事の次第が報告された。
「信号弾撃て。一時撤退する!」
「ええ!?艦長!」
続けて出された指示にはアーサーも驚き、クルーも皆振り返った。
しかしそもそもセントヘレンズにも一時撤退を申し入れていたのだ。タリアの意志は固かった。
「戦況はこちらが不利よ。彼も発見できない。これでは戦闘の継続は無意味だわ」
アーサーはしかし、慌てたようにタリアの耳に囁いた。
「しかしそれでは議長の…」
タリアは特に声を潜めるでもなくきっぱりと言い放った。
「議長の命じたのはジブリールの身柄の確保でしょ?オーブと戦えということではない」
「あ…」
それを聞いてアーサーは、いつしか自分の目的が「オーブ陥落」にシフトしていた事に気づいた。
(そ、そういえば…そうだった…)
いけないいけないと身を引き締めようとアーサーは敬礼した。
「モビルスーツ帰投。全軍、オーブ領域外へ一時撤退する」
それを聞いてバートとアビーが一斉に手と口を動かし始めた。
ミネルバから信号弾が出され、やがてグフやバビが帰投を始めた。
シンたちはそれを見ていぶかしんだが、モニターにも帰投せよとミネルバからの通信が入ったため、戦闘はこれまでとなった。
「シン!」
レイがデスティニーの破損状況は大丈夫かとサインを送ってきたので、シンは問題ないと返した。それを見て安心したのか、レジェンドは先に機体を転進する。

「撤退する?」
国防本部でも一斉に引き上げ始めたザフト軍を見て、ソガが驚いた声を出した。
オペレーターや将兵たちは一瞬静まり返った後、怒涛のように声を上げ、誰もが万歳をしたり隣の者と抱き合ったりして大喜びに沸いた。
まだ一時的かもしれんと将校が諌めても、下士官以下の兵たちはあまりにも長く緊迫した時間を過ごしたせいか、喜びを隠せなかった。
「いい加減にせんか!」
怒鳴りつけるソガに、カガリは「かまわん、一佐」と笑った。
「本当によく頑張ってくれた…これも全て、皆のおかげだ」
信号弾を出したのはミネルバだ。
カガリは光学映像で捉えられたミネルバの姿を見つめた。
「グラディス艦長…」
きびきびとした彼女の姿を思い出し、カガリは息をついた。
旗艦らしき潜水艦をアークエンジェルが撃沈したという報せは届いていたが、ザフトは既に国の中枢部にまで入り込んでいた。
あと一歩、あと少しと思うとなかなか退けないのが人の心情だ。
冷静な判断力を持つ彼女が司令でなければ、このままただ、両軍の犠牲が増えるだけの不毛な消耗戦が続いたかもしれない。
(シンとあなたが…非力な俺に、この国を救わせてくれた…)
カガリは人知れずモニターに頭を下げた。
「退くというなら追撃はしない。全軍に徹底しろ!」
それから振り返り、司令室の全員に告げた。
「オーブの誇りにかけて、卑劣な真似は絶対にさせるな」
「は!」
ソガとキサカが敬礼し、「貴様ら、浮かれるな」と兵たちを叱り飛ばした。

シンはサーベルを手に持ったままのインフィニットジャスティスと、それに近づいてきて並び立つストライクフリーダムを見つめている。
どちらも、自分が倒したはずのパイロットが乗っている機体だった。
「シン…」
アスランは既に体力の限界がきており、苦しい息の下でシンを呼んだ。
「あなたは…オーブを…」
「アスラン」
そんなアスランにキラが静かに話しかけた。
「彼は…カガリの言葉を聞いてくれたよ」
「…え?」
「オーブが無条件降伏をするのを止めさせてくれた…見逃してくれたんだよ、私を」
(シンが…そんな事を…)
アスランはそれを聞いて、右腕のないデスティニーを見つめた。
シンはしばらく2機を睨みつけていたが、やがて背を向けた。
(亡霊と裏切り者…こんな奴らに、この俺が敗れるなんて…)
屈辱に苛立つシンの背中を、アスランの声が追いかけてきた。
「シン!ルナマリアに…」
その名を聞いて、シンはシフトレバーを入れる手を止めた。
「ルナマリアに…伝えて…メイリンも…無事…と…」
お願い…そう言い残すと、アスランは意識を失った。
シンはそのまま振り返らずに飛び去り、キラはそれを見送ると、突然落下を始めたインフィニットジャスティスに気づいて驚いた。
「アスラン!?」
完全に自由落下していく機体を見て、キラは胸騒ぎがした。
(まずい、アスランの怪我はまだかなり重傷のはずだ…)
キラは加速して一気にインフィニットジャスティスを追い越すと、機体を下から支えた。何度アスランを呼んでみても返事はない。
キラはそのまま機体を運び、アークエンジェルに通信を入れた。

国防本部はザフトと連合が撤退した戦場の事後処理に入っていた。
「医療班、サイバネティック第2班は…」
「205の弾薬庫は注水のうえ…」
「海岸線の警戒は守備隊にやらせろ…え?わかってるさ!だがそんなこと言ったら動ける者などいないだろう?」
あちこちで忙しなく指示が飛び、怒号が飛び交っているが、彼らの表情は明るい。
最初にカガリが命じたように、オーブは「勝たなかったが、負けなかった」のだ。
これならあとは代表と首長の努力次第で有利な条件で終戦交渉に入れるだろう。
何より自分たちの力であれだけの武力を押し返した事が、彼らの自信になっている。3年前、地球軍に完膚なきまでに叩きのめされて屈辱的な占領時代を送った彼らにとって、再びの災厄を自身の手で振り払う事ができたことは大きな喜びでもあった。そうはいっても被害はあまりにも大きく、犠牲者も多いことに変わりはないのだが。 
「市街地の被害状況の把握が先だ。シェルターはまだ開放できん」
「地下街が崩れて要救助者がいる。救援をまわせ。ポイント384だ」
「医療キャンプの設置、完了しました。誘導願います」
カガリはソガにこの場を任せ、キサカを伴ってやはり被害の大きい本島の行政府に向かう事にした。
急ぎ全国の被害状況を報告させ、各地への物資・救援等支援を開始すると同時に、プラントと停戦、次いで終戦の話し合いに入らねばならない。できれば同盟も早く破棄したかった。
やる事があまりにも多すぎて混乱しそうだったが、そのたびに破壊され、ひどい状況にある街を見て気を引き締めた。
(これまで休んできたツケだ。ゆっくり寝られるなんて思わないさ)
彼の大人びた横顔に、もはや甘い少年らしさは見つけられなかった。

「あのシャトルにジブリールが?」
行政府に残った数少ない首長たちは、停戦交渉の草稿を前にカガリを待っていた。
アスハ派や中立中道派の彼らは、セイラン家の頑丈なシェルターに誘ってもらえず、激しい攻撃の中でも逃げずに行政府を守り抜き、プラントや各国への呼びかけを続け、草稿を整えていた。何よりカガリが国防本部にいることが彼らを勇気づけ、奮い立たせた。
「だとしてもそれをザフトが信じるか?」
「外交ルートで今あてになる国など…」
なんとなく絶望的な事ばかりが口から出てしまう首長たちも、とにかくカガリ様を待とう、そして考えようと頷きあった。ここまで痛めつけられながら踏ん張った国を、今度は自分たちが立て直すのだと、皆気合が入っていた。

キラからの通信を受けて緊急浮上したアークエンジェルに着艦し、インフィニットジャスティスをハンガーフックまで運んだキラは、すぐにアスランのコックピットに向かった。ぐったりとしている長身のアスランを小さなキラが運び出すのは一苦労だったが、なんとかラダーで降りてくると、ブリッジからラクスがやってきていた。
「…アスラン…」
ラクスが力ない彼女の体を支え、キラがヘルメットを取ると、額の傷がすっかり開いており、どろりと血が流れた。
それを見てメイリンが「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。
「…ア、アスランさん…!」
その途端、アスランがゴホッと咳をして血の塊を吐いた。
口の中を切っただけならいいが、また肺を傷つけていたら…ラクスは自分の服が汚れることも厭わず、丁寧にそれを拭ってやった。彼が支える彼女の背中のアンダーも血に染まり、袖口からも血が垂れた。
「キ…ラ…」
アスランが朦朧とした口調で呼びかけ、キラはマードックを振り返った。
「ストレッチャーを!医療班を早く…お願いします、急いで!」

「では、ジブリールはそのシャトルに?」
ジブラルタルにいるデュランダルへの報告は、艦長室から行った。
アーサーは何をどう取り繕ってもこれが敗戦報告であることは間違いがないと思い、先ほどから緊張しっぱなしだった。
「確証はありませんが、私はそう考えます」
タリアは落ち着いて答えた。
「いずれにしても彼は捕らえられず、きみたちはオーブに敗退したと…」
「う…」
その時の議長の眼があまりにも冷たいので、アーサーなど完全に萎縮し、縮こまってしまった。特に彼のように、若く才気溢れる議長の柔和な表情しか知らない人間にとって、政治家としての冷静で感情を読ませない表情を見た時は、誰でも驚くものだ。
「そういうことか?」
「はい」
むしろ彼の全てを知り尽くしている自分だからこそ、こんな風に平静を保てると思えば、アーサーを意気地なしと責める事もできない。
「そういうことに…なります」
タリアは淡々と続けた。
「アークエンジェル、フリーダム…そして、ジャスティスと言って差し支えないでしょう」
タリアはデスティニーとレジェンドの戦闘記録を解析して驚いた。
彼らが戦っていた機体…それは前大戦でアスラン・ザラが脱走した際、乗っていたZGMF-X09Aジャスティスによく似た機体だったからだ。
「ジャスティス…?」
デュランダルもまたそのコードネームを聞いてピクリと眉を動かした。
(キラ・ヤマトのみならず、アスラン・ザラも生きていると…?)
タリアはさらに報告を続けた。
「それらの参入によって状況は不利となり、その上、依然としてジブリールが未だに国内にいるという確証も得られませんでした」
戦いが続けば互いに死力を尽くす消耗戦になるだけだった…オーブに勝ったところで、結果的にジブリールを捕らえる事ができなければ、プラントは単に推測のみで主権国家を侵略したと非難されても仕方がない。
タリアの判断は賢明なものだった。
議長はふぅと息をつくと、再び柔和な笑顔に戻った。
「そうか。いや、ありがとう。グラディス艦長」
判断は適切だったと思うと議長が艦長をねぎらうと、アーサーもようやくほっとした表情に戻った。
「シャトルの件についてはこちらで調べる。オーブとは、何か別の交渉手段を考えるべきかな」
オーブからは既に再三の会見の申し込みがきている。
他にもスカンジナビア、赤道連合もこの件について公式な見解と回答を求めてきていた。皆オーブの息がかかっているはずだった。
「私はそう考えます」
タリアもまた通信を切ると、椅子に深くもたれてため息をついた。
(ついに負けたわね…あの艦に…)
「…やっぱりもっと気分が悪いじゃないの!」
「ええぇ!?」
タリアが喚くのでアーサーは早々に艦長室を辞し、ブリッジに戻った。

ミネルバがオーブを離れ、タリアを悔しがらせている頃、アークエンジェルのデッキではネオが傾きかけた夕日に照らされる港を見つめていた。
重機や医療班、物資や人を運ぶカートが途切れることなく行き来して、皆自分の仕事に忙しい。
やる事もなく、居場所もなく、自分だけが黄昏に置き去られている。
ネオはそんな事を考えながら、戦いを経て尚活気に満ちた港を見ていた。
「こんなところにいたの?」
声をかけられてネオは振り返った。そこにはマリューが立っていた。
「ああ…」
ネオは苦笑した。
「居場所がなくってね」
マリューはそう言って肩をすくめる彼の隣に立った。 
「俺を知っているらしいヤツは大勢いるのに、俺が知っているヤツは1人もいないんだ」
ネオは、戦闘後に毎回ゆりかごに入れられた3人を思い出していた。
戦闘データと、ネオや研究員のように身近にいる人物の記憶以外はほとんど消去される彼らは、時折彼らを知る人に声をかけられては怪訝そうにし、声をかけた相手もその反応に怪訝そうにしたものだ。
(会った事もない奴らに「フラガ少佐」と呼ばれて変な顔をしている俺も、きっとあの時のあいつらと同じなんだろうな…)
マリューはしばらくネオと一緒に港を眺めていた。
傷ついた艦艇が入港し、曳航された救助船から怪我人や民間人が大勢降りてくる。
桟橋を降りた途端、嬉しそうに走り出す子供たちを見て、母親が慌てて名前を呼ぶ。子供を掴まえたオーブ兵が笑いながら彼を抱き上げて母親に返し、母親も笑顔で礼を言った。
そんな光景を見てマリューはふふっと微笑み、両腕を組んで伸びをした。
「さ、行かなくちゃ。じゃあね」
しかしそんな彼女を引き止めるかのように、彼は急に話し始めた。
「ネオ・ロアノーク」
「…え?」
マリューは足を止めて彼を見た。
ネオもいつの間にか真っ直ぐマリューを見つめている。
「CE42、11月29日生まれ。北大西洋連邦ノースルバ出身。ブラッドタイプO」
マリューは首を傾げ、何を言い出したのかとそれを聞いている。
「CE60入隊。現在、第81独立機動軍、通称ファントムペイン、大佐」
そこまで言うと、ネオは急に眼を泳がせた。
「…の、はずなんだがな。だがなんだかちょっと自信がなくなってきた」
やがてネオは彼女に近づくと、まじまじとマリューを見た。
「あんたを知ってる…ような気がする…」
そう言いながらネオは痛々しい傷跡が残る両の手の平を見た。
「いや、知ってるんだ、きっと。俺の目や耳や腕や、何かが…」
そしてそのまま、マリューを力強く抱き締めた。
「あ…」
マリューは、もう二度とそれを感じることはできないと思っていた馴染みのある彼の体と体温、覚えのある香りに包まれ、眩暈を起こしそうだった。
抱き締める強さまでもが愛するムウ・ラ・フラガと同じだった。
アスランが初めてミーアに抱き締められた時に感じた違和感は、彼が「本人にそっくりな他人」だったからだが、マリューの場合はまったく逆で、それは「他人である本人」に感じる違和感だった。その上、何しろ本人が記憶を失っているだけで、あくまでも本質的には本人なのだから、なおのことややこしい。
「だから…飛んで行っちまえなかった」
(この人はムウじゃない)
そう思うのに、マリューの腕は自然、彼の背に廻った。
「あんたが苦しいのはわかってるつもりだ。でも、俺も苦しい」
今、2人は強く抱き締めあっていた。
「だから、ここにいていいか?あんたの…傍に」
マリューは逞しい腕に包まれ、浮かされたように「うん」と頷いた。自分を支えてきた何かがもろく崩れ、今はただ甘い夢に酔いたかった。
ひと時でもいい…夢でもいい…愛した人にもう一度抱かれるなら…

ドムから降りてきたヒルダたちも、消火作業や怪我人の搬送に慌しい基地の中をふてくされたように歩いていた。
時折、自分たちがザフトのパイロットスーツを着ていることに驚く軍人もいたが、後ろのドムを見て納得しているようだった。
「お?あんたたち、ドムのパイロットだね?」
やがて同じ基地に降り立ち、喧騒の片隅でドリンクを飲んでいたイケヤやニシザワ、ゴウたちが彼らを見つけて声をかけた。
「ずいぶん大活躍したんだってな。おかげで助かったぜ」
初めは馴れ馴れしく話しかけてきたナチュラルの彼らを胡散臭そうに見ていたヒルダたちは、彼らがアークエンジェル搭載機のパイロットと知ると幾分警戒心を解いて話し始めた。
「なら、あんたたちもフリーダムの小娘を知ってるんだね?」
「そりゃもう、キラ様の強さは身をもって知ってるさ」
「へっ!そりゃ『やられた』ってことじゃねぇか」
斬られた事が自慢のように笑う彼らを見て皮肉屋のラインハルトは呆れたが、互いに三位一体の技を使う同士のせいかその後も妙に話が弾み、やがて6人は仲良くアークエンジェルに戻って行った。
そんな風にパイロット同士が親交を深めていた頃、長い戦いを終え、ようやく休憩に入ったノイマンとミリアリアも食堂で寛いでいた。
しかしミリアリアにはこの後、アスランの看病という仕事があった。
「ムチャしすぎですよ、彼女。命がいくつあったって足りないわ」
「かなり悪いのか?」
ノイマンがミリアリアが入れてくれた茶を受け取って聞いた。
「肋骨なんてボロボロですよ。せっかく直ってきた背中もボロボロ。キラはびっくりするし、すごい出血を見てメイリンは気分悪くなるし…まったくもう!」
ミリアリアはフォークで刺した肉を口に運びながらむくれている。
「ずっと彼女を抱いてたラクスさんも、服が血だらけでしたもん」
「飯食いながらなにスプラッタな話してんのさ」
そこにトレーを持ったチャンドラが入ってきた。
「いやー、参った参った。どれだけぶっ続けだったんだって話だよね」 
ミリアリアは「お疲れ様です」と声をかけたが、ノイマンはやや不機嫌になった。
(2人で話せるチャンスがあんまりないんだから遠慮しろよ!)
もともと以前から屈託のないミリアリアは、トノムラやパルが乗っていた頃からブリッジクルーにも人気が高かったのだが、ノイマンだけがなぜか終戦後も彼女と連絡を取り続けていた。
久々に会ってみればすっかり大人の雰囲気で綺麗になっており、そのくせ少女のような明るさと純真さは失っていないとなれば、独身で彼女もいないノイマンとしては放っておく手はなかった。しかも懸念だったエルスマンとは別れたと聞けば尚更だ。
ここは一つ彼女と「先輩・後輩」的な関係から脱却し、もっと仲良くなりたいと思うのだが、いかんせん席が遠い。
チャンドラも少しは気持ちを汲んでくれてもよさそうなものだが、その邪心のなさゆえに彼女と仲がいいのだから、彼にそんなものを求めるだけムダだった。
チャンドラはスカイグラスパーで戻ってきたネオについて話題を振った。
「っていうかさ、きみ、思い出さなかった?」
ミリアリアが「は?」と首を傾げ、ノイマンが眉をひそめた。
「だってあのシチュエーション、もろにエルスマンだったじゃない」
彼はけらけらと笑った。
「逃がした捕虜が、彼女の乗ってる艦を守る…いやぁ、乙女心、くすぐるよねぇ」
「くすぐりませんっ!」
ミリアリアはいーっと顔をゆがめると、「ごちそうさま」と席を立った。
チャンドラは嬉しそうに笑いながらそれを見送り、そして言った。
「あんなに気にしてるんだから、ヨリ戻せばいいのにな」
「おまえなぁ…」
ノイマンはガックリと項垂れた。
「ん?」
「空気読めよ!」

帰投したシンはレイと共に一旦パイロットルームに引き上げ、コンディションレッドが解除されるまでは待機を続けていた。
やがてタリアが議長への報告を終えたところでミネルバが出航したので、シンはシャワーを浴びてから休憩室に戻った。
兵たちも皆、なんとなくどんよりした雰囲気だ。
赤服のシンを見ると口をつぐんだり、そそくさと席を立つ者もいる。
(まさか自分たちがオーブに負けるとは思ってなかったって顔だな…)
シンは悪びれることなく、ソファでぐったりしているヨウランの元に向かった。
ヨウランは参った参った、へとへとだよといつも通り明るく言った。
「そういや、2000(フタマル)からアスハ代表の緊急声明だってよ」
「ふーん」
シンはさして興味もなさそうに答えた。
「ルナは?知らない?」
ああ…ヨウランがやや表情を暗くした。
「整備中。ヴィーノももう休憩なのに、やるって聞かなくてさ…」
シンはややいぶかしむように「サンキュー」と言うと、すぐにハンガーに向かった。
「なぁ、もういいだろ?これ以上いじりようないってば」
右腕を失ったデスティニーの周囲にはエイブスたちが群がっているが、破損の少ないレジェンドやインパルスのブースには人気がない。
ヴィーノの泣き言が響いている暗がりに、シンは近づいていった。
「だからもういいわよ。休憩行きなさいよ、疲れてるんでしょ?」
「けどさぁ…」
なにやら押し問答を続けている2人の前にシンが姿を現すと、ヴィーノが「よかったぁ」と半泣き状態で駆け寄ってきた。
「ヴィーノ、もういいから休めよ。後は俺がいるから」
そう言ってヴィーノを見送ると、シンはコアスプレンダーのタラップを昇った。
「何してんの?可哀想だろ、皆疲れてるんだから」
「別に…」
ルナマリアはボードを片手に、難しい顔をしてデータを入力している。
「残ってくれなんて言ってないもん」
「放っておけなかったんだろ、あいつ優しいから…」
シンはモニターを覗き込んだ。施しているのはスコープの調整らしい。
「射撃精度?」
ルナマリアは何も答えなかったが、シンはかまわず続けた。
「もうじきアスハの野郎が声明発表するってよ」
それを聞いてルナマリアの指が止まった。
「ジブリールを匿ってたあいつの言い訳、聞きに行こうぜ」
それでも返事がないので、「ルナ?」とシンが覗き込むと、ルナマリアは唇を噛み締めていた。
「…私…失敗した…撃てなかった…」
「…ああ」
シンの予感どおり、シャトル撃墜命令はルナマリアに下っていた。
ジブリールを逃した責任は、匿ったオーブにあるという者が大半だったが、中には赤服のホークがシャトル撃墜に失敗したからだと囁く者もいた。
「私が…撃てていれば…ザフトが負けることもなかったのに…!」
けれど、何よりも悔しいのはレイを見返せなかったことだった。
ルナマリアの心にはレイに言われた「邪魔だ」という言葉が棘のように引っかかり、塞がらない傷として血を流していた。
(撃てなかった…撃てたはずの敵を、撃てなかった…私、やっぱり…)
「苦手なものは苦手なままなのよ。ううん、私に得意なものなんかないんだわ」
(だからレイにあんな事言われても仕方がない。ホントだもの。私は、シンの邪魔でしかない…シンの役に立ちたくても何もできない…)
「ふーん?」
シンは今にも泣き出しそうな顔のルナマリアを面白そうに覗き込んだ。
彼女が顔をそらしてもそのまま覗き込んでくるので、ルナマリアが手で払う。
そっぽを向くルナマリアの顔をそうやって散々追い回し、しまいには「もう!やめてよ!」と怒りながら笑わせ、シンも楽しそうに笑った。
(マユもよく怒ってたな…「お兄ちゃん、やめてよぉ」って)
シンはいつもこうやってマユの機嫌を直していた。
女の子は可愛い。へそを曲げたりべそをかいたりご機嫌になったり…
「まぁ確かにおまえは射撃、下手クソだけどさ」
「う…」
はっきりと言われたルナマリアががっくりと肩を落とす。
「今回はおまえだけじゃない。俺もミスった」
「え?」
「俺さ…オーブを討てたのに、討たなかった」
ルナマリアは不思議そうにシンを見つめた。
「どういうこと?」
「アスハに言われて…見逃したんだ、フリーダムを」
大きな眼をさらに見開いたルナマリアが息を呑んだ。
「降伏文書を持ってる人間を止めたいからって…あいつ、必死でさ」
「シン…」
「フリーダム、撃とうと思ったんだ。生き返ってきやがって、ムカつくヤツだし」
シンは何度も手加減された事を思い出してブスっとしながら言った。
「でも、撃たなかった。オーブを討つチャンスをみすみす逃したんだ」
そう言いながらも、なんとなくシンは清々したような表情をしていた。
「おまえは撃てなかった。俺は撃たなかった」
それから「それって、どっちの罪が重いと思う?」とシンはおどけたように訊ねた。
ルナマリアはそれを聞いて、今度こそ本当に泣き出してシンに抱きつき、シンはバランスを崩しかけながらも、しっかりと彼女を抱きとめた。
「………シンの方」
「おまえ、容赦ないなぁ」
ルナマリアを抱き締めながら、シンはまた楽しそうに笑った。
「だから気にすんな。俺もおまえも、また挽回できるよ」
シンの大らかで温かい優しさにくるまれて、ルナマリアは頷いた。
(シンと一緒に戦いたい…大好きなシンと…)
自分に、アスランのような力がないことなんかわかっている。
(でも、私も戦えるんだって示したい)

シンはシンで、アスランの言葉を思い出していた。
(伝えるんだ…ルナに…) 
メイリンが生きていると知ればきっと喜ぶ。
けれどシンはなぜかそれを伝える事ができなかった。
それを伝えるためには、そもそもアスランが生きていたこと、戦ったこと、彼女と話したことも話さなければならないだろう。
自分でもまだ処理も整理もしきれていないそれらのことを、今、ルナマリアに伝えることなど到底できそうになかった。

涙を拭いて笑顔が戻ったルナマリアは、シンの手に掴まってコアスプレンダーのコックピットを出た。
「あれ?」
「ふふ…」
シンは彼女がミニスカートをやめ、ノーマルな赤服を着ている事に驚いた。
「どうしたの?」
「ちょっとね…心を引き締めようと思って」
そうか…シンは微かに微笑み、それから大きな声で「あーあ、パンツが見えなくなって残念」とからかって彼女を怒らせた。それから2人は仲良く手を繋いでハンガーを後にした。

輸血と点滴を受けて意識を取り戻したアスランは、呆れるミリアリアと心配で泣きそうな顔のメイリンに見守られながら、痛み止めの副作用でうつらうつらと時を過ごしていた。
ところが2人が少し眼を放した隙に上半身を起こそうとして痛みにうめいており、「またそんなムチャして!」と駆けつけたミリアリアに叱られた。
体を支えながら、メイリンも彼女は本当にムチャクチャだと今さらながら思う。
「あの…大丈夫ですか?」
「…って、言わない方がいいよ、アスランには」
ちょうど扉を開いて部屋に入ってきたキラが面白そうに言った。
「絶対、『大丈夫』って言うから」
隣にはラクスもいて「そうだねぇ」と頷いている。
メイリンは思わずミリアリアを見たが、彼女も両手を広げる。
どうやらそれはアスランのデフォルトになっているようだ。
その微妙な空気に、アスランはむっとしたように答えた。
「…ほんとに大丈夫よ」
平気なふりをしているが、本当は体中がだるくてひきつれるようだった。
痛み止めが切れたら、さぞ激しい痛みが襲ってくるに違いないと思う。
「ミトメタクナ~イ!」
その時、ラクスにくっついてきたハロがアスランに飛びついた。
「ハロってば、相変わらず喜んでるよ。きみに会えて」
「機械にそんな感情はないってば」
メイリンは彼女の周りを飛び跳ねるハロを手に取り、興味深く見つめた。
「でも、よかった」
アスランはミリアリアとメイリンに背中にクッションを当ててもらって座り直しながら、「ん?」とキラを見た。
「またこうして、話せる日が来て」
キラはにこりと笑ったが、アスランは気まずそうに眼を逸らした。
「平和な時は当たり前ですぐ忘れちゃうけど、そういうの、本当はとても幸せなことだって」
(そう…私はいつもそれを忘れてしまう) 
アスランの眼に暗い影が宿った。
(それに、相手にうまく気持ちを伝えられない)
自分の話を聞かず、自分と戦おうとするデスティニーの腕を斬り落としたけれど、あれではシンの怒りをただ煽っただけだ。自分の言葉は、シンの心には何一つ届いていないのではないか…そう思うと憂鬱になるばかりだ。
(シン…あなたにはもっとちゃんと話したいことがあるのに)

「テレビつけていい?カガリが声明を出すんだ」
相変わらず1人で物思いに沈んでしまったアスランを見て、キラが言った。
「カガリが…?」
アスランが顔をあげた。
「取り敢えず意志を示す。あとはそれからだって」
声明までは少し時間があり、画面にはオーブの状況が映し出された。
本島もかなり破壊され、週末は人で賑わっていた繁華街にも爆撃の痕跡が痛々しく残っている。ビルが崩れ、車が炎上した痕も多い。
「ヤマトのご両親や、マルキオ導師…それに、ミリアリアの…」
アスランはその惨状を見て心配になり、キラたちを振り返った。
「さっき連絡取った。皆無事だって。ね?」
ミリアリアもうんと頷いてにっこり笑った。
続けて声明前に国営放送のインタビューに答えるカガリが映る。
アスランは頬に医療用パッチを貼った彼を心配そうに見つめた。
「カガリくんは、不思議な人だね…」
ラクスが呟いた。
「自分には力がない、何もできない…そう嘆きながら、絶対に諦めない」
アスランはその言葉を聞きながら、カガリの横顔を見つめ続けた。
「そうやってにっちもさっちもいかなくなっても、誰かが彼を助け、支えている」
キラとミリアリアは微笑みながら視線を交わし、アスランは俯いた。
そんな彼らを見て、ラクスもまた優しく笑った。
「彼を見ていると、僕もどうしても助けたくなるんだ」
やがて、オーブの軍服を身にまとったカガリがカメラの前に現れた。

「オーブ首長国連邦代表首長、カガリ・ユラ・アスハです。今日、私は全世界のメディアを通じ、先日ロード・ジブリールの身柄引き渡し要求と共に我が国に侵攻したプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル氏にメッセージを送りたいと思います」

どうしたのさと皆を驚かせながら、普通の赤服を着たルナマリアとシンが休憩室に戻った頃、ちょうどこの声明がライブで始まった。
先に戻ったヴィーノやヨウラン、タリアやアーサーも画面を見つめている。
同じく軍事ステーションでも、オーブ侵攻が失敗に終わったと聞いて動揺が走る中、多くの兵たちがモニターを見つめていた。イザークとディアッカも同様で、赤服のハーネンフースを伴い、放送の始まった広間でモニターを見上げていた。
ジブリールを匿ったオーブを討つという、またしてもそれが本当に正しいのかとイザークの頭を悩ませる命令が下って以来、イザークは相変わらず散々荒れまくっていた。
ディアッカもうんざりし、久々に見たカガリの姿に(何よりもイザークを納得させる声明を出してくれよな、代表どの)と苦笑した。

「過日、様々な情報と共に我々に送られたロゴスに関するデュランダル議長のメッセージは確かに衝撃的なものでした。ロゴスを討つ。そして戦争のない世界にというの議長の言葉は、今のこの混迷の世界で政治に携わる者としても、また生きる一個人としても確かに魅力を感じざるを得ません…」

そこまでカガリが話した時、急に画像がちらつき始め、音声も乱れ始めたのでアスランもキラもいぶかしんだ。
「ですが、それが…」
やがてカガリの映像が乱れて画面から消えてしまうと、そこに新たに現れたのはラクス・クラインだった。

「僕はラクス・クラインです」

(ミーア!?)
アスランははっと息を呑んだ。
メイリンとキラ、アスランの枕元に座っているミリアリアは思わずラクス本人を見つめ、ラクス自身は面白そうに画面を見つめている。

行政府の代表執務室でもちょっとした騒ぎになっていた。
テレビクルーは全世界向けの電波がジャックされたことに大慌てだ。
カガリはむっとしたまま、自分の発言をかき消した相手を見ている。
(こんな事をすれば、議長が黒だというのはもう明らかじゃないか…)
「カガリ!」
近づこうとしたキサカを、カガリは右手をあげて止めた。
プラントが、議長が何を考えているのか、もう少し推移を見守りたかった。

シンは腕を組み、冷ややかにモニターの中の彼を見つめていた。
「だから!それがきみの役割なんだよ。何も知らないくせに!」
(これがおまえの役割なのか、偽者…)
シンは吐き捨てるように呟いた。
「陳腐だな」
こんな子供だましで、再びオーブを討つ機運を高めるつもりなのだろうか。
(議長…あなたは一体何がしたいんだ?)
シンの心に、わずかな、かすかな不信感が芽生え始めていた。
やり方がどれほど汚くても、嘘でも偽りでもいいと思って信じた彼の目指す目的が、もしも自分の願いと違ったら…
(俺はあなたを許さない)
レイは後ろから、そんなシンをじっと見つめていた。

「過日行われたオーブでの戦闘は、もう皆さんも御存じのことでしょう」
原稿がテロップで流れてでもいるのか、偽者のラクスはいつもより緊張した面持ちでコメントを読み上げている。
「プラントとも親しい関係にあった彼の国が、何故ジブリール氏を匿うなどという選択をしたのかは、今以て理解することは出来ません」

こんな役割を押し付けられ、淡々とこなしているミーアを見て、アスランの心はズキリと痛んだ。
あの時、彼を救おうと…見捨てては行けないと手を差し出したのに、彼はそれを振り払ったのだ。
(でも、私は本当は強引にでも彼を連れてこなければいけなかった。こんな偽りに満ちた事がいつまでもうまくいくはずがないのだから)

「ブルーコスモスの盟主、プラントに核を放つことも巨大破壊兵器で街を焼くことも、子供たちをただ戦いの道具とするこもと厭わぬ人間を、何故オーブは戦ってまで守るのでしょうか?そのおかげで、オーブに守られた彼を、僕たちはまた、捕らえることが出来ませんでした」

(ふぅん…そう来たか)
カガリは頬杖をついて彼の意見を聞きながら、デュランダルは自身を正当化させるため、「オーブはジブリールを庇いとおした」で押し通す気だなと読んだ。かえすがえすもシャトルの撃墜失敗は痛い。

「キラ。僕もそろそろ行くよ」
ラクスの言葉を聞いてアスランが驚いて顔をあげた。
「うん。カガリも相当怒ってると思うしね」
キラが肩に乗っていたトリィをアスランに渡しながら答える。
首を傾げるトリィを、メイリンはまたしても興味深げに覗きこんだ。
「ラクス?あの…」
「大丈夫だよ、アスラン。議長にご挨拶するだけだから」
その表情に、冷徹な司令官の表情を見て、アスランは言葉を失う。
優しそうな彼しか知らないメイリンが呆気に取られているので、ミリアリアが耳元で(あれが彼の本当の顔なの)と囁いた。
キラはコックピットにラクスを乗せると、ストライクフリーダムで飛び出し、行政府に向かう。あらかじめキサカに連絡を入れておいたので、ものの数分で到着した2人は行政府に迎えられ、すぐに執務室にやってきた。
「映像を取り戻します」
キラはそう言うとボードやタブレットを繋ぎ、素早くキーを叩き始めた。クラッキングされている衛星をハッキング仕返し、念のためいくつか中継のサブネットも作る。
「2、3分でこちらに切り替わります。準備を」
皆があっけに取られている間に、キラは見事映像をジャックし返してみせた。

アスランやシンが見ている画面では、まだミーアの演説が続いていた。
「僕たちの世界に、誘惑は数多くあります。より良きもの、多くのものをと望むことは、無論悪いことではありません。ですがロゴスは別です。あれはあってはならないもの。この、人の世に不要で邪悪なものです。僕たちはそれを…」
そこまで彼が喋った時、再び画像が乱れ始め、音声が途切れた。
ミーアの映像がぶれ始めたと思うと、画面が小さくなり、代わってラクスとカガリが再び画面いっぱいに現れた。
キラは敢えてミーアの画像を消さず、あちらの放映が続く限りワイプに残している。こうすれば偽物と本物が並び立つからだ。

「彼の姿に惑わされないでください」

ラクス・クラインが優しげな微笑を湛えながら言った。
シンは腕組みを解き、ルナマリアも思わず立ち上がった。
レイも珍しく驚きで表情を変え、タリアやアーサーも顔を見合わせた。
誰より仕掛け人であるデュランダルが驚きに満ちた表情をしている。

「僕は、ラクス・クラインです」

「馬鹿な…!」
デュランダルが立ち上がった。
画面にはコーディネイターの中でも突出して整った、ラクスの柔和で美しい笑顔が大きく映し出されていた。
「何故…彼がオーブに…!?」
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secret
制作裏話-PHASE43②-
戦場が押し返され、潜航したアークエンジェルが旗艦セントヘレンズを撃沈したため、ザフトは手をこまねき始めます。
そんな中、ついにジブリールが発見され、ルナマリアのインパルスが出撃します。

また、これは本編にはなかった創作シーンなのですが、ジブリールの追撃を命じたカガリもまた、確実性を帰すためにキラに頼めないかとカメラを回させます。そこでジャスティスが戦っている姿を見てしまうのです。
本編ではカガリはアスランが傷だらけで戦ったことなど屁とも思っていなかったようなので(こうして見ていくと、あの2人の破局はアスランばかりを責められない気も…)、逆転のカガリはショックを受けるとしました。そして次のPHASEでアスランをそそのかした(であろう)ラクスに怒りをぶつけさせることにしました。仲のいい友達だからこそ、こういう衝突があって然るべきだと思います。

一方のルナマリアは本編以上にレイの「邪魔」発言に傷ついています。それはメイリンを失った彼女が、強くあろう、シンと共に戦おうと決意しているが故です。アスランを超え、より高みに到達しようと思うからこそ、その言葉は刃のように心を刺すのです。何とも思ってないなら「やーね、レイったらキツいんだから」で終わって気にもしないでしょう(本編の彼女のようにね)

機体性能は上ですから、インパルスはごぼう抜きでジブリールのシャトルにたどり着きます。そこで思い出されるのはアスランの言葉…ルナマリアは動揺し、おかげでこんなおいしい任務を失敗してしまいます。無論それだけではないのですが、集中力に欠け、向上心に欠けていたかつての彼女が今の彼女に失敗をもたらした、としたかったのです。

そんな状況の中、もう一人非常に優秀さを見せたキャラクターがいます。それはタリアです。彼女はジブリールを確保・狙撃できなかったこと、旗艦を失っていることを考え合わせ、これ以上戦場を泥沼化して被害を広げることをやめ、撤退するという決断をします。
戦争は始めるより終わらせる方がよほど難しい…議長が呟いたそれを、タリアは見事にやり遂げたとしたかったのです。もともと決して好戦的な人間ではないはずのアーサーがこれを聞いて「なんで退くんですか?」と驚くのも、戦場の狂気が人間を飲み込み、少しずつ狂わせるという演出として、オリジナルのセリフを膨らませてみました。

そしてまた、カガリもそれに気づいているとしたかったのです。旗艦が撃沈され、ミネルバを中心にザフトが退いていけば、撤退命令を下したのがタリア・グラディスであると推測できます。カガリが人知れず感謝の礼をするシーンはカガリらしくていいかなと思います。そして同時に、シンが国を救ってくれた事も忘れていません。
長きに渡ったカガリの物語はそろそろ終わりますが、最後までピーギャーピーギャー泣き喚き、最後にはセリフすら全くなくなって、「なんかよくわからんが大物ぶっている描写」で終わってしまった本編のカガリに比べれば、逆転のカガリはよほどまともに成長させられたと思います。

シンに勝利はしたものの、身体が限界のアスランに、キラはシンが罠によって降伏しようとしたオーブを救ってくれたことを耳打ちします。シンを責め立てるだけだったアスランに、シンの本質にあるものをもう一度気づかせたかったからです。
だからアスランは、これはどうして本編でなかったのか不思議で仕方がなかったのですが、メイリンも無事である事を「ルナマリアに伝えて」と言うのです。
よく言われるように、アスランが本当に「優しい」のなら、こうした細やかさを持っていてもいいと思うのですが。

そのまま気を失ったアスランを連れ帰ったキラは、待ち続けていたメイリンやブリッジから戻ってきたラクスと共に、彼女の状況に息を呑みます。
そんな姿に責任を感じているラクスが彼女を支え、吐いた血を拭ってやるのは、かつての寄り添いあう2人を思い出させていいのではないかと思います。

なお言っておきますが、本編のラクスはアスランが死に掛けていても戻ってきません。
何をしていたのかは知りませんが鬼です。ですがこれはこれで陰険丸出しの倦怠期の夫婦状態で面白いです。お似合いですよあんたたち。

戦闘が終わったので、様々なキャラクターのエピソードも盛り込まれます。撤退の報告をするタリアとデュランダル、記憶がないまま元の鞘におさまるネオとマリューなど、セリフがあったキャラはともかく、絵だけで済まされたミリアリア・ノイマン・チャンドラも描いてみました(逆種でも絵だけだったミリアリアとディアッカの食事を膨らませたのと同じです)

ついでにドムの3人組についても描写しました。せっかくオーブにも3人組がいて、一方はラクス、一方はキラに心酔してますから、似た者同士で仲良くなればいいと思います。

孤独感に苛まれるネオには、同じく記憶を消されて、新しい毎日を生きていた3人を思い出します。それはとても寂しいことで、自分の罪を感じると同時に、つい慰めを求めてしまう彼の弱さが見え隠れします。
同じく、複雑な想いを抱き続けてきたマリューも、ネオに抱き締められる事でついに開放されます。何かにすがってしまう2人の弱さは、けれど過酷な前作での運命があったからと思えば許せる…ものなのかなぁ?私にはどうもイマイチですけど。

そして私が書きたかったシーンであり、とても気に入っているシーンに突入します。
撤退し、カーペンタリアに向かうミネルバは「敗れた」ことによるどんよりした雰囲気です。そんな中、いつまでも整備をやめようとせずにヴィーノを悩ませているルナマリアの元に向かったシンは、彼女がジブリールを撃墜できなかった事を悔やみ、がっくりと落ち込んでいることを知ります。

シンはそんな彼女を慰めるのではなく、自分もオーブを討てなかったのだと告白します。けれどそれを心のどこかでほっとしている…そんな表情を、ルナマリアもちゃんと読み取ります。
彼女はそう言ってくれるシンの胸に飛び込み、二人は再び前に進む事になるのです。

大きな改変は、商品展開泣かせ、「女の子はパンツが見えそうなミニスカ履いておっぱいぷるんぷるんのオイロケ要員ならいいんだよぉ、萌え~♪」という視聴者泣かせの、「改造ミニスカ制服」から「ノーマルな赤服」へのルナマリアの衣装チェンジです。
本編ではシホ・ハーネンフースがきちんと赤服を身につけていますから、逆にDESTINY製作発表時のルナマリアのアーパーな格好はみっともなくて本当にいやでした。
だからここで、彼女の「シンと共に戦う」という軍人としての心構えを示させるため、ルナマリアにはミニスカをやめてもらいました。ザフトの制服は格好いいので、きちんと着ても似合うと思いますよ、ルナマリアなら。

カガリの演説が始まる前、手当てを受けて回復したアスランの部屋に皆が集まってきます。
本編と違うのはアスランの傍にいたのがメイリンだけではなく、ミリアリアもいた事。これだけでもミリアリアが壁の花にならずによかったと思います。

頬に傷を負ったカガリのインタビューを聞きながら、ラクスはカガリが今回の大いなる危機をなんとか乗り越えたことを評します。カガリ自身には何の力もないけれど、彼を援けようとする人がたくさんいるということが、カガリ・ユラ・アスハの「力」である、ということです。

そしてカガリの演説が始まると、ほどなくしてミーア・キャンベルが割り込んできます。電波ジャックされたカガリは言葉を奪われ、ミーア…偽者のラクスはジブリールを匿い続けたオーブを批判します。
「オーブとは別の交渉手段を考えなければ」と言っていた議長の考えは、こうやって断罪を続けて世界の気運を煽り、「オーブこそが悪である」とした上で、やがてレクイエムを撃つだろうジブリール共々オーブを片付ける事でした。

そしてそんな議長の策を読んでいたのもまたラクス・クラインなのです。
でき過ぎではありますが、それでもラクスにはこのへんまで行ってもらわないと困ります。
ラクスはキラと共に行政府に向かい、キラが電波ジャックをジャックし返します。ソフトに強く、天才ハッカーのキラらしい活躍があってもいいと思うので、張り切ってやってもらいました。

次回、いよいよラクス・クラインの容赦ない口撃が火を噴き、ミーアは完全に沈黙させられて、デュランダルも手痛いダメージを食らう事になります。

絶対防御のキラ・ヤマトと、自爆上等のアスラン・ザラを手にしたラクス様に怖いものなどありませんから。
になにな(筆者) 2012/02/19(Sun)00:26:05 編集
Natural or Cordinater?
サブタイトル

お知らせ
PHASE0 はじめに
PHASE1-1 怒れる瞳①
PHASE1-2 怒れる瞳②
PHASE1-3 怒れる瞳③
PHASE2 戦いを呼ぶもの
PHASE3 予兆の砲火
PHASE4 星屑の戦場
PHASE5 癒えぬ傷痕
PHASE6 世界の終わる時
PHASE7 混迷の大地
PHASE8 ジャンクション
PHASE9 驕れる牙
PHASE10 父の呪縛
PHASE11 選びし道
PHASE12 血に染まる海
PHASE13 よみがえる翼
PHASE14 明日への出航
PHASE15 戦場への帰還
PHASE16 インド洋の死闘
PHASE17 戦士の条件
PHASE18 ローエングリンを討て!
PHASE19 見えない真実
PHASE20 PAST
PHASE21 さまよう眸
PHASE22 蒼天の剣
PHASE23 戦火の蔭
PHASE24 すれちがう視線
PHASE25 罪の在処
PHASE26 約束
PHASE27 届かぬ想い
PHASE28 残る命散る命
PHASE29 FATES
PHASE30 刹那の夢
PHASE31 明けない夜
PHASE32 ステラ
PHASE33 示される世界
PHASE34 悪夢
PHASE35 混沌の先に
PHASE36-1 アスラン脱走①
PHASE36-2 アスラン脱走②
PHASE37-1 雷鳴の闇①
PHASE37-2 雷鳴の闇②
PHASE38 新しき旗
PHASE39-1 天空のキラ①
PHASE39-2 天空のキラ②
PHASE40 リフレイン
(原題:黄金の意志)
PHASE41-1 黄金の意志①
(原題:リフレイン)
PHASE41-2 黄金の意志②
(原題:リフレイン)
PHASE42-1 自由と正義と①
PHASE42-2 自由と正義と②
PHASE43-1 反撃の声①
PHASE43-2 反撃の声②
PHASE44-1 二人のラクス①
PHASE44-2 二人のラクス②
PHASE45-1 変革の序曲①
PHASE45-2 変革の序曲②
PHASE46-1 真実の歌①
PHASE46-2 真実の歌②
PHASE47 ミーア
PHASE48-1 新世界へ①
PHASE48-2 新世界へ②
PHASE49-1 レイ①
PHASE49-2 レイ②
PHASE50-1 最後の力①
PHASE50-2 最後の力②
PHASE50-3 最後の力③
PHASE50-4 最後の力④
PHASE50-5 最後の力⑤
PHASE50-6 最後の力⑥
PHASE50-7 最後の力⑦
PHASE50-8 最後の力⑧
FINAL PLUS(後日談)
制作裏話
逆転DESTINYの制作裏話を公開

制作裏話-はじめに-
制作裏話-PHASE1①-
制作裏話-PHASE1②-
制作裏話-PHASE1③-
制作裏話-PHASE2-
制作裏話-PHASE3-
制作裏話-PHASE4-
制作裏話-PHASE5-
制作裏話-PHASE6-
制作裏話-PHASE7-
制作裏話-PHASE8-
制作裏話-PHASE9-
制作裏話-PHASE10-
制作裏話-PHASE11-
制作裏話-PHASE12-
制作裏話-PHASE13-
制作裏話-PHASE14-
制作裏話-PHASE15-
制作裏話-PHASE16-
制作裏話-PHASE17-
制作裏話-PHASE18-
制作裏話-PHASE19-
制作裏話-PHASE20-
制作裏話-PHASE21-
制作裏話-PHASE22-
制作裏話-PHASE23-
制作裏話-PHASE24-
制作裏話-PHASE25-
制作裏話-PHASE26-
制作裏話-PHASE27-
制作裏話-PHASE28-
制作裏話-PHASE29-
制作裏話-PHASE30-
制作裏話-PHASE31-
制作裏話-PHASE32-
制作裏話-PHASE33-
制作裏話-PHASE34-
制作裏話-PHASE35-
制作裏話-PHASE36①-
制作裏話-PHASE36②-
制作裏話-PHASE37①-
制作裏話-PHASE37②-
制作裏話-PHASE38-
制作裏話-PHASE39①-
制作裏話-PHASE39②-
制作裏話-PHASE40-
制作裏話-PHASE41①-
制作裏話-PHASE41②-
制作裏話-PHASE42①-
制作裏話-PHASE42②-
制作裏話-PHASE43①-
制作裏話-PHASE43②-
制作裏話-PHASE44①-
制作裏話-PHASE44②-
制作裏話-PHASE45①-
制作裏話-PHASE45②-
制作裏話-PHASE46①-
制作裏話-PHASE46②-
制作裏話-PHASE47-
制作裏話-PHASE48①-
制作裏話-PHASE48②-
制作裏話-PHASE49①-
制作裏話-PHASE49②-
制作裏話-PHASE50①-
制作裏話-PHASE50②-
制作裏話-PHASE50③-
制作裏話-PHASE50④-
制作裏話-PHASE50⑤-
制作裏話-PHASE50⑥-
制作裏話-PHASE50⑦-
制作裏話-PHASE50⑧-
2011/5/22~2012/9/12
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